異世界召喚?そんなこと望んでません!元の世界に帰してください!

翡翠と太陽

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47.突然の修羅場

 私とノアさん、ハルバードさんは、離宮に滞在することになった。

 一度メルトル村に帰りたかったが、

 「帰ったらもうここには来たく無くなるだろ?晩餐会が終わったら帰れると思うから、あと2日我慢しろ?」

とノアさんに言われたので我慢することにした。

 離宮には宰相と側近さんと護衛騎士の方が4人付いて案内してくれた。

 「ハルバード様!お待ちしてました!やっとお会いできて嬉しいわ!」

 向かいからピンク色の豪華なドレスを着た人が、後ろにメイドさんや騎士さんたちを引き連れて近付いて来た。ハルバードさんの知り合いらしい。

 「第一王女殿下、お久しぶりです」

 あーあ!この人がハルバードさんと結婚する人だ。お人形みたいですごく可愛い。
 王女様はハルバードさんに寄り添うようにピタッとくっついた。

 「早くお会いしたかったですわ。お父様からの婚約の話し、受けてくれると思いました。嬉しい!早くドレスとか宝石の準備を進めたいの!」

 ハルバードさんは表情を無くしたまま、
 「殿下、婚姻は私の条件を受けて頂く前提です。それであれば辺境伯領へ出立するご準備をお願い致します」
と言いながら、王女様をグイッと引き剥がした。
 
 あーんと言いながら、ハルバードさんに肩を押されている王女様がチラッと私の方に目線を寄越した。

 「あら?貴女どなた?」

 王女様があからさまに不機嫌な顔となり、冷えた空気を纏わせる。
 うわぁ…一番最悪な展開だこれ。帰りたい、嫌だな…

 「殿下、こちらは大聖女様です。この度の魔物と瘴気の浄化にご尽力頂きました。それがあって私はこうして王都に来ることが出来たのです」

 あー!ハルバードさんが私を紹介したら惨事になるよー…

 案の定、王女様は私を激しく睨みつけ、

 「貴女が聖女!?本当に?聖女は酷く醜い女だって聞いたわ。貴女は…まあまあね… 私よりは劣るけど。
 貴女、聞いたけど私のお兄様に結婚するよう迫ったそうね?王族を脅すなんて、聖女じゃなきゃとっくに処刑されてるわよ!弁えなさい!」

 宰相や側近さん、メイドや騎士さんたちが青い顔をして慌てて王女様を諌めているけど、勢いに乗ったこの人種は止まらないだろう…

 「それに貴女どうしてハルバード様と並んで歩いていたの?ハルバード様は私の婚約者よ!?王女である私の婚約者を誑かすなんて、許さないわよ!ふしだらな女ね!護衛、この女を牢に入れて!」
と言うと、手に持っていた扇子で私の顔をビシッと指した。

 はぁ…?ナニコレ…?
 もうやっぱりこの城は私には無理。

 私はノアさんをチラッと見ると、ノアさんもうんざりした顔をしていたので、私がノアさんの腕を掴み、『メルトル村へ』と呟く途中、ハルバードさんの声で「ちょっと待っ…」て聞こえたけど、目を開けるとメルトル村にノアさんと二人で立っていた。

 「おや?おかえり、無事だったかい?」
 久しぶりのマーゴットさんが目の前にいて、心から安堵した。思わずマーゴットさんに抱き着いてしまった。

 「おやおや、お疲れさんだね。うちへおいで、疲れの取れるお茶を淹れるから」と言って私の背中をポンポンしてくれた。
 やっぱり私の住む場所はここだと改めて実感した。

 ==========

 「ちょっと待ってくれ!あー、あぁ…」
 目の前でレイ様がノアと消えてしまった。

 なんてことをしてくれたんだ…!
 大聖女レイ様が、魔物や瘴気の浄化をするのにはこの城の者たちの協力が必要だと言い、前回のような失態があればすぐに転移魔法で消えて、二度とここには戻らないと言っていた、それが条件だと聞いていた。

 それに陛下からも、大聖女様に不敬をはたらくものは、誰であろうと厳重に処罰すると勅令が出ていた。

 「宰相!どういうことだ!大聖女様が消えた原因をどう説明するんだっ!?」

 私の目の前に原因となる愚かな者がいるが構わず声を張り上げた。


 宰相は、この状況が二度とあってはならない事態であり、前回大聖女様が失踪した時の恐怖にも似た感情を思い出し、再び起きた国の緊急事態にイヤな汗が滲んできているのがわかる。
 
 「侍女長!教育はどうなっていたんだ!…クソッ…、イーサン、すぐに殿下に報告を! 
イザベラ殿下、すぐに陛下へ面会申請をお出しください」

 こうなっては晩餐会どころではない。
 せっかく大聖女としての仕事を受けて頂くところまで関係改善し、これから信頼回復のために誠意を見せていくところだったのに!

 またもや振り出しどころか、同じような過ちを繰り返してしまったのだ。戻ったどころではない、マイナスだ。

 

 宰相がその場にいる者に指示を出している。

 己の行いが国の危機となる事も知りはしないのだろう、この娘が学ぶことを嫌い、世の中の情勢に興味を持つこともない。それは周知の事実だ。

 それを証拠にまだキンキンした声で騒ぐ。

 「なっ、なによ!私は当たり前のことを言っただけよ!?だってあの女が悪いんじゃない!図々しいし、ハルバード様に色目を使っ…」

 「黙れ!この状況を理解出来ないのなら口を開くな…、開かないでください…!殿下のなさったことは国中の者を失望させた。
 私はもう辺境の地へ戻ります。今後貴女のせいで、大聖女様のお力を分け与えて頂けないとなれば、私を始め辺境の兵士たちが、魔物の進行を食い止めるとは思わないで頂きたい。
 そうなれば魔物はこの王都に真っ先に来るでしょうね。では失礼します」

 あんな者でも王族だ。乱暴な言葉であの場を制したが、後悔など微塵も無い。

 私の婚約者だと?ふざけやがって。しかもレイ様の前で言われたことが、尚の事私の逆鱗に触れた。

 その上、ふしだらな女だと?よく言えたものだ。
 幼い頃から散々我が儘を言い、人を困らせる事をなんとも思わないイザベラ殿下。
 何でも自分の思い通りにするために、使用人や護衛騎士たちを下僕のように扱い、自分の意にそぐわなければ簡単に切り捨てる。

 その上、着飾ることしか頭に無く、王族としての役割をまったく理解せず、欲のままに散財する。このような女を妻にだ?ふざけるな!

 こっちは年中休まること無く、魔物と瘴気の対応に駆けずり回り、領民が安心して暮らせるよう声を聞き誠実に対応する。
 私が当主になってからまともな休みなどただの一度も無い。

 その合間を縫って王都にやって来て、必要な報告や情報収集をし、とんぼ返りで辺境の地に戻る。

 それなのに、どこで私の登城を聞きつけるのか必ず私の行く場所に現れ、お茶会だと言い1時間は拘束される。

 そしてこの有り様だ。陛下の勅令すら理解していない、いや、大聖女様の存在自体も理解していないのだろう。いっそ魔物の事も、辺境の地もわかっていないだろう。

 そんな者が私の妻だと!?
 もううんざりだ。王家もこの国も何もかも。

 それでも私には大切な仲間と領民がいる。急ぎ馬を走らせ辺境の地へ戻った。



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