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智広がいなくなった部屋は先程とは違いやけに静かさが目立ち、碧は緊張感が更に増し居心地の悪さを覚えていた。貴斗に頼まれてからほとんど智広が何かしら貴斗の部屋に入り浸り会話も三人、もしくは碧と、という具合に“クッション”的な存在となっていた人物が急にいなくなるだけでこうまで落ち着かなくなってしまうとは思いもよらなかった。
「とりあえず、現国のノート写してもらっていい?」
空気が伝わってしまったのか貴斗がその場の空気を変えるように出した言葉で碧は我に返り、慌てるように自身が授業で書いたノートを開いた。
「智広がいなくなって困ってる?」
唐突な貴斗の言葉に痛いところを突かれた気持ちになり碧は目の前に座る貴斗に視線を向ける。貴斗は複雑な笑みを浮かべ左手で頬杖をつきながら碧に微笑みかけていたが、眼の奥は冷ややかな眼差しで覆われていた。
「そんなことないよ、さっきの見られてたみたいだから何となく恥ずかしいなって」
当たり障りないよう愛想笑いを作りながらノートの文字を貴斗のノートに書き写そうとしたが、貴斗からの視線が刺さり自分の意思とは反対になかなか手が進まずノートへ書き写せないでいた。
「まぁ仕方ないか、この短期間で仲良くなってたしね...智広と話してる時の方が楽しそうだったし」
「そういうわけじゃ......ねぇ、ちょっといいかな?」
貴斗の拗ねた表情を見ながら碧はふと智広と初めて会った時に車内で会話した内容を思い出した。碧は軽く深呼吸をし、持っていたシャーペンを置き背筋を伸ばし改めて目の前にいる貴斗に向き直した。
「改めてもう一度言うけど、腕の怪我のこと本当にごめんなさい、それとかばってくれてありがとう。貴斗のおかげで私は無傷でいられた」
「なになに?!急に、もう何度も聞いたし俺が勝手にやったことだって言ってるだろ」
頭を下げる碧に貴斗は顔を上げるよう促すがその体勢は変わることなく俯きながら碧はぽつりぽつりと話し出した。
「あの日私が阿部く......貴斗の座っている席を選ばなければ、あなたの家の鍵を持って帰らなければ...知り合うこともなかったし学校だって変えなかった。それに今回のことだって私と再会しなければこんなことも起きなかった...私と会ったがために貴斗の人生を変えさせて迷惑ばっかかけて」
「何言ってるんだよっ!そんなわけないだろっ!」
貴斗は碧の傍に行き左手で碧の左肩を強く掴んだ。尚も俯いたままの碧をそのままそっと貴斗は抱き締め小さな子を落ち着かせるように左手を背中に回し優しく擦った。
「俺はさ、あの日碧に会ったこと後悔なんかしたことないし学校だって自分の意志で決めたんだ、だから俺は一度も後悔なんて...いや、後悔はあるか...あの日別れ話された時なんで手放したんだろって、今だったら絶対にそんなことしないのに...碧に再会するまでずっと心残りだった。だからこうやっていられることが俺にとってどんなに幸せか」
貴斗は碧の肩に自身の額を乗せ囁くように話し、碧は無言のままそれを聞いていた。
「碧...俺、どんなに突き放されてももう離れるつもりないから。しつこいって言われるかもしれないけど俺をもう一度見て」
貴斗はゆっくり顔を上げると自身の人差し指を曲げ中節部分に碧の顎先をくいっと乗せ視線を合わせるよう顔を上げさせた。
「俺たちはどんなことをしてもあの頃には戻れない、でも今を変えていくことも進むこともできる...あの頃の俺を好きでいてくれたように今度は“今の俺”を好きになってもらいたいんだ」
「私は...」
躊躇い視線を逸らそうとする碧に貴斗は薄く口元を引き締め頬に手を添える。貴斗の掌の温盛が心地よく碧の頬へと伝わり無意識に自身の手をその上に重ねた。
「一からやり直せるの...かな...。私いっぱい貴斗を傷つけたのに」
「それならこれからそれ以上に一緒に笑えるようにすればいいんじゃない?15歳の時の俺らより17歳の俺らの方が幸せなんだって大声で言えるように」
貴斗ははにかみながら微笑み唇を軽く碧の額に触れる。一瞬ビクつきながらも今までとは違う緊張感が碧の全身を覆いそれは次第に柔らかな熱へと変わっていくのがわかった。
「た...か、」
柔らかな貴斗の口唇が碧の口唇へ微かに何度も掠めるように触れ、徐々に重なる時間が長くなっていく。啄むような口づけが熱を帯び深くなり碧の頬の紅潮と共に鼓動が激しさを増していった。
名残惜しそうに貴斗の口唇が離れ、碧は瞑っていた目蓋をゆっくり開け一瞥すると熱を持て余すかのような貴斗の瞳が碧を捕らえ恥ずかしさで逸らしたくてもなかなか動けずにいた。
「碧、好きだよ」
(あ.......)
