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77.仕事を再開
私が目覚めてから三か月が経った。
辺境伯領は、元兵士の皆さんが頑張ってくれて、傷んで壊れていた箇所も修繕し、役場や病院などの建物は綺麗で頑丈になった。領民の皆さんもとても喜んでいた。
そして道路も、舗装してあるのかと思うほど平らで、馬車のガタつきも格段に減った。もう完璧にプロの仕事だ。
そして職業訓練校も、土木のお仕事をしたい人向けや、文字を習いたい人、事務仕事をしたい人、とにかく色々学びたい人、学ぶ意欲のある人はどんな人でも受け入れた。
元は無職になった兵士さんのためにと思い設立したが、聞くと女性にも学びたい人がたくさんいた。
中にはいざ学び始めると、学者くらい植物に詳しい女性がいたり、文章を書かせたら作家になれるほどの文才のある人もいた。
学ぶ機会がなかっただけで、埋もれている才能がたくさんあることに驚いた。
もうこれは国の宝だと思い、それなら幼いうちに才能を発掘し、本人の興味に合わせてその才能に投資をしようと思った。
子供はどんな可能性を持っているかわからない。
「ハル、私、子供たちの学校を作りたいの。年齢で分けて、早い子は3歳くらいから学ばせたい。幼い子は勉強ではなく、遊びの中から才能を見つけたいの」
ハルは驚いて言葉を失った。
「美麗、君って人は本当に俺を驚かせるのが上手いな…。その話はもうエルドレッド殿の範疇だ。とりあえず企画書を作って提出しよう。了承を得られれば、国家予算で進められるぞ」
私は元の世界の幼稚園や小学校をイメージし、幼稚園は3歳から6歳まで、小学校は7歳から14歳までとし、授業料は無料にして朝食と昼食も無料で出す事にした。
食事を出せば、職業訓練校に通う家族と一緒に食事が取れる。
お腹が空けば悪いことを考えがちだ。食が満たされたら、次のことが考えられる。
たくさん食べて、興味のあることを見つけて、たくさん勉強してほしい。
「やあ、レイ殿、久しぶりだね。元気にしているとは聞いていたが、なかなか会いに行けなくてすまなかったね」
エルドレッドさんは、この国を治めている貫禄なのか、ひとまわり大きく見えた。
「それでレイ殿、企画書を見たよ。少し改善点はあるが、概ねこれで進めていけるよ。凄いね、君ひとりで思いついたのかな?これは未来のためにも国のためにも、素晴らしい発想だ。君の小さな頭にある知恵と想像力にはあとどれだけ驚かされるのかな?」
エルドレッドさんは、楽しそうな顔をしてにっこり笑った。
「これは君の素晴らしい案だ。しかし、国のためを考えると国費で進めるべき事業だ。君始動で進めてもらえるかな?」
「ありがとうございます!それでは細かく相談させてもらいながら進めて行きますね!嬉しい!」
エルドレッドさんは急に、
「…!え?あっ、あぁ、そうだね、ありがとう、…?なんで、ありがとう?あれ?俺…どうした…?」
と顔を真っ赤にしている。え?エルドレッドさん大丈夫…?熱?風邪?
すると、隣にいたハルが突然私の顔をハルの胸に押し付けた。
「…美麗、帰るぞ、私たちの家に。エルドレッド皇太子殿下、私の婚約者はその辺りはとても鈍感で私は助かっていますよ、それではまた」
謎かけ?謎かけなの?私が鈍感だから、謎かけがわからないって話し?
ハルは、困ったな、その都度付き添わないとダメだな…、気付きやがって…とブツブツ言うと、
「いいかい美麗、エルドレッド殿に会うときは必ず、絶対に俺も一緒だよ?約束できる?」
すがるように、子供に言うように私を見つめる。……その心は…?
