18 / 46
第十八話
しおりを挟む
為朝が鷹尾城に入城してから三日後、宗運率いる為朝の本隊が到着し鷹尾城とその周囲には兵でいっぱいになっていた。
親種から譲られた屋敷で為朝は宗運と対面していた。同席しているのは鎮西二十烈士筆頭であり、宗運の末弟である親常であった。
為朝と対面した宗運は恭しく頭を下げる。
「まずは為朝が御無事なようで何よりでございます」
「うむ。宗運もよく来てくれたな」
為朝の言葉に宗運は少し微笑むとすぐに真面目な表情になる。
「さて、為朝様。宗筑後入道と直接戦ってみて如何でしたか?」
宗運の言葉に為朝は顎に手を当てながら三日目の夜襲を思い出す。
「夜襲は成功した。だが、大きく崩れることもなく、整然と退いていた。何より最初から決めていたかのように己の嫡男である筑後守盛篤と龍造寺隆信を殿にしていた」
「ふむ、最初から決めていたかのように……」
宗運は少し考え込む素振りをみせると、その視線を親常に向ける。
「? なんだ上兄者」
その視線の意図に全く気付かない親常の不思議そうな顔に、宗運の額に青筋が浮かぶ。それをみてやばいと思ったのか親常は慌てた様子で身振り手振りで説明を始める。
「あああ! あれだな!! わかってる!! わかってるぞ上兄者!!」
全くわかっていない親常に為朝は思わず天井を見上げる。
ここで次弟の親房がいれば親常に助け船を出したのだろうが、その親房は宗運の代理として親昌らと親種と会談を行っているはずである。
為朝が内心で親房を呼ぶが、当然ながら親房が来てくれるはずもない。
宗運は目が笑っていない笑顔を浮かべながら口を開く。
「では報告を頼むぞ、親常」
その言葉に親常は顔を真っ青にして口をパクパクさせる。それをみて為朝は親常が宗運の意図を理解していないのは丸わかりだったし、それは宗運にもわかったのか、宗運の額にもう一つ青筋が浮かんだ。
親常に鉄拳制裁つきの説教が始まると思ったとき、追い詰められた親常は覚醒する。
「夜襲のときの田尻の動きだな!?」
親常の言葉に宗運は満足したように笑う。それをみて為朝と親常は安堵の溜息をつく。
そしてすぐに親常は腕を組んで夜襲の時をうんうんと思い出しながら口を開く。
「まず、夜襲した時の反応は困惑、といった感じか」
「ふむ、宗筑後入道を出し抜いての夜襲。田尻殿が困惑してもおかしくはなかろう」
「いや、確かにそれも困惑ではあるんだが……なんと言えばいいのか……」
親常が必死になって言葉を探しているのを宗運は黙って待っている。
親常は頭は悪いが、それは頭が回らないことではない。むしろ宗運や親房の実弟だけあって頭の回転ははやい。ただ、兄二人はその回転についていける言語化能力があるが、親常にはそれがないのだ。
それを理解しているから宗運も親常の言葉をゆっくりと待つ。為朝もまた長い付き合いでそれを知っているから待つことができる。
屋敷の外では足軽達や足軽大将の喧噪が聞こえてきているが、為朝の屋敷の中は静かなものだ。警護のために鎮西二十烈士がいるが、鎮西二十烈士は宗運を怖がってここに近寄ろうとしない。
そして親常は必至に考えながら説明を始める。
「あれだ、確かに田尻勢の中には困惑があったのだが、それは夜襲があったことではなく、『前持って知らされていたのが本当に来た』といった困惑だ」
「……なんだと?」
親常の言葉に宗運の視線が鋭くなる。その視線を受けながら親常は自信ありげに頷く。すると宗運の視線が為朝に移る。その視線を理解して為朝も頷く。
「確かに宗筑後入道の軍勢に夜襲に対する怯え等はなかった。いや、『なさすぎた』と言ってもいいだろう」
その為朝の言葉に宗運はピシャリと膝を叩く。
「宗筑後入道……!! 我らの夜襲まで読んでいたか……!!」
その宗運の言葉に今度は為朝が驚く。
「なんだと!? しかし、宗運。俺達が夜襲の策をいれたのは筑後に入ってからだぞ」
「それがあの爺の恐ろしいところ。恐らくは夜襲があることまで織り込み済みでこの鷹尾城を囲んだのでしょう」
「だが、それならば逆に俺を討ち取ろうとすることもできたのではないか?」
「宗筑後入道の奴は鷹尾城の夜襲では為朝様を討ち取ることはできないと踏んだのでしょう。なので配下の筑後衆などにも動揺はなく退くことができた。何せ最初から来るとわかっていれば夜襲は夜襲にはなりません」
宗運の言葉に為朝も思わず唸る。親昌の策を持って夜襲を仕掛け、それが成功したと思っていたが、それは全て宗筑後入道の掌の上であったのだ。
腕を組んで考え込む為朝を他所に今度は親常が口を開く。
