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第70話 アケボノへ
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結局チャーハン祭りになった闘技大会だったが、このニャーズの街が盛り上がったのは確かだから、まぁ良しとして置こう。
「メーガン。それでどうなの?」
「えっ? あー。ライガースの評価ですか?」
「うん」
「悪くは無いですね。彼らが『暗黒獅子の崖』にチャレンジし、成長を見せるようであれば、もう一度会ってみたいと思います」
「カインはこのままランクを上げようとは思わないないのですか?」
「うーん。どうだろう俺は国やギルドの都合で呼ばれたりするのは面倒だから、ランクは今のままで良いかもな」
「そうなのですね。あなたがその気になれば私が推薦しますよ?」
「僕もするよ」
「わしもじゃ」
「俺もだな」
「おいおい、俺に何をさせたがってるんだ? 俺は今日みたいな、みんなを笑顔に出来る飯を作り続けれれば、それで満足だからな」
「カインお兄ちゃん。そろそろアケボノ国へ向おうよ」
「そうだな」
俺達はニャーズの街の砂浜で、魔法の鞄からカッターボートを取り出して、オメガへと戻っていた。
「「「お帰りなさいませ、ご主人様」」」
αとβとγの三人が揃って出迎えてくれた。
「β。ベーコンは上手くできたか?」
「はい。カイン様のご指示通りに時間を計って取り出してございます。現在は魔蔵庫へ収納してあります」
「ありがとう。明日の朝はこのベーコンでとびっきりの朝食だな」
「それは楽しみじゃな」
「ナディア。オメガの操縦を頼んでも良いか? ジュウベエを道案内に付けるから」
「はい。お任せください」
「おい、俺も結構疲れてるんだが?」
「賞金沢山稼いだから良いだろ?」
「まぁそうだな…… ってお前がシュッタト爺さんに賭けて稼いだ金額の方が全然多いだろ」
「細かい事を気にすると禿げるぞ?」
「俺は禿げる心配はねぇよ」
結局ジュウベエはなんだかんだ言いながらも、素直に水先案内役をかって出た。
俺はブリッジでナディアが操船してる横でジュウベエと話していた。
「ジュウベエ。お前とレオネアってどんな関係なの?」
「俺が一対一で戦って初めて負けた相手だ」
「へーお前が素直に負けを認めるとか凄いな」
「年も同じだし、負け知らずで過ごして来た俺には衝撃的な出来事だったさ」
「メーガンやシュタット爺さんとは戦って無いのか?」
「ああ。今回が初めてのチャンスだったな。カインにいいように持ってかれちまったけどな」
「戦いなんて殺し合いじゃ無いなら、勝っても負けても意味がないだろ?」
「俺達の様に戦いの中でだけしか輝けない連中にとっては、今日の様ななんでもない戦いの場でも結構重要だ。ライガースの奴らだって、俺達に一矢報いれば、大きな実績になったから、そりゃ本気で頑張ったと思うぞ」
「そっか。最初はなんか行儀の悪そうなやつだと思ったが、戦いは正々堂々としてたし、悪い奴らでは無かったよな」
「だが、まだ実力が足らなかったのは事実だ」
「それさ、俺は見方がちょっと違うぞ」
「どんなふうにだ?」
「例えばだ俺達が組んでSランクダンジョンに向かうとする。これならほぼ100%攻略は成功する」
「そうだろうな」
「だが、ジュウベエ一人で潜るのなら、ライガースがチームで潜った方が攻略の可能性は高いと思う。俺がそう思う以上は現時点でジュウベエよりライガースが優れてるって思うぞ」
「そうか…… ギルドの定めるパーティーやクランのランキングも総合力であれば個人のSランクと変わらぬ実績を出せると見ての指定って事か」
