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第一章
第三話
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早朝エンリチェッタは、体に若干の気怠さを残したまま、デウスの体の上で目を覚ました。寝惚けた頭で思い出されるのは、昨晩から明け方近くまでの淫らな宴。数々の痴態を晒した。
「~~っ!!」
一気に意識が覚醒する。
魔王にこっ恥ずかしい告白をしただけでなく、初めてのキスであんなにも乱れてしまった。
(それに、あの力・・・)
自らの背中を確認する。そこに昨晩の名残りは無い。いつも通りの、至って普通の背中だ。だが確かに、新たな力の事をエンリチェッタの体は憶えていた。
しかし、力の事を思い出そうとすると、強烈に淫らな記憶が甦る。
風呂場でのデウスとのキスによって流れ込んできた、熱い何かに意識を失った後。揺れるベットの上で目を覚ましたエンリチェッタを待ち受けていたのは、新たな力の発現と、激しく淫らにまぐわうデウスとエミリアの姿。
そして、新たな力に驚き歓喜する間も、二人の姿に嫉妬する間もなく、目を覚ました事に気付いたデウスに腕を引っ張られ、再び唇を塞がれた。後はもう流されるがまま。
いや、最初こそなされるがままだったが、最後の方はもう自分から求めていた。デウスの愛撫によって与えられる快感にその身を震わせ、初めて見る男の剛直に興奮し、触れ、握り、咥えた。
(あのような姿、万が一にも生徒や知己に見られようモノなら・・・・・死にたくなるじゃろう)
だが、悪い気はしなかった。
この世に生を受けて100年以上。長きに渡り夢想してきた、恋を、愛を、経験する事が出来たのだ。例え魔王であろうと、デウスとならどこまでも歩んで行けそうな気がする。
最早エンリチェッタの胸には、相手が魔王であり自分が勇者である事などの躊躇いや、葛藤などは残っていなかった。
「・・ん・・・・」
その魔王はと言うと。豊満とは言い難いもののエンリチェッタよりは確実にある、エミリアの柔らかな膨らみに顔を埋め、気持ち良さそうに眠っていた。
若干イラッとしたが、昨晩のデウスの姿が思い出される。デウスは昨晩、お世辞でも決して豊かとは言えないエンリチェッタの胸に進んで吸い付き、そして愛でた。その事実があるだけで、エンリチェッタには十分だった。何せ、自分のちんちくりんな体でもしっかりと愛して貰えるという、確固たる証拠に他ならないのだから。
「ふふふ・・・」
知らず、笑みが零れる。
学院で出会った時は、殺される事も凌辱される事も覚悟していた。それが蓋を開けてみれば、このような結果になってしまった。あの時魔王の手を取った過去の自分を、エンリチェッタは褒めたくなった。
エンリチェッタは、再度眠るデウスに視線を送る。
(≪色欲≫の魔王とは思えんの・・・)
こうして改めて寝顔を見てみると、魔族として、魔王としての禍々しさも感じられない。どこにでも・・・・はいないかもしれないが、ただの色男にしか見えない。
と、デウスの瞳が開かれる。
「どうした、エンリチェッタ。笑ったり、余の顔を眺めたり。随分と楽しそうではないか」
「っ!!なんじゃ、起きておったのか!?」
いつの間にか起きていたデウスに、心底驚くエンリチェッタ。
「隣でゴソゴソされればな・・・。それより、体の調子はどうだ?不具合などは無いか?」
(っ!)
寝起きらしく、モゾモゾ言いながら上半身を起こすデウス。その際、隣で眠るエミリアの布団を掛け直す姿に、デウスの優しさを感じる。又、晒されたデウスの裸体に、エンリチェッタは見惚れた。程好く筋肉が付き引き締まったその体を、昨晩は十分に目にしたはず。
しかし、未だ処女のエンリチェッタには、まだまだ刺激が強かった。
「ち、調子なら、すこぶる良いが?む、寧ろ体が軽く感じられるぐらいじゃ。不具合とやらも無さそうじゃ」
デウスの裸体から視線を逸らす様に、己の体に目配るエンリチェッタ。当然あるのは、不具合などでは無く起伏に乏しい貧相な体。直前にエミリアの体を見ている事もあり、気分が落ち込む。
「はぁ~・・・」
今度は溜息が零れる。
「くくく、そう気にするな。昨晩も説明したであろう?」
天使との契約として力を望み、代わりに時間を奪われ、そして与えられたエンリチェッタの体は、老いる事が無い。しかし、如何なる術を以ってか、聖剣の力を半強制的に引き出された。それはつまり、不完全ながら天使との契約が履行された事を意味する。
緩やかな時間の返還が始まるのだ。
聖剣の力を引き出され、新たな力に目覚めたエンリチェッタの体は、緩やかに、されど確実に、今日より再び成長を始める。
何故、過去の時間をも奪われたのか。未来の時間、つまり、成長を止めるだけでも事足りたはずだ。要は、聖剣の力を完全に引き出す為の鍛練が、そう、時間が必要だったのだから。にも拘らず、エンリチェッタは過去の時間をも奪われ、童女に戻された。
その理由を知るのは、契約した天使のみ。
昨晩、互いにはしたなく求め合いながら、そんな話をしたのだった。因みに、『成長した妾は、ボンッ、キュッ、ボンッ、のナイスバディじゃ』とはエンリチェッタの言である。微妙に目が泳いでいた事も追記しておく。
「まだ実感が無いからの」
「それもそうか。くくくっ、ナイスバディを楽しみにしておるぞ」
(こやつ、見栄だと分かっていながら・・・っ!)
ニヤケ面のデウスを、殴りつけたくなったエンリチェッタ。しかし、防がれる事は目に見えているので、グッと耐え代わりに言葉を紡ぐ。
「・・・・成長しなければ、抱いてくれぬのじゃろう?」
「ん?それは違うぞ、エンリチェッタ。時期が来れば、今のちんちくりんな体のままでもしっかりと抱くとも。そなたの体に余がどれほど欲情し興奮したかは、身を持って経験したであろう?」
そう言うデウスと目が合い――それとも昨晩の事を思い出したか、はたまたその両方か――頬を染めるエンリチェッタ。
「~~っ!」
「目下の予定では、そなたの復讐が終わった後。しっかりと愛し、抱いてやる。理由は色々とあるが・・・・、その時分かるであろうよ」
その言葉に、エンリチェッタは嬉しさを隠しきれない。理由が気になる所ではあるが、今は嬉しさの方が勝っていた。そして、それはエンリチェッタの体の一部にも出ていた。
(おお・・・!)
「そう言えば昨晩は、そなたの体に夢中になるあまり、頭のソレの事を忘れておったわ」
そう言うデウスの視線が向けられるのは、エンリチェッタの頭頂。そこでは二本の飛び出た髪の毛が、まるで犬の尻尾のように激しく揺れていた。
「くくく、面白い毛よの。撫で付けても寝ぬばかりか、感情を表すかのように動きおる。今は・・・嬉しがっているように見えるな」
「っ!!」
エンリチェッタは慌てたように、両手でその二本の毛を押さえ付ける。
今までも似たような指摘を受ける事はあったし、昔はそれなりに気にしてもいた。しかしこの長い生の中で、『そういうモノ』と割り切り、受け入れた今となっては、気にしなくても良いものと受け止め、実際気にする事を止めていた。・・・・はずだった。
しかし、デウスにこうして指摘されるのは何か違う。他人だったら気にも止めないはずの、その毛に注目され感情を言い当てられるという行為が、物凄く恥ずかしい。
「ふむ・・・・・。名前でも付けるか。余としては、愛着も出始めておるしな」
名前を考えているのか、ブツブツと呟きだすデウス。
(なんじゃ・・・、この異様な気恥ずかしさは・・・!?)
昨晩の事とはまた違う、妙な羞恥を覚え悶えるエンリチェッタ。
そんな二人の空間に、エミリアの声が響いた。
「・・・・アホ毛で宜しいのでは?」
アホ毛とは、頭の表面から飛び出る毛の事である。寝癖やくせ毛として見る事も出来るが、それらは『あほ毛』である。ここで言う『アホ毛』はくせ毛の類では無く、エンリチェッタの二本の毛のように感情を表すかのような毛の事を指す。
エミリアはこの『アホ毛』の事を、同僚から聞いていたのだった。
「やっと起きたのか、この寝坊助め」
「昨夜の陛下が、存外激しかったせいです。もう少し加減してください」
悪びれずに言うエミリアに、デウスは苦笑しエンリチェッタは頬を染め俯いた。
「くくくっ、ではいつも通りでは無いか。・・・・して、アホ毛とは何だ?」
「異世界の勇者が語っておりました。何でも、くせ毛とかとは違う、感情を表す事のある毛だとか何とか。サブ何とか?がどうとか、うんたらかんたら」
かなり大雑把な説明だった。エミリアにとって、その時聞いた話は文字通り、話半分だったようだ。
「ほう・・・、流石アカネだな。やはり、妙な事を色々と知っておる」
二人の会話に、エンリチェッタが弾かれたように顔を上げ、口を挟んだ。
「ちょ、ちょっと待て!待つのじゃ!異世界の勇者とは何じゃ!?アカネじゃと!?妾は知らんぞ!?」
エンリチェッタの知らない勇者の存在、それは、あってはならない存在だった。
勇者学院の学院長を務めるエンリチェッタは、役職柄全ての勇者を知る立場にある。それは、学院が勇者養育機関である事以上に、勇者が学院でしか生まれない事に理由はあった。
ここで、勇者と天使、そして聖剣の関係を少し掘り下げてみよう。
何度も言うように、勇者の聖剣は天使によって与えられる。これは天使が人間界や魔界に現界するのには、色々と条件が必要な為である。
人の住む人間界、魔族の住む魔界、天使の住む天界。それぞれの領域への行き来は、本来容易では無い。人間界と魔界は陸続きだが、天界は異なる位相に存在する。その為、人間界や魔界に顕現するのが難しいのである。
天使は魔族を滅ぼしたい。その理由を語るには、長い歴史を振り返り一から語る必要があるので、今は省こう。天使は魔族を滅ぼしたいが、直接手を下すのは難しい。だから、魔界と陸続きで度々小競り合いをしていた人間界の者達に、力を与える事にした。『聖剣』という力を。
聖剣に選ばれた者は力を得る。魔族を打ち倒す為の力を。そして、人間界から魔界へ赴いた時に掛かる制限を、取っ払う力を。天使達は人間を十分に精査し、心正しき者に聖剣を与えたのだ。
さて、ではどうやって天使は人間に力を与えたのか。その疑問の答えは、勇者学院にあった。
勇者を生み出し、勇者を育てる学院には、一本の大きな樹があった。それは普段、天使達による高度な結界に守られ空間の狭間に存在する為、その姿を見る事は叶わない。しかし、そんな樹が姿を現す瞬間がある。それが勇者誕生の瞬間。
『聖樹』。そう呼ばれる学院の樹は、勇者を選定し聖剣を与える。天使達が人間に力を与える為の仲介役として、空間の狭間に設置した樹だった。そしてこの聖樹は、学院長エンリチェッタ・スコラーリによって管理されていた。
これが、エンリチェッタが全ての勇者の存在を知る理由で、『異世界の勇者』という存在に驚いた理由である。
「アカネに関しては、いずれ知る事もあろう。今はその存在だけを知っておればいい。無論、他言は無用だぞ?」
「む、むぅ~・・・」
難しい顔で唸るエンリチェッタ、その顔には僅かに不満が見て取れる。頭頂では二本のアホ毛がうねうねしていた。そして、そっぽを向くように明後日の方向に倒れる、愉快なアホ毛だった。
「くくく、なんだ。拗ねてるのか?本当に愛らしい奴よの、そなたは」
「何がじゃんむぅ!?・・・ん・・・・ちゅ・・やめ・・・・れぁ・・・・」
エンリチェッタの反論を封じるように、デウスは彼女を抱き寄せ唇を重ねた。侵入して来る舌に初めは抵抗したエンリチェッタだったが、与えられる快感と幸福感に酔い、次第に受け入れ自ら求め出す。
「失礼します」
エミリアはエミリアで、デウスのそそり立つ剛直に口付ける。
朝の淫らな宴が始まった。『英雄の止まり木』の一室に、嬌声が響き渡る。
世界で最も安全だと言われる、ブレイブ王国王都。
50人近いの勇者が常駐する王都では、悪の類が蔓延る事は限りなく無い。スラムこそあるものの、犯罪者集団が根城にするという事も無く、殺人や婦女暴行などの重犯罪も限り無くゼロに近い。あるのは酔っ払いの暴行や喧嘩など、ある意味平和だからこそ起こる諍いばかりだった。
その安全性故、王都には多くの人が溢れ穏やかな生活を享受している。それが、世界で最も安全な都市、ブレイブ王国王都・アレクサンドレアであった。
その王都が、何時になく恐怖と混乱に染まっていた。
人々は一様に恐怖の表情で彼らを見ていた。そんな人々を守るように立つ兵士達も、また同様に。決して近付かず刺激せず、されど一挙手一投足に警戒し見逃さない。
先頭歩くエンリチェッタは、そこそこ名が知れている。勇者学院の学院長だ。知名度は高い。その役職故に、一般人でさえも敬意を示す。そんな彼女が魔族を連れている。明らかに魔族と分かる女に、禍々しき闇を纏う男。どちらも美しく、妖しさが溢れている。混乱を招くには、十分な状況だ。
中には二人の顔を知る者もいる。屋台の店主だったり、食事処の従業員達だ。自分達が提供していた自慢の料理を、笑顔で美味しそうに食べてくれていた者が魔族だったと知り、驚きを隠せない。
そんな彼らを気にも止めず、デウスとエミリアは割れる人垣を進んでいた。
「・・・お主ら、本当にこのまま城に行くのじゃな?」
「無論。二日も待ってやったのだ。これ以上は、流石の余も待てん」
「ですね。いい気になって貰っても困ります。だから、さっさと案内なさいエンリチェッタ」
似た様なやり取りを、宿を出る前から繰り返している。
一通り行為が終わり満足したデウスは、数え切れない程の絶頂を味わい意識を失ったエミリアとエンリチェッタの体と共に自分の体を綺麗にし、二人が目覚めた所で身支度を始めた。
意識を失っている間に、デウスによって体の隅々を洗われたという事に、羞恥を隠しきれないエンリチェッタだったが、はっきりと文句を言う間もなく二人に急かされ、城に向かうという言葉に驚かされ引っ張られるように宿を後にした。
「だったらせめて、その気配を収めてはくれぬか?皆が怯えておる」
昨日一昨日と、下手な騒ぎを起こさないように変化の魔法を使っていた二人だったが、今はそれを止め、明らかに魔族と分かる風体で歩いていた。エンリチェッタはずっと近くにいた上、デウスを受け入れた事もあり多少慣れ始めていたが、王都の民はそうでは無い。恐怖が伝播しつつある。
パニックになっていないのは、二人に暴れる様子が無いのと、エンリチェッタがいるからだった。だが、それも何かキッカケがあれば、一気に決壊するだろう。エンリチェッタとしては、それは避けたかった。
(もし、パニックになった者が二人を攻撃でもすれば・・・・)
エミリアは確実にキレる。たった数日だが分かる、彼女のデウスに対する忠誠心は本物だ。主が狙われて、報復しないはずがない。デウスの方は、もしかすると何とも思わないかもしれないが、それも絶対では無い。もしもの時は自分が何とかしなければならない。
エンリチェッタは、デウスと通じる事になってしまったが、勇者としての責任・矜持を忘れた訳では無い。必要とあらば、デウスを止めるべく戦う事も覚悟していた。
「悪いがそれは出来ぬ。今から城に向かうのは、魔王とその配下。昨日までの観光客では無い」
「それはそうかも知れぬが・・・」
納得はしていない。していないが、エンリチェッタの表情は既に諦観に染まっていた。
「陛下。こちらに人が向かってきます。メイド・・・でしょうか?」
「ふむ?・・・ほう、メイドのようだな」
エミリアの言葉に視線を凝らしたデウスは、姿勢の整ったメイドが美しい所作で歩いて来ているのを目にし、感嘆の声を上げた。
「あれは確か、女王陛下のメイドのはずじゃ」
「ふむ、という事は迎えか」
「でしょうね」
デウス達の予想通りそのメイドは彼らの前まで来ると、これまた綺麗な所作で一礼し、こう口にした。
「お初にお目に掛かります。私はアンナ、オリアナレイナ陛下のメイドを務めさせて頂いております。此の度、城への案内を仰せつかりました」
(ふむ・・・・大きいな)
デウスは、目の前のメイドをつぶさに観察した。
まず目を惹くのは、その胸。Fカップはあろうかというその胸は、男ならだれでも凝視してしまう程の存在感を放っている。デウスも顔を埋めたいとか、そんな事を考えていた。
髪は暗めの茶髪で、後頭部でフワッとした団子状に纏め、細い三つ編みを編み込んでいる。顔には一切の表情も浮かんでおらず、不愛想そのもの。しかし、造形が整っている為、見る者を惹き付ける美しさがある。メイド服のため分かりにくいが、手足もスラッとしていて、その大きい胸が下品に見える事も決して無く、抜群のプロポーションを誇る。
そして、デウスはやはり胸を見ていた。その事に気付いた、エミリアとエンリチェッタのジト目には幸か不幸か気付いていない。
「ふむ。余の方から赴くつもりであったが、このタイミングで迎えを寄越すとは。こちらの行動を見越してか、それとも偶然か・・・・。まあ、良い。アンナだったか?案内を頼む」
どちらであっても、デウスには割と関係無かった、これから会って、見極めれば良いだけの話だったから。
「はい。では、こちらです」
案内として、エンリチェッタに代わり先頭を歩くアンナに、デウス達が続く。エミリアはデウスの配下として静かに、エンリチェッタはこれから起こる事に若干の不安を覚えながら。
そして、デウスはこんな事を思っていた。
(このアンナというメイド、素晴らしいな。見た目や身体つきもだが、最も感心すべきはその胆力。余達を前に、怯え、恐れといった感情を一切抱いていなかった。勇者でも無く、戦闘力も最低限。くくくっ、素晴らしい!そして、面白い人間だ!)
そんな彼らを、群衆はやはり、ただ見ている事しか出来なかった。
さて、城に案内されたデウス達だったが、当然すぐに会談という訳にはいかない。向こうにも相応の準備はあるし、こちらにもある。それは≪色欲≫の魔王とて同様。デウスも、他の魔王との会談をする時は、同じような対応をする。
再度会見・会談内容を確認したり、気持ちを落ち着かせたり、打ち合わせたり、策略を練ったり。やる事は案外と多い。現に、デウスはアンナの淹れた黒い飲み物を飲み、まったりとしていた。
「うむうむ。良い香りだ。そして、味も。特に、この苦味が良い。最初見せられた時は、泥水かと思うたがいやはや、人間界というのは美味い物が多いな」
デウスが絶賛しながら飲んでいるのは、珈琲。ブレイブ王国の南側に隣接する、太陽の国の特産品だ。
エミリアも同じものを飲んでいる。こちらは砂糖入り。エンリチェッタも砂糖を入れているのだが、一口飲む毎に角砂糖が一つ足されている。味覚も子供らしい。
そうやってデウス達がまったりとした時間を過ごしていると、ノックと共に恐る恐るという風にメイドが入って来る。
「じゅじゅじゅ、じゅんぶ¥び¥3fs8s&!!?」きゅ~~
「「「・・・・・」」」
そのメイドは、何やら呪文を唱えたと思ったら気絶した。妙な空気が流れる。
「・・・デウスよ、やはり少し抑えてはくれぬか?」
「・・・それが良いようだ」
デウスの纏う闇が、やや薄くなる。
「準備が整ったようです。皆さま、どうぞこちらに。玉座の間へ案内させて頂きます」
気絶したメイドを適当に寝かせ、アンナの案内に続く。
(やはり、このメイドは素晴らしい)
外に居た時は遠巻きだったから、群衆は恐怖を覚えどパニックは起こさなかったのだろう。しかし、このメイドは間近でデウスとエミリアに相対してしまった。勇者でなければ、当然の結果だろう。アンナの異様さが際立つ。
時折すれ違うメイドが、恐怖に怯え気絶したり、膝を付いたりするのを尻目に、廊下を進む。やがて、真っ白で巨大な扉の前に出る。
「ここが、玉座の間です。オリアナレイナ陛下を初めとする、皆様方がお待ちです」
(余の方が待ってやったのだがな・・・)
「ふむ。人の気配がちと多いな。勇者の気配も・・・50人近いか?」
「それくらいはありそうですね。先日、我等を一目見に来た者の目が良かったという事でしょう。恐らく王都中の勇者が集まっています」
王都を訪れた初日。エンリチェッタが城に、謁見の打診をした後の事。デウス達を観察する視線が、一瞬だけ存在した。気にも止めなかったデウス達だったが、今思えば威力偵察みたいなものだったのだろう。
「くくく、では参ろうぞ」
アンナの手によって扉が開かれる。デウス達は堂々と、玉座の間に足を踏み入れた。デウス達の姿を視認した者達から、溜息が零れる。彼らの美しさに呑まれているのだろう。
玉座の間を進むデウスは、ザッと周りの状況を確認する。
(一見勇者で占められた間だが、所々違うのも混ざっているな。服からして、貴族か?まあ、こちらは良いか。あの勇者は、この間遠見で見たな。≪憤怒≫を討った勇者だ。こうも早く相見えるとは。それに、アレが女王・・・・ほうっ!)
玉座に座る女王を見たデウスから、気色が溢れ出る。それは闇となり、色気となり、周囲を汚染する。
「「「「「っ!!?」」」」」
ある者は腰を抜かし、ある者は気絶し、ある勇者は戦闘態勢になり、ある勇者は戦意を喪失する。そこから小さなパニックが広がり、爆発しそうになるその瞬間。
「落ち着いて下さい」
凛とした声が響いた。それだけで、一瞬にして混乱は無くなった。
(くくくっ、良いな!良いぞ!)
「失礼した、勇者の女王よ。思いの外喜ばしい事があったのでな」
「構いません、≪色欲≫の魔王」
「「「「「なっ!?」」」」」
女王の口から出た、魔族の正体にざわめく。聞かされていなかったのだろう。50人の勇者や貴族だけでなく、女王の傍に立つ側近らしき者達も驚いている。
「・・・・」
黄金の聖剣を抜いた女王が、ドンッと剣を床に突き立て、今度は口では無くその姿で、ざわめきを静める。
「ふむ・・・。まだ、余の正体は明かしていない筈だったのだがな」
「エルダの報告で、貴方が魔王である事はほぼ分かっていました。そして、先程の貴方から溢れたモノ。話に聞く、≪色欲≫に相当します」
「話に聞く、か・・・くくくっ、そうかそうか」
楽しそうなデウスを、エミリアは微笑ましそうに眺め、それまでビクビクしていたエンリチェッタは、キョトンとして見ている。
「お初にお目に掛かる、勇者の女王。余は大罪が一柱、≪色欲≫の魔王。名はデウスである」
「初めまして、≪色欲≫の魔王。私はブレイブ王国女王。オリアナレイナ・ミカエル(・・・・)・ブレイブです」
「は・・・?くはっ、くくくっ、くはははははははっ!そうかそうか!もう名まで貰っていたか!」
「やはり、貴方は知っているのですね。最も古き魔王よ」
女王と魔王の間で交わされる会話に、周りの者は付いて行けない。平然としているのはエミリアと、そしてアンナのみであった。
「くくく・・・、いや失礼。ふぅ~、さて。この場は対談には向かんな。どれ」
デウスの体から闇が溢れ、彼の前に集まり球体を形成する。勇者達が警戒し武器を構え敵意を顕わにするが、デウスは歯牙にも掛けない。その闇は暫くすると霧散し、デウスの中へ戻る。球体があった場所には、禍々しくも高級そうな、黒い机と椅子が現れていた。
「そう、警戒するな。ただの机と椅子だ。掛けると良い、オリアナレイナ。名を貰っているなら、余はそなたを同格として扱おう」
「・・・貴方は、私の知らない事まで知っているようですね。良いでしょう。相席させて頂きます」
オリアナレイナは、デウスの言葉に暫し思案していたが、そう言うと突き立てていた聖剣を鞘に戻し、玉座を下り机の方へ歩み出す。
「ちょ、陛下!?」
側近の一人、辞書のように分厚い聖剣を脇に抱えた勇者、ソフィア・ベイリーがオリアナレイナの行動に戸惑いの声を上げる。
「陛下!?危険です!」
(もし、罠だったら・・・・!)
もう一人の側近、幅の太い剣を携えた勇者、エルダがオリアナレイナを止めようとする。
「大丈夫ですよ」
しかし、オリアナレイナはそれらの声には耳を傾けず、机の方へ足を進める。
「お待ちください!!」
オリアナレイナが机の下に辿り着いた時、一人の男が進み出てきた。身形からするに貴族のようだ。
「・・・何でしょうか、ルーズ卿」
ルーズ卿、そう呼ばれた男はオリアナレイナの傍に跪き、声高に言う。
「陛下。その椅子には座ってはなりません。貴方様はこの国、勇者の国の王なのです。他国の王ならいざ知らず、魔族如きを対等に扱うのはお止めください」
その言葉に、空気が固まる。エミリアなどあからさまに怒気を発している。
それに気付いているのかいないのか、ルーズは尚も言葉を重ねる。
「そもそも、この魔族共が魔王とその配下である証拠も御座いません」
「「「っ!!」」」
馬鹿がいる。この場にいる殆どの人間がそう思った。この玉座の間に入ってきた時の、デウスの行動と勇者たちの反応を見ていなかったらしい。真性の馬鹿がいた。
「撤回してください、ルーズ卿。失礼ですよ。≪色欲≫の魔王にも、そしてエルダにも。彼の者は自ら≪色欲≫の魔王と名乗り、≪憤怒≫を討ったエルダが≪憤怒≫以上と警鐘を鳴らしたのです。彼の者の言葉は兎も角、勇者エルダを信じられませんか?」
「その事なのですが、陛下。勇者エルダは本当に≪憤怒≫の魔王を討ったのですか?」
「何ですって?」
「貴様!!?」
オリアナレイナの眉尻が上がり、エルダがその侮辱に声を荒げる。ルーズは気付かない。周りの人間が敵意のある眼差しで見ている事に。更に、自分に酔ったように言葉を続ける。
「≪憤怒≫を討ったのなら、何故その死体を持ち帰っていないのでしょうか?全てとは言わずとも、首ぐらいなら持ち帰れたのでは?それに、魔王討伐に向かったのは、勇者エルダだけでは無かった筈。他の方の遺品などを、どうして持ち帰らなかったのですか?」
「っ!!」
そのあまりに屈辱的な物言いに、エルダは唇を噛む。その姿に気を良くした、ルーズの口あ止まらない。
「ルーズ卿、お止めなさい」
「止めませんとも、陛下。私が愚考しますに、勇者エルダは敗走したのでは?だから、魔王の首を持ち帰れなかった。だから、仲間の遺品を持ち帰れなかった。勇者エルダ。貴方は魔王に、若しくは魔族に無様に負け、逃げ・・・・・え?」
跪いていたルーズの体が、不自然にぐらつく。バランスを取る事も出来ず、顔面から床に打ち付けられる。
「はんだ?ひょい!はんらこれは!?」
鼻を思いっきり打ち付けたルーズが、変な声で叫ぶ。その体が黒い靄に包まれ、磔の如く持ち上げられていく。そして、その足は膝から下が無かった。夥しい量の血が床に落ちる。
「おおお、お、おで、のあしあぁぁぁ!!?」
「喧しい。愚物が」
「あひぇ!?・・・・・!・・・・!」
自らの状態に気付き、喚くルーズの下顎が飛ぶ。話す事も叫ぶ事も出来ず、見動きも取れないルーズは、磔の状態で血塗れになる。
「先程から聞いておれば、貴様それでも勇者の国の人間か?いや、違うのであろうな。でなければ、あのような事を口にする筈がない。誇って良いぞ、愚物。貴様は、寛大で寛容な余を怒らせたのだから」
掌をルーズに向け、その身から闇を溢れさせるデウスがそこにいた。
「~~っ!!」
一気に意識が覚醒する。
魔王にこっ恥ずかしい告白をしただけでなく、初めてのキスであんなにも乱れてしまった。
(それに、あの力・・・)
自らの背中を確認する。そこに昨晩の名残りは無い。いつも通りの、至って普通の背中だ。だが確かに、新たな力の事をエンリチェッタの体は憶えていた。
しかし、力の事を思い出そうとすると、強烈に淫らな記憶が甦る。
風呂場でのデウスとのキスによって流れ込んできた、熱い何かに意識を失った後。揺れるベットの上で目を覚ましたエンリチェッタを待ち受けていたのは、新たな力の発現と、激しく淫らにまぐわうデウスとエミリアの姿。
そして、新たな力に驚き歓喜する間も、二人の姿に嫉妬する間もなく、目を覚ました事に気付いたデウスに腕を引っ張られ、再び唇を塞がれた。後はもう流されるがまま。
いや、最初こそなされるがままだったが、最後の方はもう自分から求めていた。デウスの愛撫によって与えられる快感にその身を震わせ、初めて見る男の剛直に興奮し、触れ、握り、咥えた。
(あのような姿、万が一にも生徒や知己に見られようモノなら・・・・・死にたくなるじゃろう)
だが、悪い気はしなかった。
この世に生を受けて100年以上。長きに渡り夢想してきた、恋を、愛を、経験する事が出来たのだ。例え魔王であろうと、デウスとならどこまでも歩んで行けそうな気がする。
最早エンリチェッタの胸には、相手が魔王であり自分が勇者である事などの躊躇いや、葛藤などは残っていなかった。
「・・ん・・・・」
その魔王はと言うと。豊満とは言い難いもののエンリチェッタよりは確実にある、エミリアの柔らかな膨らみに顔を埋め、気持ち良さそうに眠っていた。
若干イラッとしたが、昨晩のデウスの姿が思い出される。デウスは昨晩、お世辞でも決して豊かとは言えないエンリチェッタの胸に進んで吸い付き、そして愛でた。その事実があるだけで、エンリチェッタには十分だった。何せ、自分のちんちくりんな体でもしっかりと愛して貰えるという、確固たる証拠に他ならないのだから。
「ふふふ・・・」
知らず、笑みが零れる。
学院で出会った時は、殺される事も凌辱される事も覚悟していた。それが蓋を開けてみれば、このような結果になってしまった。あの時魔王の手を取った過去の自分を、エンリチェッタは褒めたくなった。
エンリチェッタは、再度眠るデウスに視線を送る。
(≪色欲≫の魔王とは思えんの・・・)
こうして改めて寝顔を見てみると、魔族として、魔王としての禍々しさも感じられない。どこにでも・・・・はいないかもしれないが、ただの色男にしか見えない。
と、デウスの瞳が開かれる。
「どうした、エンリチェッタ。笑ったり、余の顔を眺めたり。随分と楽しそうではないか」
「っ!!なんじゃ、起きておったのか!?」
いつの間にか起きていたデウスに、心底驚くエンリチェッタ。
「隣でゴソゴソされればな・・・。それより、体の調子はどうだ?不具合などは無いか?」
(っ!)
寝起きらしく、モゾモゾ言いながら上半身を起こすデウス。その際、隣で眠るエミリアの布団を掛け直す姿に、デウスの優しさを感じる。又、晒されたデウスの裸体に、エンリチェッタは見惚れた。程好く筋肉が付き引き締まったその体を、昨晩は十分に目にしたはず。
しかし、未だ処女のエンリチェッタには、まだまだ刺激が強かった。
「ち、調子なら、すこぶる良いが?む、寧ろ体が軽く感じられるぐらいじゃ。不具合とやらも無さそうじゃ」
デウスの裸体から視線を逸らす様に、己の体に目配るエンリチェッタ。当然あるのは、不具合などでは無く起伏に乏しい貧相な体。直前にエミリアの体を見ている事もあり、気分が落ち込む。
「はぁ~・・・」
今度は溜息が零れる。
「くくく、そう気にするな。昨晩も説明したであろう?」
天使との契約として力を望み、代わりに時間を奪われ、そして与えられたエンリチェッタの体は、老いる事が無い。しかし、如何なる術を以ってか、聖剣の力を半強制的に引き出された。それはつまり、不完全ながら天使との契約が履行された事を意味する。
緩やかな時間の返還が始まるのだ。
聖剣の力を引き出され、新たな力に目覚めたエンリチェッタの体は、緩やかに、されど確実に、今日より再び成長を始める。
何故、過去の時間をも奪われたのか。未来の時間、つまり、成長を止めるだけでも事足りたはずだ。要は、聖剣の力を完全に引き出す為の鍛練が、そう、時間が必要だったのだから。にも拘らず、エンリチェッタは過去の時間をも奪われ、童女に戻された。
その理由を知るのは、契約した天使のみ。
昨晩、互いにはしたなく求め合いながら、そんな話をしたのだった。因みに、『成長した妾は、ボンッ、キュッ、ボンッ、のナイスバディじゃ』とはエンリチェッタの言である。微妙に目が泳いでいた事も追記しておく。
「まだ実感が無いからの」
「それもそうか。くくくっ、ナイスバディを楽しみにしておるぞ」
(こやつ、見栄だと分かっていながら・・・っ!)
ニヤケ面のデウスを、殴りつけたくなったエンリチェッタ。しかし、防がれる事は目に見えているので、グッと耐え代わりに言葉を紡ぐ。
「・・・・成長しなければ、抱いてくれぬのじゃろう?」
「ん?それは違うぞ、エンリチェッタ。時期が来れば、今のちんちくりんな体のままでもしっかりと抱くとも。そなたの体に余がどれほど欲情し興奮したかは、身を持って経験したであろう?」
そう言うデウスと目が合い――それとも昨晩の事を思い出したか、はたまたその両方か――頬を染めるエンリチェッタ。
「~~っ!」
「目下の予定では、そなたの復讐が終わった後。しっかりと愛し、抱いてやる。理由は色々とあるが・・・・、その時分かるであろうよ」
その言葉に、エンリチェッタは嬉しさを隠しきれない。理由が気になる所ではあるが、今は嬉しさの方が勝っていた。そして、それはエンリチェッタの体の一部にも出ていた。
(おお・・・!)
「そう言えば昨晩は、そなたの体に夢中になるあまり、頭のソレの事を忘れておったわ」
そう言うデウスの視線が向けられるのは、エンリチェッタの頭頂。そこでは二本の飛び出た髪の毛が、まるで犬の尻尾のように激しく揺れていた。
「くくく、面白い毛よの。撫で付けても寝ぬばかりか、感情を表すかのように動きおる。今は・・・嬉しがっているように見えるな」
「っ!!」
エンリチェッタは慌てたように、両手でその二本の毛を押さえ付ける。
今までも似たような指摘を受ける事はあったし、昔はそれなりに気にしてもいた。しかしこの長い生の中で、『そういうモノ』と割り切り、受け入れた今となっては、気にしなくても良いものと受け止め、実際気にする事を止めていた。・・・・はずだった。
しかし、デウスにこうして指摘されるのは何か違う。他人だったら気にも止めないはずの、その毛に注目され感情を言い当てられるという行為が、物凄く恥ずかしい。
「ふむ・・・・・。名前でも付けるか。余としては、愛着も出始めておるしな」
名前を考えているのか、ブツブツと呟きだすデウス。
(なんじゃ・・・、この異様な気恥ずかしさは・・・!?)
昨晩の事とはまた違う、妙な羞恥を覚え悶えるエンリチェッタ。
そんな二人の空間に、エミリアの声が響いた。
「・・・・アホ毛で宜しいのでは?」
アホ毛とは、頭の表面から飛び出る毛の事である。寝癖やくせ毛として見る事も出来るが、それらは『あほ毛』である。ここで言う『アホ毛』はくせ毛の類では無く、エンリチェッタの二本の毛のように感情を表すかのような毛の事を指す。
エミリアはこの『アホ毛』の事を、同僚から聞いていたのだった。
「やっと起きたのか、この寝坊助め」
「昨夜の陛下が、存外激しかったせいです。もう少し加減してください」
悪びれずに言うエミリアに、デウスは苦笑しエンリチェッタは頬を染め俯いた。
「くくくっ、ではいつも通りでは無いか。・・・・して、アホ毛とは何だ?」
「異世界の勇者が語っておりました。何でも、くせ毛とかとは違う、感情を表す事のある毛だとか何とか。サブ何とか?がどうとか、うんたらかんたら」
かなり大雑把な説明だった。エミリアにとって、その時聞いた話は文字通り、話半分だったようだ。
「ほう・・・、流石アカネだな。やはり、妙な事を色々と知っておる」
二人の会話に、エンリチェッタが弾かれたように顔を上げ、口を挟んだ。
「ちょ、ちょっと待て!待つのじゃ!異世界の勇者とは何じゃ!?アカネじゃと!?妾は知らんぞ!?」
エンリチェッタの知らない勇者の存在、それは、あってはならない存在だった。
勇者学院の学院長を務めるエンリチェッタは、役職柄全ての勇者を知る立場にある。それは、学院が勇者養育機関である事以上に、勇者が学院でしか生まれない事に理由はあった。
ここで、勇者と天使、そして聖剣の関係を少し掘り下げてみよう。
何度も言うように、勇者の聖剣は天使によって与えられる。これは天使が人間界や魔界に現界するのには、色々と条件が必要な為である。
人の住む人間界、魔族の住む魔界、天使の住む天界。それぞれの領域への行き来は、本来容易では無い。人間界と魔界は陸続きだが、天界は異なる位相に存在する。その為、人間界や魔界に顕現するのが難しいのである。
天使は魔族を滅ぼしたい。その理由を語るには、長い歴史を振り返り一から語る必要があるので、今は省こう。天使は魔族を滅ぼしたいが、直接手を下すのは難しい。だから、魔界と陸続きで度々小競り合いをしていた人間界の者達に、力を与える事にした。『聖剣』という力を。
聖剣に選ばれた者は力を得る。魔族を打ち倒す為の力を。そして、人間界から魔界へ赴いた時に掛かる制限を、取っ払う力を。天使達は人間を十分に精査し、心正しき者に聖剣を与えたのだ。
さて、ではどうやって天使は人間に力を与えたのか。その疑問の答えは、勇者学院にあった。
勇者を生み出し、勇者を育てる学院には、一本の大きな樹があった。それは普段、天使達による高度な結界に守られ空間の狭間に存在する為、その姿を見る事は叶わない。しかし、そんな樹が姿を現す瞬間がある。それが勇者誕生の瞬間。
『聖樹』。そう呼ばれる学院の樹は、勇者を選定し聖剣を与える。天使達が人間に力を与える為の仲介役として、空間の狭間に設置した樹だった。そしてこの聖樹は、学院長エンリチェッタ・スコラーリによって管理されていた。
これが、エンリチェッタが全ての勇者の存在を知る理由で、『異世界の勇者』という存在に驚いた理由である。
「アカネに関しては、いずれ知る事もあろう。今はその存在だけを知っておればいい。無論、他言は無用だぞ?」
「む、むぅ~・・・」
難しい顔で唸るエンリチェッタ、その顔には僅かに不満が見て取れる。頭頂では二本のアホ毛がうねうねしていた。そして、そっぽを向くように明後日の方向に倒れる、愉快なアホ毛だった。
「くくく、なんだ。拗ねてるのか?本当に愛らしい奴よの、そなたは」
「何がじゃんむぅ!?・・・ん・・・・ちゅ・・やめ・・・・れぁ・・・・」
エンリチェッタの反論を封じるように、デウスは彼女を抱き寄せ唇を重ねた。侵入して来る舌に初めは抵抗したエンリチェッタだったが、与えられる快感と幸福感に酔い、次第に受け入れ自ら求め出す。
「失礼します」
エミリアはエミリアで、デウスのそそり立つ剛直に口付ける。
朝の淫らな宴が始まった。『英雄の止まり木』の一室に、嬌声が響き渡る。
世界で最も安全だと言われる、ブレイブ王国王都。
50人近いの勇者が常駐する王都では、悪の類が蔓延る事は限りなく無い。スラムこそあるものの、犯罪者集団が根城にするという事も無く、殺人や婦女暴行などの重犯罪も限り無くゼロに近い。あるのは酔っ払いの暴行や喧嘩など、ある意味平和だからこそ起こる諍いばかりだった。
その安全性故、王都には多くの人が溢れ穏やかな生活を享受している。それが、世界で最も安全な都市、ブレイブ王国王都・アレクサンドレアであった。
その王都が、何時になく恐怖と混乱に染まっていた。
人々は一様に恐怖の表情で彼らを見ていた。そんな人々を守るように立つ兵士達も、また同様に。決して近付かず刺激せず、されど一挙手一投足に警戒し見逃さない。
先頭歩くエンリチェッタは、そこそこ名が知れている。勇者学院の学院長だ。知名度は高い。その役職故に、一般人でさえも敬意を示す。そんな彼女が魔族を連れている。明らかに魔族と分かる女に、禍々しき闇を纏う男。どちらも美しく、妖しさが溢れている。混乱を招くには、十分な状況だ。
中には二人の顔を知る者もいる。屋台の店主だったり、食事処の従業員達だ。自分達が提供していた自慢の料理を、笑顔で美味しそうに食べてくれていた者が魔族だったと知り、驚きを隠せない。
そんな彼らを気にも止めず、デウスとエミリアは割れる人垣を進んでいた。
「・・・お主ら、本当にこのまま城に行くのじゃな?」
「無論。二日も待ってやったのだ。これ以上は、流石の余も待てん」
「ですね。いい気になって貰っても困ります。だから、さっさと案内なさいエンリチェッタ」
似た様なやり取りを、宿を出る前から繰り返している。
一通り行為が終わり満足したデウスは、数え切れない程の絶頂を味わい意識を失ったエミリアとエンリチェッタの体と共に自分の体を綺麗にし、二人が目覚めた所で身支度を始めた。
