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79.その後
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メルトル村は元にあった場所に戻った。私が戻したのだけど。
もともと魔物の森と瘴気の沼は、旧ユストル王国の辺境の城と、ザイカラル帝国の城に挟まれるように国境沿いに位置していた。
今はもうこの国境はないので、元の位置に戻したメルトル村の北側に道路を通して、旧ユストルとザイカラル帝国をつなぎ、主要な道路がメルトル村のそばを通ることになった。
もうあの王族たちはいないが、メルトル村の皆さんには引き続き静かに穏やかに過ごしてもらいたいので、私が張った巨大なカプセルバリアはそのままにしてある。
村人はバリアの出入りは自由、外から入れるのは村人の家族のみにした。
なので村人は以前の生活と何ら変わらない日常を送っている。
そんなある日、村から旧魔物の森に散歩に出たサイモン爺さんがおかしな物を拾ってきた。
「レイ、見てみろこれ。宝石を拾ったぞ、しっ!誰にも言うなよ?」
「なにこれ宝石!?サイモンお爺、大金持ちになるの?独り占め…?」
「サイモン爺さん、それ宝石じゃないぞ、魔石だ」
「けっ!なんだただの石ころか、チッ」
「いやいや違うよ爺さん!あっ待ってって…あー!行っちゃったよ、これ宝石なんか比じゃないくらいの希少な石なんだけど…」
旧魔物の森には、何千年も前からの魔物の死骸が積もりに積もって埋まっている。
その魔物の心臓だった部分は強い魔力を残し、土の中にあっても土に還ることはなく、そのまま化石のようになって土の中に存在するらしい。
鑑定魔力を持つノアさんは、その魔石が強い魔力を持つことを知っており、旧魔物の森から薄っすら魔力を感じていたそうだ。
「これは世界中の魔力を持たない国の原動力としてかなり高額で売り買いされているんだ、これはサイモン爺さんの言う通り誰にも言ってはならない、バレたら最後あらゆる国から最悪攻め込まれるかもしれない」
……ヒィッ!怖い!絶対に嫌だ!死んでも言いません!
「でもこれを売ったら大金持ちになれるの?」
「うーんまあそうだけど、個人で売ったりするものではないな。まずこれをどこで手に入れたかってことを話すまで拷問されるな」
……ヒィッ!!怖い!絶対にすぐバラしちゃう!
「これは外交のカードに使えるんだよ、魔石をあげるからアンタのとこの国の鉱石をタダで寄越せとか、小麦を安く売れとか。でもあんまり派手にやると争いになるからその加減は難しい」
もう怖すぎる……。魔石いらない…。
「ノアさん、これはもうパパにお願いしよう?」
私はノアさんのお父さん、コンラッド・ザイカラル皇帝をパパと、皇后キャサリン様をママと呼んでいる。
すっかりノアさん家族と仲良くなり、以前にお会いした時にキャサリン様が、
「もうレイちゃま?私のことはママと呼んでくれない?」と言われ、言われた通りママと呼んでいたら、
コンラッドさんが、
「レ、レイ?キャサリンだけ、ママはおかしくないか?私のこともパ、パパと呼んで良いのだぞ?」と言われ、パパと呼ぶことにした。
でもパパとママと呼ぶ度に、二人が真っ赤になってモジモジしている。ノアさんがものすごく微妙な顔をして、
「親のモジモジは見ていられない」
と毎度視線をそらしている。
「レイ!会いたかったぞ!さあこっちに来い」
パパにギューッとハグをされ、私を膝に乗せようとするので、子供じゃないよと言うと、
「そうだったか?でもパパのお膝は座りやすいぞ」とお菓子で釣られそうになってしまった。
「まあ!レイちゃま、ママのお膝にいらっしゃい?ギュッてしてあげるから!」
この人たち私をなんだと思ってるの……?
