宙(そら)に舞う。 〜レイとリュウ〜

星野そら

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9 言い訳

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 宙港から車で約半時間。
 リュウが長期滞在者向けのコンドミニアムへ連れてこられたは、真夜中過ぎだった。
 レイが帰った後、すぐにトイレに立った。気分が悪くて身体を二つに折って吐いているところを、親切めかして助けてくれた男に騙されたのだ。
 酔った頭でどこかおかしいと感じた時には遅かった。後ろ手に縛られ、部屋の隅にころがされていた。
 それでも、酔いのまわった身体は動こうともせず、レイの名前と居場所を吐かされた。
 身体に聞かれるというやつ。殴られて、水を浴びせられて、最後には何が何だかわからなくなった。
 俺はこの男たちに、何を話したのだろうか。 

 そして、朝。手荒くたたき起こされた。
 ガンガン痛む頭と強ばった身体を呪いながら目を開けると、すぐに通話機を押しつけられる。
 情けない思いでレイが通話機に出てくるのを待った。
 鋭い口調で浴びせられたきつい言葉。冷え冷えするような声音。

「嫌なら、帰ってこなくてもかまわない。顔も見たくない」と。
 ひとことも言い訳さえできずに、ただ息を呑むだけ。

「兄貴、きれいなツラしてたけど、あちらさんは結構キツい性格のようだ。ぼうやが浮気でもしたと思ってるじゃねえですか。このままだと通話を切られますぜ」

 通話機に耳を寄せて聞いていた男が言う。

「そうだな。かせ」

 年嵩の男が通話機をひったくって、俺は部屋の隅へ蹴り戻された。

「とにかく、こっちへ来てもらおうか。おまえの大切なぼうやも待ってることだしな」
「……」
「安心しろ。迎えのものをやった。もう着くはずだ。逆らえばこいつの命はないぜ」
「……」

 レイの返事は聞こえなかったが、どうやら話が着いたようだ。
 通話機を置いた男が、満足そうにこちらへ目をやって、

「よかったな。役に立たないボディガードさまを迎えにきてくださるとよ」
「兄貴、浮気をした恋人をですぜ」

 笑いながら若い男が応じる。

「いや、浮気をしたなんて言ったら、こいつがさっさと捨てられそうだったんで、その点だけは取りなしておいた」
 レイの反応に気をよくした男たちは、軽口である。


 ガチャリと乱暴に扉が開いた。男たちが一斉に振り返る。

「うッ、キャプテン。えらく早いですね」
「悪いか?」

 男たちはとんでもないというように首をふる。
 キャプテンと呼ばれた男は、機嫌が悪そうだ。ぼさぼさの頭、そのまま寝たかのような皺のよったジャンプスーツ。キャプテンと呼ばれるのだから宇宙船の船長だろうが、小汚い格好である。
 がっしりした体格、ふてぶてしい態度、整った顔立ちなのに目に宿る狂暴そうな光のせいで、獣じみて見えた。美しい黒豹を感じさせるレイとはまったく違った類の狂暴な野獣。

 男はリュウに目をやり、いきなり手下を怒鳴りつけた。

「おい、そいつは何だ? おまえら! こそこそしてると思ったら、俺に何を隠しているんだ!」

 男たちは目を見合わせていたが、腕を組んでじっと睨みつけるハリーの迫力に押されて話し出した。

「キャプテン。いいにくいんですが、宇宙船の修理にもう少し時間がかかることになりました」
「なにっ! 昨日、もう2~3日で終るとおまえが言ったんだぞ。それに、俺は今、そこにころがっている男のことを聞いているんだッ」

 指を突きつけられた男は、へどもどしながら

「だから。今、説明を…」

 ハリーはつかつかと歩いてくると、話していた男の頬を殴りつけた。
 そして、「ジーク、おまえが話せ」と、年嵩の男を促す。へいと応えてジークが説明を始める。さすがに話はわかりやすかった。リュウにも、レイが強引にクリスタル号の修理を頼んだせいで自分がここへ連れて来られたことがわかったのだから。
 ジークの話にじっと耳を傾けていたキャプテンは、

「そうか。それでこいつの恋人が、ここへ向かっているんだな」
「へい。ちょいとばかし脅しつけたら、素直に言うことをききやした。ゴードンとスタンを行かせたから、もう戻ってくるはずです」
「ボディガードなら捕まった時点でお払い箱だろうから、恋人か。痣がなけりゃ、結構いい男みたいだしな。それにしても、危険を承知で飛び込んでくるなんざ、よほどの馬鹿か、そいつは」

 ハリーが吐き捨てるように言うのへ、

「大したやつじゃないかも知れませんが、ものすごい美貌ですぜ。俺たち、もしかしたらキャプテンの好みなんじゃないかと…」
「そうか。それじゃあ、修理の話が済んだら可愛がってやるとするか」

 はっはっはっ、と豪快に笑ったハリーを見て、手下たちはほっとしたようである。
 よほどこの男が恐いのだろう。無駄口をたたくものもいない。誰もがその一挙一投足を気にしているようだ。
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