30 / 37
30
しおりを挟む
※今回は、やや痛々しい表現が含まれています
あらかじめご了承ください
――――――――――――――――――――――――――――――――
キリウに二度目の婚約解消を告げてから、一カ月弱が過ぎようとしていた。
領土への侵入事件はいまだ解決の兆しがなく、キリウを含め騎士団は血眼で捜索にあたる日々を送っていた。その忙しさゆえ、あれ以来キリウと顔を合わせることはなく、婚約解消の話も前回と同じく保留のまま、日だけが経っていった。
ただ唯一あの時と違うのは、言葉では表せないほど複雑な面差しをベルーラへ向けてきたことだった。
(私だってこのままでいいと思ってた。キリウ様は以前と違って私をとても大事にして下さっていたし、愛情も痛い程伝わっていた。でも・・・)
あの温室での出来事は、前向きになりかけていたベルーラの気持ちを打ち砕いた。二人のやり取りの中で無意識に王女へ向けた愛おしそうなあの表情。それは、記憶を失っていてもなお潜在的に残り続ける彼女への想いなのだと悟らせるには十分だった。だからこそ、ベルーラは認めざるを得なかった。
彼女への記憶がなくても、キリウの想い人に自分はなれないのだと・・・。
・
・
・
「お嬢様。先ほど町へ買い出しに出ていた使用人が耳にしたのですが、逃げ延びていた逃亡兵たちは皆捕らえられたそうですよ。これまでは盗みや強奪まがいのことをして生き延びていたとか。ともあれ、ようやく事態も落ち着きましたね。これで安心して外出できますし、休校していた学園も再開されますね」
「・・・え、ああ、そうね・・・本当に良かったわ」
ノアが紅茶の準備をしながら話すのを、ベルーラはどこか上の空で聞きつつ、気を紛らわすように刺繍に手を動かしていた。そんな様子にノアは、べルーラが刺している花の模様にふと視線を落とした。
「今回は、何の花を刺繍してらっしゃるのですか?」
「シプソフィラとガーベラよ」
刺繍枠に張られた白布には、ピンクのシプソフィラと赤いガーベラが丁寧に刺されていた。シプソフィラの花言葉は“切なる願い”。そして赤いガーベラには“前向き”という意味が込められている。
キリウが真の幸せを手にすることを願いつつ、ベルーラも前へ踏むことができれば何かが変わるのではないか・・・そう感じていた。
「私、もっと視野を広げられたらいいなって思ってるの。領地の外を旅しながら今まで知らなかったものを見たり聞いたりして。それで、今の自分を変えられたらいいなって」
「然様でございますか。ですが、旅となると旦那様方はもちろん、キリウ様がご承知くださるか少し心配ですね。まあ、キリウ様もご一緒というお話であれば問題はないとは思いますけど。でも、もしそれが叶うならきっとキリウ様、大喜びなさると思いますよ」
「ふふ・・・落ち着いたら考えてみようかな」
ノアの言葉に応えるように笑みを浮かべつつも、どこか晴れない様子のベルーラを見て、ノアは不思議そうな顔をした。
そんな表情をノアが向けるのは当然で、婚約解消の話はベルーラとキリウの間だけのもので、外で待っていたノアはまだ聞かされていなかった。だからこそ、べルーラが何故浮かない表情でいるのか理解できずにいるのも無理はなかった。
「これで、逃げてきた兵たちも捕まりましたし、キリウ様もようやく肩の荷が下りたのではないでしょうか」
「ええ。警戒も続いていたし、キリウ様もずっと気を抜けなかったでしょうから、ひとまず安心なさっているのではないかしら」
その言葉に、ノアは小さく頷いてから、ふと思い出したように口を開いた。
「そういえば、先ほどの話に関連して噂を聞いてきたそうで・・・。逃亡兵を捕らえるたびにキリウ様、鬼神のごとき形相で剣を抜いていたそうなんです」
「ん?いやいや・・・それは、ありえないでしょう」
その話を聞いたベルーラは、思わず信じ難いといった表情を浮かべた。それもそのはずで、ベルーラの知るキリウは、騎士団の中でも屈指の腕前を誇る実力者だ。しかも、表情を崩すことなく静かに仕留める・・・そんな人物が感情を出すなんて今まで聞いたことがない。困惑した表情をするベルーラを尻目にノアはさらに話を進める。
「本来は殺さず、身柄を確保する命が下っていたそうなのですが、あまりの勢いに毎度周囲の騎士団員が慌てて止めに入ったほどだったとか。まあ、多少は尾ひれが付いた話でしょうけど」
「尾ひれが・・・付きすぎているわね」
剣術の練習試合や闘技大会に臨むキリウは、殺気を帯びてはいるものの、それを顔に出すことはない。常に淡々と、洗練された剣さばきで相手を制し、荒々しさとは無縁の戦いぶりで知られていた。ベルーラもまた、その姿を何度も目にしてきたからこそ、先ほどの噂を額面通りに受け取ることはできなかった。