「…………父上、今日は魔石のことで来たんです」
「…なんだ、魔石か…。それよりレイ!このケーキ食べてみろ?美味いぞ?」
「パパ、森から魔石が出てきたの。怖いからパパにお任せしていい?」
「おお~っ!魔石か!レイ、でかしたぞ!この大きさなら、隣国の小さな島くらいなら獲れるな。私だから交渉出来るのだぞ?どうだレイ、島は欲しいか?」
バナナほしいかくらいの話をしている。
でもこう見えて、世界中の国々から恐れられている皇帝で、表面上はニコニコと穏やかなので、それを知らずにパパを馬鹿にしたり、戦を仕掛けようとパパを甘く見た国はいつの間にか潰されていたらしい。そう見せないところが怖い…。
「パパ?私、島はいらないけど、ノアさんからこの魔石で色々なことが出来るって聞いたから、やりたいことがあるの、いい?でも怖いから、見つけた魔石は全部パパに預かって欲しいの、いいかな?」
「良いよ、良いよ!もちろんだ!レイの頼みは全部良いぞ?」
よし!やろう!
魔石は元の世界での電気の役割だった。
氷の魔力を持つ人が魔石にその魔力を注ぎ、その魔石を木の箱に入れて食品を冷やす、要は冷蔵庫だ。
同じように火の魔力を持つ人が力を注ぐと、その魔力の強さによって持ち歩けるカイロになったり、家のヒーターになったりする。
私はバスを走らせたかった。
王都と近くなったとはいえ、メルトル村の老人たちが馬車を手配しても、料金が掛かり過ぎるし効率が悪い。
ザイカラル帝国王都から出発し、メルトル村、辺境の城、辺境の街、旧ユストル国王都の順で循環バスにした。帰りはこの逆でザイカラル帝国王都まで行く。
真っ直ぐ一本道なので運転手はなくし、人が飛び出してきたら止まる、乗りたい人が手を上げたら止まるなど条件を付けて魔法を掛けた。
バスは10人乗りにしてメルトル村住人専用の座席を2席にしてみた。
座席は老人が座ってもお尻や腰が痛くならないよう柔らかい座席を作って、乗り降りも負担のない高さにした。
魔石を原動力に、メルトル村から旧ユストル王国王都までなんと30分で到着する。なかなかのスピードだ。
パパが魔石を売ってくれたお金で、このバスにかかる初期費用などを全部賄ったが、すでに200年後まですべての乗客が無料で乗れるほど予算の確保が出来ている。
サイモンお爺が拾ってきた魔石一個で、循環バスの仕組みが完成した。
サイモンバス会社と名前を付けて、サイモンお爺を会長にして、仕事を探していたサイモンお爺の末の娘さんに会社の経営をお願いした。
「レイ様…ありがとうございます……、昨年夫が突然旅立ってしまって、子供もいるのでこれからの生活をどうしようか途方に暮れていたんです……」
この娘さんは実は優秀な文官だったそうで、出産のため惜しまれながら退職してしまったが、誠実で信頼出来る仕事をするそうだ。
職業訓練校のエリックさんが、元同僚なんだと教えてくれた。
そしてその紹介通り、トラブルにも誠実に対応し乗客の安全を第一に考え、メンテナンスも職人さんを雇いきっちりと行ってくれた。年度末の収支もまったく問題なく、サイモンバス会社は少しずつ路線を拡大し、この国になくてはならない交通手段となった。
メルトル村の住人はただバスに乗りたいだけで、オヤツやお茶を持ち込み何往復も乗って楽しんでいる。
会長のサイモンお爺は、役員報酬で孫にお菓子をたくさん買うのが楽しみになった。
マーゴットさんも同様に、マーゴットさんしかわからない草で置き薬を作るので、マーゴの薬屋という会社を作り、置き薬が売れた収益をすべてマーゴットさんに渡した。
息子さんのウィルさんも仕事を定年退職したタイミングだったので、お金の管理を任せることにしたが、マーゴットさんの持っているお金を見て倒れた。
こんなにたくさんのお金は要らないと、どうしたら良いか相談され、お孫さんや曾孫さんに投資しては?と軽く答えたら、なんと先日結婚式をした孫のメイベルさんがマーゴットさんの素質を受け継いでおり、草を見分けることが出来ることに気が付いた。
