異世界彼女と冒険者

スマイルグッド

文字の大きさ
11 / 20
第一章 旅立ち

第九話 村人の行方

しおりを挟む
 早朝、柔らかな太陽がぼくたちを迎えるかのように、東の地平線から顔を覗かせている。
 クリアに乗る。荷物はアイテムBOXを昨日追加で一つ買っているので、着替えやその他生活雑貨が入るほど余裕だ。
 剣を携えておく、いつでも魔物に対応できるように。
 リュックの中身は確認した。フィアが背負って、ぼくの後ろ、クリアに乗る。
 しっかりと落ちないようしがみついてもらい、ついでに感触も堪能する。
 や、柔らかい・・・。

 大きくなってきた。
 ぼくのあれがああなってるのは、朝だからだ、それ以外は断じてありえない。
 
 シンシアさんがぼくたちを見送りにきた。

 「では村の件、お願いしますね」
 「はい、なるべく多くの情報を手に入れれるよう善処します」

 そう返しておいた。危険になったら、もしくはそう感じた場合はすぐに逃げるけど。

 「それでは御武運を祈ります」
 「はい!」

 その言葉を皮切りにたずなをとってクリアを走らせた。

 二人の姿があっという間に小さくなる。
 二人にはもう声は届かない。それでも祈るほかなかった。

 「無事に帰ってきてくださいね?」

 シンシアは切にそう願った。


 ***
 
 
 草原を突っ走る。クリアは子供といっても戦闘力と足の速度が成体より低いだけで、大きさと足腰の強さは伊達に大移動してないだけ、強い。二人程度を乗せて走るなど、あさめしまえだった。
 草原は空が一番危ない、いや、言い方を変えよう。
 空から来る魔物が一番の脅威と言っていい。
 そこには、グリフィンを頂点とする弱肉強食のシステムが働いている。
 そんな中でも、空から襲い来る魔物は草原が最も多いと言われていて、他の地域より多いそうだ。
 つまり三百六十度周囲を見渡さねば、いつ奇襲がきてもおかしくないということだ。
 
 ただし、奇襲を回避する方法はいくつかある、そのうち最も安全で現実性のない作戦と呼ばれるのが、この『とりあえず速く走れ』である。
 名前の通りの作戦で、これは魔物を眷属化し、尚且つ速く走れる眷属でなければならないため、この作戦はあってないような作戦だった、今この時までは。
 なにが言いたいのかというと、それだけ捕まらないように速く走って走り続けるということで。
 ぼくは今次々と移り変わる視界を、見ていた。
 まるで景色が線になって伸びて行くような感覚、突き破る空気の壁。
 轟音が耳に鳴り響く、風を切って進む。
 これは、中々体験できるようなものではない、実に貴重な体験だ・・・。

 とはぼくは思わなかった。
 今の言葉はこう言い換えることができる。
 まるで景色が線のようにーなって周りが全然見えない。
 突き破る空気の壁ー痛い。
 轟音が耳に鳴り響くー目と口が乾燥してやばい。
 風を切って進むー周りの音はもうなにも聞こえない。
 フィアなんてもうぼくの背中から顔を覗かせる事すらしなくなった。
 最初はいい、こんな景色も珍しくて音も爽快だった。
 5分立つ。もうダメだ、目が開けてられない、乾燥してシブシブする。

 さらに5分。耳鳴りがしてきた。轟音でそれ以外なにも聞こえなくなる。
 
 ノンストップで走り続けなければいけないため、風圧で水を飲む事すらできない。

 これを貴重な体験?ナニカの拷問の間違いだろう。
 シェイプマッサージで小顔効果はありそうだが、ぼくなら別の方法を選ぶだろう。


 ぼくたちは、今風になっている。


 おお、神よ。この憐れな子羊を救い給え。
 切実にそう思う限りだった。


 ***


 草原を抜け、生い茂る木々が見えはじめる。
 リューシュラの森、鬱蒼と生い茂る陰葉樹林が、行く手を拒むかのように密集している。
 その密集してる中、人が通れそうなそんな小道がある。
 不気味な雰囲気にのまれそうになる。
 よし、い、行くか・・・。
 そう決心して、フィアを後ろに回し、クリアの背に乗って入っていく。フィアが乗ってると、いざとなったときに振り落としてしまう可能性があるからだ。それにわずかだが機動性というこちらの武器がそれによって失われるのは痛い。
 ぼくは剣を構える。
 