「何はともあれ、無事解決して良かったわ」
ベルーラは、微笑みを浮かべてそう口にしたものの、胸の奥に残る重さが一気に押し寄せた。いずれにせよ、彼女が向き合わねばならない現実は、すぐそこまで迫っている。
(これで、いよいよキリウ様から答えを聞かされるのね)
ベルーラは縫い終わった刺繍を片付けながら今後の事に腹を括った。
※※※
学園の授業も滞りなく再開し、再び学生としての生活が戻ってから二週間ほどが過ぎていた。その間、キリウからの連絡は一度もなかった。
それもそのはずで、事件の解決を待って延期されていたマーヴェルの修道院や孤児院への施設訪問の恒例行事が再開。その護衛の一人としてキリウが同行しているため、かなり多忙とのことをオルバから聞かされていた。
事件が解決したとはいえ、王族の公的な行事については、王宮内にいまだ慎重論が根強く残っていた。それでもマーヴェルの強い働きかけにより、渋々ながらも再開が決まったらしい。
(本当にすごい方だわ。自分の意見をきちんと周囲に伝え、行動に移せるなんて・・・。私もマーヴェル様のように、自分の想いをさらけ出すことができていたなら・・・いろいろ違っていたのかもしれないな)
そんなことを考えながら一日を過ごしていると、あっという間に最後の授業を終える鐘の音が学内に鳴り響いた。
(どうしよう。今日受けていた授業内容・・・全く覚えてない)
自分の不甲斐なさに小さく肩を落としながら、ベルーラは帰り支度を始めた。その時ふと、お弁当箱の入った袋がないのに気がついた。
(やだ、私ったらぼーっとしてて図書館に忘れて戻ってきちゃったんだわ・・・はあ、最悪)
べルーラは心の中で大きな溜息を吐きながら、纏めた荷物を持つと重い足取りで講義室を出た。すると、廊下の先でオルバが友人たちと楽しげに談笑している姿が目に入り、オルバもまた彼女の姿に気づいた。オルバは、一旦友人たちから離れると、ベルーラの元へ小走りで向かって来た。
「ベル、お疲れ様。帰るの?」
「ええ、でも旧図書館に忘れ物をしたから寄ってから帰るわ」
「そっか・・・んー、でもこの時間だとあの辺り暗いんだよな。危ないし付いて行こうか?」
「ふふ、学内だから大丈夫よ。じゃあ、また明日」
ベルーラはオルバと他愛もない会話を交わしたあと、旧図書館のある方へと足を向けた。ふと空を見上げると、つい数時間前まで澄んだ日差しに包まれていた空は、薄い雲が広がり、陽の光は柔らかく押し隠されていた。
(昼間以外来たことないからわからなかったけど・・・ちょっと不気味でね)
天候のせいもあって、まだ夕方には早い時間帯だというのに昼の名残がほとんど残っていなかった。木々が鬱蒼と生い茂るさまは何とも不気味で、僅かな雲越しの光は枝葉に遮られていた。
明るさが届かない場所にいるせいか、まるでベルーラの周囲だけが切り離されたように感じられ、得体の知れない不安が胸を掠める。理由もなく背筋に冷たいものが走り、彼女は小さく身震いすると、歩調をわずかに早めた。
(こんな感じならオルバに着いて来てもらえばよかった・・・早く取って帰ろ)
普段以上に距離を長く感じながらも、なんとか目的地に着いたベルーラは、ゆっくりと扉を開けた。室内は明かりがないため外とあまり変わりはしなかったが、次第に目が慣れ空間の配置はおおよそ見て把握できた。
(あった、あった)
昼間座っていた付近に忘れた弁当袋を拾うと、べルーラは急いで出入口の方へ足早に向かった。
カチッ。
その瞬間、“資料保管室”と記された扉の奥から不穏な物音が響いた。恐怖心も相まってか、その異音にベルーラの全身の毛が逆立つような感覚が走り、身体は大きく震えた。
あと数歩で外へ踏み出そうとしていた足は、恐怖に縫い止められたかのようにその場で止まり、ベルーラは呼吸さえ忘れたまま立ち尽くす。しん、と静まり返った室内で鼓動だけが大きく耳元に響き、全身が強張っていくのを否応なく感じていた。
ベルーラは息を潜めるようにして、ゆっくりと振り向き、物音のした部屋の扉を見据えた。
恐怖から逃げ出したい気持ちは確かにあったが、それ以上にその物音の正体が気にかかり、外へ出るという考えを鈍らせた。
そこは普段、固く施錠され生徒の立ち入りが禁じられている場所。まして今、この場所を密かに使っているのは彼女だけ。地震でも起きない限り、音がするはずがなかった。
(何?・・・今の音。書物とかが落ちた音ではなかった・・・どちらかと言うと金属音?のような・・・。もしかして、ネズミとか動物が入り込んじゃってる?)