「お、もっと怒り出すかと思ったが、素直に聞き入れるんだな」
「カインだからだよ。純粋な戦闘力では無く、その場に合わせた機転やこのオメガやヒュドラゴーレムのシグマを手に入れた実績は素直に認めざるを得ない。少なくとも俺だけでは持ち出す事も出来なかっただろうしな」
「だが、相性なんて言うのも存在するしな。例えばだ。この方舟の在った古代遺跡。ジュウベエ達は入って無いから解らないだろうけど、メーガンならかなり楽にヒュドラまでは辿り着けたと思う」
「そうか、でも俺達はシュタット爺さんとも話したが、爺さんでもヒュドラを魔法の鞄に閉じ込めるのは無理だったみたいだ」
「あ、そうか。それが出来ないとかなりあそこを突破するのは難しいな」
「なんで…… 生活魔法しか使えないような、カインがそれだけの魔力を持つ?」
「俺も良く解ってねぇよ。出来る事は出来るってだけだ。決めては料理だな! 思いを込めて作る料理は不可能を乗り越える」
「よけぇ意味わかんねぇよ」
「で? ジュウベエはレオネアに惚れてるのか?」
「ああ」
「そっか。頑張れよ」
「おう」
「アケボノにはSランクダンジョンはあるのか?」
「あるぞ『ヨミノクニ』と呼ばれるダンジョンだが、中に侵入した物が誰一人戻って来ていないので500年前から『アマノイワト』と言う大岩で封印されたままだ。勿論俺も入っていない」
「恐ろしそうなダンジョンだな。だが…… それこそレオネアと相性が良さそうな気はするけどな」
「可能性はあるな。レオネアに声を掛けて、やってみるか? カインが手伝うなら十分に攻略できる可能性はありそうだ」
「メーガンと爺ちゃんも手伝うならいいが、全く情報が無いんじゃ怖いな」
「明日にでも一度みんなで話して見よう」
「取り敢えずは、アケボノ料理を楽しんでからだな」
夜の闇を飛び続けたオメガは明け方にはアケボノの近海へと到着していた。
上空からアケボノ列島を見下ろすカインの目には、水平線から上って来る、太陽の姿を捉えていた。
「日出る国か……」
「メーガン。それでどうなの?」
「えっ? あー。ライガースの評価ですか?」
「うん」
「悪くは無いですね。彼らが『暗黒獅子の崖』にチャレンジし、成長を見せるようであれば、もう一度会ってみたいと思います」
「カインはこのままランクを上げようとは思わないないのですか?」
「うーん。どうだろう俺は国やギルドの都合で呼ばれたりするのは面倒だから、ランクは今のままで良いかもな」
「そうなのですね。あなたがその気になれば私が推薦しますよ?」
「僕もするよ」
「わしもじゃ」
「俺もだな」
「おいおい、俺に何をさせたがってるんだ? 俺は今日みたいな、みんなを笑顔に出来る飯を作り続けれれば、それで満足だからな」
「カインお兄ちゃん。そろそろアケボノ国へ向おうよ」
「そうだな」
俺達はニャーズの街の砂浜で、魔法の鞄からカッターボートを取り出して、オメガへと戻っていた。
「「「お帰りなさいませ、ご主人様」」」
αとβとγの三人が揃って出迎えてくれた。
「β。ベーコンは上手くできたか?」
「はい。カイン様のご指示通りに時間を計って取り出してございます。現在は魔蔵庫へ収納してあります」
「ありがとう。明日の朝はこのベーコンでとびっきりの朝食だな」
「それは楽しみじゃな」
「ナディア。オメガの操縦を頼んでも良いか? ジュウベエを道案内に付けるから」
「はい。お任せください」
「おい、俺も結構疲れてるんだが?」
「賞金沢山稼いだから良いだろ?」
「まぁそうだな…… ってお前がシュッタト爺さんに賭けて稼いだ金額の方が全然多いだろ」
「細かい事を気にすると禿げるぞ?」
「俺は禿げる心配はねぇよ」
結局ジュウベエはなんだかんだ言いながらも、素直に水先案内役をかって出た。