マーゴットさんの草は私の魔力との相互作用で効果を大きく発揮するが、メイベルさんは私の魔力は不要で、その代わりマーゴットさんの草ほどの大きな効果はないが、様々な症状に合わせた薬を作ることが出来た。
その薬作りを始めると、一族だけでは手が足りないほどに繁盛し、元々たくさんあって不要だと言っていたお金が倍以上になり、ウィルさんも奥さんのサリーさんも白目をむいて倒れた。
もともと魔物の森と瘴気の沼は、旧ユストル王国の辺境の城と、ザイカラル帝国の城に挟まれるように国境沿いに位置していた。
今はもうこの国境はないので、元の位置に戻したメルトル村の北側に道路を通して、旧ユストルとザイカラル帝国をつなぎ、主要な道路がメルトル村のそばを通ることになった。
もうあの王族たちはいないが、メルトル村の皆さんには引き続き静かに穏やかに過ごしてもらいたいので、私が張った巨大なカプセルバリアはそのままにしてある。
村人はバリアの出入りは自由、外から入れるのは村人の家族のみにした。
なので村人は以前の生活と何ら変わらない日常を送っている。
そんなある日、村から旧魔物の森に散歩に出たサイモン爺さんがおかしな物を拾ってきた。
「レイ、見てみろこれ。宝石を拾ったぞ、しっ!誰にも言うなよ?」
「なにこれ宝石!?サイモンお爺、大金持ちになるの?独り占め…?」
「サイモン爺さん、それ宝石じゃないぞ、魔石だ」
「けっ!なんだただの石ころか、チッ」
「いやいや違うよ爺さん!あっ待ってって…あー!行っちゃったよ、これ宝石なんか比じゃないくらいの希少な石なんだけど…」
旧魔物の森には、何千年も前からの魔物の死骸が積もりに積もって埋まっている。
その魔物の心臓だった部分は強い魔力を残し、土の中にあっても土に還ることはなく、そのまま化石のようになって土の中に存在するらしい。
鑑定魔力を持つノアさんは、その魔石が強い魔力を持つことを知っており、旧魔物の森から薄っすら魔力を感じていたそうだ。
「これは世界中の魔力を持たない国の原動力としてかなり高額で売り買いされているんだ、これはサイモン爺さんの言う通り誰にも言ってはならない、バレたら最後あらゆる国から最悪攻め込まれるかもしれない」
……ヒィッ!怖い!絶対に嫌だ!死んでも言いません!
「でもこれを売ったら大金持ちになれるの?」
「うーんまあそうだけど、個人で売ったりするものではないな。まずこれをどこで手に入れたかってことを話すまで拷問されるな」
……ヒィッ!!怖い!絶対にすぐバラしちゃう!
「これは外交のカードに使えるんだよ、魔石をあげるからアンタのとこの国の鉱石をタダで寄越せとか、小麦を安く売れとか。でもあんまり派手にやると争いになるからその加減は難しい」
もう怖すぎる……。魔石いらない…。
「ノアさん、これはもうパパにお願いしよう?」
私はノアさんのお父さん、コンラッド・ザイカラル皇帝をパパと、皇后キャサリン様をママと呼んでいる。
すっかりノアさん家族と仲良くなり、以前にお会いした時にキャサリン様が、
「もうレイちゃま?私のことはママと呼んでくれない?」と言われ、言われた通りママと呼んでいたら、
コンラッドさんが、
「レ、レイ?キャサリンだけ、ママはおかしくないか?私のこともパ、パパと呼んで良いのだぞ?」と言われ、パパと呼ぶことにした。
でもパパとママと呼ぶ度に、二人が真っ赤になってモジモジしている。ノアさんがものすごく微妙な顔をして、
「親のモジモジは見ていられない」
と毎度視線をそらしている。
「レイ!会いたかったぞ!さあこっちに来い」
パパにギューッとハグをされ、私を膝に乗せようとするので、子供じゃないよと言うと、
「そうだったか?でもパパのお膝は座りやすいぞ」とお菓子で釣られそうになってしまった。
「まあ!レイちゃま、ママのお膝にいらっしゃい?ギュッてしてあげるから!」
この人たち私をなんだと思ってるの……?
