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第二話 終わらない洞窟
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大量のスライムを、目の当たりにして、彼は嘔吐しそうになった。
かわいいというイメージのスライムも、
これだけいれば、集合体恐怖症ものだった。
地面の大部分は粘液で濡れていて、歩くとツルツルと滑り、転びそうになる。
とにかく休む場所がなかった。気持ちも、体も、休ませる場所がない。
どこにいてもスライム......。どこにいてもスライム......。
そんな光景が、心を痛め始めた。
荒い呼吸をしながら胸を強く抑えている時、
近づいてきたスライムが、足を食べるように侵食をした。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
彼は、完全にスライムが怖くなっていた。
孤独という不安もあったのかもしれない。
目もない。耳もない。口もない。鼻もない。
そんな生物とは思えないスライムが、生理的に、えずかせる。
混乱したまま、足を何度も振り、足からスライムを振り放す。
飛んで行ったスライムは、再度、集団へと戻っていった。
そんな光景を見て、とうとう彼は嘔吐してしまう。
口の中から、見たくないものが出て行く。
その臭(にお)いに反応したのか、スライム達が集まる。
地面を汚した嘔吐物を、綺麗に吸収していく。
スライム達は、ソレを平らげた後、
臭いを嗅いだような動きをして、少しずつ彼に近づいた。
非常に遅いスピードではあるが、
恐怖心のせいで、体をうまく動かすことができず、後ずさりをする。
だが、地面の粘液で足を滑らせ、しりもちをついた。
一心不乱に逃げようと、地面を蹴るが、
粘液によって、反作用が生み出せずにいる。
その間にも、スライム達の行進はとまらず、さらに距離を詰めてきた。
「あ、あぁぁぁぁぁ!!!!!!」
その場にあった石を握りしめて、彼は反射的に対抗した。
とがった石の先端が、スライムに穴を空ける。
それと同時に、粘液が大きく飛び散った。
彼の顔をベッタリと汚して、スライムは煙と化して、消滅した。
それでも一息つく暇もなく、スライム達は、近づいて来る。
「死ね! 死ね!! 死ね!!!」
粘液で滑りそうになった石を強く握りしめて、
ひざをつけた四足歩行で、残りのスライムを順番に刺し殺していった。
感情がおかしくなっていく事を彼自身が実感しながらも、
手から、自分の血と粘液が流れながらも、
その手は止まらず、数匹......数十匹......と、
スライム達は、煙と化していった。
彼の臭いは、全身に付着した粘液でわからなくなったのか、
とうとう、スライムは近づいてこなくなる。
岩場の隅にいたスライム達を無慈悲に、踏み殺していった後、
そこを拠点とするかのように、座った。
ジャージは、粘液でびっしょりと濡れているが、
それも、今はもう、気になっていないほど。
「ステータス......」
─────────────────────────────────────
名前未設定 レベル3
肉体強化:25
魔力:40
魔法行使力:50
行使魔法:火属性攻撃魔法
スキル:特になし
─────────────────────────────────────
(名前未設定?)
ステータスで名前が表示されていないことに気が付く。
だが、名前を考える余裕はなく、軽くスルーをした。
(レベルが上がってる......)
スライムとはいえども、レベルは上がっていた。
おまけに、行使魔法の欄に、何かがついてきている。
呼吸を荒くしながら、いくらでもいるスライムの中の一匹に、
彼は、頭の中にある魔法のイメージをしながら、手を向ける。
すると、手の前に魔法陣が現れ、スライムを燃やした。
燃えたスライムは、すぐに爆発して、粘液を四方八方に飛び散らす。
(本当に僕が、魔法を使えるなんて......)
ベトベトになった右手を見つめる。
少しの時が経つと、浮き沈みの激しい胸は、やがて静まっていった。
肉体的にも精神的にも、少し落ち着いてから、彼は空腹に己の空腹に気付く。
さっき、吐いてしまったので、胃液すら少ない。
とはいっても、ここには食べるものがなかった。
もしも、スライムを食べるという選択をしたとしても、
栄養にはならないだろうし、スライムを食べて死んだりするなんて事は、
普通に避けたいであろう。
(そもそも、あいつらのせいで......)
彼は、冒険者への恨みを思い出した。
空腹のせいもあって、不快感は強まり、頭を掻きむしった。
ノミでもいるかのように、頭皮を傷つけ、強く掻きむしった。
突如として、空腹が治まる。
「僕は、もうダメなのかもしれない。」
なんて事を思ったが、体は回復したように動く。
「ステータス!」
彼は己のスキルを疑った。
そして案の定、スキルだと考えられた。
理由は【魔力変換(体力)】というものが追加されていたからだ。
彼は、魔力自体を、体を動かす動力に変えるスキルを手に入れた。
簡単に言うと、食事が必要ない体になった。
(これなら、ここでも生きられる......)
