鎮西八郎為朝戦国時代二転生ス~阿蘇から始める天下統一~

惟宗正史

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第十九話

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 為朝の軍勢は鷹尾城を出立し、宗筑後入道が篭る柳川城を包囲した。
 為朝は宗運を城攻めの大将に任命し、宗筑後入道が篭っている柳川城を攻めさせていた。
「よく耐えるものだな」
 為朝は本陣で床几に座りながら柳川城攻めを眺めている。傍らには親種から人質として出された又三郎と鎮西二十烈士の面々が控えている。
 為朝の独り言を話しかけられたと思った又三郎が控え目に口を開いた。
「柳川城を落とせれば少弐氏の筑後支配は終わりと言ってもいいでしょう。それがわかるからこそ宗筑後入道も必死なのでしょう」
「歴戦の名将が必死になるか……被害が大きくなりそうだな」
「ですが為朝様が誇る鉄砲隊で柳川城の士気も落ちているでしょう」
 城攻めを行っている宗運は惟民の鉄砲隊も城攻めに投入。鉄砲自体で城攻めを簡単にはしないが、その轟音を当たれば即死するとい武器は城内にいる宗筑後入道方の兵士達の士気を落としていた。
 為朝は呑気に鼻毛を抜きながら呟く。
「宗運も色々と頭が回るもんだ。鉄砲をこんな風に利用するとはな」
「まぁ、色々考えるのが上兄者の美点ですからね。しかも相手が九州にその名を轟かす宗筑後入道。張り切るでしょうなぁ」
 為朝の側に控えている親常がのんびりとした口調で付け足す。それに軽く頷くと為朝も言葉を続ける。
「しかし、総攻めを始めて四日、もうそろそろ城内の士気も落ちているだろう」
 為朝がそう言った時、宗運の陣から引き太鼓が鳴らされる。その音に合わせるように柳川城に取りついていた為朝の兵士が退き始める。
 それをみて為朝は立ち上がって兵士に指示を出す。
「軍議の準備をしてくれ」
 為朝の言葉に傍衆は返事をすると立ち去っていく。
「又三郎」
「は」
「お前も戦功が欲しいだろう? 俺が宗運にかけあって前線に出れるように言ってやろうか?」
 為朝の言葉に又三郎は驚いた表情になる。
「し、しかし私は人質ですので」
「阿呆。俺は親種を信じると決めた。漢が漢を信じると決めた、ならば人質など不要よ」
 又三郎の言葉に為朝は即答する。その言葉に又三郎は酷く驚いた表情になる。その顔をみて為朝は又三郎が前線に出たいと思ったのか軽く笑う。
「よしよし。戦場で戦わずにただ見ているだけなど『もののふ』ではない。俺が宗運にかけあってやろう」
「いや、為朝様。上兄者説得する材料あるんですか?」
 その言葉に為朝は笑顔で片腕をあげる。
「ない!!」
「駄目じゃないですか」
「いや、宗運とて『もののふ』ぞ。先ほどの道理を説けばきっとわかってくれるはず」
「いや、無理でしょう」
 親常の言葉に鎮西二十烈士の面々も力強く頷く。
 それに対して反論しようとした為朝に又三郎が口を挟んでくる。
「い、いえ!! 私は為朝様のお傍で仕えさせていただければ」
「うん? そうか? 又三郎がそう言うのでやめておこう」
 そう言って為朝はその場から立ち去る。
 その後ろ姿を複雑そうな表情で見ているのを気づいた人物はいないのであった。


 為朝本陣。ここでは柳川城攻めの仕上げの軍議が行われていた。
 為朝は上座に座りながら腕を組み、黙って宗運の言葉を聞いている。宗運もまた為朝の傍らにあって地図で各将に指示を熱心に出していた。
 そして最後の鉄砲奉行の惟民に指示を出し終えると、宗運は持っていた扇子でぴしゃりと机を叩く。
「よろしいか各々方。明日中には柳川城は落とせます。しかし、この戦は柳川城を落としての勝ちではありません」
 そう言って宗運は全員の顔をジロリと見回す。
「宗筑後入道と宗筑後守。この親子の首をとってこその勝ちです」
 その宗運の気迫に本陣に緊張した空気が流れる。その流れに乗るように宗運は言葉を続ける。
「宗筑後親子さえ斬ってしまえば少弐は瓦解したも当然。為朝様の九州統一に大きな一歩となります」
「この戦、宗筑後入道を捕らえるか、首をとった者が戦功第一、宗筑後守を捕らえるか首をとった者が戦功第二だ」
 宗運の言葉に為朝が続けて言うと、諸将から気迫のこもった声が返ってくる。
 それに満足したように頷く宗運をみながら、為朝は又三郎に合図を出す。
 すると又三郎は盃を諸将の前に置いた。
 呆れたようにみてくる宗運に為朝は慌てて手を振る。
「流石に戦の最中で酒を飲むほど俺は酔狂ではない。中身は水だ」
「酒でも良かったですがな」
 親昌の言葉に集まっていた人々から笑いが出る。
 その笑いが収まってから為朝は盃を掲げる。
「明日、宗筑後親子を討って美味い酒を飲もう。故にみな死ぬなよ」
 そう言って為朝が盃を干すと、諸将も習って盃を干すのであった。