恐怖に身を強張らせながらも、ベルーラは慎重に扉へと歩み寄った。
改めて目を凝らしながら指先で確認すると、ドアノブ周辺には何か傷つけられた痕跡があり、無理な力が加えられたのか、ノブが外れかけているのが分かった。
(え・・・ここ壊れてたっけ? それとも劣化?いやいや、そんなに古くないはず・・・)
ドクドクと心臓が激しく脈打ち、更に全身の筋肉が強張る感覚に襲われ硬直する。それでもベルーラは震える手で壊れかけたドアノブを握り締め、意を決してゆっくりと扉を開いた。
窓がない室内のためか、暗闇が目の前に飛び込み無意識にベルーラの喉がひゅっと鳴った。恐る恐る辺りを見渡すも誰かが潜んでいる気配はなく、何かを感じ取ることはなかった。
ベルーラは片足を一歩室内に踏み込み、更に奥を覗くも暗闇が深いため全く分からなかった。
(はあ、よくよく思い出せば以前小さなネズミを見かけたことがあったっけ。きっとそのネズミが走り回って何か落としたのかもしれないわね)
「とりあえず鍵が壊れていること、先生に伝えておかなきゃ」
ベルーラは一旦帰る前に再び学園内に戻ろうと後ろへ振り向き出入りの扉へと向かおうとした刹那、何か突き刺さるような視線を感じた。
「ッ!?」
その直後、背後から羽交い締めをされ、動きを封じられた。
べルーラは驚きと恐怖から声が出ず、身体を硬直させていると生暖かな息遣いが首元から感じられ、更なる恐怖心を増大させた。
「最近まで学園が閉鎖されていたからいい隠れ場所と思って悠々と過ごしてたのに。余計なことしてくれんじゃねーよ」
「ふッ!!」
口元を押さえられ声を出せなくされるも、普段から人けのないこの場所で叫んでも意味が無いことはべルーラ自身分かっていた。
(どうしよ・・・)
「ったく、あのボンクラ大臣の話に乗ったのが運の尽きだったぜ。クソが」
(もしかして、まだ捕まっていない人が!?)
背後でブツブツと恨み節を吐き出す言葉を聞きながら、べルーラはごくりと唾を飲み込んだ。
数十年前、隣国の先代王は浪費家として知られ、その下で家臣や貴族たちもまた贅沢の限りを尽くしていた。しかし現王が即位して以降、国の方針は一変。財政は徹底的に見直され、脱税や横領に手を染めていた者や裏組織と結託していた王族関係者までもが、次々と摘発され粛清されたと聞く。
当然ながら、長年甘い汁を吸ってきた者たちが、その改革を快く思うはずもなかった。
今回の事態は特権を奪われ、鬱屈した思いを募らせた前国王派の貴族や家臣、さらにその恩恵に与っていた一部の兵士や傭兵たちが、現王を引きずり下ろし、旧体制の復活を目論んだ・・・そんな浅はかな企てだった。
(自分勝手な人たちのせいで国民が蔑ろにされる国なんていつか亡びるっ!それをしないために現国王が国を再建しようとしていたのに!)
ベルーラの国は、国民を第一に考える王のおかげで、ありがたいことに他国よりも貧困層が少なかった。
だからこそ、私欲のために踏みにじろうとする者たちの考えが、どうしても許せなかった。
あまりに身勝手な考えに、恐怖心よりも次第に怒りが込み上げ、ベルーラは少しずつ冷静さを取り戻していった。
「まあ、見つかっちまったもんは仕方ねぇ。 金持ち貴族の嬢ちゃんを人質にして、解放条件として他国への逃亡を呑んでもらうとするか。なぁーに、大人しくしてれば何もしやしない」
顔は見えなくとも、ニヤついた男のいやらしい声色が耳元にまとわりつく。ベルーラが大人しくしていたこともあり、男は腕の力を一瞬弱くした次の瞬間、ベルーラは渾身の力で男の足を思いっきり踏みつけてやった。
「ぃいッッッ!!!」
油断していたせいか、いきなりの激痛に男は思わず塞いでいた口元の手を緩めたと同時に、ベルーラは男の指を力いっぱい噛みついた。
「ぐッ、いぎーーッッツ!!!!!」
男がベルーラから離れ怯んだ隙に、振り返り最後の一撃とばかりに急所めがけて思いきり蹴り上げた。
「×★◎☆▽ッッッぅ!!!!!」
べルーラよりも何倍も大柄な男が声にならないほどの大声を上げ、床に倒れ落ち、のたうち回っていた。
(まさか子供の頃にお兄様から教わった撃退法がここで役に立つとは・・・って、そんなことより今のうちに)
ベルーラは全身から汗を噴き出し、今にも口から心臓が飛び出しそうなほどの鼓動に追い立てられていた。縺れる足を必死に運び、壁に手をついて出入口から外へと飛び出した。
(は、早く先生か誰かに伝えに)
頭ではしっかり走っているはずなのに、極度の恐怖と緊張で足がもつれ、思うように身体が動かない。
(早くっ!、早くっっ!!)