貴斗の表情は15歳の時に告白した彼の姿を碧の脳裏に呼び起こさせた。ただ、あの頃とは違うのは少し大人びた貴斗と偽りない碧がいること...。
「もう一度好きになっても...いいのかな」
泣きじゃくり自分ではもうコントロールが効かなくなってしまったかのように涙が頬に伝わりたくさんの跡を残し流れていく。碧は手の甲で拭おうとすると先に貴斗の掌が頬全体を包み親指で目元の涙を拭った。
「うん、戻っておいで」
そう答えると貴斗は碧の口唇にそっと重ねた。
「とりあえず、現国のノート写してもらっていい?」
空気が伝わってしまったのか貴斗がその場の空気を変えるように出した言葉で碧は我に返り、慌てるように自身が授業で書いたノートを開いた。
「智広がいなくなって困ってる?」
唐突な貴斗の言葉に痛いところを突かれた気持ちになり碧は目の前に座る貴斗に視線を向ける。貴斗は複雑な笑みを浮かべ左手で頬杖をつきながら碧に微笑みかけていたが、眼の奥は冷ややかな眼差しで覆われていた。
「そんなことないよ、さっきの見られてたみたいだから何となく恥ずかしいなって」
当たり障りないよう愛想笑いを作りながらノートの文字を貴斗のノートに書き写そうとしたが、貴斗からの視線が刺さり自分の意思とは反対になかなか手が進まずノートへ書き写せないでいた。
「まぁ仕方ないか、この短期間で仲良くなってたしね...智広と話してる時の方が楽しそうだったし」
「そういうわけじゃ......ねぇ、ちょっといいかな?」
貴斗の拗ねた表情を見ながら碧はふと智広と初めて会った時に車内で会話した内容を思い出した。碧は軽く深呼吸をし、持っていたシャーペンを置き背筋を伸ばし改めて目の前にいる貴斗に向き直した。
「改めてもう一度言うけど、腕の怪我のこと本当にごめんなさい、それとかばってくれてありがとう。貴斗のおかげで私は無傷でいられた」
「なになに?!急に、もう何度も聞いたし俺が勝手にやったことだって言ってるだろ」
頭を下げる碧に貴斗は顔を上げるよう促すがその体勢は変わることなく俯きながら碧はぽつりぽつりと話し出した。
「あの日私が阿部く......貴斗の座っている席を選ばなければ、あなたの家の鍵を持って帰らなければ...知り合うこともなかったし学校だって変えなかった。それに今回のことだって私と再会しなければこんなことも起きなかった...私と会ったがために貴斗の人生を変えさせて迷惑ばっかかけて」
「何言ってるんだよっ!そんなわけないだろっ!」
貴斗は碧の傍に行き左手で碧の左肩を強く掴んだ。尚も俯いたままの碧をそのままそっと貴斗は抱き締め小さな子を落ち着かせるように左手を背中に回し優しく擦った。
「俺はさ、あの日碧に会ったこと後悔なんかしたことないし学校だって自分の意志で決めたんだ、だから俺は一度も後悔なんて...いや、後悔はあるか...あの日別れ話された時なんで手放したんだろって、今だったら絶対にそんなことしないのに...碧に再会するまでずっと心残りだった。だからこうやっていられることが俺にとってどんなに幸せか」
貴斗は碧の肩に自身の額を乗せ囁くように話し、碧は無言のままそれを聞いていた。
「碧...俺、どんなに突き放されてももう離れるつもりないから。しつこいって言われるかもしれないけど俺をもう一度見て」
貴斗はゆっくり顔を上げると自身の人差し指を曲げ中節部分に碧の顎先をくいっと乗せ視線を合わせるよう顔を上げさせた。
「俺たちはどんなことをしてもあの頃には戻れない、でも今を変えていくことも進むこともできる...あの頃の俺を好きでいてくれたように今度は“今の俺”を好きになってもらいたいんだ」
「私は...」
躊躇い視線を逸らそうとする碧に貴斗は薄く口元を引き締め頬に手を添える。貴斗の掌の温盛が心地よく碧の頬へと伝わり無意識に自身の手をその上に重ねた。
「一からやり直せるの...かな...。私いっぱい貴斗を傷つけたのに」
「それならこれからそれ以上に一緒に笑えるようにすればいいんじゃない?15歳の時の俺らより17歳の俺らの方が幸せなんだって大声で言えるように」
貴斗ははにかみながら微笑み唇を軽く碧の額に触れる。一瞬ビクつきながらも今までとは違う緊張感が碧の全身を覆いそれは次第に柔らかな熱へと変わっていくのがわかった。
「た...か、」
柔らかな貴斗の口唇が碧の口唇へ微かに何度も掠めるように触れ、徐々に重なる時間が長くなっていく。啄むような口づけが熱を帯び深くなり碧の頬の紅潮と共に鼓動が激しさを増していった。
名残惜しそうに貴斗の口唇が離れ、碧は瞑っていた目蓋をゆっくり開け一瞥すると熱を持て余すかのような貴斗の瞳が碧を捕らえ恥ずかしさで逸らしたくてもなかなか動けずにいた。
「碧、好きだよ」
(あ.......)
貴斗の表情は15歳の時に告白した彼の姿を碧の脳裏に呼び起こさせた。ただ、あの頃とは違うのは少し大人びた貴斗と偽りない碧がいること...。
「もう一度好きになっても...いいのかな」
泣きじゃくり自分ではもうコントロールが効かなくなってしまったかのように涙が頬に伝わりたくさんの跡を残し流れていく。碧は手の甲で拭おうとすると先に貴斗の掌が頬全体を包み親指で目元の涙を拭った。
「うん、戻っておいで」
そう答えると貴斗は碧の口唇にそっと重ねた。
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