「だが、上兄者。筑後入道の想定より早く俺達が夜襲に来たということはないか?」
「ふむ、それもあり得るかもしれん。想定していた日付より早く夜襲が来た。だから宗筑後入道はあっさりと兵を引いたこともあるかもしれん」
宗運の言葉に親常はむむむ、と難しい表情を浮かべる。
「恐ろしい漢だな。宗筑後入道は……」
「我らが産まれる前から戦っていた侍ぞ。九州であの爺をこえる戦の数を経験した者はおるまい」
その会話を聞きながら為朝はつい言葉を零れさせる。
「う~む、敵にしとくは惜しい漢よな。なんとかこちらに引き込めないか?」
「無理でしょう。引き抜ける漢であれば既に大内や大友が引き抜いているでしょう。もはや落ち目になっている少弐にそれでも従っている」
「もったいない。俺であればあの才覚をもっと広く使ってやれるものを……」
為朝の言葉に宗運は苦笑いする。
「確かに宗筑後入道が為朝様の下に馳せ参じれば、為朝様の天下が大きく開けましょう。しかし、あの漢を寝返らせるのは無理です」
「九州を統一した後、俺と宗運が中国路を突き進み、宗筑後入道には別手を預けて四国から畿内に突き進ませる。無論、それに従うは九州の剽悍な『もののふ』達。そして信長の奴と畿内辺りで決戦……だが、全ては夢か」
「夢、でしょうな」
為朝の言葉に宗運もどこか遠い目をしながら答える。
宗運の頭痛の種でもあるのが、宗運以外に為朝軍の別手を務められる者がいないということであった。
惟久や惟民などがいるにはいるが、為朝と宗運に変わって別手を完全に指揮できる人物は為朝の家中にはいない。今の為朝の家中の人材はあくまで為朝個人が使ってこその人材であった。
その点、経験と才覚において宗筑後入道は確かに為朝や宗運に変わって別手の大将を務められる人材であった。
だが、その経験と才覚の忠誠は少弐家に向かっており、為朝に靡くことはないだろう。
気分を変えるように宗運は為朝をみる。
「為朝様、進言いたします」
「聞こう」
「ここは鷹尾城の救援は成ったとして軍を退いては如何でしょう」
宗運の言葉に為朝は顔を顰める。
為朝の気分を害したにも関わらず、宗運は言葉を続ける。
「私がみましたところ、今回の戦。全ては宗筑後入道が掌の上でございます。にも関わらず進撃を続ければ宗筑後入道の策に入り込むことになります」
宗運は一度そこで言葉を区切ると、今までにないくらいに真剣な表情で為朝をみる。
「下手をすれば為朝様が首、落とされるやもしれません」
宗運の鬼気迫った表情に親常は思わず息を飲む。その視線を受けている為朝も表情は硬い。
「まずは鷹尾城に救援は成ったとして軍を退き、今度はこちらが戦の絵図を描いて宗筑後入道に乗らせるが一番かと」
その宗運の言葉に為朝は腕を組んで天井を見上げる。
思い出すのは前世から戦い続けてきた戦。勝ちもあれば負けもあった。
だが、不思議と為朝は負け戦でも生き残り、最後は自ら自害して果てた。
それらを思い出しながら為朝は宗運をみる。
「宗運」
「は」
「軍は退かぬ」
為朝の言葉に血相を変えて言葉を言いつのろうとした宗運を為朝は止めて言葉を続ける。
「良いか宗運。俺は鎮西八郎為朝だ」
「存じております」
「いいや、わかっておらぬ。俺は鎮西八郎為朝だ。だから策とわかっているからと言って敵を前にして退くということはできん」
それが為朝の答えであり、前世からの思いであった。
京での争乱。為朝は夜襲の策が退けられた時点で負けがみえた。
だが、逃げるという選択はとらなかった。それは『鎮西八郎為朝』という生き方ではないと思ったからだ。
その思いは今世でも続いている。
「宗筑後入道が策。なるほどその通りであろう。俺が負けるであろう。なるほどそうかもしれぬ」
そこまで言うと為朝は苦笑いして宗運をみる。
「だが、なぁ宗運。負けるからと言って逃げるような真似、俺にはできぬのだ」
為朝の言葉を宗運は黙って聞いている。
しばしの無言の空間。
折れたのは宗運であった。
「わかりました。確かに負けると言って退くようでは我らが大将の鎮西八郎為朝様に非ず。負けるとわかっていても笑いながら戦場に赴く……そのような為朝様に我らは夢をみたのです。九州の統一。そして天下という夢を」
「すまんな、宗運。迷惑をかける」
そんな為朝の言葉に宗運は真面目な表情で頭を下げる。
「何の。考えてみれば宗筑後入道が付け入る隙を与えたのが私の失策。この上は我が命を持って今回の戦に挑ませていただきます」
その言葉に為朝は瞬間的に答えた。
「宗運に死なれるのは困る」