さきほどよりも更に闇に包まれているせいで、地獄へと誘われているような感覚に襲われた。恐怖に涙が滲み、荒い呼吸のまま駆けていた瞬間、背後から足元に衝撃が走った。
「きゃッ!」
バランスを崩したベルーラは、そのまま激しく地面に叩きつけられた。
「はあ、はあ・・・。せっかく優しくしてやってたってのに、いい度胸じゃねぇか。大人しく従ってりゃ、その綺麗な肌に傷一つ付けずに済んだのによぉ」
暗闇の奥から、大きな影が一歩、また一歩と、倒れたベルーラへ近づいてくる。今にも身体から飛び出しそうな激しい鼓動が全身に鳴り響き、絶望がじわじわと押し寄せてきた。恐怖に足腰が砕け、彼女は立ち上がることさえ叶わなかった。
それでも逃げなければ、という本能だけが彼女を突き動かす。ベルーラは四つん這いになって、必死に地面を掻きながら男から距離を取ろうとした。
「おー、頑張れ頑張れ。しかしなぁー、そんなスピードじゃあ、追いついちまうぞー」
「はあッ、はあッ、はあッ、ひッッ!」
ベルーラは土と枯れ葉にまみれ、掌を擦り切らせながら必死に地面を掻いた。だが、その足を無情にも掴まれ、抵抗も虚しく引きずり戻されてしまう。男は逃がす気など微塵もないとばかりに、彼女の上へと跨り、動きを完全に封じた。
「あー、さっきは痛かったなー。この国のご令嬢様は男を敬うことを知らないようだな。少し躾けてやらんとな」
木の葉が風で揺れる音の中、乾いた音が切り裂くように響き渡った。
「嬢ちゃんが大人しくしてりゃ、ここまで荒っぽいことはしなかったんだがな。恨むんなら自分が起こした行動を恨めよ」
馬乗りになった男に平手打ちを食らわされたベルーラは、その衝撃から口端を切ってしまい、薄く血が滲んでいた。意識が朦朧とするベルーラを男は、乱れた制服姿を値踏みするようにじろじろと見回した。
「乳くせー顔の割には・・・せっかくだ、少し楽しませてもらうか」
男は口元を歪ませ、吐き気を催すほどの笑みを浮かべていた。昂ぶりを抑えきれないのか、荒い呼吸だけが暗闇に響いていた。
男の手が乱暴にシャツを引き裂くと白く柔らかな膨らみが露わになり、更に男を興奮させた。
極度のストレスによって、ベルーラの心身は完全に機能を停止し、抵抗する力は残されていなかった。仰向けに倒れたまま、焦点の合わない視線で闇に沈んでいく空を見つめた。無意識に左の目尻から一筋の涙が音もなく落ちた。
(ああ、こんなことならオルバについてきてもらえばよかった・・・私、このまま穢されて殺されちゃうのかな・・・キリウ様に・・・会いたかったな・・・少しは・・・・・・悲しんでくれるかな・・・)
ベルーラはゆっくりと目を閉じ、意識を闇へと手放した。その一方で、男は何の感情も示さぬまま自身のベルトを外すと、彼女の胸元へ手を伸ばした。
・
・
・
・
・
・
「ウギガャーーーーーーーーーッッツ!!!!!!」
この世のものとは思えない男の断末魔の叫びが響いた瞬間、押さえつけられていたベルーラの身体はふっと軽くなった。何事かと目を開けようとしたその刹那、懐かしい香りがふわりと鼻腔をくすぐり、優しく温かい手がそっと目元を覆った。
「・・・ごめん。俺は・・・またキミを傷つけ護れなかった・・・」
「キリ、ウさ・・・?どうし・・・」
「疲れただろう。もう大丈夫だから、このまま少しの間ゆっくりおやすみ」
優しく温かな唇に塞がれ、わずかに開いた唇の隙間から甘い液体が喉へと落ちてきた。ベルーラがその液体を飲み込んだ瞬間、全身の力が抜け意識は静かに暗闇へと沈んだ。
あらかじめご了承ください
――――――――――――――――――――――――――――――――
キリウに二度目の婚約解消を告げてから、一カ月弱が過ぎようとしていた。
領土への侵入事件はいまだ解決の兆しがなく、キリウを含め騎士団は血眼で捜索にあたる日々を送っていた。その忙しさゆえ、あれ以来キリウと顔を合わせることはなく、婚約解消の話も前回と同じく保留のまま、日だけが経っていった。
ただ唯一あの時と違うのは、言葉では表せないほど複雑な面差しをベルーラへ向けてきたことだった。
(私だってこのままでいいと思ってた。キリウ様は以前と違って私をとても大事にして下さっていたし、愛情も痛い程伝わっていた。でも・・・)
あの温室での出来事は、前向きになりかけていたベルーラの気持ちを打ち砕いた。二人のやり取りの中で無意識に王女へ向けた愛おしそうなあの表情。それは、記憶を失っていてもなお潜在的に残り続ける彼女への想いなのだと悟らせるには十分だった。だからこそ、ベルーラは認めざるを得なかった。
彼女への記憶がなくても、キリウの想い人に自分はなれないのだと・・・。
・
・
・
「お嬢様。先ほど町へ買い出しに出ていた使用人が耳にしたのですが、逃げ延びていた逃亡兵たちは皆捕らえられたそうですよ。これまでは盗みや強奪まがいのことをして生き延びていたとか。ともあれ、ようやく事態も落ち着きましたね。これで安心して外出できますし、休校していた学園も再開されますね」
「・・・え、ああ、そうね・・・本当に良かったわ」
