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刺青
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仕事が終わってから栞と会う事になった。予約と予定通りだと合流出来るのは朝4時頃になる。
そんな時間に起きているのかと疑問に思ったが、栞はいつも朝方近くまで夜の街で酒を飲んでいるらしい。仕事は何をしているのか、とか色々気になったがメッセージであれこれ詮索するのはやめておいた。時間と場所を決める。最低限のやり取りだけをして、俺は仕事に向かった。
最後の客を見送った。栞との約束の時間より三十分程過ぎていた。謝罪のメッセージを送ったが返事はなかった。とりあえず急いでシャワーを浴びて着替えて約束の場所へ向かった。
「お疲れー」
バーの前に設置されたベンチに座って煙草を吸っていた栞は、抑揚のない声でそう言ってひらひらと手を振ってきた。
「ごめんね、返事するの忘れてた。そんなに急いで来なくてもよかったのに」
髪、乱れてるよ。と言いながら栞は煙草の火を消した。走って来た事を悟られたくなかった俺は少しイラついた。
「で、何?」
会いたかったのは自分の方なのに。そう思ったが、突然呼び出された理由も分からなかった。会える? と聞かれただけで、栞は俺に会いたいとは言っていない。俺だけ期待していたような気もして、俺自身に苛立ちを覚えた。
「何って、うーん、何だろうね」
「は? 何か用があって連絡してきたんじゃねえの?」
「用っていうか、なんとなーく、繍夜くんに会いたいなーって」
「ああ、そう……」
栞は出会った時と変わらず何を考えているのかよく分からない女だったが、その言葉を聞いて俺は少し安堵してしまった。他の理由でただ呼び出されただけなら、一人で何かを勝手に期待していた俺が間抜けすぎる。
「それで? 俺にどうして欲しいワケ?」
会いたい、その目的は今果たされた。会ってどうしたいのか、それともどこかへ行きたいのか、栞の気持ちが知りたかった。なのに栞は不思議そうな顔をして首を傾げていた。
「んー、どうしよっか」
うーん、と言いながら、栞はまだ夜明け前の暗い空を見上げていた。本当に考えているのかこいつ。
「じゃあ私の部屋でお酒でも飲む?」
「アンタさっきまで飲んでたんじゃねえの?」
「一時間も夜風を浴びていたら、酔いも醒めちゃった」
栞は悪戯に目を細めて俺の顔を見た。
「悪い、遅くなって……」
「気にしてないよ」
そう言って栞は立ち上がり、自宅の方向へと先に歩き始めた。
「好きなの好きなだけ飲んで良いよ」
冷蔵庫の中は酒だらけだった。
「お腹空いてる? 仕事明けでしょ? パンとチーズならあるけど」
栞が用意してくれた、というか家にあったものを適当に出されただけだが、ソファーに並んで座って、それらを摘みながら二人で酒を飲み始めた。
栞はこの街で産まれ育ったらしい。仕事は適当に色々、と誤魔化された。あとは軽くお互いの身の上話をした。俺はもっと栞の事を知りたかったが、栞はどんな話題に対しても上手くはぐらかし、俺にも深く聞いてこようとはしなかった。どうでもいい、という雰囲気も感じた。それより「今」の話をしたがっているように思えた。何で男娼をしているのか。栞にとってはそれが一番気になっていた事のようだが、手っ取り早く金が欲しかった、と俺が素直に答えると、何がそんなに面白いのか栞はしばらく笑い続けていた。
「私のも味見する?」
そう言って栞が突然膝の上に跨ってきた。驚いて固まっていると目の前で飲み始め、顔を寄せて唇を塞がれた。栞が口に含んだ酒が俺の口内に流れ込んでくる。拒否出来ず、俺は栞が口へ移してきた酒を飲んだ。
「お前、酔ってんの?」
「お酒ってこうして飲むとさあ、えっちな気持ちにならない?」
「は? お前俺とヤリたいだ……」
と、言いかけた口を再び塞がれ、酒を流し込まれる。口を塞がれたまま、口内で栞が俺の舌を誘った。冷たい舌先が絡む。俺は酒に酔ってはいない。栞も酔っているようには見えなかった。熱が籠る吐息に、雰囲気に酔わされ、俺達はしばらく舌を絡め合った。
俺はヤルつもりで会いにきたわけではない。出会ったあの日の夜以来、この女の事が気になって、何故か頭から離れなかった。理由は分からない。栞の事がもっと知りたいと思った。
だが栞も今までの女と変わりない、ただ俺とヤリたかっただけなのだろうか、と、舌を絡めながら、今まで募らせていた気持ちが少しずつ冷めかけた。一回ヤッて終わりにするか……そんな事を考えながら胸を触ろうとすると、
「繍夜くんは何もしないで」
腕を掴まれ、栞は顔を寄せたまま、呟くように囁いた。舌でゆっくりと俺の唇をなぞり、首筋へと降りていく。栞の言葉に、俺は少し混乱した。栞は首元に顔を埋めながら、掴んでいた俺の手を離し優しく指を絡めてきた。
何もするな、の意味が分からず、栞のされるが儘になった。器用に片手でシャツのボタンを外し脱がされた。段々と下へと舌を這わせてくる栞に、俺は思わず息を飲んだ。絡めていた指を離して胸の突起に触れられる。そして片方を舌先で軽く、擽るように撫でられる。与えられる刺激に俺は眉を寄せ、咄嗟に栞の肩を掴んで剥がそうとしたが、栞は離れてくれない。
「おい、それ……やめろ」
栞は何も言わずにそのまま口に含んだり舌でちろちろと撫で、片手は弄ぶように俺の胸を愛撫し続けた。やめろと言ったが体は反応していた。不本意にも声が出てしまい、栞の頭を押した。が、俺は本気で抵抗できずにいた。こんな事をされるのは初めてではない。なのに俺は焦っていた。栞にされている。それだけで、何故こんなにも恥ずかしいのかが分からない。
「栞……もう、俺は、良いから」
「私がヤリたいからヤルんだよ」
突然頭を上げ、真っ直ぐに俺の目を見て栞はそう言うと、
「繍夜くん、さっきまで何人も女の人とヤッてきたんだよね。悦ばせてあげたんだよね。でもね、私は繍夜くんが感じてる顔が、見てみたい」
顔がカッと熱くなった。何か言い返そうとする前に栞は続きをし始めた。女に金を払わせて相手を満足させるまで性行為をする、男娼の、この俺が、少し気になっただけの女にこんな、好きにされて、抵抗すら出来ないでいる。本当に嫌なら突き飛ばしてでもやめさせりゃ良いのに俺は栞にやめて欲しくない、と思ってしまった。情けないが感じてしまった。この状況に期待と興奮が入り混じり、頭がおかしくなりそうだ。
栞は俺に愛撫しながらベルトに手をかけ下着ごと服を脱がそうとした。俺が少し腰を上げると膝下まで降ろされた。「クソ……」と思わず声が出た。額に手をかけ、露わにされた性器から目を逸らした。羞恥や屈辱といった感情とは裏腹に、栞を欲しがる怒張したソレがあまりにも無様に思えた。栞は俺の硬くなった性器に、手慣れた手付きで避妊具を被せ下着を脱ぐ。そして再び俺の膝に跨り、先端を自身の性器に優しく擦りつけた。俺は手で視界を覆ったまま顔を背け、栞の顔を見る事ができなかった。こんな顔を、姿を、見られたくもなかった。
それなのに栞は無理やり俺の手を取り払うと、両手で頬を包んで視線を合わせてきた。俺の視線が揺らいだ。栞の、光のない闇のような瞳でじっと見つめられる。
「もっと顔、見せて」
そう言って目を細め、薄笑いを浮かべながら手を離すと、栞は自身の中へと俺の性器をゆっくりと導く。慣らすように、徐々に、先端だけをゆっくりと出し入れされる。その刺激ともどかしさで頭がクラクラした。一気にブチ込みたい。そんな衝動さえ湧き上がり、堪えようと目を閉じた。
「目を開けて。顔、見せて……ねえ」
栞の声色が甘くなり、切なく吐息を漏らした。戸惑いながら目を開くと、栞は虚ろな目で俺を見ながら微かに甘い声を漏らし、ゆっくり、ゆっくりと俺のモノを飲み込んでいくのに合わせて眉根を歪めた。慣らさずに突っ込んだ栞の中がキツくて、漸く根元まで飲み込まれると、腰や背筋が快感で痺れた。
「勝手に、動かないでね」
栞はゆるゆると腰を動かし、次第に滑りが良くなると、自分勝手な行為をし続けた。俺はただ栞に与えられる快楽に身を任せるだけだった。理性の飛んだ意識の隅で、俺のモノで善がる栞を愛しい……と言って良いのだろうか。抱きつかれていた体を離されると切ない気持ちに駆られ、栞の名を何度も口にして、無意識に彼女の腕や頬、体に触れていた。
「ああ、ヤバい……」
何もするなと言われたがもう我慢の限界だった。俺は栞の細い腰を掴んで、下から突き上げながら吐精した。今まで味わった事のない、何かが満たされるような快感だった。俺はソファにどさりと背を預け、荒い息を吐き続けた。視界がぼんやりとする。意識が遠退く。何も考えられない。
「ふふ、かわいい」
乱れた息遣いで栞は嬉しそうにそう言って目を細めていた。乱れた髪が、可愛いと、思った。
「私、相手がイッた後の顔見るの、好きなの」
「クソ、が……」
絞り出した言葉があまりにも間抜けに思えた。次第に思考が冷静になっていくのを感じた。そして再び激しい羞恥心で頭がいっぱいになり、頬に触れてくる栞の手を力なく振り払った。
「いいから、もう、抜けよ……」
栞の顔を直視出来ない。栞はくつくつと笑いながら俺の萎れかけた性器を抜き、後始末までし始めた。
「は? 自分でやるし!」
気を取り戻して栞の体を押しやった。
栞は俺の顔を覗き込んで、揶揄うような笑みを薄っすらと浮かべた。この女が微笑むと何故か胸が苦しくなる。栞の笑みは、あまりにも儚い。
ワンピースを脱ぎながら、鼻歌混じりに浴室へ向かう栞の腰に刻み込まれた蝶の刺青が、妙に頭に焼き付いた。
そんな時間に起きているのかと疑問に思ったが、栞はいつも朝方近くまで夜の街で酒を飲んでいるらしい。仕事は何をしているのか、とか色々気になったがメッセージであれこれ詮索するのはやめておいた。時間と場所を決める。最低限のやり取りだけをして、俺は仕事に向かった。
最後の客を見送った。栞との約束の時間より三十分程過ぎていた。謝罪のメッセージを送ったが返事はなかった。とりあえず急いでシャワーを浴びて着替えて約束の場所へ向かった。
「お疲れー」
バーの前に設置されたベンチに座って煙草を吸っていた栞は、抑揚のない声でそう言ってひらひらと手を振ってきた。
「ごめんね、返事するの忘れてた。そんなに急いで来なくてもよかったのに」
髪、乱れてるよ。と言いながら栞は煙草の火を消した。走って来た事を悟られたくなかった俺は少しイラついた。
「で、何?」
会いたかったのは自分の方なのに。そう思ったが、突然呼び出された理由も分からなかった。会える? と聞かれただけで、栞は俺に会いたいとは言っていない。俺だけ期待していたような気もして、俺自身に苛立ちを覚えた。
「何って、うーん、何だろうね」
「は? 何か用があって連絡してきたんじゃねえの?」
「用っていうか、なんとなーく、繍夜くんに会いたいなーって」
「ああ、そう……」
栞は出会った時と変わらず何を考えているのかよく分からない女だったが、その言葉を聞いて俺は少し安堵してしまった。他の理由でただ呼び出されただけなら、一人で何かを勝手に期待していた俺が間抜けすぎる。
「それで? 俺にどうして欲しいワケ?」
会いたい、その目的は今果たされた。会ってどうしたいのか、それともどこかへ行きたいのか、栞の気持ちが知りたかった。なのに栞は不思議そうな顔をして首を傾げていた。
「んー、どうしよっか」
うーん、と言いながら、栞はまだ夜明け前の暗い空を見上げていた。本当に考えているのかこいつ。
「じゃあ私の部屋でお酒でも飲む?」
「アンタさっきまで飲んでたんじゃねえの?」
「一時間も夜風を浴びていたら、酔いも醒めちゃった」
栞は悪戯に目を細めて俺の顔を見た。
「悪い、遅くなって……」
「気にしてないよ」
そう言って栞は立ち上がり、自宅の方向へと先に歩き始めた。
「好きなの好きなだけ飲んで良いよ」
冷蔵庫の中は酒だらけだった。
「お腹空いてる? 仕事明けでしょ? パンとチーズならあるけど」
栞が用意してくれた、というか家にあったものを適当に出されただけだが、ソファーに並んで座って、それらを摘みながら二人で酒を飲み始めた。
栞はこの街で産まれ育ったらしい。仕事は適当に色々、と誤魔化された。あとは軽くお互いの身の上話をした。俺はもっと栞の事を知りたかったが、栞はどんな話題に対しても上手くはぐらかし、俺にも深く聞いてこようとはしなかった。どうでもいい、という雰囲気も感じた。それより「今」の話をしたがっているように思えた。何で男娼をしているのか。栞にとってはそれが一番気になっていた事のようだが、手っ取り早く金が欲しかった、と俺が素直に答えると、何がそんなに面白いのか栞はしばらく笑い続けていた。
「私のも味見する?」
そう言って栞が突然膝の上に跨ってきた。驚いて固まっていると目の前で飲み始め、顔を寄せて唇を塞がれた。栞が口に含んだ酒が俺の口内に流れ込んでくる。拒否出来ず、俺は栞が口へ移してきた酒を飲んだ。
「お前、酔ってんの?」
「お酒ってこうして飲むとさあ、えっちな気持ちにならない?」
「は? お前俺とヤリたいだ……」
と、言いかけた口を再び塞がれ、酒を流し込まれる。口を塞がれたまま、口内で栞が俺の舌を誘った。冷たい舌先が絡む。俺は酒に酔ってはいない。栞も酔っているようには見えなかった。熱が籠る吐息に、雰囲気に酔わされ、俺達はしばらく舌を絡め合った。
俺はヤルつもりで会いにきたわけではない。出会ったあの日の夜以来、この女の事が気になって、何故か頭から離れなかった。理由は分からない。栞の事がもっと知りたいと思った。
だが栞も今までの女と変わりない、ただ俺とヤリたかっただけなのだろうか、と、舌を絡めながら、今まで募らせていた気持ちが少しずつ冷めかけた。一回ヤッて終わりにするか……そんな事を考えながら胸を触ろうとすると、
「繍夜くんは何もしないで」
腕を掴まれ、栞は顔を寄せたまま、呟くように囁いた。舌でゆっくりと俺の唇をなぞり、首筋へと降りていく。栞の言葉に、俺は少し混乱した。栞は首元に顔を埋めながら、掴んでいた俺の手を離し優しく指を絡めてきた。
何もするな、の意味が分からず、栞のされるが儘になった。器用に片手でシャツのボタンを外し脱がされた。段々と下へと舌を這わせてくる栞に、俺は思わず息を飲んだ。絡めていた指を離して胸の突起に触れられる。そして片方を舌先で軽く、擽るように撫でられる。与えられる刺激に俺は眉を寄せ、咄嗟に栞の肩を掴んで剥がそうとしたが、栞は離れてくれない。
「おい、それ……やめろ」
栞は何も言わずにそのまま口に含んだり舌でちろちろと撫で、片手は弄ぶように俺の胸を愛撫し続けた。やめろと言ったが体は反応していた。不本意にも声が出てしまい、栞の頭を押した。が、俺は本気で抵抗できずにいた。こんな事をされるのは初めてではない。なのに俺は焦っていた。栞にされている。それだけで、何故こんなにも恥ずかしいのかが分からない。
「栞……もう、俺は、良いから」
「私がヤリたいからヤルんだよ」
突然頭を上げ、真っ直ぐに俺の目を見て栞はそう言うと、
