異世界召喚?そんなこと望んでません!元の世界に帰してください!

翡翠と太陽

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68.マーゴットさんの偉業

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 「ノアさん!久しぶり!」

 「あぁレイ、元気だったか?ハルと婚約したんだってな?おめでとう」

 ノアさんは腕を広げて私を抱き締めてくれた。

 「妹みたいなお前が幸せになるなら嬉しいよ」

 「ありがとうノアさん、私もお兄さんみたいなノアさんにたくさんお世話になっ―――」

 私はグイッと引っ張られた。
 
 「美麗、結婚前から浮気か?ノア、俺の奥さんを誑かさないでくれる?」

 ノアさんはゲラゲラと大笑いしている。

 「ハル、おめでとう。レイを幸せにしてやってくれ」

 「もちろんだ」

 ハルとノアさんも抱き合っていた。

 そのあと、久しぶりに3人でお茶をした。

 「レイ、お前が瘴気の沼を浄化しただろ?あの時の光が俺の国の城まで届いたらしくて、俺の家族が驚いてたよ。そしたら家族皆んながお前に是非会いたいって。
どうかな?そんな時間あるか?」

 ハルが今すぐ結婚したいと言うのを城中の人に待てと言われ、貴族は通常2年はかけて結婚式の準備をするのを、何とか10か月にしたそうだ。

 城の皆さんの苦労が目に浮かぶ。でも皆んなハルがやっと結婚すると喜んでいる。

 式までの間、私はそんなに忙しくはない。ドレスはハルが作るというのでお任せしてるし、半年くらい前になったらメルトル村の広場を借りるのに、村の皆さんに菓子折りを持ってご挨拶に行くくらい。

 「私は今のところ仕事も落ち着いて来たから大丈夫だけど、ハルは?」

 「俺も行きたいとこなんだけど、どうも王宮の様子が気になる。サイラスが何か企んでいるようなんだ。エリックが今探ってくれてはいるんだか」
 
 エリックさんだって職業訓練校の仕事で忙しいのに……
 なんのためにいるんだろう王族って。本当に要らないし厄介な人たち。

 「ハル、巻き込まれたりしない?あんな人たちにまた迷惑をかけられるのは嫌だよ」

 ハルは笑うと、

 「大丈夫だ俺がアイツなんかに何かされるなんて無い。心配ないよ」

 それなら良いけど、あの人たち本当に話しが通じないから、逆に怖いんだよね。

 それから私は、置き薬のことを二人に話した。
 家によく効く薬があれば夜中とか、赤ちゃんから大人まで熱を出しても皆んな安心なのではと思うと。

 「美麗、いいね!とても喜ばれるよ。そんな万能薬があれば、美麗が度々出向かなくても良くなるしね」

 余程酷い怪我や病気はもちろん私が出陣するが、私を待っててもらう間、一時的な症状なら治せるくらいの薬があれば良いな。

 「レイ、マーゴット婆さんが摘んでる草が体の回復を促す作用のある薬草だぞ。あれ?前にも話したか」

 あー!そうだった!あの適当に摘んでそうな草は薬草だって前にノアさんに聞いてた!

 「そう!聞いてた!けど忘れてた!私今すぐマーゴットさんに会いたい!ハル、行ってきて良い?」

 ハルは苦笑いをすると、
「ダメって言っても聞かないから良いよ。俺も少しノアと話しがあるし」

 「ありがとう!ノアさんまだここに居るよね?待っててくれる?じゃあ私行ってきます!」

 シュッンと移動してメルトル村に来た。

 「おやレイかい、おかえり。うちでお茶淹れるからおいで」

 期待を裏切らない安定のマーゴットさん、やっぱり目の前にいた。
 
 「マーゴットさん、私マーゴットさんが採ってる草が薬草だって知らなかったの。それね、薬になるかな?」
 
 「はて、そうなのかい?どうりでこの草のお茶を飲むと体が楽になると思ってたよ」

 え…?知らなかったの?なんのために摘んでたの?