ノアが紅茶の準備をしながら話すのを、ベルーラはどこか上の空で聞きつつ、気を紛らわすように刺繍に手を動かしていた。そんな様子にノアは、べルーラが刺している花の模様にふと視線を落とした。
「今回は、何の花を刺繍してらっしゃるのですか?」
「シプソフィラとガーベラよ」
刺繍枠に張られた白布には、ピンクのシプソフィラと赤いガーベラが丁寧に刺されていた。シプソフィラの花言葉は“切なる願い”。そして赤いガーベラには“前向き”という意味が込められている。
キリウが真の幸せを手にすることを願いつつ、ベルーラも前へ踏むことができれば何かが変わるのではないか・・・そう感じていた。
「私、もっと視野を広げられたらいいなって思ってるの。領地の外を旅しながら今まで知らなかったものを見たり聞いたりして。それで、今の自分を変えられたらいいなって」
「然様でございますか。ですが、旅となると旦那様方はもちろん、キリウ様がご承知くださるか少し心配ですね。まあ、キリウ様もご一緒というお話であれば問題はないとは思いますけど。でも、もしそれが叶うならきっとキリウ様、大喜びなさると思いますよ」
「ふふ・・・落ち着いたら考えてみようかな」
ノアの言葉に応えるように笑みを浮かべつつも、どこか晴れない様子のベルーラを見て、ノアは不思議そうな顔をした。
そんな表情をノアが向けるのは当然で、婚約解消の話はベルーラとキリウの間だけのもので、外で待っていたノアはまだ聞かされていなかった。だからこそ、べルーラが何故浮かない表情でいるのか理解できずにいるのも無理はなかった。
「これで、逃げてきた兵たちも捕まりましたし、キリウ様もようやく肩の荷が下りたのではないでしょうか」
「ええ。警戒も続いていたし、キリウ様もずっと気を抜けなかったでしょうから、ひとまず安心なさっているのではないかしら」
その言葉に、ノアは小さく頷いてから、ふと思い出したように口を開いた。
「そういえば、先ほどの話に関連して噂を聞いてきたそうで・・・。逃亡兵を捕らえるたびにキリウ様、鬼神のごとき形相で剣を抜いていたそうなんです」
「ん?いやいや・・・それは、ありえないでしょう」
その話を聞いたベルーラは、思わず信じ難いといった表情を浮かべた。それもそのはずで、ベルーラの知るキリウは、騎士団の中でも屈指の腕前を誇る実力者だ。しかも、表情を崩すことなく静かに仕留める・・・そんな人物が感情を出すなんて今まで聞いたことがない。困惑した表情をするベルーラを尻目にノアはさらに話を進める。
「本来は殺さず、身柄を確保する命が下っていたそうなのですが、あまりの勢いに毎度周囲の騎士団員が慌てて止めに入ったほどだったとか。まあ、多少は尾ひれが付いた話でしょうけど」
「尾ひれが・・・付きすぎているわね」
剣術の練習試合や闘技大会に臨むキリウは、殺気を帯びてはいるものの、それを顔に出すことはない。常に淡々と、洗練された剣さばきで相手を制し、荒々しさとは無縁の戦いぶりで知られていた。ベルーラもまた、その姿を何度も目にしてきたからこそ、先ほどの噂を額面通りに受け取ることはできなかった。
「何はともあれ、無事解決して良かったわ」
ベルーラは、微笑みを浮かべてそう口にしたものの、胸の奥に残る重さが一気に押し寄せた。いずれにせよ、彼女が向き合わねばならない現実は、すぐそこまで迫っている。
(これで、いよいよキリウ様から答えを聞かされるのね)
ベルーラは縫い終わった刺繍を片付けながら今後の事に腹を括った。
※※※
学園の授業も滞りなく再開し、再び学生としての生活が戻ってから二週間ほどが過ぎていた。その間、キリウからの連絡は一度もなかった。
それもそのはずで、事件の解決を待って延期されていたマーヴェルの修道院や孤児院への施設訪問の恒例行事が再開。その護衛の一人としてキリウが同行しているため、かなり多忙とのことをオルバから聞かされていた。
事件が解決したとはいえ、王族の公的な行事については、王宮内にいまだ慎重論が根強く残っていた。それでもマーヴェルの強い働きかけにより、渋々ながらも再開が決まったらしい。
(本当にすごい方だわ。自分の意見をきちんと周囲に伝え、行動に移せるなんて・・・。私もマーヴェル様のように、自分の想いをさらけ出すことができていたなら・・・いろいろ違っていたのかもしれないな)
そんなことを考えながら一日を過ごしていると、あっという間に最後の授業を終える鐘の音が学内に鳴り響いた。
(どうしよう。今日受けていた授業内容・・・全く覚えてない)
自分の不甲斐なさに小さく肩を落としながら、ベルーラは帰り支度を始めた。その時ふと、お弁当箱の入った袋がないのに気がついた。
(やだ、私ったらぼーっとしてて図書館に忘れて戻ってきちゃったんだわ・・・はあ、最悪)
べルーラは心の中で大きな溜息を吐きながら、纏めた荷物を持つと重い足取りで講義室を出た。すると、廊下の先でオルバが友人たちと楽しげに談笑している姿が目に入り、オルバもまた彼女の姿に気づいた。オルバは、一旦友人たちから離れると、ベルーラの元へ小走りで向かって来た。
「ベル、お疲れ様。帰るの?」
「ええ、でも旧図書館に忘れ物をしたから寄ってから帰るわ」
「そっか・・・んー、でもこの時間だとあの辺り暗いんだよな。危ないし付いて行こうか?」
「ふふ、学内だから大丈夫よ。じゃあ、また明日」
ベルーラはオルバと他愛もない会話を交わしたあと、旧図書館のある方へと足を向けた。ふと空を見上げると、つい数時間前まで澄んだ日差しに包まれていた空は、薄い雲が広がり、陽の光は柔らかく押し隠されていた。
(昼間以外来たことないからわからなかったけど・・・ちょっと不気味でね)
天候のせいもあって、まだ夕方には早い時間帯だというのに昼の名残がほとんど残っていなかった。木々が鬱蒼と生い茂るさまは何とも不気味で、僅かな雲越しの光は枝葉に遮られていた。
明るさが届かない場所にいるせいか、まるでベルーラの周囲だけが切り離されたように感じられ、得体の知れない不安が胸を掠める。理由もなく背筋に冷たいものが走り、彼女は小さく身震いすると、歩調をわずかに早めた。
(こんな感じならオルバに着いて来てもらえばよかった・・・早く取って帰ろ)
普段以上に距離を長く感じながらも、なんとか目的地に着いたベルーラは、ゆっくりと扉を開けた。室内は明かりがないため外とあまり変わりはしなかったが、次第に目が慣れ空間の配置はおおよそ見て把握できた。
(あった、あった)
昼間座っていた付近に忘れた弁当袋を拾うと、べルーラは急いで出入口の方へ足早に向かった。
カチッ。
その瞬間、“資料保管室”と記された扉の奥から不穏な物音が響いた。恐怖心も相まってか、その異音にベルーラの全身の毛が逆立つような感覚が走り、身体は大きく震えた。
あと数歩で外へ踏み出そうとしていた足は、恐怖に縫い止められたかのようにその場で止まり、ベルーラは呼吸さえ忘れたまま立ち尽くす。しん、と静まり返った室内で鼓動だけが大きく耳元に響き、全身が強張っていくのを否応なく感じていた。
ベルーラは息を潜めるようにして、ゆっくりと振り向き、物音のした部屋の扉を見据えた。
恐怖から逃げ出したい気持ちは確かにあったが、それ以上にその物音の正体が気にかかり、外へ出るという考えを鈍らせた。
そこは普段、固く施錠され生徒の立ち入りが禁じられている場所。まして今、この場所を密かに使っているのは彼女だけ。地震でも起きない限り、音がするはずがなかった。
(何?・・・今の音。書物とかが落ちた音ではなかった・・・どちらかと言うと金属音?のような・・・。もしかして、ネズミとか動物が入り込んじゃってる?)
恐怖に身を強張らせながらも、ベルーラは慎重に扉へと歩み寄った。
改めて目を凝らしながら指先で確認すると、ドアノブ周辺には何か傷つけられた痕跡があり、無理な力が加えられたのか、ノブが外れかけているのが分かった。
(え・・・ここ壊れてたっけ? それとも劣化?いやいや、そんなに古くないはず・・・)
ドクドクと心臓が激しく脈打ち、更に全身の筋肉が強張る感覚に襲われ硬直する。それでもベルーラは震える手で壊れかけたドアノブを握り締め、意を決してゆっくりと扉を開いた。
窓がない室内のためか、暗闇が目の前に飛び込み無意識にベルーラの喉がひゅっと鳴った。恐る恐る辺りを見渡すも誰かが潜んでいる気配はなく、何かを感じ取ることはなかった。
ベルーラは片足を一歩室内に踏み込み、更に奥を覗くも暗闇が深いため全く分からなかった。
(はあ、よくよく思い出せば以前小さなネズミを見かけたことがあったっけ。きっとそのネズミが走り回って何か落としたのかもしれないわね)
「とりあえず鍵が壊れていること、先生に伝えておかなきゃ」
ベルーラは一旦帰る前に再び学園内に戻ろうと後ろへ振り向き出入りの扉へと向かおうとした刹那、何か突き刺さるような視線を感じた。
「ッ!?」
その直後、背後から羽交い締めをされ、動きを封じられた。
べルーラは驚きと恐怖から声が出ず、身体を硬直させていると生暖かな息遣いが首元から感じられ、更なる恐怖心を増大させた。
「最近まで学園が閉鎖されていたからいい隠れ場所と思って悠々と過ごしてたのに。余計なことしてくれんじゃねーよ」
「ふッ!!」
口元を押さえられ声を出せなくされるも、普段から人けのないこの場所で叫んでも意味が無いことはべルーラ自身分かっていた。
(どうしよ・・・)
「ったく、あのボンクラ大臣の話に乗ったのが運の尽きだったぜ。クソが」
(もしかして、まだ捕まっていない人が!?)
背後でブツブツと恨み節を吐き出す言葉を聞きながら、べルーラはごくりと唾を飲み込んだ。
数十年前、隣国の先代王は浪費家として知られ、その下で家臣や貴族たちもまた贅沢の限りを尽くしていた。しかし現王が即位して以降、国の方針は一変。財政は徹底的に見直され、脱税や横領に手を染めていた者や裏組織と結託していた王族関係者までもが、次々と摘発され粛清されたと聞く。
当然ながら、長年甘い汁を吸ってきた者たちが、その改革を快く思うはずもなかった。
今回の事態は特権を奪われ、鬱屈した思いを募らせた前国王派の貴族や家臣、さらにその恩恵に与っていた一部の兵士や傭兵たちが、現王を引きずり下ろし、旧体制の復活を目論んだ・・・そんな浅はかな企てだった。
(自分勝手な人たちのせいで国民が蔑ろにされる国なんていつか亡びるっ!それをしないために現国王が国を再建しようとしていたのに!)
