異世界召喚?そんなこと望んでません!元の世界に帰してください!

翡翠と太陽

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49.有能な王?

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 この国には二人の王子がいた。
 第一王子のフェリクス·ユストルと、第二王子のサイラス·ユストル。

 第一王子のフェリクスは、とにかく凡庸だった。

 勉強も剣の腕前も、乗馬も教えればすぐに覚えてそこそこ出来るが、それ以上の秀でた能力は無かった。
 それでも責任感だけは普通に備わっており、大きな失態も無かったため第一王子でもあり王太子として擁立した。

 第二王子サイラスは、生まれてからしばらくは健康そのものだったが、イザベラが生まれてからは体調を崩しやすくなり、なかなかスッキリと回復することが無く、何をするのにも時間を要した。

 勉強を始めても、すぐに熱を出しただの倒れただので、なかなか進まなかった。そんな状態なので剣の訓練は到底出来ないし、馬も無理だ。

 仕方無いので、体調に合わせて王子教育を進めるように指示を出し、将来はフェリクスの補佐が出来るくらいになれば良いと教師たちには伝えた。

 たまに体調の良い時は一緒に食事をしたが、いつも、

 「今日は少し起きていられたので、先生の授業を1時間だけ受けることが出来ました」

という残念な報告ばかりだった。

 そんなサイラスも17歳か。
 今から王としての教育を始めて間に合うだろうか。無理して体調を悪化させることになっても可哀想だ。

 そうなれば王位継承権3位の俺の弟になるが、アイツこそ金にしか興味の無いどうしようもないヤツだ。
 そうなれば俺の叔父の孫、ハルバードか。一番妥当かもしれんな。

 「父上、お呼びとのことで参りました」

 いつの間にかサイラスが目の前に立っていた。
 ん?最後に会ったのはいつだ?コイツはこんなに逞しかったか?

 「急にすまないな、サイラス。体調はどうだ?」
 
 よく見ると顔色も良く、とても長く臥せっていたとは思えない。

 「はい、父上。私はすでに健康で、今は馬術には軍馬を使っております」

 軍馬だと?気性が荒く、私の騎士でも乗りこなすのには年数を必要とするのに。コイツまさか…

 「フフフ、父上の想像通りかもしれません。私は7年前に王子教育を終了し、今ではいつ戴冠式と言われても良いよう準備は出来ております」

 サイラスは今までのことを話し始めた。

 物心付くと、兄がいた。両親には分け隔てなく愛されている実感も有り、なんの不満もない。

 幼い頃から王子教育として、この国の状況や資源、魔物による被害、隣国の中での立ち位置など、教師たちに教えてもらうことは一度聞けばすべて記憶出来た。

 皆もそうだと思っていた。
 兄にすでに習ったであろう国の内政について聞くと曖昧な部分が多く、その代わり聖女についての知識は誰よりも持っていた。

 この兄が将来王になるのか?聖女のことしか頭に無いこの兄が?大きくなれば変わるのか?

 王位継承権を持つものが多ければ、それが兄弟ともなれば国が荒れると、何冊も読んだ隣国の歴史書に書いてあった。

 もうすぐ弟か妹が生まれる。弟なら王になる素質があるか確認しなければならない。妹なら、僕が王位を継承する準備も必要だ。

 生まれたのは妹だった。
 両親は見たことのない甘い顔で妹を可愛いがっている。本当に可愛いので仕方ないが、可愛いがるとは甘やかすことではないのに。育児書に書いてあった。

 
 どう控えめに見ても兄より僕のほうが優秀だ。兄より弟のほうが王の資質があるとわかれば、家族も国も荒み始めるだろう。そんなことを僕は望まない。

 それからは、なにかに付けて体が弱いことにして、私室と図書館に引きこもった。

 あらゆる本を読み、司書に頼んで僕の王子としての予算で多くの本を取り寄せた。

 本だけの知識でも、これだけの量の本を読んだのであれば、王族の中では最も優れた知識を多く持つ王子となるだろう。

 いつか兄が王となり、その補佐として完璧に政務をこなすことが、弟として生まれた僕の役割だ。

 そう考えて、密かにあらゆる情報を仕入れていると、大問題が起きた。
 兄並びに父上までもが大失態をし、多額の費用を掛け召喚した大聖女がいなくなった。

 やはりだ、兄は幼い頃から聖女に盲目的で一方的な愛情を募らせ、それが裏目に出たのだ。
 そして父上も、そんな兄の言葉を鵜呑みにし大聖女を虐げた。
 
 そして今だ。
 やっと戻ってきてくれた大聖女が浄化魔法を使い、一時的ではあるが魔物と瘴気を祓った矢先、今度はイザベラだ。
 イザベラと母上は、一生幽閉で良いだろう。
 国の役に立たない、金ばかりかかる人間は、なんの価値もないどころか、いるだけで害だ。
 
 そして期待を裏切らない兄。
 大聖女と結ばれることだけを夢見る、愚かな兄。兄も退場して頂こう。

 サイラスは話し終わると一呼吸おき、
 「父上、父上もお疲れでしょう。しばらくは愛する家族とゆっくり離れで過ごしてもらうのがよろしいかと」
 

 そう言って軽蔑するでも笑うでもない表情を作ったサイラスの言葉に国王カーティスは鳥肌が立った。
 これは恐怖なのか、我が子の驚くべき千慮のせいなのか。

 「サイラス、お前は私のことをどう思う。愚かな王だと笑うか?」

 「父上、父上は愛情深い私の愛する父親です。ですが、その優しさは時に王としては判断を誤るのです。
 私は、一見優しくみえる優柔不断な医者より、無愛想で恐くても名医に治療してもらいたい。
 父上は強い王には向いていなかった」

 「そうか、お前から父親としては認められたことが救いだ。明日から引き継ぎを行う。戴冠式は半年後だ」
 
 「御意」
 サイラスは国王陛下に臣下としての礼をとった。



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