異世界召喚?そんなこと望んでません!元の世界に帰してください!

翡翠と太陽

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81.元国王の結末

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※残酷な描写があります。

―――――――――――――――

 「君、すまないがこの縄をほどいてくれないか」

 フェリクスに縋り付いている元メイドに声を掛けた。

 「……え?あぁ私ですか?わかりました」

 時間はかかったがなんとか縄を解いてもらった。家族を見るとまだ眠っているようなので、周りの状況を確認した。

 周囲に結界が張ってあり、出られないようになっている。

 そして、材木が山積みになっており、恐らくそれで家を建てろと言うのだろう、その道具も置いてあった。

 「自分のことは自分でしろと言うことか…コイツらと俺で出来るのか…」

 元国王カーティスは当然今のこの家族にそんなことができるわけもないし、やろうとする頭もないだろうと思った。

 「ここは?ここはどこだ!おい、誰かいないのかっ!この縄を解け!俺は国王だぞ!」

 一人目の馬鹿が目を覚ましたか。

 そばに行き、サイラスの胸ぐらを掴むと思いっきり顔を殴った。

 「……痛いっ!何をする!私を殴るなんて!処刑するぞ!」

 いつまでも愚かな奴だ… その腕のない身体で何ができると言うのだ……。

 「黙れサイラス、いいか、お前は国王でもなければ国民でもない、ただの罪人だ。その証拠にお前の腕が無いのは何故だ?」

 「……俺の腕…俺の腕……俺が…ミレイを怒らせて、ハルバードが…斬った……俺の腕……」

 足の縄を解いてやったが、それからサイラスは一言も喋らなくなった。
 本ばかりの知恵を付け、実際に人との関わりから経験を積み知恵を付けることを知らない我が息子。

 「父上、ここはどこですか!?」

 二人目の馬鹿か。コイツはどうしようもないほどの馬鹿だ。
 また同じように胸ぐらを掴みぶん殴った。

 「黙れフェリクス、俺が誰か分かるか?俺の話を聞けるなら縄を解いてやる」

 「父上!縄を解いてください!早く!こんなこと許されません!」

 また同じように胸ぐらを掴み殴った。それでも私の言葉をまったく聞き入れない。殴る手が痛くなるので、置いてあった材木で殴った。

 「……父上…痛い…です…」

 「そうか、痛いか、生きているからな。大聖女様も辛かっただろうな、ひとりで放置されて」

 フェリクスの、私に殴られ腫れ上がった顔でも、その表情が変わった。

 「大聖女殿…俺は…俺は…」
 
 「フェリクス周りを見てみろ。何も無い。家も食べるものも。だが見てみろ、井戸はあるぞ。水があるだけ俺らは恵まれてるだろ?大聖女様はどうだった?」

 「……水も……無かった」

 「俺らは家族が全員いる。だけど大聖女様はひとりぼっちだったよな?いいか、俺らは今日からここに住むんだ、協力して家を建てて、食べるものを作らなくては生きていけない」

 フェリクスもまた黙り込んだ。しかし、同じ馬鹿でもこっちは働いてもらわないとならない。

 「フェリクス、どうする?これは現実だ。家を建てるにはお前の力を借りなければならない、できるか?」

 うなずくフェリクスの頭を撫で、縄を解くとメソメソと泣き出した。

 「父上…、私のせいで…こんなことに……」

 「フェリクス、地下牢にいた時、あの放送を聞いていたか?もう国は無くなった、我々はただの罪人だ。本来なら我々全員処刑なのだ。生かされているのは、簡単に死ぬより辛い事だ。
 それほどの事を我々はしたのだ」

 「……父上…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい……」

 「ここで精一杯生きるか、諦めて死を待つか、それを選ぶのはお前だ」

 ただ泣きじゃくりその場を動くことはない。やはりコイツはダメか…

 まだ眠っている残りの4人。

 まずはカトレアとイザベラの髪を、木を薙ぎ払うために用意してあったナタで坊主に近いくらいに切り落とした。
 二人とも身体の縄を解き、その縄で両手を後ろ手にして縛った。そして俺を縛っていた縄で猿ぐつわをした。