「そうだ、上兄者。為朝様を守って死ぬは俺達鎮西二十烈士が役割だ。上兄者は生きて為朝様の天下の絵図を描いてもらわなくてはな」
二人の言葉に宗運は嬉しそうに頭を下げる。
「この甲斐宗運入道親直。全身全霊を持って為朝様の天下の助けとなりましょう」
親種から譲られた屋敷で為朝は宗運と対面していた。同席しているのは鎮西二十烈士筆頭であり、宗運の末弟である親常であった。
為朝と対面した宗運は恭しく頭を下げる。
「まずは為朝が御無事なようで何よりでございます」
「うむ。宗運もよく来てくれたな」
為朝の言葉に宗運は少し微笑むとすぐに真面目な表情になる。
「さて、為朝様。宗筑後入道と直接戦ってみて如何でしたか?」
宗運の言葉に為朝は顎に手を当てながら三日目の夜襲を思い出す。
「夜襲は成功した。だが、大きく崩れることもなく、整然と退いていた。何より最初から決めていたかのように己の嫡男である筑後守盛篤と龍造寺隆信を殿にしていた」
「ふむ、最初から決めていたかのように……」
宗運は少し考え込む素振りをみせると、その視線を親常に向ける。
「? なんだ上兄者」
その視線の意図に全く気付かない親常の不思議そうな顔に、宗運の額に青筋が浮かぶ。それをみてやばいと思ったのか親常は慌てた様子で身振り手振りで説明を始める。
「あああ! あれだな!! わかってる!! わかってるぞ上兄者!!」
全くわかっていない親常に為朝は思わず天井を見上げる。
ここで次弟の親房がいれば親常に助け船を出したのだろうが、その親房は宗運の代理として親昌らと親種と会談を行っているはずである。
為朝が内心で親房を呼ぶが、当然ながら親房が来てくれるはずもない。
宗運は目が笑っていない笑顔を浮かべながら口を開く。
「では報告を頼むぞ、親常」
その言葉に親常は顔を真っ青にして口をパクパクさせる。それをみて為朝は親常が宗運の意図を理解していないのは丸わかりだったし、それは宗運にもわかったのか、宗運の額にもう一つ青筋が浮かんだ。
親常に鉄拳制裁つきの説教が始まると思ったとき、追い詰められた親常は覚醒する。
「夜襲のときの田尻の動きだな!?」
親常の言葉に宗運は満足したように笑う。それをみて為朝と親常は安堵の溜息をつく。
そしてすぐに親常は腕を組んで夜襲の時をうんうんと思い出しながら口を開く。
「まず、夜襲した時の反応は困惑、といった感じか」
「ふむ、宗筑後入道を出し抜いての夜襲。田尻殿が困惑してもおかしくはなかろう」
「いや、確かにそれも困惑ではあるんだが……なんと言えばいいのか……」
親常が必死になって言葉を探しているのを宗運は黙って待っている。
親常は頭は悪いが、それは頭が回らないことではない。むしろ宗運や親房の実弟だけあって頭の回転ははやい。ただ、兄二人はその回転についていける言語化能力があるが、親常にはそれがないのだ。
それを理解しているから宗運も親常の言葉をゆっくりと待つ。為朝もまた長い付き合いでそれを知っているから待つことができる。
屋敷の外では足軽達や足軽大将の喧噪が聞こえてきているが、為朝の屋敷の中は静かなものだ。警護のために鎮西二十烈士がいるが、鎮西二十烈士は宗運を怖がってここに近寄ろうとしない。
そして親常は必至に考えながら説明を始める。
「あれだ、確かに田尻勢の中には困惑があったのだが、それは夜襲があったことではなく、『前持って知らされていたのが本当に来た』といった困惑だ」
「……なんだと?」
親常の言葉に宗運の視線が鋭くなる。その視線を受けながら親常は自信ありげに頷く。すると宗運の視線が為朝に移る。その視線を理解して為朝も頷く。
「確かに宗筑後入道の軍勢に夜襲に対する怯え等はなかった。いや、『なさすぎた』と言ってもいいだろう」
その為朝の言葉に宗運はピシャリと膝を叩く。
「宗筑後入道……!! 我らの夜襲まで読んでいたか……!!」
その宗運の言葉に今度は為朝が驚く。
「なんだと!? しかし、宗運。俺達が夜襲の策をいれたのは筑後に入ってからだぞ」
「それがあの爺の恐ろしいところ。恐らくは夜襲があることまで織り込み済みでこの鷹尾城を囲んだのでしょう」
「だが、それならば逆に俺を討ち取ろうとすることもできたのではないか?」
「宗筑後入道の奴は鷹尾城の夜襲では為朝様を討ち取ることはできないと踏んだのでしょう。なので配下の筑後衆などにも動揺はなく退くことができた。何せ最初から来るとわかっていれば夜襲は夜襲にはなりません」
宗運の言葉に為朝も思わず唸る。親昌の策を持って夜襲を仕掛け、それが成功したと思っていたが、それは全て宗筑後入道の掌の上であったのだ。
腕を組んで考え込む為朝を他所に今度は親常が口を開く。
「だが、上兄者。筑後入道の想定より早く俺達が夜襲に来たということはないか?」
「ふむ、それもあり得るかもしれん。想定していた日付より早く夜襲が来た。だから宗筑後入道はあっさりと兵を引いたこともあるかもしれん」
宗運の言葉に親常はむむむ、と難しい表情を浮かべる。
「恐ろしい漢だな。宗筑後入道は……」
「我らが産まれる前から戦っていた侍ぞ。九州であの爺をこえる戦の数を経験した者はおるまい」
その会話を聞きながら為朝はつい言葉を零れさせる。
「う~む、敵にしとくは惜しい漢よな。なんとかこちらに引き込めないか?」
「無理でしょう。引き抜ける漢であれば既に大内や大友が引き抜いているでしょう。もはや落ち目になっている少弐にそれでも従っている」
「もったいない。俺であればあの才覚をもっと広く使ってやれるものを……」
為朝の言葉に宗運は苦笑いする。
「確かに宗筑後入道が為朝様の下に馳せ参じれば、為朝様の天下が大きく開けましょう。しかし、あの漢を寝返らせるのは無理です」
「九州を統一した後、俺と宗運が中国路を突き進み、宗筑後入道には別手を預けて四国から畿内に突き進ませる。無論、それに従うは九州の剽悍な『もののふ』達。そして信長の奴と畿内辺りで決戦……だが、全ては夢か」
「夢、でしょうな」
為朝の言葉に宗運もどこか遠い目をしながら答える。
宗運の頭痛の種でもあるのが、宗運以外に為朝軍の別手を務められる者がいないということであった。
惟久や惟民などがいるにはいるが、為朝と宗運に変わって別手を完全に指揮できる人物は為朝の家中にはいない。今の為朝の家中の人材はあくまで為朝個人が使ってこその人材であった。
その点、経験と才覚において宗筑後入道は確かに為朝や宗運に変わって別手の大将を務められる人材であった。
だが、その経験と才覚の忠誠は少弐家に向かっており、為朝に靡くことはないだろう。
気分を変えるように宗運は為朝をみる。
「為朝様、進言いたします」
「聞こう」
「ここは鷹尾城の救援は成ったとして軍を退いては如何でしょう」
宗運の言葉に為朝は顔を顰める。
為朝の気分を害したにも関わらず、宗運は言葉を続ける。
「私がみましたところ、今回の戦。全ては宗筑後入道が掌の上でございます。にも関わらず進撃を続ければ宗筑後入道の策に入り込むことになります」
宗運は一度そこで言葉を区切ると、今までにないくらいに真剣な表情で為朝をみる。
「下手をすれば為朝様が首、落とされるやもしれません」
宗運の鬼気迫った表情に親常は思わず息を飲む。その視線を受けている為朝も表情は硬い。
「まずは鷹尾城に救援は成ったとして軍を退き、今度はこちらが戦の絵図を描いて宗筑後入道に乗らせるが一番かと」
その宗運の言葉に為朝は腕を組んで天井を見上げる。
思い出すのは前世から戦い続けてきた戦。勝ちもあれば負けもあった。
だが、不思議と為朝は負け戦でも生き残り、最後は自ら自害して果てた。
それらを思い出しながら為朝は宗運をみる。
「宗運」
「は」
「軍は退かぬ」
為朝の言葉に血相を変えて言葉を言いつのろうとした宗運を為朝は止めて言葉を続ける。
「良いか宗運。俺は鎮西八郎為朝だ」
「存じております」
「いいや、わかっておらぬ。俺は鎮西八郎為朝だ。だから策とわかっているからと言って敵を前にして退くということはできん」
それが為朝の答えであり、前世からの思いであった。
京での争乱。為朝は夜襲の策が退けられた時点で負けがみえた。
だが、逃げるという選択はとらなかった。それは『鎮西八郎為朝』という生き方ではないと思ったからだ。
その思いは今世でも続いている。
「宗筑後入道が策。なるほどその通りであろう。俺が負けるであろう。なるほどそうかもしれぬ」
そこまで言うと為朝は苦笑いして宗運をみる。
「だが、なぁ宗運。負けるからと言って逃げるような真似、俺にはできぬのだ」
為朝の言葉を宗運は黙って聞いている。
しばしの無言の空間。
折れたのは宗運であった。
「わかりました。確かに負けると言って退くようでは我らが大将の鎮西八郎為朝様に非ず。負けるとわかっていても笑いながら戦場に赴く……そのような為朝様に我らは夢をみたのです。九州の統一。そして天下という夢を」
「すまんな、宗運。迷惑をかける」
そんな為朝の言葉に宗運は真面目な表情で頭を下げる。
「何の。考えてみれば宗筑後入道が付け入る隙を与えたのが私の失策。この上は我が命を持って今回の戦に挑ませていただきます」
