異世界召喚?そんなこと望んでません!元の世界に帰してください!

翡翠と太陽

文字の大きさ
67 / 94

67.辺境の地の改革

しおりを挟む
 メイベルさんの結婚式が終わり、マーゴットさんとメルトル村に帰った。
 マーゴットさんはなんだか元気になって、家族の写真を部屋にたくさん飾っていた。

 カイル食堂に行くと、
 「レイ、あんたと結婚するという辺境のご当主様がここまで来たんだよ!レイと結婚させて欲しいって!レイの家族に先に許可をもらいたいって!もうビックリしたよー!」

 「泣かせたら許さないと言っておいたぞ」

 私は二人に抱き着いて泣いた。
 そして、今までありがとうとたくさんお礼を言った。

 それから私は辺境の城に戻った。
 
 私は正式にハルの婚約者として発表され、有り難いことに辺境の城もすっかりお祝いムードで皆がはしゃいでいた。

 ハルが一番はしゃいでいる。
 
 「美麗?式で出す料理なんだけど、肉と魚で選べるようにしようと思うんだよね?どうかな?」

 「うん、良いと思うよ!」

 「それとね、デザートなんだけど式を挙げるのは夏でしょ?だからクリーム系は溶けちゃうから、フルーツを使って彩りよくしようと思って、どうかな?」

 「うん、良いと思うよ!」

 「………ねえ、美麗、俺ばっかり考えてない?美麗も少しは案を出してよ!」

 え?ハルの案で良いと思うんだけど、ダメなの…?

 ハルは、もう!と言うと、私を横抱きに抱えそのままソファーに座ると、お仕置きとばかりに私の唇を塞ぎ好き勝手した。

 「俺ばっかり喜んでるみたいだから」

 ハルは盛大に拗ねている。

 「ハル?私もすごく嬉しいんだよ?ハルと考えていることが一緒なのか、ハルの提案はどれも最高だよ?」

 「そうなの?」
 
 と言うと、少し悪い顔をしたのを私は見逃さなかった。

 「じゃあその気持ちが本当なのか、見せて欲しい」

 こうなったら言うことを聞くまで私を抱えて離さない。ハル得にしかならない所業だ……。

 私は両手でハルの胸のシャツを握ると、ハルの唇めがけて自分の唇をチュッと付けた。それではもちろん足りないハルは、私に襲い掛かるように覆い被さると私の唇に気の済むまで吸い付くのだ。

 そんな甘い毎日は私に安心と幸せをくれた。

 それから、私の人生をかけると言っても良い兵士さんのお仕事事業を進めていった。
 私は自分のお金と力をフルに使い、すぐに職業訓練校の建物を建てた。
 こんなことが一瞬で出来るならお前がインフラ工事全部やれと言われたら困るので、周囲に見えないように覆い、時が来たらお披露目することにした。

 訓練校の講師は私の出した条件で、ハルが探してくれると言ったのでお任せした。
 とにかく感じ悪い人、差別的な人、すぐにバカにする人、すぐ怒る人、お金に執着する人、これ以外で男女年齢問わず、良い人がいればとお願いした。

 朝と昼の食事を作ってくれる料理人も探した。本当はカイルさんにお願いしたかったけど、あの夫婦はメルトル村が好きだから無理だ。
 
 それから二月後、すべての準備が整い、インフラ工事と職業訓練校が始まった。

 すべてが順調とは言えないが、一つ一つ問題点を修正して、皆が怪我の無いように、お腹が満たされ、望む学びが進んでいくよう対応していった。

 職業訓練校には、ハルの知り合いで王宮で文官をしていた人も来てくれた。あの王家に嫌気が差して、この辺境の地に家族で引っ越してきたそうだ。

 その文官さんのお子さんが身体が弱く、自然の多いこの地に常々住みたいと思っていたが、なにせ自然より魔物がいて無理だった。
 魔物が消え失せ、ハルからのタイミングの良い誘いに二つ返事で来てくれて、今は職業訓練校の事務長としてバリバリ働いてくれている。

 しかし、環境の変化からかお子さんの熱が下がらず困っており、仕事も来たり休んだりしているという。

 私がこの職業訓練校と土木工事員の皆さんにお願いしたことは、家族の病気や用事があれば休んで構わないので、遠慮なく言って欲しいと。

 そのかわりお給料は時給制にして、働いた分は出るし、ボーナスも出す事にした。休んだ分の補填にと思って。

 お子さんの熱が下がらず心配しているとハルから相談されて、その文官のエリックさん宅に行ってみた。
 
 「大聖女様…!わざわざ足をお運び頂いて申し訳ありません…」

 初めて会うけどエリックさんと奥さんが疲れているように見えた。

 「いえいえ、こちらこそお引越しされてすぐなのに、慣れない仕事をまとめてくれて大助かりなんです、ありがとうございます」
 
 「リル?大聖女様が来てくださったわよ?」
 
 「え…?大せいじょさま…?うれしい、リル大せいじょさまに会ってみたかったの…」
 
 え?顔が真っ赤!手を握ると凄い高熱だった。よくしゃべれたね…すぐ治すからね!

 「リルちゃん、よく頑張ったね、私はレイだよ?今治すからね」

 『リルちゃんの病気の原因と今ある症状をすべて取り除いて欲しい』

 私の手からリルちゃんの全身を白い癒しの光がキラキラと包み込む。

 後ろで見ているご両親が、あぁ!と声をあげると光が消え、そこには穏やかな呼吸ですっかり熱の下がったリルちゃんがいた。

 「おかあさま、リル、すごく元気になったよ!どこも痛くない!お腹すいた!」

 「リル!!」
 ご両親がリルちゃんに泣きながら抱きつき、声をあげて泣いている。

 そのお二人の背中にもこっそりと癒しの力を注いだ。

 「大聖女様…なんと申し上げて良いか…リルの…リルの命の恩人です…ありがとうございます…!」

 良かった、これでリルちゃんも元気にたくさん遊べるようになるかな。

 「レイさま、ありがとう、大好き」

 きゃわ、きゃわいい~!!なんて可愛いのー、もう!

 数日後、リルちゃんからお手紙が届いた。エリックさんが、
 「なんて書いてあるのか字がまだ書けないのですが、どうしても大聖女様に渡して欲しいと言うので…すみません」

 「え!嬉しい!お手紙なんて初めてです!リルちゃんにお返事書きますね!」

 「あっ!いえいえ、大聖女様はお忙しいのでそこまでは!私から伝えておきますので!」

 お手紙を開くとそこには、字のような絵のような何かが大きく書かれていた。
 うーん芸術だねこれは。

 「可愛いー!私の部屋に飾ります!」

 リルちゃんは元気になったけど、言わないだけでどこかで病気の人はきっといるよね?どうしよう、私が毎日アチコチの家に訪問するわけにいかないし…。
 
 置き薬みたいなものがあれば良いな。夜中に熱が出たチビッコとかがすぐに飲めるような。それだな、私久々に冴えてるんじゃない?

 でもどうやって作ればいいの…?

 そこに久しぶりのノアさんが辺境の地に戻ってきた。
 
 

しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。  〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜

トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!? 婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。 気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。 美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。 けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。 食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉! 「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」 港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。 気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。 ――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談) *AIと一緒に書いています*

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

【完】出来損ない令嬢は、双子の娘を持つ公爵様と契約結婚する~いつの間にか公爵様と7歳のかわいい双子たちに、めいっぱい溺愛されていました~

夏芽空
恋愛
子爵令嬢のエレナは、常に優秀な妹と比較され家族からひどい扱いを受けてきた。 しかし彼女は7歳の双子の娘を持つ公爵――ジオルトと契約結婚したことで、最低な家族の元を離れることができた。 しかも、条件は最高。公の場で妻を演じる以外は自由に過ごしていい上に、さらには給料までも出してくてれるという。 夢のような生活を手に入れた――と、思ったのもつかの間。 いきなり事件が発生してしまう。 結婚したその翌日に、双子の姉が令嬢教育の教育係をやめさせてしまった。 しかもジオルトは仕事で出かけていて、帰ってくるのはなんと一週間後だ。 (こうなったら、私がなんとかするしかないわ!) 腹をくくったエレナは、おもいきった行動を起こす。 それがきっかけとなり、ちょっと癖のある美少女双子義娘と、彼女たちよりもさらに癖の強いジオルトとの距離が縮まっていくのだった――。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...