 真夜中、何か胸騒ぎが収まらない為朝は鎮西二十烈士と又三郎を連れて城攻めを行っている諸将の陣を見回っていた。
 宗筑後親子を夜中に逃がしてはいかぬ、と警戒を強めるように命じた宗運の指示通り諸将は兵士の半分を休ませ、もう半分を警戒に当てるようにしていた。
 その警備態勢に満足しながら為朝は最後の親種の陣に行こうとしていた。
「又三郎、親種殿を奮起させろよ。これで親種殿が宗筑後入道の首をあげれば田尻家の家が広がるぞ」
「……は、父にそう伝えましょう」
 親常の言葉に又三郎は生真面目そうにそう返す。
 すると親常を茶化すように鎮昌が口を挟んでくる。
「又三郎、親常の言葉を真に受けないほうがいいぞ。そいつは武勇は達者だが口が下手だ。親常が家を約束したとて宗運殿が駄目だと言えば無理だからな」
「何を鎮昌! 俺と上兄者は実の兄弟ぞ! 弟である俺の言葉であれば上兄者とて聞いてくれるわ!」
「無理だ無理だ。親房殿ならばともかく親常では聞かぬだろう。第一、お主の言葉を宗運殿が受け入れてくれたことがあったのか?」
「……しばし待て! 今思い出す!!」
「それだけ悩む時点で駄目なのだよ」
 親常と鎮昌の軽快な会話に鎮西二十烈士から笑い声が出る。それに釣られるように又三郎からも笑みが零れる。
 それを見ながら為朝も笑いながら又三郎に話しかける
「だが、又三郎」
「は」
「親種には無理しないようにお前からも言っておいてくれ。親種にはこれから先も助けてもらわねばならぬ。それなのに筑後の小さな勝ち戦で失うには惜しい漢だ」
「!!」
 為朝の言葉に衝撃を受ける表情をする又三郎。だが、為朝はそんな又三郎に気付かずに鎮西二十烈士の面々と笑いながら会話をしている。
 そして覚悟を決めた顔で又三郎は顔をあげた。
「為と「為朝様!! あれを!!」
 又三郎の言葉をかき消すように親秀が指さす。
 そこには宗筑後入道の夜襲を受けて混乱している田尻親種の陣があった。
「続け!!」
 それを見た瞬間に為朝は馬を疾駆させる。それに続くように鎮西二十烈士の面々も続く。
 見回りのつもりだったために、いつもの鉄棒を為朝は持ってきていなかったが、腰に差していた刀を抜いて宗筑後入道の兵士達を斬る。
「為朝様!!」
「おお!! 親種!! 無事だったか!!」
 そこに徒歩で近づいてきたのは親種であった。
「面目ござらん。宗筑後めに夜襲を仕掛けられてこの体たらく……さらに宗筑後親子も逃がす失態まで」
「なに!?」
 親種の言葉に為朝の表情が変わる。宗筑後親子の首。これがこの戦の勝ちであった。
「親種!! 筑後入道親子はどっちに逃げた!!」
「は! あの街道を使って龍造寺の佐賀城に逃げ込むのかと!!」
「よし!! 俺は鎮西二十烈士を連れて追撃する!! 親種も残党を掃討したあと援軍に来い!! 宗運達に伝令を出すのも忘れるな!!」
「御意!!」
「よし!! 鎮西二十烈士!! 続け!!」
 そう叫ぶと為朝は馬を駆けさせる。その後には鎮西二十烈士と又三郎も続く。
 雲が月にかかっての追撃。
 半刻ほど駆けさせると逃げていく一団がみえた。
 それに向かって為朝は大きく叫ぶ。
「待て!! 宗筑後入道!! 鎮西八郎為朝ここにあり!! 返せ返せ!!」
 そう叫んだ直後に為朝は大きな違和感に気付く。それと同時に月にかかっていた雲が晴れて月明りが為朝達を照らす。
 そこには馬上にて完璧に迎撃の態勢を整えた法衣姿の宗筑後入道がいた。
 宗筑後入道は振り上げた軍配を為朝に向かって振り下ろす。
「為朝公の名を騙る痴れ者はあそこぞ!! 皆の衆!! 討ち取るは今ぞ!!」
 その叫びと同時に左右から兵が現れる。
「龍造寺隆信はここにあり!! 為朝、その首もらった!!」
「戸次道雪ここにあり!! 者ども!! 先代・義鑑様の仇をとるのは今ぞ!!」
「龍造寺だけじゃなく大友もだと!?」
 為朝を囲もうとする龍造寺隆信率いる龍造寺勢や大友勢を即座に鎮西二十烈士の面々が為朝を守るように囲む。
 だが、いかんせん数の差がある。奮闘する鎮西二十烈士をすり抜けて為朝のところにやってくる兵がいる。
 それらの兵を斬り捨てながら為朝は叫ぶ。
「えぇい!! 完璧に宗筑後入道に嵌められたわ!!」
 そして為朝に嫌な予感が走る。宗筑後入道のほうに目を向けると宗筑後守の弓が為朝に向けられている。
 そしてその瞬間には弓が放たれていた。
(避け!! いや、間に合わな!!)
 そう思った瞬間、為朝の兜に強い衝撃が走り、為朝の意識が暗闇に落ちるのであった。
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