その言葉に為朝は瞬間的に答えた。
「宗運に死なれるのは困る」
「そうだ、上兄者。為朝様を守って死ぬは俺達鎮西二十烈士が役割だ。上兄者は生きて為朝様の天下の絵図を描いてもらわなくてはな」
二人の言葉に宗運は嬉しそうに頭を下げる。
「この甲斐宗運入道親直。全身全霊を持って為朝様の天下の助けとなりましょう」
11
あなたにおすすめの小説
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
土方歳三ら、西南戦争に参戦す
山家
歴史・時代
榎本艦隊北上せず。
それによって、戊辰戦争の流れが変わり、五稜郭の戦いは起こらず、土方歳三は戊辰戦争の戦野を生き延びることになった。
生き延びた土方歳三は、北の大地に屯田兵として赴き、明治初期を生き抜く。
また、五稜郭の戦い等で散った他の多くの男達も、史実と違えた人生を送ることになった。
そして、台湾出兵に土方歳三は赴いた後、西南戦争が勃発する。
土方歳三は屯田兵として、そして幕府歩兵隊の末裔といえる海兵隊の一員として、西南戦争に赴く。
そして、北の大地で再生された誠の旗を掲げる土方歳三の周囲には、かつての新選組の仲間、永倉新八、斎藤一、島田魁らが集い、共に戦おうとしており、他にも男達が集っていた。
(「小説家になろう」に投稿している「新選組、西南戦争へ」の加筆修正版です)
織田信長 -尾州払暁-
藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。
守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。
織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。
そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。
毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。
大東亜戦争を有利に
ゆみすけ
歴史・時代
日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を
If太平洋戦争 日本が懸命な判断をしていたら
みにみ
歴史・時代
もし、あの戦争で日本が異なる選択をしていたら?
国力の差を直視し、無謀な拡大を避け、戦略と外交で活路を開く。
真珠湾、ミッドウェー、ガダルカナル…そして終戦工作 分水嶺で下された「if」の決断。
破滅回避し、国家存続をかけたもう一つの終戦
そしてそこから繋がる新たな近代史へ
【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記
糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。
それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。
かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。
ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。
※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。
改造空母機動艦隊
蒼 飛雲
歴史・時代
兵棋演習の結果、洋上航空戦における空母の大量損耗は避け得ないと悟った帝国海軍は高価な正規空母の新造をあきらめ、旧式戦艦や特務艦を改造することで数を揃える方向に舵を切る。
そして、昭和一六年一二月。
日本の前途に暗雲が立ち込める中、祖国防衛のために改造空母艦隊は出撃する。
「瑞鳳」「祥鳳」「龍鳳」が、さらに「千歳」「千代田」「瑞穂」がその数を頼みに太平洋艦隊を迎え撃つ。
マルチバース豊臣家の人々
かまぼこのもと
歴史・時代
1600年9月
後に天下人となる予定だった徳川家康は焦っていた。
ーーこんなはずちゃうやろ?
それもそのはず、ある人物が生きていたことで時代は大きく変わるのであった。
果たして、この世界でも家康の天下となるのか!?
そして、豊臣家は生き残ることができるのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる