美味いだろ?~クランをクビにされた料理人の俺が実は最強~

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第67話 バトルロイヤル②

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 開始と同時にジュウベエは背中の絶斬刀を六角棒のまま構えてステージの中央で横に一回転した。

 二千人も居た第一組の出場者達は、ジュウベエのすぐそばに居た20人程が上手く飛び上がったりしゃがみ込んだりしたが、他は一撃でステージから弾き飛ばされてしまった。

 まぁこうなるよなぁ……

 わずか10秒ほどで第一組の結果は出てしまった。
 ナディアとタイガは上手く避けてた。

 けが人はほとんど出ていないので、良かったのか?

 二組目に入れ替わり、今度はレオネアが登場する。

「僕は、今回は攻撃はしないから、上手く僕を狙って倒してごらん」

 中々に挑発的な発言をしてる。
 この組にはライガースの先程良い所無しでやられてしまったレオンと豹獣人のロデムが参加している。

 ロデムは漆黒の肌を持つ妖艶な女性で長い尻尾が特徴的だ。
 ケラが興味深げに見てる。
 同類と思ってるんだろうか……

 再び、ミケーラ男爵が開始を告げる。

 今回はレオネアは宣言通りに避ける事に集中していて、ステージの上を走り回っている。

 それを追いかける様にレオンとロデムが武器を振り回していて、ステージの端に居る人達が結構なペースで落とされて行く。

 レオネアも避けながらだけど、人の頭の上とかを踏み台にしたりするから、結果として結構な数を倒してるけどな。

 だが…… 参加者は殆どが猫獣人なのでそれなりに身体能力も高く、だんだん人数が減って来ると、共同戦線で強い奴を狙っていくような作戦を立てる者も出て来た。まず狙われたのは先程良いとこ無しで、敗れたレオンだ。

 20人程の集団に囲まれて、両足を抑えられて身動きが取れなくなる。
 俺はこの状態からどうするのかを、興味深く見てた。

 だが流石にそこは、この国でも指折りの冒険者と言うだけあって、逆立ちをすると凄い勢いで回転して、足にしがみついてる奴を吹き飛ばした。

 殺しちゃいけないルールがあるから、多数を相手にすると中々攻めあぐねてはいるけど、基礎能力の違いは明らかな感じだな。

 ロデムも細い刺突剣を使い、魔法剣士らしく雷属性を付与して参加者たちをどんどん痺れさせて戦闘不能に追いやる。

 こうなると、他の参加者は態々強い奴の方には行かず、取り敢えずこの予選突破を狙って、手近な敵から倒し始めた。

 結局開始から10分ほどで、予定の200人まで減った所で予選二回戦の終了がミケーラ男爵に告げられる。

 中々強そうなメンバーが残ってるな。
 殆どが記念参加みたいな乗りなので、予選落ちの人達は大人しく観客席に戻って行った。

 中には結構怪我をしてる人たちもいたが、ミケーラ男爵の連れて来てる救護班やフィルが怪我を治療して事なきを得ていた。

 続いての三回戦だが、メーガンがステージに上がる。
 ライガースからは、サイ獣人のサイダーだ。
 サイダーはその巨体に、全身鎧を付け、さらに巨大なタワーシールドを持つ。

 顎と額に巨大な角があり、それが武器の様だ。
 あんなもんで突撃されたら、ヤバいよな。
 だが、スタイル的には『ドラゴンブレス』のハルクを思い出させる頼れるタンクって感じだ。

「予選第三回戦開始!」

 ミケーラ男爵の声に一斉に、参加者が中央に居るメーガンに殺到する。
 対するメーガンは、開始の声と同時に背中の三対六枚の羽根を広げた。

 そのまま5m程上空に浮かぶと、全身を神々しい黄金色の何かが包み、ステージ上がまばゆい光に溢れた。

「跪きなさい」

 2000人近く居た参加者が、その光を浴び一斉にひれ伏した。
 唯一…… タワーシールドを構えたサイダーを除き。

 何故かひれ伏した人々は、感動して涙を流してる……
 やべぇなメーガン……

「三回戦終了……」

 わずか一分で二人だけを残して、戦意喪失とみなされ終了した。
 メーガンを見るミケーラ男爵も目がウルウルしてる。

 跪いた人々は何故かみんな幸せそうな顔をして、観客席へと戻って行った……

 そしていよいよ俺の出番だ。
 折角だから、爺ちゃんをどうにかしてやろうかな。

 俺はチュールの手を繋ぎ、ステージに上がる。
 ライガースからは、双剣使いの猫獣人ミャーラが上がって来る。
 同じ猫獣人でもミャーラは綺麗なお姉さん的な雰囲気を持つ妖艶な女性で、チュールが羨ましそうに見てる。

「チュール? 何処見てるんだ」
「ミャーラの胸……」

 チュールの視線に合わせて俺も思わず見てしまった。
 なる程…… ナイスバディだ。

 そう思った瞬間、フィルが治療導具の鋏を俺に投げつけて来た。

「あ、危ねぇじゃねぇかよフィル」
「カインお兄ちゃんの視線によこしまな気配を感じた」

「あら? 私に勝てるならこの身体好きにしてもいいのよ?」
「艶っぽくミャーラが、俺に声を掛ける」

 こいつは…… 手ごわい……

 それは楽しみだ! そう思っても、言葉にはできない。
 爺ちゃんは、今度は何をするつもりなんだ?

 手には杖を持ってるし、また筋肉だるまにでもなるのか?
 この組に参加してる、この街の人達も妙にやる気満々だ。

「それでは予選四回戦開始!」

 街の人達の中で魔法を使える人が500人程は居て、開始の声と同時に一斉に中央部分に居た、爺ちゃんと俺やミャーラに向かって魔法を放って来た。

 そう大した威力の魔法は無かったが…… 数が数だ。
 ミャーラはその抜群の運動神経で真上に10mは飛び上がり魔法を避ける。

 俺は生活魔法を発動した。
【穴掘り】チュールと共に、穴の中に退避だ。

 そして爺ちゃんは、一歩も動かず大量の魔法が全て、爺ちゃんの居た場所に命中する。

 その場に煙が立ち込め一瞬視界が途切れる。
 俺はその隙に生活魔法の【発電】を使い、大勢いる住民たちの首筋に電気ショックを与えながら、数を減らしていく。

 チュールも俺の後ろを追っかけながら生活魔法の穴掘りで足場を微妙に崩しながらついて来る。

 バトルロイヤルで生き残り制なので、足を取られてこけた人達は、勝手に他の参加者が、排除してくれてるから他力本願ながらも着実に数を減らす。

 そして爺ちゃんだが、煙が晴れた後には平然と立っていた。
【結界】魔法を使った様だ。

 そして、そのまま動かず「予定人数に減るまでの間にこの結界を突破できれば、わしの負けで良いでな」と言って、結界の中に座りお茶を飲み始めた。

 その言葉を聞いた、ミャーラが結界に向かって素早い双剣の連撃でガシガシとアタックをかけ始めた。

 俺はチュールに耳打ちをすると、生活魔法の【給水】を発動してステージ上を、水浸しにした。

 そして十分に床が濡れたタイミングで生活魔法の【氷結】を発動する。
 通常だとコップに氷を作る程度の魔法でも、俺が使えば水浸しのステージ上は一気に氷のリンクへと変わる。

 次々滑りこける人たちを、ドロップアウトさせていく。
 まぁこければ勝手に自分達で押し合いながら、どんどん数を減らしてくれてるから、後は放置でもいいか。

 爺ちゃんの元に辿り着いた人達は、共同作業で結界をフルボッコにしてる。

 俺はそろそろかなと思い、残り200人強になったステージを見回す。
 爺ちゃんの結界は破られそうにないな……

 そう思った瞬間。
 爺ちゃんの姿が床下に消えた。

 空いた穴から顔を出したのは、チュールだった。
 最初に俺が開けた穴は結界のすぐ側だったので、チュールに少しずつ堀進めさせて、下から爺ちゃんを穴に落とした。

 チュールが結界の中で穴を埋め始めて、爺ちゃんは俺が開けた穴から出てきたとこで、人数も200人を下回り、決着がつく。

「参った。わしの負けじゃ。チュールちゃんにやられるとは思わんかったぞ。一応カインの動きは、ちゃんと追っかけておったんじゃがの」

 予選も終わり、いよいよ決勝となる。
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