猛毒天使に捕まりました

なかな悠桃

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(いたたたたっ・・・)

史果は歩く度に響く下半身は勿論、全身の激痛に耐えながらなんとかエレベーターに乗り込んだ。

(今日一日もつかな・・・)

通勤時間のため社内エレベーター内は人で溢れ、史果はなるべく身体を動かしたくないため隅の方へとずれていった。
史果はエレベーターに乗りながら忌々しい今朝の状況を思い出す。


あの地獄の時間から意識を失い、スマホのアラーム音と共に目を覚ますと見慣れた天井が見え知らぬ間に自宅のベッドに寝かされていた。汗でドロドロになった着衣は着ておらず基希の物と思われるトレーナーが代わりに着せられていた。身体も拭かれたのかベタつきもなく不快感はなかった。

(あれっ?もしかして夢だったじゃあ・・・。もしかして私、お腹いっぱいになって寝落ちしちゃったとか?)

そう楽観視しながらベッドから起き上がろうと身体を起こした瞬間、身体中に激しい痛みが走り一気に目が覚めた。特に下半身からは最後までシテいないにも関わらずまるで異物が入っているかのような違和感と鈍痛で動くたびに史果にダメージを与えた。

その痛みと共にあの出来事が夢ではなく現実に起こったことだと思い知らされ、更に再び見覚えのある状況に落胆した。その視線の先にはローテーブルに置いてある置き手紙と昨日穿いていたショーツが綺麗に畳まれ置いてあった。

“おはよう。昨日着てた服は脱衣所に置いといた。パンツはコンビニで新しいの買って穿かせといてやった”

その内容を見た史果は一気にクシャクシャに丸め、ゴミ箱へと投げ捨てた。昨夜の醜態が段々と鮮明に蘇り史果はベッドに突っ伏すように倒れ込んだ。

「・・・会社行きたくないよー」

この短期間に自分の口から同じセリフが吐かれることになるとは思いもしなかった・・・。





「あっ、ごめんなさい」

「いいえ、大丈夫ですよ」

回想に耽っていると、エレベーター内で奥にいた男性にぶつかり謝ると史果の頭上から聞き覚えのある声が降ってきた。ハッと見上げると涼し気な佇まいで優しい笑みを浮かべる外面モードの基希が隣に立っていた。ふと周りを見渡すとエレベーター内の女性社員たちは基希のその表情に目を潤ませ見惚れていた。

よりによって・・・と史果はゲンナリとした表情を浮かべていると混雑し身動きが取り難いことをいいことに基希の掌が史果の臀部を撫で回してきた。

「身体は大丈夫?」

史果の耳元に唇を寄せ囁くように話す基希の声に昨夜の出来事が走馬灯のように思い出し史果の顔は一気に紅潮した。その間も基希は表情を一切変えず史果の身体を厭らしい手つきで触れていた。

人前で声を出せず、基希の傍から離れたくても動けず八方塞がりの状況下で為す術なく睨みつけることしかできないでいると、ある階でエレベーターの扉が開き「お、降りますっ!!」咄嗟に声を荒げるように言い史果は人混みをかき分けるように全く関係のない階のフロアへと飛び出した。「あっ、ちょっ」基希は慌てたような顔が見えたが、無情にもそのまま扉は締まり上へとエレベーターは上昇していった。


「あれ?史果?」

ホッと胸を撫で下ろしていると自身の名を呼ぶを声が聞こえ振り向くと、同期で数少ない友人の一人、山下由利がコーヒーカップを持って史果に声をかけてきた。

「お、おはよ・・・」

「何やってんの?ここ総務課の階だけど、何か用でもあった?」

「あーいやー・・・」

キョトンとした表情で此方を見つめられ史果はバツ悪そうに言葉を濁していると、由利は何かを思い出したように目を輝かせ史果に近づく。

「ねぇ!ねぇ!そういえば史果、すごいじゃん!!あの“イケメン天使”と付き合ってるんだって!総務課ここにまで拡がってるよ!まさか人見知りの史果がねー、確か同じ課だったよね?どっちから言ったの?今度ゆっくり聞かせてよー」

ニヤニヤしながら矢継ぎ早に言われ史果は「いや、そうじゃなくて・・・」誤解をしている由利に本当のことを告げようとした時、史果の両肩にふわっと手が置かれた。そのまま後ろにそっと引かれ史果の後背部に何かが触れる感触を感じた。

