今日でお別れします

なかな悠桃

文字の大きさ
1 / 68

1

しおりを挟む
「ねぇ、我慢できないんだけどー。」

女は甘ったるい声色を出し男の首に腕を絡ませ身体を密着させていた。男の脚の間に自分の右脚を差し込み煽るような眼差しで男を見上げる。

グッと近づき女の唇が男の唇にあと数センチで重なり合.....


「すみませーーん、もう時間なんで図書室閉めたいんですけどー」

いきなり眼鏡をかけた女生徒が二人の前に立ち迷惑そうな顔で見つめていた。あと少しで男の唇に触れれそうだったのに邪魔された女は、眼鏡の女を鋭い眼光で睨みつけていた。

「ごめんねー、今帰るから。ってなわけで俺この後用あるから先帰って」

優しく微笑みながら男は女から離れ帰るよう促した。しかし、女は離れたくないらしく帰る素振りをみせず尚も男に纏わりつく。男はフーと軽く息を吐き女の耳元に唇をあて囁くように、

「悪いけどしつこい女には勃たないんだよね」

その言葉で女は鬼の形相かと思うくらいの表情で怒りながら図書室から出て行った。

(美人でもあんな顔になると恐ろしいな)

出て行った扉を眼鏡の女生徒がボーっと眺めていると

「いやー、恥ずかしいとこ見られちゃったなー」

男、阿部貴斗あべたかとは頭をかきながら目の前にいる眼鏡の女、桐野碧きりのあおいに笑みを浮かべながら話しかけた。


「...さっきの女の人、三年の相馬そうま先輩ですよね。確かあの人今年の学祭のミスコンで優勝した...」

「あー、そうだっけ?」

貴斗は特に気にせず乱れた制服を直す。耳には左右にピアス、ぱっちりとしたライトブラウンの瞳、少しタレ目の二重、ブラウンベージュ系の髪色に目にかかるサラサラの前髪が男の色香を漂わせていた。

「ってかさー桐野、なんで敬語?俺らって同クラだよね」

貴斗が椅子に座り、碧の片付けを見つめていた。

「.....鍵閉めたいんで早く出て行ってください」

冷たい視線を貴斗に向け急かすように促した。

はい、はい、と貴斗は気怠そうに席から離れ廊下に出た。碧もその後に続き戸締まりをし職員室へと向かう。


「...あのなんで着いてくるんですか?用あるんじゃないんですか?」

碧は立ち止まり、後ろを歩く貴斗に振り返り辟易した表情でいると

「あーアレね、嘘嘘、ってかほら、外も薄暗くなってきたし送ってあげるよ」

「結構です」

碧はピシャリと言い放ち早足で職員室へと向かった。職員室に残っていた先生に鍵を渡し部屋から出て辺りを見渡すと貴斗はいなかった。


(帰ったのね)

碧は安堵し玄関を出て校門に差し掛かると

「じゃ帰ろっか」

ニコッと笑ってる貴斗が碧の前に現れ、あまりの衝撃に碧は一瞬声が出せずにいた。

「帰ったんじゃ...」

「えー、そんなわけないでしょー」

貴斗はケラケラと笑いながら両手を頭の後ろに組み前を歩き、碧は下を向き少し離れて歩く。

なるべく距離が近づかないよう歩いていると碧の目線に靴が見え思わず見上げた。前を歩いていたはずの貴斗がいつの間に碧の前に立ち止まっていた。

「...桐野さー、学校以外で俺ら会ってね?」

先程まで笑っていた貴斗が冷ややかな視線を碧に向けていた。心臓が鷲掴みされてるかのような痛みと危険を伝えるように碧の頭の中で警鐘が鳴り響く。

碧の足が一歩下がり、その後に貴斗が一歩前に出る。

「あ、あるわけないです。阿部くんとこんな話したのだって今日が初めてなくらいですよ?わっ私、塾あるんでここで」

「あっ、おいっ!」

逃げるように碧は貴斗の前から走り去った。こんなに全力疾走したの中学以来なんじゃないかと思うくらい突っ走っていた。


「はあ、はぁ.......はあ...」

後ろを振り向くと貴斗は追いかけてこなかったらしく誰もいなかった。

(中学ん時、陸上部で短距離走選んどいてよかったー...こんなところで役に立つとはね)

碧は辺りを見渡し急ぎ足で駅に向かう。大丈夫、大丈夫バレてない......自分に言い聞かせながら早足で家路へと向かった。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

余命わずかな私は、好きな人に愛を伝えて素っ気なくあしらわれる日々を楽しんでいる

ラム猫
恋愛
 王城の図書室で働くルーナは、見た目には全く分からない特殊な病により、余命わずかであった。悲観はせず、彼女はかねてより憧れていた冷徹な第一騎士団長アシェンに毎日愛を告白し、彼の困惑した反応を見ることを最後の人生の楽しみとする。アシェンは一貫してそっけない態度を取り続けるが、ルーナのひたむきな告白は、彼の無関心だった心に少しずつ波紋を広げていった。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも同じ作品を投稿しています ※全十七話で完結の予定でしたが、勝手ながら二話ほど追加させていただきます。公開は同時に行うので、完結予定日は変わりません。本編は十五話まで、その後は番外編になります。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

処理中です...