 カトレアの母親、ジャクリーンはそのままにした。

 ライルを足で揺すり起こした。

 「陛下!ここは―――」

 俺はライルの腹を足で思い切り蹴った。声も出せず転がるライルの長い黒髪を鷲掴みにし、

 「次に、俺を陛下と呼んでみろ、命は無いぞ。この状況を見ろ。使える男手はお前だけだ。死にたくなければ協力しろ、出来るか?」

 ライルは涙を流しながらうなずいた。
 そしてライルの縄を解き、これからすることを話した。

 「正直、俺は家など無くてもいい。だが女がいる。家を建てるための道具もある。時間がかかっても建てるしかない」

 「…わかりました。あなたのことは…なんと呼べば…?」

 「カーティスでいい」

 それからはライルと二人で家を建てるための場所を選び、土台を作り始めた。

 「んーんーんー!」

 カトレアが目を覚まし、声をあげる。見るとイザベラも目を覚ました。

 「んーー!んー!」

 どこからこんな声が出るのか、うるさい奴だ。自分の身を危険にさらすだけなのに、そんなことがわかるわけがないか…

 「イザベラ、いいか、騒ぐな、声を出すな。叫び声を上げたら最後、お前がどうなるかわからないぞ?わかったか?口の縄を取るぞ」

 猿ぐつわにしていた縄を外した。

 「いやーっっ!!なんでこんなところに!?汚いわ!土が!私の身体に!」

 「黙れっ!」バシッ!!

 イザベラの頬を平手で叩いた。それでもギャンギャンと泣き叫ぶ。

 あぁ、これでもう終わりか……
 家を建て、その中に入れておけばもう少しは生きていられただろう。


 「おいおい!これはこれは!おい、お前ら来い!女が居るぞ!早く来い!」

 「ホントだ!ヤローばかりかと思ってたら、なんだ、女性がいらっしゃるなんて、イヒヒヒ!」

 裏山の方からの視線を感じていた。

 確か賊が住み着くようになったと聞いてはいたが、本当だった。
 カトレアとイザベラが目覚める前に髪を切り落とし、女とバレないようにしておいて、裏山の方からは見えないようにそちら側の家の壁を優先して作ろうと思っていた。

 この結界は声も通るのだな。
 大聖女殿が辺境の地に行くとき、結界の音を一瞬遮断していたのには驚いたな……
 もしかしてこの結界もと期待したが、違ったか……

 「いやー!やめない、このケダモノ!私に触るのは、許しませんよ!?いやーっ!!離しなさいっ!!」

 愚かなジャクリーン、コイツの悪事はカトレアの母親とは思えない吐き気がするようなことばかりだった。

 カトレアの母親であるということだけで、見ないふりをしていたが、この母親にこの娘。カトレアの裏の顔も見ないふりをしていた。

 あの時カトレアを裁いていたら…あの時見ないふりをしなければ、今こんなことにはなっていなかったかもしれない。それも今さらだ……

 「なんだよ、若い女の声がしたかと思ったけど、こんな婆さん必要ねーな」
  
 ジャクリーンの最後の声を聞いた。

 「あの中に女がいるんだよ!」

 「ああ、見付けた奴が一番だぞ!」

 こちらに向かって来る男たち。手に持ったナタを構えた。

 果たしてこの娘と妻を庇って死ぬことに何の意味があるのか?
 あぁ、こんなくだらない死に方をするのが俺の罪か……

 
 元ユストル王国国王カーティスは、男たちの襲撃に抗い二人の男を斬ったところで地面に倒れた。

 どんどん暗くなっていく視界に瞼をゆっくりと閉じると、最後に愛娘イザベラの悲鳴が聞こえた気がした。



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