「史果、探したよ」

その瞬間、サーっと血の気が引き、頬が引き攣るのが自分でも分かった。反対に目の前の同期はまるでイケメンアイドルが間近にいるかのように頬が紅潮し、目をキラキラさせながら史果の背後にいる男性に見惚れていた。

「わっ!やっ!はっ初めまして。私、史果と同期で総務課の山下由利と申します。史果とは入社してから仲良くさせてもらってます!」

由利がコーヒーカップを胸元に抱え勢いよく頭を下げると「初めまして、藤です。此方こそ史果がお世話になってます」ふふっと柔らかな声で笑う基希に由利は更に顔を赤らめるが、史果はより一層蒼白に近づいていた。

「史果、なんか急に顔色悪くなってるけど大丈夫?」

「ほんとだ。史果、始業時間までまだ時間あるから一度、医務室へ寄って行こう。山下さん、バタバタと申し訳ないが、史果を連れて行くね。今度またゆっくり三人でお話でもしようね」

「はっ、はい!喜んで!!史果を宜しくお願いします」

基希は有無も言わさず史果の鞄を取り上げ腰をぐっと引き寄せ抱き抱えるようにフロアを後にした。

「史果いろいろあったけど良かったなー」

二人の仲睦まじい後ろ姿を見ながら由利は安堵ともとれる表情を浮かべ見送ったが、まさか実際は逃げられないようにがっちり拘束されているだけとは予想すらもしなかった。



☆☆☆
「なーんで逃げたんだよ」

人気のない非常階段で基希に少し前に流行った“壁ドン”をされている状態に史果は、まさか現実でしかも自分が経験するとは思いもよらず、自社の恋愛アプリで推しキャラがしているスチルとは真逆の感情、まさに恐怖と闘っていた。先ほど由利に見せていた表情とは皆無に等しいほど不機嫌な様子で史果を見下ろす。

「だ、だって、藤さんがあんなことするから・・・気づかれ「基希」

なお、一層苛立ちを放ちながら史果の言葉を遮ると自身の名前を呼ぶよう告げる。

「次、苗字呼びしたら人が居ようが居まいが襲うから」

その抑揚のない声色に緊張感が走り史果は固唾を呑んだ。身動きが取れずまるで金縛りにあっているかのようになる身体に基希は、史果の髪を耳に掛け頬を撫で大きな手で包み込んだ。一瞬、ビクっと身体を強張らせると味を占めたように頬に添えた手の指先が史果の口唇にそっと触れた。縁取る様になぞると人差し指で中をこじ開けそのまま口咥内へと差し込んだ。

「んぐっ!」

細くしなやかな指といってもやはり男の手だけあって骨ばった無骨な指は口腔内を嬲り、史果は苦しさから唾液が口端から流れ出していた。ちゅぽ、と指が放れるとそのまま史果の脚の間に基希の片脚がぐっと這入り込み激しく口唇を重ねてきた。両頬は基希の両手で挟まれ背けることも出来ず基希のペースに呑まれ、くちゅ、ぐちゅと卑猥な水音を漏らし史果は思わず基希のワイシャツを握り締めた。

(・・・!!脚に・・・当たってる)

基希の身体が密着すると彼の下半身から硬くなったモノが史果の下半身にぐりぐりと押し当てられた。史果の身体は昨夜の出来事のせいで敏感になっており、自分でも膣口から甘く厭らしい液がこぷっと漏れ出て下着を濡らしているのがわかった。

基希の口唇くちびるが離れると二人の唇から細く光る銀糸がつつっ・・・と繋ぎ、遠ざかるにつれ糸は細くなりぷつりと途切れた。

「キスだけでこんなになっちゃうなんてエロイな。それともれて欲しくなった?」

薄く微笑んだ基希の淫靡な加虐に、史果は壁に凭れながらズルズルと崩れ落ちていく。ペタリと冷たい床に座った状態の史果の前に基希は屈み込み目尻に溜まる涙を指先でそっと拭った。

は可愛いね、落ち着いたら早く戻って来いよ」

そう言い残し基希は、少し曲がったネクタイを直すとそのまま非常用扉からフロアの廊下へと戻って行った。残された史果は、無気力のままただ茫然と階段を見つめていた。
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