 「マーゴットさん、なんであの草摘んでたの?」

 「なんで?はて、なんでだろうね?でもねあの草だけいつも光ってるんだよ。だからついあの草を摘んじゃうのさ」

 いやいや、だからかー!とはならないから!でも不思議、マーゴットさんを含めて。

 「マーゴットさん、その草を私に少し分けて欲しいんだけどいい?」

 「おや、あんたも変わってるね、こんな草が欲しいなんて」

 …………。それを毎日摘んでるマーゴットさんだけには言われたくない。

 私はマーゴットさんがどっさり分けてくれた草を、自分の緑の家に持ち帰ってさっそく実験してみた。 

 まずは草を煮出して、それを草と煮汁に分けた。
 草を取り出したのに、おどろおどろしい煮汁だ。病気が良くなると言われても飲みたくない……。

 それでもその煮汁に手をかざし、

 『病気が良くなる薬になって欲しい、すごく飲みやすくして』

 おどろおどろしい煮汁がホワッと光ると、何故か透明の液体になった。

 え?何日も変え忘れた金魚の水槽みたいな色だったのに。

 でもこれなら飲む気になれるね。味はどうかな?ペロッと味見をすると、

 「なにこれ!?苦い!……すごく飲みやすくしてって言ってもこれかー」

 そのあと、煮た草の方を細かくみじん切りにして乾燥させて、すり潰して粉にしてみた。

 「抹茶みたい!これならどうかな?」

 『体によく効く薬にして欲しい。すごく飲みやすくして』
 
 またその抹茶のような粉はホワッと光った。

 「いやいや、ホワッと光れば大丈夫って思わせてるでしょ?どうせまた苦いんでしょ?」
 
 またペロッと味見をする。
 
 「にっがーい!煮汁と同じだー!これで本当に飲みやすくなってるの??」

 それから色々と試して見たところ、私の作る煮汁が原液すぎるかも知れないと思い至った。

 私の手で草を鷲掴みにして、握った分の草を鍋の水半分に入れて煮出す。
 それを煮た草と煮汁に分けて魔法をかけ、10倍くらいに薄めるとあらビックリ!なんて飲みやすいんでしょう。

 誰か病気の人居ないかな?すぐに生贄を探しに村へ飛び出すと、遠くから、
 「レイちゃーん、カイルが熱出したってよ!こりゃ雪が降るわ!アハハハ!」
 
 大変!雪が降る前にカイル食堂に行かないと!草の汁を持ってダッシュする。
 
 「は!やだもう私!瞬間移動できるじゃん!」

 カイル食堂に着くと、本日閉店の札がかかっていた。

 「ララさーん、レイです」

 「あらレイ!どうしたの?今日はカイルが熱出して休みなんだよ、明日は嵐だね、アハハハ」

 皆んななぜ笑うの?

 「ララさん、私、マーゴットさんの草で薬を作ってみたの。カイルさん、飲んでくれるかな?」

 「あらそうかい?アイツが食べれない物は無いよ!アハハハ!カイルで試してみな?なにを食べても飲んでも不死身だから!」

 ララさんと、カイルさんの寝てる部屋に行くと、尋常じゃないくらいはぁはぁ言っている。カ、カイルさんが死んじゃう…

 「あんた!レイが薬持ってきてくれたよ!ほら口開けな!」
 
 あー!容赦ない!本人の同意も得ずに、口に流し込んだ…ララさん強すぎる……。

 「ふぅー、レイ?ありがとう、治ったぞ」

 …え?効きすぎてる…。怖い。
 熊でこの量がちょうどいいのか……。
 それなら一般人はこの半分だね。そして子供は更にその半分だな。

 「レイ!ありがとね!午後から店を開けるからミートパイ食べにおいで!」

 ララさん強い…病み上がりの熊に鞭打ってる…。

 「う、うんありがと!でも今日は薬で忙しいからまた今度来るね!カイルさんお大事に!」

 私はまたダッシュで家に戻って薬を調整した。
 残念ながら私にはこの薬はなんの効果もない。私は怪我をしてもすぐに治るし、病気もしない。大聖女という体になったからだ。

 「よし、この村だとお年寄りばかりで薬を試すには危険だ。城に戻ろう」

 草と鍋を持ってまた城に戻った。

 「うわっ!レイか!驚いた!」

 「美麗、おかえり!好きだよ、……鍋と草を持ってどうしたの?」

 ハルはつい2時間くらい前まで一緒にいたのに、私に抱き着き頭やおでこにチュッチュッしている。

 「それがね、薬を作って飲ませたんだけど、熊にはよく効いたけど、人には多分致死量だったの。だから少し調整して、城の人たちで試してみたくて」

 「レイ!カイルさんに何かあったのか?」

 あっ!しまった!ノアさんはカイルさんラブなんだった……。

 「あっいや、大丈夫だよ!熱が出てはぁはぁ言ってたけど、私の薬をララさんが熊の口に流し込んで、すぐに治ったの!」

 「はぁ~なんだ…良かった。そうか治ったなら安心だ。レイありがとう、俺からも礼を言うよ」
 
 ノアさん……、愛する人を心底心配してるんだね……愛だな。

 「ちょっと、メルトル村で熊に餌付けしてるのか?美麗、危ないんだよ熊は」

 え?熊?熊の話……は!しまった。カイルさんを熊扱いしてた!だって、大きさ熊とどこが違うの…?

 「いや、ハル、レイが言いたいのはカイルさんのことだ。多分、薬の事しか考えてないから、身長体重を見て被験体としか思ってなかったんだろう」

 はい、そうです。でも熊でカイルさんとわかったノアさんもさすがだね。愛だな。
 
 そのあと城の人たちで、病気や怪我をした人を見つけ出し、この薬を試してもらうとすべての人に効果があった。

 思ったのはマーゴットさん凄い、ということだけだった。




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