「繍夜くん、さっきまで何人も女の人とヤッてきたんだよね。悦ばせてあげたんだよね。でもね、私は繍夜くんが感じてる顔が、見てみたい」
顔がカッと熱くなった。何か言い返そうとする前に栞は続きをし始めた。女に金を払わせて相手を満足させるまで性行為をする、男娼の、この俺が、少し気になっただけの女にこんな、好きにされて、抵抗すら出来ないでいる。本当に嫌なら突き飛ばしてでもやめさせりゃ良いのに俺は栞にやめて欲しくない、と思ってしまった。情けないが感じてしまった。この状況に期待と興奮が入り混じり、頭がおかしくなりそうだ。
栞は俺に愛撫しながらベルトに手をかけ下着ごと服を脱がそうとした。俺が少し腰を上げると膝下まで降ろされた。「クソ……」と思わず声が出た。額に手をかけ、露わにされた性器から目を逸らした。羞恥や屈辱といった感情とは裏腹に、栞を欲しがる怒張したソレがあまりにも無様に思えた。栞は俺の硬くなった性器に、手慣れた手付きで避妊具を被せ下着を脱ぐ。そして再び俺の膝に跨り、先端を自身の性器に優しく擦りつけた。俺は手で視界を覆ったまま顔を背け、栞の顔を見る事ができなかった。こんな顔を、姿を、見られたくもなかった。
それなのに栞は無理やり俺の手を取り払うと、両手で頬を包んで視線を合わせてきた。俺の視線が揺らいだ。栞の、光のない闇のような瞳でじっと見つめられる。
「もっと顔、見せて」
そう言って目を細め、薄笑いを浮かべながら手を離すと、栞は自身の中へと俺の性器をゆっくりと導く。慣らすように、徐々に、先端だけをゆっくりと出し入れされる。その刺激ともどかしさで頭がクラクラした。一気にブチ込みたい。そんな衝動さえ湧き上がり、堪えようと目を閉じた。
「目を開けて。顔、見せて……ねえ」
栞の声色が甘くなり、切なく吐息を漏らした。戸惑いながら目を開くと、栞は虚ろな目で俺を見ながら微かに甘い声を漏らし、ゆっくり、ゆっくりと俺のモノを飲み込んでいくのに合わせて眉根を歪めた。慣らさずに突っ込んだ栞の中がキツくて、漸く根元まで飲み込まれると、腰や背筋が快感で痺れた。
「勝手に、動かないでね」
栞はゆるゆると腰を動かし、次第に滑りが良くなると、自分勝手な行為をし続けた。俺はただ栞に与えられる快楽に身を任せるだけだった。理性の飛んだ意識の隅で、俺のモノで善がる栞を愛しい……と言って良いのだろうか。抱きつかれていた体を離されると切ない気持ちに駆られ、栞の名を何度も口にして、無意識に彼女の腕や頬、体に触れていた。
「ああ、ヤバい……」
何もするなと言われたがもう我慢の限界だった。俺は栞の細い腰を掴んで、下から突き上げながら吐精した。今まで味わった事のない、何かが満たされるような快感だった。俺はソファにどさりと背を預け、荒い息を吐き続けた。視界がぼんやりとする。意識が遠退く。何も考えられない。
「ふふ、かわいい」
乱れた息遣いで栞は嬉しそうにそう言って目を細めていた。乱れた髪が、可愛いと、思った。
「私、相手がイッた後の顔見るの、好きなの」
「クソ、が……」
絞り出した言葉があまりにも間抜けに思えた。次第に思考が冷静になっていくのを感じた。そして再び激しい羞恥心で頭がいっぱいになり、頬に触れてくる栞の手を力なく振り払った。
「いいから、もう、抜けよ……」
栞の顔を直視出来ない。栞はくつくつと笑いながら俺の萎れかけた性器を抜き、後始末までし始めた。
「は? 自分でやるし!」
気を取り戻して栞の体を押しやった。
栞は俺の顔を覗き込んで、揶揄うような笑みを薄っすらと浮かべた。この女が微笑むと何故か胸が苦しくなる。栞の笑みは、あまりにも儚い。
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