スライム倒し続けても、レベルはあまり上がらなかった件

ろどは楓に

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第二十三話 黒龍剣を持つ者

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 昨日と同様の山道を少年とマリは歩く。
正直、ゴブリンとか会いたくないのが、彼の思い。
「あれだけ倒したし、居ないとは思うが......」と、考えるが、
フラグを立てないためにも、口には出さなかった。

「たぶん、ゴブリンはもう居ませんよね」
「おい、フラグ!」

 マリに彼は訴えるが、「フラグ?」と言った顔で、首を傾げる。
辺りを確認して、誰も居ない事を確かめると、彼は胸を撫でおろした。

「ホラー映画だったら、マリが最初に死ぬわ......」
呆れたように彼は言った。

「それが何か分かりませんが、死んじゃうのは嫌ですよ」

 驚くほど、子供みたいなコメントが返ってきた。
もちろん、侮辱の意ではない。言うなら、愛でたい答えだ。

 その後も、マリが何度かフラグ発言をするが、
ゴブリンが現れる事なくアイル村に到着を果たした。
彼は、マリに痛い目を合わせてやりたい気分になるも、
それは叶わず、何事もない山道であった。

 村人たちは、昨日より多く人が出ていて、
相変わらず、二人を見ると、嫌な顔をする。
とりあえず、スルーしながら村長の家に行った。
「俺たちの味方はもう、村長しかいない!」と、彼は涙ぐんでいた。

「村長さん、居ますか?」

 そう言って、扉を開けられる。
村長は、暖炉の火を見つめながら、暖を取っていた。

「あぁ、昨日の冒険者さま。......今日はどのような用で?」
エルフの特徴でもある鋭い耳をピンと立てて、こちらに振り向く。
木製の椅子から立ちあがり、杖を持って、こちらに近づいてきた。

「昨日、マリから聞いたんですけど、
物の値打ちを見たりしているんですよね」
「まぁ、この年で人のためにできる事なんてそれ位ですからな」

 彼の人格の高さに感嘆し、少年はマリと顔を見あう。
マリは、期待の目をもった笑みを見せた。

「じゃあ、黒龍剣を持ってきた人って居ますか?」

 マリも合わせて、「居ますか?」と言う。
村長は、少し黙って、唸る。床を細い目で、見つめていた。

「黒龍剣を目利きしたことは無い......」

 しゃがれた声で、小さくそう話す。
マリは、残念そうな目で、少年を心配するように見つめた。
「そうですか......」と言って、帰ろうとした所で、村長は続ける。

「だが、黒龍剣を持ってきた者が、一度来たことがある」
「「本当ですか!?」」
 
 前のめりに二人は尋ねる。
興味津々な様子に、詮方ない表情で、やさしそうにニヤッと笑った。
そうして、村長はまた続ける。

「あぁ、一年ほど前に、ゴブリンの依頼を受けた者だ。
一人が剣士、もう一人が魔法使いという二人のパーティーだった」
「そういえば、そうだった気がする」
「一年前ぐらいなら、あの日からすぐですね」

 少年は、冒険者二人を思い出す。
薄暗い洞窟の中では、その二人の顔は良く見えなかったものの、
一人は、肩だけを守ったような冒険者のなかでも陽キャそうな服装。
こいつが剣士であると、考えられる。
もう一人は、魔法使いであろうが、杖は持っておらず、
印象に残っているのは、地面に着くような大きなマントだった。

(そういえば、マントって、何で着用する必要があるんだ?
体の一部を切り離し、飢えている者に食べさせるという、
俺が小さい頃見ていたアニメでも主人公が着ていたはずだ。
でも、あれは空を飛ぶためにあるのだから、違うか......。)
少年は自分の世界に入り込み、日本に戻って、ググりたい気持ちとなる。

「それより、冒険者様は、なぜその者をお探しで?」

 話の途中で、かなり脱線してしまっていた。
もちろん、少年の頭の中だけの話ではあるが。

 テーブルを間に挟み、椅子に座った後、村長に経緯を話す。
もちろん、異世界転生したという話は伏せていた。

「そ、そうですか......。一年も洞窟の中とは、お気の毒に。
まさか、そんな事までも......」
少年の身の上話で、村長は沈痛する。

「ん? 『今、そんな事までも』って......」

 マリが、副助詞について尋ねる。
すると、村長は苦笑しながら、話始めた。

「さっきも言ったように、その冒険者たちもゴブリン討伐をしたんです。
しかし、私が討伐数に応じて、報酬を決めたばっかりに、
冒険者たちは発情剤などを、使ってしまい大繁殖してしまって......」

 村長は、テーブルの木目ばかりを見つめて、悲しい目をする。
両手で握ったコップの中身の飲もうとは一切せず、
湯気だけが広がって行った。

「ハツジョウザイ?」
魔法の薬か、何かだろうと思った少年は、マリにコソっと、小さく訊く。

「わ、私に訊きますか!? えっ、えっと......。
家畜に使うと、その、繁殖しやすくなるというか......。
つまり、あの行為が、頻繁に行われるというか、その、えっと......アレです!」

(なるほど、アレか......。)

 少年は、マリから何となく察する。
主に、白いマリの顔が赤くなっている事から。

「まぁ、私の村の事は、いいですから。
ギルドに行けば、その者たちが何処に居るか知っているかもしれませんぞ。
かなり問題となった案件ではあるのでね......」

 村長の助言通り、二人はギルドに向かう事にした。
そして、帰る時も冷たい態度でアイル村の人たちにあしらわれた。
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