異世界召喚?そんなこと望んでません!元の世界に帰してください!

翡翠と太陽

文字の大きさ
50 / 94

50.メルトル村での日常

しおりを挟む
 あの王女様との修羅場から、逃げ帰って来て一月が経った。

 「あ~今日も美味し~!もう1個食べようかなぁ、ララさん…?」

 2個目のミートパイを食べ終わった私は、3個目のお許しが出るかそっとララさんを伺った。

 「レイ?つい昨日ワンピースが一着キツイかもって言ってたよね?今日は美味しいデザートがあるから、そっちで我慢しな?」

 出してくれたのは、フルーツたっぷりのジュレだった。

 「あ~あ~あ~、美味しそうー!!フルーツがキレイ!!カイルさん天才!」

 私が思い出して提供したレシピを、忠実に再現してくれるカイルさんは本当に天才だと思う。

 こんな幸せで平和な毎日を、この大好きな人たちと過ごすことが何より嬉しかった。
 そのお陰で食が進みまくり、体重が僅かに増加しつつある…。マズいよ、元の球体にはもう戻りたくない!

 そのために、ララさんには私のストッパー役をお願いしている。
 食事はもう三食ともカイル食堂で食べてるから、ララさんが私の専属の管理栄養士さんになってくれている。有り難い……

 食も満たされ、村の人のために仕事もして、住むところは快適。あとは何しようかな?

 なにか趣味も持つことにしよう、と言っても元はスイーツを食べることだけが最高の楽しみで、食べたスイーツの写真を撮ってSNSにこっそりと載せていた。これでも結構フォローしてくれる人はいたんだよなー。

 そうだ、スマホは無理でもカメラなら作れないかなー。
 うーん、画像を保存して転送は無理だよね…流石に。コピー機も作れそうにないからプリントするのも難しいし… 見たままをそのまま紙に写せたら良いなー。

 取り敢えず、写真にしたい紙の大きさを決めて、その紙が収まる箱を作って、覗き込むレンズとシャッターボタンを付けて…
 え?出来たんじゃない?
 木の箱だから撮れる気しないけど、なんか昔のカメラみたい!

 よし、撮影してみよう。
 『レンズに見える範囲をそのまま紙に写して欲しい』
 「はいチーズ」シュッ
 
 ん?シュッって言ったね、ん?シュッって言ったよね。どれどれ、箱の中の紙を見てみると……ヒィッ!写ってる…。
 
 木の箱で撮れるわけないじゃん!までがセットでのお遊びだったのに、魔法様怖い…。
 
 ………。よし!撮りまくるぞー!

 村の皆さんと100枚くらい撮りまくった。

 マーゴットさんにギャルポーズをしてもらったり、サイモンお爺とルドルフお爺にはあの有名な漫画の立ち方をしてもらった。

 あとはカイルさんララさん夫婦のツーショットとか、カイルさんの作ったミートパイも撮って、念願のマーゴットさんと私のツーショット、ノアさんも来たので3人でも撮って。

 皆に撮った写真をすぐに渡したら、驚きよりもめちゃくちゃ喜んでくれた。

 それから、前から気になっていた、メルトル村の特徴でもある色の屋根!たくさんの家の屋根がどんな風になっているのか、上空から写して見てみたい!

 綺麗に写したいから、屋根の掃除も魔法でこっそりしておいた。

 『メルトル村を上空から全部写して欲しい』
 カメラがシュンッと居なくなり、少ししてシュンッと私の手に戻ってきた。皆がどれどれと集まって来る。

 どれどれ~、どんな風に写ってるかな~。

 「…っ!凄いっ!メルトル村って虹だったんだ!すごーい、屋根の色綺麗!」
 
 おお~っ!と周りの皆さんが覗き込んで見ている。背の高いノアさんが後ろの方からどれ?と言って覗き込むと、息を飲んだ。

 「レイ!レイ、この写真…これか、これだったのか!?嘘だろ…だからか!」

 ノアさんだけがわかる謎の言葉に一同唖然としているが、ノアさんはお構い無しで、
 「レイ!ちょっと俺の家に来てくれ!」と言うと、早歩きで行ってしまった。

 その後ノアさんが見せてくれたものが、謎が謎を呼ぶ代物だった。

 「これを見てくれ。前に辺境の城で話しただろ?俺の国の宝物庫にあった石板と六色の宝石。この石板を見てくれ、この写真と一致するんだ」 

 ノアさんはこの石板を子供の頃から眺めているので、石板の不思議なかたちも、ランダムに開いている穴の位置も記憶している。
 メルトル村と屋根の写真を見て、この石板と一致しているとすぐにわかった。

 しかも石板のかたちはこのメルトル村とほぼ同じで、穴の位置は屋根の位置、家の建っている場所と同じだった。

 そして屋根の色。私が写真を撮る直前に綺麗にしたことで、本来の色が鮮やかに表れ、虹と同じ七色になったのだ。

 今までは汚れでくすんだ色だったため、気が付かなかったそうだ。

 「レイ、凄いぞこれは…!この屋根の色と同じ位置に、同じ色のこの宝石をはめるんだ。でも、宝石は6色だから1色足りないな……、藍色だ、藍色が無いんだ。なんでだろう?でも藍色を抜いた虹を作れば……」
 
 作れば…?