ベルーラの国は、国民を第一に考える王のおかげで、ありがたいことに他国よりも貧困層が少なかった。
だからこそ、私欲のために踏みにじろうとする者たちの考えが、どうしても許せなかった。
あまりに身勝手な考えに、恐怖心よりも次第に怒りが込み上げ、ベルーラは少しずつ冷静さを取り戻していった。
「まあ、見つかっちまったもんは仕方ねぇ。 金持ち貴族の嬢ちゃんを人質にして、解放条件として他国への逃亡を呑んでもらうとするか。なぁーに、大人しくしてれば何もしやしない」
顔は見えなくとも、ニヤついた男のいやらしい声色が耳元にまとわりつく。ベルーラが大人しくしていたこともあり、男は腕の力を一瞬弱くした次の瞬間、ベルーラは渾身の力で男の足を思いっきり踏みつけてやった。
「ぃいッッッ!!!」
油断していたせいか、いきなりの激痛に男は思わず塞いでいた口元の手を緩めたと同時に、ベルーラは男の指を力いっぱい噛みついた。
「ぐッ、いぎーーッッツ!!!!!」
男がベルーラから離れ怯んだ隙に、振り返り最後の一撃とばかりに急所めがけて思いきり蹴り上げた。
「×★◎☆▽ッッッぅ!!!!!」
べルーラよりも何倍も大柄な男が声にならないほどの大声を上げ、床に倒れ落ち、のたうち回っていた。
(まさか子供の頃にお兄様から教わった撃退法がここで役に立つとは・・・って、そんなことより今のうちに)
ベルーラは全身から汗を噴き出し、今にも口から心臓が飛び出しそうなほどの鼓動に追い立てられていた。縺れる足を必死に運び、壁に手をついて出入口から外へと飛び出した。
(は、早く先生か誰かに伝えに)
頭ではしっかり走っているはずなのに、極度の恐怖と緊張で足がもつれ、思うように身体が動かない。
(早くっ!、早くっっ!!)
さきほどよりも更に闇に包まれているせいで、地獄へと誘われているような感覚に襲われた。恐怖に涙が滲み、荒い呼吸のまま駆けていた瞬間、背後から足元に衝撃が走った。
「きゃッ!」
バランスを崩したベルーラは、そのまま激しく地面に叩きつけられた。
「はあ、はあ・・・。せっかく優しくしてやってたってのに、いい度胸じゃねぇか。大人しく従ってりゃ、その綺麗な肌に傷一つ付けずに済んだのによぉ」
暗闇の奥から、大きな影が一歩、また一歩と、倒れたベルーラへ近づいてくる。今にも身体から飛び出しそうな激しい鼓動が全身に鳴り響き、絶望がじわじわと押し寄せてきた。恐怖に足腰が砕け、彼女は立ち上がることさえ叶わなかった。
それでも逃げなければ、という本能だけが彼女を突き動かす。ベルーラは四つん這いになって、必死に地面を掻きながら男から距離を取ろうとした。
「おー、頑張れ頑張れ。しかしなぁー、そんなスピードじゃあ、追いついちまうぞー」
「はあッ、はあッ、はあッ、ひッッ!」
ベルーラは土と枯れ葉にまみれ、掌を擦り切らせながら必死に地面を掻いた。だが、その足を無情にも掴まれ、抵抗も虚しく引きずり戻されてしまう。男は逃がす気など微塵もないとばかりに、彼女の上へと跨り、動きを完全に封じた。
「あー、さっきは痛かったなー。この国のご令嬢様は男を敬うことを知らないようだな。少し躾けてやらんとな」
木の葉が風で揺れる音の中、乾いた音が切り裂くように響き渡った。
「嬢ちゃんが大人しくしてりゃ、ここまで荒っぽいことはしなかったんだがな。恨むんなら自分が起こした行動を恨めよ」
馬乗りになった男に平手打ちを食らわされたベルーラは、その衝撃から口端を切ってしまい、薄く血が滲んでいた。意識が朦朧とするベルーラを男は、乱れた制服姿を値踏みするようにじろじろと見回した。
「乳くせー顔の割には・・・せっかくだ、少し楽しませてもらうか」
男は口元を歪ませ、吐き気を催すほどの笑みを浮かべていた。昂ぶりを抑えきれないのか、荒い呼吸だけが暗闇に響いていた。
男の手が乱暴にシャツを引き裂くと白く柔らかな膨らみが露わになり、更に男を興奮させた。
極度のストレスによって、ベルーラの心身は完全に機能を停止し、抵抗する力は残されていなかった。仰向けに倒れたまま、焦点の合わない視線で闇に沈んでいく空を見つめた。無意識に左の目尻から一筋の涙が音もなく落ちた。
(ああ、こんなことならオルバについてきてもらえばよかった・・・私、このまま穢されて殺されちゃうのかな・・・キリウ様に・・・会いたかったな・・・少しは・・・・・・悲しんでくれるかな・・・)
ベルーラはゆっくりと目を閉じ、意識を闇へと手放した。その一方で、男は何の感情も示さぬまま自身のベルトを外すと、彼女の胸元へ手を伸ばした。
・
・
・
・
・
・
「ウギガャーーーーーーーーーッッツ!!!!!!」
この世のものとは思えない男の断末魔の叫びが響いた瞬間、押さえつけられていたベルーラの身体はふっと軽くなった。何事かと目を開けようとしたその刹那、懐かしい香りがふわりと鼻腔をくすぐり、優しく温かい手がそっと目元を覆った。
「・・・ごめん。俺は・・・またキミを傷つけ護れなかった・・・」
「キリ、ウさ・・・?どうし・・・」
「疲れただろう。もう大丈夫だから、このまま少しの間ゆっくりおやすみ」
優しく温かな唇に塞がれ、わずかに開いた唇の隙間から甘い液体が喉へと落ちてきた。ベルーラがその液体を飲み込んだ瞬間、全身の力が抜け意識は静かに暗闇へと沈んだ。
18
あなたにおすすめの小説
国の英雄は愛妻を思い出せない
山田ランチ
恋愛
大幅変更と加筆の為、再掲載しております。以前お読み下さっていた方はご注意下さいませ。
あらすじ