俺はブリッジでナディアが操船してる横でジュウベエと話していた。
「ジュウベエ。お前とレオネアってどんな関係なの?」
「俺が一対一で戦って初めて負けた相手だ」
「へーお前が素直に負けを認めるとか凄いな」
「年も同じだし、負け知らずで過ごして来た俺には衝撃的な出来事だったさ」
「メーガンやシュタット爺さんとは戦って無いのか?」
「ああ。今回が初めてのチャンスだったな。カインにいいように持ってかれちまったけどな」
「戦いなんて殺し合いじゃ無いなら、勝っても負けても意味がないだろ?」
「俺達の様に戦いの中でだけしか輝けない連中にとっては、今日の様ななんでもない戦いの場でも結構重要だ。ライガースの奴らだって、俺達に一矢報いれば、大きな実績になったから、そりゃ本気で頑張ったと思うぞ」
「そっか。最初はなんか行儀の悪そうなやつだと思ったが、戦いは正々堂々としてたし、悪い奴らでは無かったよな」
「だが、まだ実力が足らなかったのは事実だ」
「それさ、俺は見方がちょっと違うぞ」
「どんなふうにだ?」
「例えばだ俺達が組んでSランクダンジョンに向かうとする。これならほぼ100%攻略は成功する」
「そうだろうな」
「だが、ジュウベエ一人で潜るのなら、ライガースがチームで潜った方が攻略の可能性は高いと思う。俺がそう思う以上は現時点でジュウベエよりライガースが優れてるって思うぞ」
「そうか…… ギルドの定めるパーティーやクランのランキングも総合力であれば個人のSランクと変わらぬ実績を出せると見ての指定って事か」
「お、もっと怒り出すかと思ったが、素直に聞き入れるんだな」
「カインだからだよ。純粋な戦闘力では無く、その場に合わせた機転やこのオメガやヒュドラゴーレムのシグマを手に入れた実績は素直に認めざるを得ない。少なくとも俺だけでは持ち出す事も出来なかっただろうしな」
「だが、相性なんて言うのも存在するしな。例えばだ。この方舟の在った古代遺跡。ジュウベエ達は入って無いから解らないだろうけど、メーガンならかなり楽にヒュドラまでは辿り着けたと思う」
「そうか、でも俺達はシュタット爺さんとも話したが、爺さんでもヒュドラを魔法の鞄に閉じ込めるのは無理だったみたいだ」
「あ、そうか。それが出来ないとかなりあそこを突破するのは難しいな」
「なんで…… 生活魔法しか使えないような、カインがそれだけの魔力を持つ?」
「俺も良く解ってねぇよ。出来る事は出来るってだけだ。決めては料理だな! 思いを込めて作る料理は不可能を乗り越える」
「よけぇ意味わかんねぇよ」
「で? ジュウベエはレオネアに惚れてるのか?」
「ああ」
「そっか。頑張れよ」
「おう」
「アケボノにはSランクダンジョンはあるのか?」
「あるぞ『ヨミノクニ』と呼ばれるダンジョンだが、中に侵入した物が誰一人戻って来ていないので500年前から『アマノイワト』と言う大岩で封印されたままだ。勿論俺も入っていない」
「恐ろしそうなダンジョンだな。だが…… それこそレオネアと相性が良さそうな気はするけどな」
「可能性はあるな。レオネアに声を掛けて、やってみるか? カインが手伝うなら十分に攻略できる可能性はありそうだ」
「メーガンと爺ちゃんも手伝うならいいが、全く情報が無いんじゃ怖いな」
「明日にでも一度みんなで話して見よう」
「取り敢えずは、アケボノ料理を楽しんでからだな」
夜の闇を飛び続けたオメガは明け方にはアケボノの近海へと到着していた。
上空からアケボノ列島を見下ろすカインの目には、水平線から上って来る、太陽の姿を捉えていた。
「日出る国か……」
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