僕必ず生き延びて、ここを出る事を彼は決意する。
スライムしかいない、この洞窟で......
かわいいというイメージのスライムも、
これだけいれば、集合体恐怖症ものだった。
地面の大部分は粘液で濡れていて、歩くとツルツルと滑り、転びそうになる。
とにかく休む場所がなかった。気持ちも、体も、休ませる場所がない。
どこにいてもスライム......。どこにいてもスライム......。
そんな光景が、心を痛め始めた。
荒い呼吸をしながら胸を強く抑えている時、
近づいてきたスライムが、足を食べるように侵食をした。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
彼は、完全にスライムが怖くなっていた。
孤独という不安もあったのかもしれない。
目もない。耳もない。口もない。鼻もない。
そんな生物とは思えないスライムが、生理的に、えずかせる。
混乱したまま、足を何度も振り、足からスライムを振り放す。
飛んで行ったスライムは、再度、集団へと戻っていった。
そんな光景を見て、とうとう彼は嘔吐してしまう。
口の中から、見たくないものが出て行く。
その臭(にお)いに反応したのか、スライム達が集まる。
地面を汚した嘔吐物を、綺麗に吸収していく。
スライム達は、ソレを平らげた後、
臭いを嗅いだような動きをして、少しずつ彼に近づいた。
非常に遅いスピードではあるが、
恐怖心のせいで、体をうまく動かすことができず、後ずさりをする。
だが、地面の粘液で足を滑らせ、しりもちをついた。
一心不乱に逃げようと、地面を蹴るが、
粘液によって、反作用が生み出せずにいる。
その間にも、スライム達の行進はとまらず、さらに距離を詰めてきた。
「あ、あぁぁぁぁぁ!!!!!!」
その場にあった石を握りしめて、彼は反射的に対抗した。
とがった石の先端が、スライムに穴を空ける。
それと同時に、粘液が大きく飛び散った。
彼の顔をベッタリと汚して、スライムは煙と化して、消滅した。
それでも一息つく暇もなく、スライム達は、近づいて来る。
「死ね! 死ね!! 死ね!!!」
粘液で滑りそうになった石を強く握りしめて、
ひざをつけた四足歩行で、残りのスライムを順番に刺し殺していった。
感情がおかしくなっていく事を彼自身が実感しながらも、
手から、自分の血と粘液が流れながらも、
その手は止まらず、数匹......数十匹......と、
スライム達は、煙と化していった。
彼の臭いは、全身に付着した粘液でわからなくなったのか、
とうとう、スライムは近づいてこなくなる。
岩場の隅にいたスライム達を無慈悲に、踏み殺していった後、
そこを拠点とするかのように、座った。
ジャージは、粘液でびっしょりと濡れているが、
それも、今はもう、気になっていないほど。
「ステータス......」
─────────────────────────────────────
名前未設定 レベル3
肉体強化:25
魔力:40
魔法行使力:50
行使魔法:火属性攻撃魔法
スキル:特になし
─────────────────────────────────────
(名前未設定?)
ステータスで名前が表示されていないことに気が付く。
だが、名前を考える余裕はなく、軽くスルーをした。
(レベルが上がってる......)
スライムとはいえども、レベルは上がっていた。
おまけに、行使魔法の欄に、何かがついてきている。
呼吸を荒くしながら、いくらでもいるスライムの中の一匹に、
彼は、頭の中にある魔法のイメージをしながら、手を向ける。
すると、手の前に魔法陣が現れ、スライムを燃やした。
燃えたスライムは、すぐに爆発して、粘液を四方八方に飛び散らす。
(本当に僕が、魔法を使えるなんて......)
ベトベトになった右手を見つめる。
少しの時が経つと、浮き沈みの激しい胸は、やがて静まっていった。
肉体的にも精神的にも、少し落ち着いてから、彼は空腹に己の空腹に気付く。
さっき、吐いてしまったので、胃液すら少ない。
とはいっても、ここには食べるものがなかった。
もしも、スライムを食べるという選択をしたとしても、
栄養にはならないだろうし、スライムを食べて死んだりするなんて事は、
普通に避けたいであろう。
(そもそも、あいつらのせいで......)
彼は、冒険者への恨みを思い出した。
空腹のせいもあって、不快感は強まり、頭を掻きむしった。
ノミでもいるかのように、頭皮を傷つけ、強く掻きむしった。
突如として、空腹が治まる。
「僕は、もうダメなのかもしれない。」
なんて事を思ったが、体は回復したように動く。
「ステータス!」
彼は己のスキルを疑った。
そして案の定、スキルだと考えられた。
理由は【魔力変換(体力)】というものが追加されていたからだ。
彼は、魔力自体を、体を動かす動力に変えるスキルを手に入れた。
簡単に言うと、食事が必要ない体になった。
(これなら、ここでも生きられる......)
僕必ず生き延びて、ここを出る事を彼は決意する。
スライムしかいない、この洞窟で......
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