「…?うん、わかった」
「偉いね、美麗は良い子だ!よしよし今日も可愛いなぁ~、本当に」
と言い、城の廊下なのに私をギュッと抱き締めた。
それから私は、職業訓練校の横の土地に幼稚園と小学校を建てた。
それも元兵士の皆さんの力を借りつつ、私の力を皆さんに注ぎながら驚異的なスピードで建設が進み、あっという間に開校となった時には自分でも驚いた。
幼稚園の先生は、子育ての終わったベテラン父母たちに情緒面を担当してもらい、元文官さんたちはガッツリお勉強を、元気に外で遊ぶ担当を子供好きの若者が担当した。
その人選は、エルドレッドさんとザイカラル帝国の皇后で、エルドレッドさんのお母様であるキャサリン様だった。
「レイ様…お会いしたかったわ…」
そう言って私をガッチリ抱き締めたキャサリン様は、目に涙を浮かべ、
「体調は良いのかしら?私はずっと貴女に会いたかったのよ?だけどノアがまだだまだだって言って全然会わせてくれないの、それでね、貴女にお手紙を書いたのよ、それもノアが――――」
キャサリン様の勢いが止まらないが、私が一年も眠っている間、ずっと気に掛けてくれていたなんて、ありがたい…。
「キャサリン様、ありがとうございます。そして講師の方々も紹介してくださって嬉しかったです!」
「あ、あら!やだ…えっ?…ええ、良いのよ!そんな事くらい、私に任せて?…それより貴女のこともう一度抱き締めても良いかしら?」
なぜか真っ赤になっているキャサリン様は、エルドレッドさんとノアさんに退場させられていた。なぜ?
小学校もザイカラル帝国からのベテラン教師が赴任してきて、幼稚園の講師と連携を取りながら、カリキュラムを進めていってくれた。
この国初めての幼稚園設立のため、幼稚園講師から教材が少ないと相談された。
調べてみるとこの国に絵本が無かった。
私も教育について詳しくはないが、自分が幼稚園生の頃、よく絵本や紙芝居を読んでもらった記憶がある。
よし、1冊作ってみよう。
大好きだった三匹のヤギのお話を完全にパクった。大人になってから思い出してもよい物語だ。…でもこれってバレたら訴訟で完全敗訴だよね…。どうかバレませんように…
子供たちに読んで聞かせると、みんな目を丸くして驚いていた。あれ?違った…?名作なんだけど……
「「「れいしゃま!もっかい!もっかい!」」」
講師の方々も、もっかいという顔をしている。良かったー!
このあと「もっかい」コールに応え20回くらい読んだ。最後の方は子供たちが、「オレだー!」と一緒に叫んでいた。名作だわ~!
その他にもどろんこになるワンちゃんのお話も丸パクリした…。
それ以外は天気にかかわらずフィールドワークを多めにお願いした。
製薬会社で働くことになり、細菌やウイルスなどについても少し学んだ。
その時、子供の頃から土に触れることは良いことだと聞いたのを思い出した。
後にどんなことが役に立つかわからない。外で思いっきり遊びながら辺境の地の豊かな自然を、ここに住むものとして知識として知っておいてほしい。
子供の頃に知っておけば、大人になっても大切にしてくれるかもしれない。
草や花、昆虫など、男女問わず嫌悪感を知らないうちに、触れて観察してほしい。気持ち悪い虫かもしれないけど、調べてみたら草木には役立つ虫かもしれない。
そういった事を伝えると、講師の方々がうーんと唸っていた。
「我々の考える教育とはまるで違います。しかし、とても興味深い話です」
子供たちが興味を持った花でも虫でも良いので、それをとことん調べさせてほしい。
花なら、どんな色でいつ咲くのか、実はなるのか毒は無いか、どこまで大きくなるのか、その花に関してはミニ博士になれるくらい徹底して調べて、それを発表する機会もつくる。それを子供の自主性を尊重しながらお手伝いしてあげてほしい。