フレデリックは戦争が終結し王都へと戻る途中、襲われて崖から落ち記憶の一部を失くしてしまう。失った記憶の中には、愛する妻のアナスタシアの記憶も含まれていた。
周囲の者達からは、アナスタシアとは相思相愛だったと言われるがフレデリックだが覚えがない。そんな時、元婚約者のミレーユが近付いてくる。そして妻のアナスタシアはどこかフレデリックの記憶を取り戻す事には消極的なようで……。
記憶を失う原因となった事件を辿るうちに、中毒性のある妙な花が王城に蔓延していると気が付き始めたフレデリック達はその真相も追う事に。そんな中、アナスタシアは記憶がなく自分を妻として見れていない事を苦しむフレデリックを解放する為、離婚を決意する。しかし陰謀の影はアナスタシアにも伸びていた。
登場人物
フレデリック・ギレム
ギレム侯爵家の次男で、遠征第一部隊の隊長。騎士団所属。28歳。
アナスタシア
フレデリックの妻。21歳。
ディミトリ・ドゥ・ギレム
ギレム侯爵家当主。フレデリックの兄。33歳。
ミレーユ・ベルナンド
ベルナンド侯爵の妻で、フレデリックの元婚約者。26歳。
モルガン
フレデリックの部下。おそらく28歳前後。
私たちの離婚幸福論
桔梗
恋愛
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。
しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。
彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。
信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。
だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。
それは救済か、あるいは——
真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。
旦那さまは私のために嘘をつく
小蔦あおい
恋愛
声と記憶をなくしたシェリルには魔法使いの旦那さまがいる。霧が深い渓谷の間に浮かぶ小さな島でシェリルは旦那さまに愛されて幸せに暮らしていた。しかし、とある新聞記事をきっかけに旦那さまの様子がおかしくなっていっていく。彼の書斎から怪しい手紙を見つけたシェリルは、旦那さまが自分を利用していることを知ってしまって……。
記憶も声もなくした少女と、彼女を幸せにするために嘘で包み込もうとする魔法使いのお話。
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
その騎士は優しい嘘をつく
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
第二騎士団の団長であるハイナーは、二年間つきあっている彼女に結婚を申し込もうとしていた。
これから遠征のため、一年間も会えなくなってしまうからだ。
だが、それを言うために彼女と会った時、彼の口から出た言葉は「他に好きな人ができたから、別れて欲しい」だった――。
※完結しました。
※ムーンライト様からの転載になります。
男嫌いな王女と、帰ってきた筆頭魔術師様の『執着的指導』 ~魔道具は大人の玩具じゃありません~
花虎
恋愛
魔術大国カリューノスの現国王の末っ子である第一王女エレノアは、その見た目から妖精姫と呼ばれ、可愛がられていた。
だが、10歳の頃男の家庭教師に誘拐されかけたことをきっかけに大人の男嫌いとなってしまう。そんなエレノアの遊び相手として送り込まれた美少女がいた。……けれどその正体は、兄王子の親友だった。
エレノアは彼を気に入り、嫌がるのもかまわずいたずらまがいにちょっかいをかけていた。けれど、いつの間にか彼はエレノアの前から去り、エレノアも誘拐の恐ろしい記憶を封印すると共に少年を忘れていく。
そんなエレノアの前に、可愛がっていた男の子が八年越しに大人になって再び現れた。
「やっと、あなたに復讐できる」
歪んだ復讐心と執着で魔道具を使ってエレノアに快楽責めを仕掛けてくる美形の宮廷魔術師リアン。
彼の真意は一体どこにあるのか……わからないままエレノアは彼に惹かれていく。
過去の出来事で男嫌いとなり引きこもりになってしまった王女(18)×王女に執着するヤンデレ天才宮廷魔術師(21)のラブコメです。
※ムーンライトノベルにも掲載しております。
【完結】そんなに嫌いなら婚約破棄して下さい! と口にした後、婚約者が記憶喪失になりまして
Rohdea
恋愛
──ある日、婚約者が記憶喪失になりました。
伯爵令嬢のアリーチェには、幼い頃からの想い人でもある婚約者のエドワードがいる。
幼馴染でもある彼は、ある日を境に無口で無愛想な人に変わってしまっていた。
素っ気無い態度を取られても一途にエドワードを想ってきたアリーチェだったけど、
ある日、つい心にも無い言葉……婚約破棄を口走ってしまう。
だけど、その事を謝る前にエドワードが事故にあってしまい、目を覚ました彼はこれまでの記憶を全て失っていた。
記憶を失ったエドワードは、まるで昔の彼に戻ったかのように優しく、
また婚約者のアリーチェを一途に愛してくれるようになったけど──……
そしてある日、一人の女性がエドワードを訪ねて来る。
※婚約者をざまぁする話ではありません
※2022.1.1 “謎の女”が登場したのでタグ追加しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる