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「・・・どうぞ」
正座から一先ず解放された史果は、ソファに腕と脚を組み座る基希と女装姿から基希に服を借着し胡坐をかき不機嫌な表情の歩生にそれぞれ座るテーブルの手前へ緊張の面持ちで珈琲を置いた。
「ども」
全く違う風貌で素はぶっきら棒だが、所作はやはり変わらず綺麗で育ちの良さを表していた。
「俺、そもそも史果の会社の人間じゃないんだ」
出された珈琲を一口啜った基希は、平然とした声色でテーブルの端辺りに座る史果に視線を向けた。
「へ?どういう・・・」
基希の話によれば、史果の会社のトップは彼の叔父にあたり、あることを調べるために数年前から社員として潜り込み、調査しつつ業務をこなしていたとのことだった。
「調べるって何をですか?」
「産業スパイ」
その言葉を聞き、史果は一気に心拍数が上がり、佐伯の顔が浮かび身震いした。
「元々、俺が本来籍を置いてる会社の関連会社が開発中のデータ抜き取られて大損害食らわされてね。ちょっとした裏ルートで調査してたら叔父の会社を含め業務提携している企業もちらほらリストに上がってる情報を突きとめてさ。とりあえず叔父に頼まれてしばらくの間、潜入して怪しい奴がいないか調査してたってわけ。外部の人間だとフィルターなく見れるし、俺だと動きやすいってことで頼まれたの」
「それってもしかして・・・佐伯さんですか?」
「あー、あいつは違う。そもそもあれは偶然の産物みたいなもので末端の中の末端で雑魚レベル。あいつの場合、情報より女喰い散らかしてるのがメインになってたから。それにさっき言った犯行グループは当たりがついてたし俺が動けないところはもう警察に任せてあるから解決まで時間の問題なんじゃないかな」
理解出来たような出来ないような、スッキリしない頭を働かせつつ史果は眉間に皺を寄せていた。
「基希さんは元々うちの会社に就職したわけではないんですよね?じゃあ、一体どこで働いていたんですか?」
「株式会社ビンアペックス」
基希が一瞬、声を詰まらせているとずっと無言でいた歩生が珈琲を啜りながら答えた。
「ビンアペックスって言ったら、大手も大手、超が付くほどの大手じゃないですか!確かうちも傘下に入ってますよね?!」
株式会社ビンアペックスは、戦前に成り上がりで大きくなった財閥企業で財閥解体後も幅広い視野を兼ね備え企業グループとしてのし上っていた。元々は電子部品などを主に着手し視野を置いた企業だったが、現在は娯楽関係、飲食など多種多様の企業を業務提携、経営統合などをし急成長を遂げている。史果の働くアプリゲーム会社もここの子会社として名を連ねていた。
「基希はそこの社長の息子で会長の孫。地位は専務取締役。ちなみに俺は基希が抜けた穴埋めで代理としてやってるけど仕事量半端ないしそろそろ戻って来てくんねーと回らねーんだよ」
「あのな、俺がいなくたって会社は回るし大差ねーよ。大体、歩生がいるんだし」
基希はソファから立ち上がり歩生の腕を引っ張ると無理やり立ち上がらせた。
「ってことで、今日は一先ず帰れっ!そもそも姑息な手使って、勝手に史果に近づきやがって」
「おいっ!俺はまだ話がっ!」
基希は、暴れ抵抗する歩生を玄関まで引っ張り無理やり部屋から追い出してしまった。
「あ、え・・・いいんですか?」
「あん?あー・・・問題ない。あいつとは付き合い長いし、こんなことで拗れるような関係じゃないから・・・って言うより自分の心配した方がいいんじゃないかなー?」
部屋に戻って来た基希は意地悪な笑みを浮かべ床にペタリと座る史果を見下ろした。
“ゾクゾク”と無意識に武者震いした史果は、後退り気を紛らわせようとヘラヘラと笑みを浮かべその場から立ち去ろうとするも基希にガッチリと腕を掴まれ動きを阻止されてしまった。
「はーい♡お仕置きタイムね♪」
外でよく見る天使の微笑だが、目の奥は全くそれとはかけ離れ吸い込まれそうな程の深淵が広がっていた。
正座から一先ず解放された史果は、ソファに腕と脚を組み座る基希と女装姿から基希に服を借着し胡坐をかき不機嫌な表情の歩生にそれぞれ座るテーブルの手前へ緊張の面持ちで珈琲を置いた。
「ども」
全く違う風貌で素はぶっきら棒だが、所作はやはり変わらず綺麗で育ちの良さを表していた。
「俺、そもそも史果の会社の人間じゃないんだ」
出された珈琲を一口啜った基希は、平然とした声色でテーブルの端辺りに座る史果に視線を向けた。
「へ?どういう・・・」
基希の話によれば、史果の会社のトップは彼の叔父にあたり、あることを調べるために数年前から社員として潜り込み、調査しつつ業務をこなしていたとのことだった。
「調べるって何をですか?」
「産業スパイ」
その言葉を聞き、史果は一気に心拍数が上がり、佐伯の顔が浮かび身震いした。
「元々、俺が本来籍を置いてる会社の関連会社が開発中のデータ抜き取られて大損害食らわされてね。ちょっとした裏ルートで調査してたら叔父の会社を含め業務提携している企業もちらほらリストに上がってる情報を突きとめてさ。とりあえず叔父に頼まれてしばらくの間、潜入して怪しい奴がいないか調査してたってわけ。外部の人間だとフィルターなく見れるし、俺だと動きやすいってことで頼まれたの」
「それってもしかして・・・佐伯さんですか?」
「あー、あいつは違う。そもそもあれは偶然の産物みたいなもので末端の中の末端で雑魚レベル。あいつの場合、情報より女喰い散らかしてるのがメインになってたから。それにさっき言った犯行グループは当たりがついてたし俺が動けないところはもう警察に任せてあるから解決まで時間の問題なんじゃないかな」
理解出来たような出来ないような、スッキリしない頭を働かせつつ史果は眉間に皺を寄せていた。
「基希さんは元々うちの会社に就職したわけではないんですよね?じゃあ、一体どこで働いていたんですか?」
「株式会社ビンアペックス」
基希が一瞬、声を詰まらせているとずっと無言でいた歩生が珈琲を啜りながら答えた。
「ビンアペックスって言ったら、大手も大手、超が付くほどの大手じゃないですか!確かうちも傘下に入ってますよね?!」
株式会社ビンアペックスは、戦前に成り上がりで大きくなった財閥企業で財閥解体後も幅広い視野を兼ね備え企業グループとしてのし上っていた。元々は電子部品などを主に着手し視野を置いた企業だったが、現在は娯楽関係、飲食など多種多様の企業を業務提携、経営統合などをし急成長を遂げている。史果の働くアプリゲーム会社もここの子会社として名を連ねていた。
「基希はそこの社長の息子で会長の孫。地位は専務取締役。ちなみに俺は基希が抜けた穴埋めで代理としてやってるけど仕事量半端ないしそろそろ戻って来てくんねーと回らねーんだよ」
「あのな、俺がいなくたって会社は回るし大差ねーよ。大体、歩生がいるんだし」
基希はソファから立ち上がり歩生の腕を引っ張ると無理やり立ち上がらせた。
「ってことで、今日は一先ず帰れっ!そもそも姑息な手使って、勝手に史果に近づきやがって」
「おいっ!俺はまだ話がっ!」
基希は、暴れ抵抗する歩生を玄関まで引っ張り無理やり部屋から追い出してしまった。
「あ、え・・・いいんですか?」
「あん?あー・・・問題ない。あいつとは付き合い長いし、こんなことで拗れるような関係じゃないから・・・って言うより自分の心配した方がいいんじゃないかなー?」
部屋に戻って来た基希は意地悪な笑みを浮かべ床にペタリと座る史果を見下ろした。
“ゾクゾク”と無意識に武者震いした史果は、後退り気を紛らわせようとヘラヘラと笑みを浮かべその場から立ち去ろうとするも基希にガッチリと腕を掴まれ動きを阻止されてしまった。
「はーい♡お仕置きタイムね♪」
外でよく見る天使の微笑だが、目の奥は全くそれとはかけ離れ吸い込まれそうな程の深淵が広がっていた。
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