「わかりました、我々もそのような授業は初めてですので上手くいくかわかりませんが、やってみましょう」
そうして辺境の地の幼児教育は始まった。
教育面は結果が出るのに少し時間が必要なので、あとは時々エルドレッドさんと一緒に様子を見ながら、講師の皆さんにお任せした。
辺境伯領は、元兵士の皆さんが頑張ってくれて、傷んで壊れていた箇所も修繕し、役場や病院などの建物は綺麗で頑丈になった。領民の皆さんもとても喜んでいた。
そして道路も、舗装してあるのかと思うほど平らで、馬車のガタつきも格段に減った。もう完璧にプロの仕事だ。
そして職業訓練校も、土木のお仕事をしたい人向けや、文字を習いたい人、事務仕事をしたい人、とにかく色々学びたい人、学ぶ意欲のある人はどんな人でも受け入れた。
元は無職になった兵士さんのためにと思い設立したが、聞くと女性にも学びたい人がたくさんいた。
中にはいざ学び始めると、学者くらい植物に詳しい女性がいたり、文章を書かせたら作家になれるほどの文才のある人もいた。
学ぶ機会がなかっただけで、埋もれている才能がたくさんあることに驚いた。
もうこれは国の宝だと思い、それなら幼いうちに才能を発掘し、本人の興味に合わせてその才能に投資をしようと思った。
子供はどんな可能性を持っているかわからない。
「ハル、私、子供たちの学校を作りたいの。年齢で分けて、早い子は3歳くらいから学ばせたい。幼い子は勉強ではなく、遊びの中から才能を見つけたいの」
ハルは驚いて言葉を失った。
「美麗、君って人は本当に俺を驚かせるのが上手いな…。その話はもうエルドレッド殿の範疇だ。とりあえず企画書を作って提出しよう。了承を得られれば、国家予算で進められるぞ」
私は元の世界の幼稚園や小学校をイメージし、幼稚園は3歳から6歳まで、小学校は7歳から14歳までとし、授業料は無料にして朝食と昼食も無料で出す事にした。
食事を出せば、職業訓練校に通う家族と一緒に食事が取れる。
お腹が空けば悪いことを考えがちだ。食が満たされたら、次のことが考えられる。
たくさん食べて、興味のあることを見つけて、たくさん勉強してほしい。
「やあ、レイ殿、久しぶりだね。元気にしているとは聞いていたが、なかなか会いに行けなくてすまなかったね」
エルドレッドさんは、この国を治めている貫禄なのか、ひとまわり大きく見えた。
「それでレイ殿、企画書を見たよ。少し改善点はあるが、概ねこれで進めていけるよ。凄いね、君ひとりで思いついたのかな?これは未来のためにも国のためにも、素晴らしい発想だ。君の小さな頭にある知恵と想像力にはあとどれだけ驚かされるのかな?」
エルドレッドさんは、楽しそうな顔をしてにっこり笑った。
「これは君の素晴らしい案だ。しかし、国のためを考えると国費で進めるべき事業だ。君始動で進めてもらえるかな?」
「ありがとうございます!それでは細かく相談させてもらいながら進めて行きますね!嬉しい!」
エルドレッドさんは急に、
「…!え?あっ、あぁ、そうだね、ありがとう、…?なんで、ありがとう?あれ?俺…どうした…?」
と顔を真っ赤にしている。え?エルドレッドさん大丈夫…?熱?風邪?
すると、隣にいたハルが突然私の顔をハルの胸に押し付けた。
「…美麗、帰るぞ、私たちの家に。エルドレッド皇太子殿下、私の婚約者はその辺りはとても鈍感で私は助かっていますよ、それではまた」
謎かけ?謎かけなの?私が鈍感だから、謎かけがわからないって話し?
ハルは、困ったな、その都度付き添わないとダメだな…、気付きやがって…とブツブツ言うと、
「いいかい美麗、エルドレッド殿に会うときは必ず、絶対に俺も一緒だよ?約束できる?」
すがるように、子供に言うように私を見つめる。……その心は…?
