スライム倒し続けても、レベルはあまり上がらなかった件

ろどは楓に

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第六話 転生してから一年

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「あっ、先輩! おはようございます」
スライム掃除を済ませたマリが、彼にお辞儀してあいさつをしてきた。
どうやら、名前の無い彼を、「先輩」と呼ぶことにしたらしい。

「あっ、そうだ! 聞いてください! スライム倒してたら、
スキルで【魔力変換】が追加されたんですよ」

(嬉しそうに、言うけど、人間からかけ離れているんだよな......。)

 マリにも彼と同じスキルがついた。
服はあまり濡れていないから、追加されたのは【体力】である。
空腹の我慢によるスキル開花だ。

 「先輩って、色々な物を作れるんですよね?
......そ、その、お風呂とかって作ってくれませんか?」
マリは、女の子だ。風呂に入れないのは、かなりの苦痛ではある。
ストレスで壊れてほしくないという、彼の願いで簡易的な風呂を作る事となった。

 まず、岩石に軟化魔法をかけ、柔らかくして、形を作る。
次に、二つのタンクを作り、パイプで繋げる。
両方のタンクに水を入れて、片方だけを火属性魔法で温める。
そして、パイプにひねり口をつける。これで温度調節ができる。

 創作時間は、およそ数十分程度。本当に簡易的な風呂だ。
ちなみに、パイプの作り方だが、この前、量産した長い棒を使った。
太い棒を軟化させ、細い棒で、真ん中を通す。
すると、簡単に穴ができる、というやつだ。
その後、壁を作り、外から見えないようにした。

(錬成魔法とかあれば、秒で作れるんだろうけど......)

「まぁ、これで良いかな?」
マリは、作業をずっと見ていた。それも、目をキラキラとしながら。
多分、「私もやりたい!」なんて思っているのが明らかだ。

「十分です!」
彼自身、雑に作った自覚はあったが、マリは気に入ってくれた様子。
早速、マリは風呂の準備をし始めた。我慢していたのだろう。

「よし。スライム掃除でもしますか」



 今回のスライムは、白スライムだ。
緑スライム同様に、攻略方法に戸惑ったスライムではあるが、
弱点が分かればどうってことはない種類。

 奴らの弱点は、衝撃だ。
だが、ただ強い衝撃を与えれば倒せるわけではない。
スーパーボールのように跳ねる奴らは、風属性の魔法を使い続ける事によって、
天井や岩壁、地面に、何度もぶつかり、やがて爆発を起こす。
  
 掃除後は、洞窟が、かなり悲惨なことになる。
とはいえ、スライムを放っておくわけにもいかない。

「先輩! お疲れ様です!」
スライム掃除を終わらせて、戻ると、
マリは、体から湯気を出して待っていた。
「お疲れ様です」と言う彼女は、もう完全に、後輩のようだ。

「お風呂、先輩も入ったらどうですか?」

 (どういう意味だ? 臭いって事か?)
慌てて、彼は自分のにおいを嗅いでみたが、何も臭わない。

 だが、彼の嗅覚神経が死んでいる可能性は十分にある。
もしかしたら、最初からマリは臭いと思っていたかもしれない。
それでも彼は、風呂に入るのはマズイような気がした。

「そ、その、マリの入った風呂に、俺が入るのはマズいんじゃ......」
別に、彼が何かしようと考えていた。乙女的にどうなのか、という話だ。
言ったらマリもすぐに気付くであろう。

「え? 何がマズイんですか?」
乙女なのは、彼だった......。

 その後、服を脱いで風呂に入った。
そもそも、彼が服を脱ぐことが、久しぶりである。
スライムの粘液が体に付着していたのか、
お風呂では、透明の汁が水面上に浮いてきた。

(今度、シャワー作ろう......)

 風呂の時さえ、スライムを思い出すのは苦痛だ。
彼は日本人なので、たまには、のんびり風呂に入らないと死んでしまう。



 それから、半年ほど経った。
彼が、この洞窟に来てから約一年である。
そして、一年間スライムを倒して続けた彼のステータスは、今はこうだ。

─────────────────────────────────────
名前未設定 レベル12

肉体強化:240
魔力:280
魔法行使力:400

行使魔法:全属性攻撃魔法・軟化魔法・硬化魔法
スキル:魔力変換(体力・空気) 攻撃魔法対象範囲の拡張 暗眼  
毒耐性 感電耐性 眠り耐性
─────────────────────────────────────

 レベルは、半年前から1だけ上がったが、
他は、スキルの【眠り耐性】しか、ついていない。
いくら倒しても、所詮スライムである。

 マリは、生活環境がある程度揃っているおかげか、おかしくなる事はなかった。
こういう真面目な子が、危なそうな気がするのだが、
今も真面目に、スライム掃除を手伝っている。

「先輩! 全属性、使えるようになりました!」

 マリは、彼が習得した行使魔法や、スキルが、現れ始めた。
スライム特有の効果なのかもしれない。

「よし。扉のとこ行くぞ」
「はいっ!」

(本当に、真面目な後輩だなぁ。)

 二人が洞窟の扉の前に行くと、魔法陣が映し出されていた。
それも、マリがここに来た時と同じ魔法陣が......
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