氷の魔術師は王宮騎士の愛に甘く蕩ける

餡玉(あんたま)

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書籍発売記念『お忍び旅行と愛玩人形』

4 愛玩って、そういうこと……

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 ◇


 
「せ、性行為に使う人形…………?」

 その夜、僕はようやくセスから真相を聞いた。
 真実を知り絶句してしまった僕の頭を撫で、セスはちょっと申し訳なさそうに眉を下げている。

「ごめん、途中からうっすらそうかもなと思ったんだ。すぐにノクトを引き離せばよかったんだけど……」
「……い、いや……いいんだ……あはは……この世界は、僕の知らないことだらけなんだな……あはは……」
「別に知る必要もないことだと思うけど……」
「い、いや……ちょっとくらいは知識がないと……だって僕はもう二十六なわけだし……」

 ふたりで湯浴みを済ませ、広いベッドの上で寛いでいるところで衝撃の事実を知ってしまった。
 寝そべっていた身体をむくりと起こし、僕はゆっくりと膝を抱える。

「あ、あの人形を……その……だ、抱いたりする、ってこと? ずぶん若い子の人形もあったようだけど……」
「うん……まぁ、抱いたり抱かれたり、かな。アルナディアの愛玩人形は体内に光魔法で動くからくりが仕込んであって、その……」
「な、なんだよ! ここまできたら全部教えてよ!」

 ベッドに肘枕をしているセスが、この期に及んで口ごもっている。
 僕は前のめりになってセスの柔らかな夜着を掴み、がくがくと揺さぶった。

「わかった、わかったよ。……こう、単調な動きはできるんだ、あの人形。腰を前後に振る、とか」
「腰を前後に振る」
「男版の愛玩人形は、かなり立派なモノがついてるらしくてね。それをその……扱いたりして刺激すると、先端から粘液が出るらしい」
「粘液……………」
「それを挿入して腰を振らせると……まあ、そういう擬似的な行為ができるんだ。逆に挿入するための部位もあるらしくて、」
「わ、わかった。よくわかったよ。ありがとう……」

 もわもわと色んな想像をしていたら頭がパンクしそうになり、僕は両手で顔を覆って話を遮った。
 あの工房の中には、年若い男女の人形もあった。売れていると言っていたが……なるほど、色んな趣味嗜好を満たすためには必要なモノなのか。

「て、てか、なんでセスはあれを知ってるんだ?」
「騎士仲間が話していたのを思い出したんだ。名前をつけて愛でているやつがいるとか、人形と結婚しているやつがいるとかいないとか……」
「人形と結婚!?」
「腕は立つ騎士ほど奥手だったりするからなぁ……。レナードもそういうタイプだし」
「へぇ、レナードが……。えっ、彼もあの人形を持ってるのかな!?」
「それは知らないけど……」

 尖ったナイフのようなレナードの顔を思い出し、ついでに彼が愛玩人形を愛でている様を想像しかけて——……慌ててかぶりを振った。不謹慎極まりない。申し訳ない。
 
 ついでに思い出されるのは、兄のクリスの顔だ。
 レナードは自分で女性と話すのが苦手だと言っていたが、兄のほうはどうなのだろう。王族からの覚えもめでたい近衛魔術師だし、レナードに比べて顔立ちも優しげで美しい。
 だが、珍しい『氷の魔術師』である僕に興味津々すぎてセスが腹を立てるほどの研究の虫だ。恋愛になど興味がなさそうに見えるが……

「レナードはああだけど、クリスはどうなのかな」
「ああ、クリスはそつなくやってたよ。護衛で入った外交パーティで、何度か目にしたことがある」
「へぇ、そうなんだ」
「変人だけど、黙ってニコニコしていると女性が寄ってくるらしくてね。毎回違うご令嬢をエスコートしてるよ」
「ふうん、そうなんだ。やるね」

 さもありなんと思いつつ、ごろりとセスの隣に横たわる。
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