「…?うん、わかった」
「偉いね、美麗は良い子だ!よしよし今日も可愛いなぁ~、本当に」
と言い、城の廊下なのに私をギュッと抱き締めた。
それから私は、職業訓練校の横の土地に幼稚園と小学校を建てた。
それも元兵士の皆さんの力を借りつつ、私の力を皆さんに注ぎながら驚異的なスピードで建設が進み、あっという間に開校となった時には自分でも驚いた。
幼稚園の先生は、子育ての終わったベテラン父母たちに情緒面を担当してもらい、元文官さんたちはガッツリお勉強を、元気に外で遊ぶ担当を子供好きの若者が担当した。
その人選は、エルドレッドさんとザイカラル帝国の皇后で、エルドレッドさんのお母様であるキャサリン様だった。
「レイ様…お会いしたかったわ…」
そう言って私をガッチリ抱き締めたキャサリン様は、目に涙を浮かべ、
「体調は良いのかしら?私はずっと貴女に会いたかったのよ?だけどノアがまだだまだだって言って全然会わせてくれないの、それでね、貴女にお手紙を書いたのよ、それもノアが――――」
キャサリン様の勢いが止まらないが、私が一年も眠っている間、ずっと気に掛けてくれていたなんて、ありがたい…。
「キャサリン様、ありがとうございます。そして講師の方々も紹介してくださって嬉しかったです!」
「あ、あら!やだ…えっ?…ええ、良いのよ!そんな事くらい、私に任せて?…それより貴女のこともう一度抱き締めても良いかしら?」
なぜか真っ赤になっているキャサリン様は、エルドレッドさんとノアさんに退場させられていた。なぜ?
小学校もザイカラル帝国からのベテラン教師が赴任してきて、幼稚園の講師と連携を取りながら、カリキュラムを進めていってくれた。
この国初めての幼稚園設立のため、幼稚園講師から教材が少ないと相談された。
調べてみるとこの国に絵本が無かった。
私も教育について詳しくはないが、自分が幼稚園生の頃、よく絵本や紙芝居を読んでもらった記憶がある。
よし、1冊作ってみよう。
大好きだった三匹のヤギのお話を完全にパクった。大人になってから思い出してもよい物語だ。…でもこれってバレたら訴訟で完全敗訴だよね…。どうかバレませんように…
子供たちに読んで聞かせると、みんな目を丸くして驚いていた。あれ?違った…?名作なんだけど……
「「「れいしゃま!もっかい!もっかい!」」」
講師の方々も、もっかいという顔をしている。良かったー!
このあと「もっかい」コールに応え20回くらい読んだ。最後の方は子供たちが、「オレだー!」と一緒に叫んでいた。名作だわ~!
その他にもどろんこになるワンちゃんのお話も丸パクリした…。
それ以外は天気にかかわらずフィールドワークを多めにお願いした。
製薬会社で働くことになり、細菌やウイルスなどについても少し学んだ。
その時、子供の頃から土に触れることは良いことだと聞いたのを思い出した。
後にどんなことが役に立つかわからない。外で思いっきり遊びながら辺境の地の豊かな自然を、ここに住むものとして知識として知っておいてほしい。
子供の頃に知っておけば、大人になっても大切にしてくれるかもしれない。
草や花、昆虫など、男女問わず嫌悪感を知らないうちに、触れて観察してほしい。気持ち悪い虫かもしれないけど、調べてみたら草木には役立つ虫かもしれない。
そういった事を伝えると、講師の方々がうーんと唸っていた。
「我々の考える教育とはまるで違います。しかし、とても興味深い話です」
子供たちが興味を持った花でも虫でも良いので、それをとことん調べさせてほしい。
花なら、どんな色でいつ咲くのか、実はなるのか毒は無いか、どこまで大きくなるのか、その花に関してはミニ博士になれるくらい徹底して調べて、それを発表する機会もつくる。それを子供の自主性を尊重しながらお手伝いしてあげてほしい。
「わかりました、我々もそのような授業は初めてですので上手くいくかわかりませんが、やってみましょう」
そうして辺境の地の幼児教育は始まった。
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