 奥に進んでいく。草原では魔物とは一切戦ってない、あの速さでは手を出せる魔物は限られて来るからだ。
 ただ、ここではそうはいかないだろう。なんせ、スピードが出せないのだ、フィアも今は乗せていないので、走ると置いていってしまうことになるし、ギリギリでついて来ても襲われた時にすぐ対応できなくなる。
 これ程まで生い茂っていると周囲全体が見えないため、いつ奇襲されてもおかしくない。しかもこちらからは景色と同化していて、見分けるのも難しい。
 
 慎重にいこう。

 ぼくたちは村までの道を進んでいく。耳を澄ませ、息を殺してぼくたちに近寄る存在をいち早く見つけるために。

 草を掻き分ける音がした、ナニカが茂みの向こうから、近寄ってくる。

 クリアを止め、フィアに防御の準備をしてもらう。
 
 茂みのナニカを待つ。背の高い草が押しのけられるように左右に割れていき、その姿を現す。
 大蛇だった、クエストに張られていた姿形大きさどれをとっても全くといっていい程同じだ。
 それが二匹いる。
 気付かない内に、一方の大蛇の頭上からもう一匹がぶら下がる感じで出てきた。

 いきなり二匹の大蛇を相手することとなってしまった。
 
 「いくよっ!!」
 「ん。」
 「キュアァア!」



神山 彩恣かみや さいし

 肉体ー筋力 167
   ー耐久性DEF 126

 精神力MP 100
  ー攻撃魔法 なし 
  ー補助魔法 なし
  ー精神魔法 なし

 名声 120
 
 モラル値 60
 
 称号 《下剋上》

 職業〔魔の騎乗者モンスターライダー


  フィア
 
 肉体ー筋力 50
   ー耐久性DEF 50

 精神力MP 290
  ー攻撃魔法 アイスランス
  ー補助魔法 フロストバリア
  ー精神魔法 ナースヒール

 名声 50
 
 モラル値 50
 
 称号 《選定者の共》

 職業〔魔術師ウィザード





***





 まずは先手を取りに行く。それがなにより戦局を有利にする事は今までの戦いで証明されている。
 クリアに乗り、早速ライダーの一つ目の《〈戦技〉》ドライブを使う。
 これは一直線と距離の制限はあるものの、高速で移動する機動型戦技だ。
 加速に必要な時間は要らず、目的の場所まで高速移動する。
 ただし、欠点がないわけじゃない、高速移動中はたとえどんな事があっても攻撃できないし、防御もできない。
 つまり相手が高速移動を認識できるほどの反射神経を持っていたり、そこに予め罠があったとしても対処できないという事だ。
 もしその時に、首とかに木の枝が当たってしまえばフィアの回復がなければ死んでしまうだろう。

 しかし強力なのは変わりない。
 使って見て相手の反応を見る。
 一気に加速した。視界が一瞬消えたかと思うと、そこはもう大蛇の真横だった。
 遅れて大蛇も反応する。
 だけど、もう遅い!
 大蛇の首目掛けて振り向きざまに一撃!
 その丸太のように太い首を切断した。

 よし!やった!どうやら向こうは反応できないみたいだ。これならすぐにでも勝てる!
 
 そう確信した瞬間だった。

 大蛇は口を大きく開け、ナニカをピュッと吐き出した。
 慌ててクリアに後ろへ跳び退けさせる。
 地面に謎の液体が落ちた瞬間、それは蒸気を発したかのように、ジュウウゥゥと、かかった草等を溶かしてしまった。

 酸性の毒か!あんなの喰らったらいくら回復があってもただじゃ済まないじゃないか!

 回復魔法といってもやはり魔術師の、それも初期の回復魔法では、部位欠損までは治せない。
 もしドライブする直前にでも、あれを吐き出されれば回避出来ずに溶けて最悪の場合頭や首に当たれば死んでしまうだろう。
 ぼくはドライブを使って早めに決着を付けるつもりだったが、些か甘い考えだったようだ。
 これは先制攻撃でしかリスクが高すぎる事がわかった。
 それだけでも収穫といえるが。
 襲い来る大蛇の体を鞭の様に使った攻撃を跳んで、走ってかい潜る。
 クリアから走りざまに飛び降りる。クリアの機動力はここでは生かせない。なら、戦技が使えなくなるとはいえ、戦いなれた剣のみでいくことにした。
 大蛇はしっぽの部分で横に、凪払うように振り回す。
 こうしてみるとやはりクリアに乗っている時よりも大きく見える。大蛇というのも納得の大きさだ。しかも大きさの割に反応も攻撃も速く鋭い。
 しかしそれでも速さならライガーアームの方が上だ。

 ぼくは剣をしっぽに向かって振り下ろす。筋力にものをいわせて力技でぶった切るのだ。
 最悪耐久性が前よりグンと上がったので、耐えれるはず
そう思っての行動だった。
 
 しかしその心配も杞憂に終わった。ぼくがその強力な攻撃を迎え撃つ様に放った斬撃は、大蛇のしっぽを切断する。
 大蛇は驚きのあまり、そのことに一瞬気付かなかったようだ。
 それはそうだろう、人がこいつらに敵うはずがない、普通なら。
 ある意味で当然の反応だろう。ぼくにライガーアーム戦の経験とこの貰った剣がなければなしえない事だったのだ。マジックアイテムだけあってこの剣は切れ味が鋭い。多分他の剣では衝撃に耐えきれなくて折れていることだったろう。

 一気に勝負を決めに行く。距離を詰め、大蛇へと肉薄する。
 大蛇は自爆覚悟か、酸性の毒を吐き出した。
 ぼくは焦らず横に跳んでかわした。大蛇はぼくを追い詰めるべく迫ってくる。
 しかし、もうこの戦いは勝ったも同然だ。ぼくは一人で戦っているのではない。
 ぼくたちはパーティーなんだから。

 「フィア!」

 一声。これだけで全てが伝わると信じて。そして当たり前のように、それは叶う。

 「アイスランス!」


 こうして大蛇二匹はぼくたちの経験値にかわっていった。収穫はいろいろあったが先ずはこれから。

 レベルアッップ!
 本日一回目の戦闘はまずまずの勝利だった。


 神山 彩恣かみや さいし

 肉体ー筋力 181
   ー耐久性DEF 140

 精神力MP 105
  ー攻撃魔法 なし 
  ー補助魔法 なし
  ー精神魔法 なし

 名声 120
 
 モラル値 60
 
 称号 《下剋上》

 職業〔魔の騎乗者モンスターライダー
 
 
 

  フィア
 
 肉体ー筋力 60
   ー耐久性DEF 60

 精神力MP 300
  ー攻撃魔法 アイスランス
  ー補助魔法 フロストバリア
  ー精神魔法 ナースヒール

 名声 50
 
 モラル値 50
 
 称号 《選定者の共》

 職業〔魔術師ウィザード
 


 ***



 ドロップを回収して奥へと進む。
 やけに周囲がシンと静まりかえっている。
 もう、近くに村があるはずなんだけど。
 やがて看板が見えた。フィアに読んでもらうと、この先道沿い1キロと書いてるらしい。

 もう村は目の前だ、急ぎ足で向かう。


 おかしい、なにもない。
 着いた、はずだ。
 しかし、そこにはなにもなかった。比喩等ではなく、本当になにもない。
 木も草も、あるはずの民家や施設も。
 鬱蒼とした森の中、そこだけに広がる小さな空き地。
 
 そこにあるはずのバルバク村は消えていた。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

処理中です...