意識を失っている間に、デウスによって体の隅々を洗われたという事に、羞恥を隠しきれないエンリチェッタだったが、はっきりと文句を言う間もなく二人に急かされ、城に向かうという言葉に驚かされ引っ張られるように宿を後にした。
「だったらせめて、その気配を収めてはくれぬか?皆が怯えておる」
昨日一昨日と、下手な騒ぎを起こさないように変化の魔法を使っていた二人だったが、今はそれを止め、明らかに魔族と分かる風体で歩いていた。エンリチェッタはずっと近くにいた上、デウスを受け入れた事もあり多少慣れ始めていたが、王都の民はそうでは無い。恐怖が伝播しつつある。
パニックになっていないのは、二人に暴れる様子が無いのと、エンリチェッタがいるからだった。だが、それも何かキッカケがあれば、一気に決壊するだろう。エンリチェッタとしては、それは避けたかった。
(もし、パニックになった者が二人を攻撃でもすれば・・・・)
エミリアは確実にキレる。たった数日だが分かる、彼女のデウスに対する忠誠心は本物だ。主が狙われて、報復しないはずがない。デウスの方は、もしかすると何とも思わないかもしれないが、それも絶対では無い。もしもの時は自分が何とかしなければならない。
エンリチェッタは、デウスと通じる事になってしまったが、勇者としての責任・矜持を忘れた訳では無い。必要とあらば、デウスを止めるべく戦う事も覚悟していた。
「悪いがそれは出来ぬ。今から城に向かうのは、魔王とその配下。昨日までの観光客では無い」
「それはそうかも知れぬが・・・」
納得はしていない。していないが、エンリチェッタの表情は既に諦観に染まっていた。
「陛下。こちらに人が向かってきます。メイド・・・でしょうか?」
「ふむ?・・・ほう、メイドのようだな」
エミリアの言葉に視線を凝らしたデウスは、姿勢の整ったメイドが美しい所作で歩いて来ているのを目にし、感嘆の声を上げた。
「あれは確か、女王陛下のメイドのはずじゃ」
「ふむ、という事は迎えか」
「でしょうね」
デウス達の予想通りそのメイドは彼らの前まで来ると、これまた綺麗な所作で一礼し、こう口にした。
「お初にお目に掛かります。私はアンナ、オリアナレイナ陛下のメイドを務めさせて頂いております。此の度、城への案内を仰せつかりました」
(ふむ・・・・大きいな)
デウスは、目の前のメイドをつぶさに観察した。
まず目を惹くのは、その胸。Fカップはあろうかというその胸は、男ならだれでも凝視してしまう程の存在感を放っている。デウスも顔を埋めたいとか、そんな事を考えていた。
髪は暗めの茶髪で、後頭部でフワッとした団子状に纏め、細い三つ編みを編み込んでいる。顔には一切の表情も浮かんでおらず、不愛想そのもの。しかし、造形が整っている為、見る者を惹き付ける美しさがある。メイド服のため分かりにくいが、手足もスラッとしていて、その大きい胸が下品に見える事も決して無く、抜群のプロポーションを誇る。
そして、デウスはやはり胸を見ていた。その事に気付いた、エミリアとエンリチェッタのジト目には幸か不幸か気付いていない。
「ふむ。余の方から赴くつもりであったが、このタイミングで迎えを寄越すとは。こちらの行動を見越してか、それとも偶然か・・・・。まあ、良い。アンナだったか?案内を頼む」
どちらであっても、デウスには割と関係無かった、これから会って、見極めれば良いだけの話だったから。
「はい。では、こちらです」
案内として、エンリチェッタに代わり先頭を歩くアンナに、デウス達が続く。エミリアはデウスの配下として静かに、エンリチェッタはこれから起こる事に若干の不安を覚えながら。
そして、デウスはこんな事を思っていた。
(このアンナというメイド、素晴らしいな。見た目や身体つきもだが、最も感心すべきはその胆力。余達を前に、怯え、恐れといった感情を一切抱いていなかった。勇者でも無く、戦闘力も最低限。くくくっ、素晴らしい!そして、面白い人間だ!)
そんな彼らを、群衆はやはり、ただ見ている事しか出来なかった。
さて、城に案内されたデウス達だったが、当然すぐに会談という訳にはいかない。向こうにも相応の準備はあるし、こちらにもある。それは≪色欲≫の魔王とて同様。デウスも、他の魔王との会談をする時は、同じような対応をする。
再度会見・会談内容を確認したり、気持ちを落ち着かせたり、打ち合わせたり、策略を練ったり。やる事は案外と多い。現に、デウスはアンナの淹れた黒い飲み物を飲み、まったりとしていた。
「うむうむ。良い香りだ。そして、味も。特に、この苦味が良い。最初見せられた時は、泥水かと思うたがいやはや、人間界というのは美味い物が多いな」
デウスが絶賛しながら飲んでいるのは、珈琲。ブレイブ王国の南側に隣接する、太陽の国の特産品だ。
エミリアも同じものを飲んでいる。こちらは砂糖入り。エンリチェッタも砂糖を入れているのだが、一口飲む毎に角砂糖が一つ足されている。味覚も子供らしい。
そうやってデウス達がまったりとした時間を過ごしていると、ノックと共に恐る恐るという風にメイドが入って来る。
「じゅじゅじゅ、じゅんぶ¥び¥3fs8s&!!?」きゅ~~
「「「・・・・・」」」
そのメイドは、何やら呪文を唱えたと思ったら気絶した。妙な空気が流れる。
「・・・デウスよ、やはり少し抑えてはくれぬか?」
「・・・それが良いようだ」
デウスの纏う闇が、やや薄くなる。
「準備が整ったようです。皆さま、どうぞこちらに。玉座の間へ案内させて頂きます」
気絶したメイドを適当に寝かせ、アンナの案内に続く。
(やはり、このメイドは素晴らしい)
外に居た時は遠巻きだったから、群衆は恐怖を覚えどパニックは起こさなかったのだろう。しかし、このメイドは間近でデウスとエミリアに相対してしまった。勇者でなければ、当然の結果だろう。アンナの異様さが際立つ。
時折すれ違うメイドが、恐怖に怯え気絶したり、膝を付いたりするのを尻目に、廊下を進む。やがて、真っ白で巨大な扉の前に出る。
「ここが、玉座の間です。オリアナレイナ陛下を初めとする、皆様方がお待ちです」
(余の方が待ってやったのだがな・・・)
「ふむ。人の気配がちと多いな。勇者の気配も・・・50人近いか?」
「それくらいはありそうですね。先日、我等を一目見に来た者の目が良かったという事でしょう。恐らく王都中の勇者が集まっています」
王都を訪れた初日。エンリチェッタが城に、謁見の打診をした後の事。デウス達を観察する視線が、一瞬だけ存在した。気にも止めなかったデウス達だったが、今思えば威力偵察みたいなものだったのだろう。
「くくく、では参ろうぞ」
アンナの手によって扉が開かれる。デウス達は堂々と、玉座の間に足を踏み入れた。デウス達の姿を視認した者達から、溜息が零れる。彼らの美しさに呑まれているのだろう。
玉座の間を進むデウスは、ザッと周りの状況を確認する。
(一見勇者で占められた間だが、所々違うのも混ざっているな。服からして、貴族か?まあ、こちらは良いか。あの勇者は、この間遠見で見たな。≪憤怒≫を討った勇者だ。こうも早く相見えるとは。それに、アレが女王・・・・ほうっ!)
玉座に座る女王を見たデウスから、気色が溢れ出る。それは闇となり、色気となり、周囲を汚染する。
「「「「「っ!!?」」」」」
ある者は腰を抜かし、ある者は気絶し、ある勇者は戦闘態勢になり、ある勇者は戦意を喪失する。そこから小さなパニックが広がり、爆発しそうになるその瞬間。
「落ち着いて下さい」
凛とした声が響いた。それだけで、一瞬にして混乱は無くなった。
(くくくっ、良いな!良いぞ!)
「失礼した、勇者の女王よ。思いの外喜ばしい事があったのでな」
「構いません、≪色欲≫の魔王」
「「「「「なっ!?」」」」」
女王の口から出た、魔族の正体にざわめく。聞かされていなかったのだろう。50人の勇者や貴族だけでなく、女王の傍に立つ側近らしき者達も驚いている。
「・・・・」
黄金の聖剣を抜いた女王が、ドンッと剣を床に突き立て、今度は口では無くその姿で、ざわめきを静める。
「ふむ・・・。まだ、余の正体は明かしていない筈だったのだがな」
「エルダの報告で、貴方が魔王である事はほぼ分かっていました。そして、先程の貴方から溢れたモノ。話に聞く、≪色欲≫に相当します」
「話に聞く、か・・・くくくっ、そうかそうか」
楽しそうなデウスを、エミリアは微笑ましそうに眺め、それまでビクビクしていたエンリチェッタは、キョトンとして見ている。
「お初にお目に掛かる、勇者の女王。余は大罪が一柱、≪色欲≫の魔王。名はデウスである」
「初めまして、≪色欲≫の魔王。私はブレイブ王国女王。オリアナレイナ・ミカエル(・・・・)・ブレイブです」
「は・・・?くはっ、くくくっ、くはははははははっ!そうかそうか!もう名まで貰っていたか!」
「やはり、貴方は知っているのですね。最も古き魔王よ」
女王と魔王の間で交わされる会話に、周りの者は付いて行けない。平然としているのはエミリアと、そしてアンナのみであった。
「くくく・・・、いや失礼。ふぅ~、さて。この場は対談には向かんな。どれ」
デウスの体から闇が溢れ、彼の前に集まり球体を形成する。勇者達が警戒し武器を構え敵意を顕わにするが、デウスは歯牙にも掛けない。その闇は暫くすると霧散し、デウスの中へ戻る。球体があった場所には、禍々しくも高級そうな、黒い机と椅子が現れていた。
「そう、警戒するな。ただの机と椅子だ。掛けると良い、オリアナレイナ。名を貰っているなら、余はそなたを同格として扱おう」
「・・・貴方は、私の知らない事まで知っているようですね。良いでしょう。相席させて頂きます」
オリアナレイナは、デウスの言葉に暫し思案していたが、そう言うと突き立てていた聖剣を鞘に戻し、玉座を下り机の方へ歩み出す。
「ちょ、陛下!?」
側近の一人、辞書のように分厚い聖剣を脇に抱えた勇者、ソフィア・ベイリーがオリアナレイナの行動に戸惑いの声を上げる。
「陛下!?危険です!」
(もし、罠だったら・・・・!)
もう一人の側近、幅の太い剣を携えた勇者、エルダがオリアナレイナを止めようとする。
「大丈夫ですよ」
しかし、オリアナレイナはそれらの声には耳を傾けず、机の方へ足を進める。
「お待ちください!!」
オリアナレイナが机の下に辿り着いた時、一人の男が進み出てきた。身形からするに貴族のようだ。
「・・・何でしょうか、ルーズ卿」
ルーズ卿、そう呼ばれた男はオリアナレイナの傍に跪き、声高に言う。
「陛下。その椅子には座ってはなりません。貴方様はこの国、勇者の国の王なのです。他国の王ならいざ知らず、魔族如きを対等に扱うのはお止めください」
その言葉に、空気が固まる。エミリアなどあからさまに怒気を発している。
それに気付いているのかいないのか、ルーズは尚も言葉を重ねる。
「そもそも、この魔族共が魔王とその配下である証拠も御座いません」
「「「っ!!」」」
馬鹿がいる。この場にいる殆どの人間がそう思った。この玉座の間に入ってきた時の、デウスの行動と勇者たちの反応を見ていなかったらしい。真性の馬鹿がいた。
「撤回してください、ルーズ卿。失礼ですよ。≪色欲≫の魔王にも、そしてエルダにも。彼の者は自ら≪色欲≫の魔王と名乗り、≪憤怒≫を討ったエルダが≪憤怒≫以上と警鐘を鳴らしたのです。彼の者の言葉は兎も角、勇者エルダを信じられませんか?」
「その事なのですが、陛下。勇者エルダは本当に≪憤怒≫の魔王を討ったのですか?」
「何ですって?」
「貴様!!?」
オリアナレイナの眉尻が上がり、エルダがその侮辱に声を荒げる。ルーズは気付かない。周りの人間が敵意のある眼差しで見ている事に。更に、自分に酔ったように言葉を続ける。
「≪憤怒≫を討ったのなら、何故その死体を持ち帰っていないのでしょうか?全てとは言わずとも、首ぐらいなら持ち帰れたのでは?それに、魔王討伐に向かったのは、勇者エルダだけでは無かった筈。他の方の遺品などを、どうして持ち帰らなかったのですか?」
「っ!!」
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