スライム倒し続けても、レベルはあまり上がらなかった件

ろどは楓に

文字の大きさ
8 / 33

第八話 駆け出し冒険者

しおりを挟む
 彼は、ギルドで冒険者登録を済ませた後、
酒場で座っているマリが、「ちょっと来い」と言わんばかりに、彼を見つめている。
無機質なジト目に負けて、彼は席へ向かう。

「で、先輩が冒険者じゃなかった、ってどういう事なんですか?」
マリは、少し怒っている雰囲気だ。
最初に会った時のような、プンプンを見せる。

「まぁ、それは......。言っても信じられないと思うよ」

 異世界転生なんて理解すら、されないかもしれない。
だが、マリは首を横に振った。

「先輩の言う事なら、何でも信じます!」
(さっき、村人だって言っても信じなかったじゃん!)
心の中で、さっきの仕返しのようにツッコみを彼は入れる。

「......実は、俺、異世界転生者なんだ」
とうとう、言ってしまった。
でも、言ったらダメというわけではない。

「異世界転生者って、他の世界から来た人の事ですよね?」
「え? 知ってるの?」
「は、はい......。すごい科学力のある世界に飛ばされて、
魔法が使えなくなる、っていう本を、昔に読んだことがあります」
(その本書いたの誰だよ!)

 彼の居た世界では、異世界といえばファンタジーだが、
ここの世界では、SFなのだろう。
彼は、その本を書いた人は、異世界転生者なのでは? と不審がる。

「その科学力のある世界に居たのが俺っていうこと」

 マリは、「は?」っという顔をする。
余談だが、マリの反応が彼と初対面した時の反応とデジャブなところがある。

「考えてみろよ。駆け出し冒険者が、あんな洞窟に行けるか?
この世界で、魔法をあまり知らない奴が居るか?
そもそも、名前が未設定っていう奴が居るか?」
マリは、「は!」という顔をするが、名前未設定で普通は、気が付くべきであろう。

「た、確かに、先輩は異世界転生者なのかもしれません.....」
「信じてもらえて、何よりだ」

 呆れたような声で、彼は言った。
マリは納得したようなのだが、何か言いたげな表情で睨んでいる。

「何だ? まだ怪しいか?」
「いや、異世界転生者だって言うのは、信じました」
「なら、いいだろ」

 話は終わったため、席を立つが、マリはムッとしている。
「不満があるなら言ってくれれば良いのだが......」と困者として目を向けた。

「それじゃあ」
軽くあいさつするが、マリはそれに応答しなかった。
「いつの間に、嫌われたんだ?」と苦笑する。

 そんな空気が、少し気まずかったので、
その場をすぐさま離れようとしたが、彼は不思議な力で抑えられる。
「魔法か?」と思い、マリを見ると、彼の服をつまんでいた。
訂正する。ただの腕力だった。

「復讐したいです......」
「誰に?」
「冒険者に......」
(冒険者って......。あぁ、あいつらか)

 洞窟で陥れてきた冒険者への恨みは、彼自身、無くなっている事に、気が付く。
あれから一年経ったいるので、一般的な感情ではあるのだろうか?
と自分の感性を彼は、一度疑う。

「勝手にすれば良いと思うよ。マリの方が強いだろうし」

 彼がそう言うと、マリはまたムッとした。
「何がしたいのか、まったく分からん」と、彼は苦慮する。

「違うんです! 二人で、そいつらに復讐したいんです!
そもそも、私だけが行っても、『誰だ?』ってなるじゃないですか!」
(まぁ、確かに......)
一応、彼は納得はする。

「でも、俺は特に、復讐とか......」
「じゃあ、復讐したくなるまで、付いていきます」

 真剣な眼差しでマリは、見つめた。
おそらく、断っても付いていきそうな目であった。
「復讐したいほど、俺との生活が嫌だった」と彼は解釈して、少しショックを受ける。

「まぁ、つまらない旅になると思うけどな......」
「別に、スライム生活がつまらなかったので、もう慣れてます」
「なっ! 失礼な!」

 彼がツッコミを入れると、マリはクスクス笑いだした。
やっと、マリは機嫌を直した。

「じゃあ、試しに、クエストでも受けてみるか?」
「はい!」

 先ほどの冒険者登録で、クエストを受ける事が出来る。
とはいえ、駆け出し冒険者が受けられるのは、最低ランクのEだ。
内容は簡単である上、報酬があまり良くない。

「これなんて、どうですか?」

 マリが、彼に見せたのは、【エレファントピッグの討伐】というもの。
その魔物が、家畜を襲っているため、困っているという案件だ

「エレファントピッグというのは、
簡単に言うと、長い鼻を持った、豚です」

 あの平らな豚鼻を持ってこそ、豚だというのに、その鼻が長い。
クエストを受けるかどうかよりも、この世界の神のセンスを彼は心配した。

「よし、これ、やってみるか」
「はい!」

 彼が異世界に来てから、やっと冒険者らしい行動が始まる。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!

雪奈 水無月
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。 ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。 観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中… ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。 それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。 帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく… さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

処理中です...