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Story 01 side.ANKO
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淫らな女の嬌声が、二階の窓から落ちてくる。
あぁ、あそこか。
と妙に冷めた気持ちで私はその部屋を見上げた。
そうして、私はいとも簡単に在り来たりに絶望する。
そこに、現れたのが彼女。
これからの私をおかしくさせる、その人だった。
その女性はとても美しい顔をしていた。
傷んだ金髪が彼女から気品を奪っていて、それでも尚「美しい」と私は溜息を吐く。
まるで嘘みたいに綺麗な人だった。
「何? うちに何か用?」
彼女は電子タバコを咥えながら、怠そうに私に向かってそう言った。
華奢な彼女の人差し指は二階を指し示している。
がさりと彼女の手に持たれたコンビニの袋が揺れて、見惚れていた私の意識が戻ってきた。
なんとなく、その人を見ていることが恥ずかしくなって、私の視線が下に降りていく。
アスファルトの上で汚く泥を被った桜の花弁が視界に移った。
俯いたまま、私は小さく呟く。
「いえ、何も……」
そのとき、一際大きな喘ぎ声がはっきりと聞こえ、私の耳は熱を持った。
今すぐこの場から立ち去りたい。
羞恥心に悶える私の耳に軽い舌打ちの音が聞こえ、ひんやりと冷たい手が私の手首を掴んだ。
驚いて顔を上げると、次の瞬間には勢いよく足を踏み出していた。
彼女に引っ張られるようにして、いつの間にか走り出していたのだ。
痛いくらいに強い力で手首を引っ張られながら、それでも私は彼女に抵抗しない。
黄金の髪を持った彼女の背中が一等眩しかったから。
太陽の光を浴びた金髪はきらきらと輪郭が朧げで、まるで妖精の鱗粉が踊っているみたいで。
「あたしはチャコ。あんたは?」
「あんこ。桃山餡子、です……!」
信じられないくらい大声の自己紹介をしながら、郊外の住宅地を駆け抜ける。
不思議と、これまでの全部を忘れてしまってもいいような気持ちがした。
あぁ、あそこか。
と妙に冷めた気持ちで私はその部屋を見上げた。
そうして、私はいとも簡単に在り来たりに絶望する。
そこに、現れたのが彼女。
これからの私をおかしくさせる、その人だった。
その女性はとても美しい顔をしていた。
傷んだ金髪が彼女から気品を奪っていて、それでも尚「美しい」と私は溜息を吐く。
まるで嘘みたいに綺麗な人だった。
「何? うちに何か用?」
彼女は電子タバコを咥えながら、怠そうに私に向かってそう言った。
華奢な彼女の人差し指は二階を指し示している。
がさりと彼女の手に持たれたコンビニの袋が揺れて、見惚れていた私の意識が戻ってきた。
なんとなく、その人を見ていることが恥ずかしくなって、私の視線が下に降りていく。
アスファルトの上で汚く泥を被った桜の花弁が視界に移った。
俯いたまま、私は小さく呟く。
「いえ、何も……」
そのとき、一際大きな喘ぎ声がはっきりと聞こえ、私の耳は熱を持った。
今すぐこの場から立ち去りたい。
羞恥心に悶える私の耳に軽い舌打ちの音が聞こえ、ひんやりと冷たい手が私の手首を掴んだ。
驚いて顔を上げると、次の瞬間には勢いよく足を踏み出していた。
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痛いくらいに強い力で手首を引っ張られながら、それでも私は彼女に抵抗しない。
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