 「何かが起きる…と思う。わからん。でも待て、もう一度手紙を読んでみよう」
 六色の宝石が入った袋から手紙を出して読む。

 『この石板と宝石の魔力を感知した者へ
 正しく配置されることは瘴気の沼の魔王を葬りこの地を正常化に導く 忘れ去られたこの願いを叶える者はこの世界の救世主として現れるだろう その者を敬い尊き者として我が国の女神とするのだ アレクサンダー·ザイカラル』

 「曾祖父さんの手紙が抽象的過ぎてわからんな」

 お互いわからんしか出てこなかった。謎解きは好きだけど、解けた試しがない。

 「でもこの、正しく配置されることは…っていうのは、この石板に屋根の色と同じ宝石を、家の位置の通りに埋めていけばいいってことだよね?」
 
 「わからん」
 ノアさんはわからんしか言わなくなった。

 「でもレイ、俺がこの村に辿り着いた意味がやっとわかった。これはかなり大きな前進だ。レイがこの写真を撮らなければ、一生わからなかったと思う。レイ、お前は曾祖父さんの言う救世主だ」

 そう言って、ノアさんは私をギューッと抱き締めてくれた。
 お兄ちゃんがいたらこんな感じなのかな。大きなノアさんは私を包みこんで、本当の家族のような安心感があった。

 「そうだレイ、ハルバードがお前に会いたがっているぞ?もう何回も手紙が来てるけど、どうする?」
 
 あの修羅場から逃げて来たきり、ハルバードさんとは会ってもいないし、連絡もしていない。
 ハルバードさんの前で、ハルバードさんの婚約者の王女様にあんな事を言われて凄く嫌だった。
 
 酷く醜い女、王子様に結婚を迫った罪で処刑されるかもしれない女、王女の婚約者を誑かすふしだらな女。

 こんな事をハルバードさんの前で言われたくなかった。

 してもいないことはどうでもいい。
 でも、元の私は見る人が見れば醜い人間だったのだろう。日々欲望のまま食べたいだけ食べて、とても健康とは言えない体重だった。

 その事をハルバードさんに知られた事が何よりも嫌だった。
 何故だろう…
 今と違う私も私だ。

 嫌なことがあればそれを理由に食べて、その結果あの球体のような体型になった。
 だから仕方ないと、ストレス解消なんだから仕方ないと、自分に言い訳をして考えないようにしていた。

 ストレスに目をつぶっていたから。
 自分さえこの場をやり過ごせば、揉め事なくこの場が収まると思えば、いくらでも自分を犠牲にできた。言いたいことも言わず、怒ることもせずに、目をつぶっていた。
 それを理由にまた食べていた。

 そんな過去の自分を知られたくないから…?
 だからあれからハルバードさんに会いたくなかったの…?
 
 でも今は違う。
 言いたいこと言ったじゃん、あの王族に言えたじゃん。
 私、変われたんだよ、このメルトル村の皆がいてくれたから、変われたんだよ。強くなれたと思う。
 それを証拠にドカ食いしてない。

 でも、昔の私を知られたくないのはどうしてか、そこは思考がモヤッとしてわからない。
 ハルバードさんに会ったらわかるのかな。
 でもあの婚約者の王女様がいるんだよね?嫌だな、あの人にはもう二度と会いたくない。
 でも、私は強くなった、大丈夫。

 「ノアさん、私、辺境の地へ行きたいです。城の皆さんと写真を撮りたい。近いうちに行っても良いですか?」
 
 「そうか、ハルが喜ぶぞ」
とノアさんがニコニコしながら言う。

 「え?なんで喜ぶんですか?」
 
 「………わからん」

 わからんのかーい!

 ノアさんが早目に行ったほうが良いと言うので、早速翌日にノアさんと瞬間移動で辺境の地へ行った。




 
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。  〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜

トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!? 婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。 気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。 美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。 けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。 食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉! 「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」 港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。 気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。 ――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談) *AIと一緒に書いています*

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

【完】出来損ない令嬢は、双子の娘を持つ公爵様と契約結婚する~いつの間にか公爵様と7歳のかわいい双子たちに、めいっぱい溺愛されていました~

夏芽空
恋愛
子爵令嬢のエレナは、常に優秀な妹と比較され家族からひどい扱いを受けてきた。 しかし彼女は7歳の双子の娘を持つ公爵――ジオルトと契約結婚したことで、最低な家族の元を離れることができた。 しかも、条件は最高。公の場で妻を演じる以外は自由に過ごしていい上に、さらには給料までも出してくてれるという。 夢のような生活を手に入れた――と、思ったのもつかの間。 いきなり事件が発生してしまう。 結婚したその翌日に、双子の姉が令嬢教育の教育係をやめさせてしまった。 しかもジオルトは仕事で出かけていて、帰ってくるのはなんと一週間後だ。 (こうなったら、私がなんとかするしかないわ!) 腹をくくったエレナは、おもいきった行動を起こす。 それがきっかけとなり、ちょっと癖のある美少女双子義娘と、彼女たちよりもさらに癖の強いジオルトとの距離が縮まっていくのだった――。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...