「…………父上、今日は魔石のことで来たんです」
「…なんだ、魔石か…。それよりレイ!このケーキ食べてみろ?美味いぞ?」
「パパ、森から魔石が出てきたの。怖いからパパにお任せしていい?」
「おお~っ!魔石か!レイ、でかしたぞ!この大きさなら、隣国の小さな島くらいなら獲れるな。私だから交渉出来るのだぞ?どうだレイ、島は欲しいか?」
バナナほしいかくらいの話をしている。
でもこう見えて、世界中の国々から恐れられている皇帝で、表面上はニコニコと穏やかなので、それを知らずにパパを馬鹿にしたり、戦を仕掛けようとパパを甘く見た国はいつの間にか潰されていたらしい。そう見せないところが怖い…。
「パパ?私、島はいらないけど、ノアさんからこの魔石で色々なことが出来るって聞いたから、やりたいことがあるの、いい?でも怖いから、見つけた魔石は全部パパに預かって欲しいの、いいかな?」
「良いよ、良いよ!もちろんだ!レイの頼みは全部良いぞ?」
よし!やろう!
魔石は元の世界での電気の役割だった。
氷の魔力を持つ人が魔石にその魔力を注ぎ、その魔石を木の箱に入れて食品を冷やす、要は冷蔵庫だ。
同じように火の魔力を持つ人が力を注ぐと、その魔力の強さによって持ち歩けるカイロになったり、家のヒーターになったりする。
私はバスを走らせたかった。
王都と近くなったとはいえ、メルトル村の老人たちが馬車を手配しても、料金が掛かり過ぎるし効率が悪い。
ザイカラル帝国王都から出発し、メルトル村、辺境の城、辺境の街、旧ユストル国王都の順で循環バスにした。帰りはこの逆でザイカラル帝国王都まで行く。
真っ直ぐ一本道なので運転手はなくし、人が飛び出してきたら止まる、乗りたい人が手を上げたら止まるなど条件を付けて魔法を掛けた。
バスは10人乗りにしてメルトル村住人専用の座席を2席にしてみた。
座席は老人が座ってもお尻や腰が痛くならないよう柔らかい座席を作って、乗り降りも負担のない高さにした。
魔石を原動力に、メルトル村から旧ユストル王国王都までなんと30分で到着する。なかなかのスピードだ。
パパが魔石を売ってくれたお金で、このバスにかかる初期費用などを全部賄ったが、すでに200年後まですべての乗客が無料で乗れるほど予算の確保が出来ている。
サイモンお爺が拾ってきた魔石一個で、循環バスの仕組みが完成した。
サイモンバス会社と名前を付けて、サイモンお爺を会長にして、仕事を探していたサイモンお爺の末の娘さんに会社の経営をお願いした。
「レイ様…ありがとうございます……、昨年夫が突然旅立ってしまって、子供もいるのでこれからの生活をどうしようか途方に暮れていたんです……」
この娘さんは実は優秀な文官だったそうで、出産のため惜しまれながら退職してしまったが、誠実で信頼出来る仕事をするそうだ。
職業訓練校のエリックさんが、元同僚なんだと教えてくれた。
そしてその紹介通り、トラブルにも誠実に対応し乗客の安全を第一に考え、メンテナンスも職人さんを雇いきっちりと行ってくれた。年度末の収支もまったく問題なく、サイモンバス会社は少しずつ路線を拡大し、この国になくてはならない交通手段となった。
メルトル村の住人はただバスに乗りたいだけで、オヤツやお茶を持ち込み何往復も乗って楽しんでいる。
会長のサイモンお爺は、役員報酬で孫にお菓子をたくさん買うのが楽しみになった。
マーゴットさんも同様に、マーゴットさんしかわからない草で置き薬を作るので、マーゴの薬屋という会社を作り、置き薬が売れた収益をすべてマーゴットさんに渡した。
息子さんのウィルさんも仕事を定年退職したタイミングだったので、お金の管理を任せることにしたが、マーゴットさんの持っているお金を見て倒れた。
こんなにたくさんのお金は要らないと、どうしたら良いか相談され、お孫さんや曾孫さんに投資しては?と軽く答えたら、なんと先日結婚式をした孫のメイベルさんがマーゴットさんの素質を受け継いでおり、草を見分けることが出来ることに気が付いた。
マーゴットさんの草は私の魔力との相互作用で効果を大きく発揮するが、メイベルさんは私の魔力は不要で、その代わりマーゴットさんの草ほどの大きな効果はないが、様々な症状に合わせた薬を作ることが出来た。
その薬作りを始めると、一族だけでは手が足りないほどに繁盛し、元々たくさんあって不要だと言っていたお金が倍以上になり、ウィルさんも奥さんのサリーさんも白目をむいて倒れた。
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