氷の魔術師は王宮騎士の愛に甘く蕩ける

餡玉(あんたま)

文字の大きさ
21 / 32
書籍発売記念『お忍び旅行と愛玩人形』

4 愛玩って、そういうこと……

しおりを挟む
 ◇


 
「せ、性行為に使う人形…………?」

 その夜、僕はようやくセスから真相を聞いた。
 真実を知り絶句してしまった僕の頭を撫で、セスはちょっと申し訳なさそうに眉を下げている。

「ごめん、途中からうっすらそうかもなと思ったんだ。すぐにノクトを引き離せばよかったんだけど……」
「……い、いや……いいんだ……あはは……この世界は、僕の知らないことだらけなんだな……あはは……」
「別に知る必要もないことだと思うけど……」
「い、いや……ちょっとくらいは知識がないと……だって僕はもう二十六なわけだし……」

 ふたりで湯浴みを済ませ、広いベッドの上で寛いでいるところで衝撃の事実を知ってしまった。
 寝そべっていた身体をむくりと起こし、僕はゆっくりと膝を抱える。

「あ、あの人形を……その……だ、抱いたりする、ってこと? ずぶん若い子の人形もあったようだけど……」
「うん……まぁ、抱いたり抱かれたり、かな。アルナディアの愛玩人形は体内に光魔法で動くからくりが仕込んであって、その……」
「な、なんだよ! ここまできたら全部教えてよ!」

 ベッドに肘枕をしているセスが、この期に及んで口ごもっている。
 僕は前のめりになってセスの柔らかな夜着を掴み、がくがくと揺さぶった。

「わかった、わかったよ。……こう、単調な動きはできるんだ、あの人形。腰を前後に振る、とか」
「腰を前後に振る」
「男版の愛玩人形は、かなり立派なモノがついてるらしくてね。それをその……扱いたりして刺激すると、先端から粘液が出るらしい」
「粘液……………」
「それを挿入して腰を振らせると……まあ、そういう擬似的な行為ができるんだ。逆に挿入するための部位もあるらしくて、」
「わ、わかった。よくわかったよ。ありがとう……」

 もわもわと色んな想像をしていたら頭がパンクしそうになり、僕は両手で顔を覆って話を遮った。
 あの工房の中には、年若い男女の人形もあった。売れていると言っていたが……なるほど、色んな趣味嗜好を満たすためには必要なモノなのか。

「て、てか、なんでセスはあれを知ってるんだ?」
「騎士仲間が話していたのを思い出したんだ。名前をつけて愛でているやつがいるとか、人形と結婚しているやつがいるとかいないとか……」
「人形と結婚!?」
「腕は立つ騎士ほど奥手だったりするからなぁ……。レナードもそういうタイプだし」
「へぇ、レナードが……。えっ、彼もあの人形を持ってるのかな!?」
「それは知らないけど……」

 尖ったナイフのようなレナードの顔を思い出し、ついでに彼が愛玩人形を愛でている様を想像しかけて——……慌ててかぶりを振った。不謹慎極まりない。申し訳ない。
 
 ついでに思い出されるのは、兄のクリスの顔だ。
 レナードは自分で女性と話すのが苦手だと言っていたが、兄のほうはどうなのだろう。王族からの覚えもめでたい近衛魔術師だし、レナードに比べて顔立ちも優しげで美しい。
 だが、珍しい『氷の魔術師』である僕に興味津々すぎてセスが腹を立てるほどの研究の虫だ。恋愛になど興味がなさそうに見えるが……

「レナードはああだけど、クリスはどうなのかな」
「ああ、クリスはそつなくやってたよ。護衛で入った外交パーティで、何度か目にしたことがある」
「へぇ、そうなんだ」
「変人だけど、黙ってニコニコしていると女性が寄ってくるらしくてね。毎回違うご令嬢をエスコートしてるよ」
「ふうん、そうなんだ。やるね」

 さもありなんと思いつつ、ごろりとセスの隣に横たわる。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品

(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? 騎士×妖精

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている

飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話 アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。 無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。 ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。 朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。 連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。 ※6/20追記。 少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。 今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。 1話目はちょっと暗めですが………。 宜しかったらお付き合い下さいませ。 多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。 ストックが切れるまで、毎日更新予定です。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

婚約破棄を提案したら優しかった婚約者に手篭めにされました

多崎リクト
BL
ケイは物心着く前からユキと婚約していたが、優しくて綺麗で人気者のユキと平凡な自分では釣り合わないのではないかとずっと考えていた。 ついに婚約破棄を申し出たところ、ユキに手篭めにされてしまう。 ケイはまだ、ユキがどれだけ自分に執着しているのか知らなかった。 攻め ユキ(23) 会社員。綺麗で性格も良くて完璧だと崇められていた人。ファンクラブも存在するらしい。 受け ケイ(18) 高校生。平凡でユキと自分は釣り合わないとずっと気にしていた。ユキのことが大好き。 pixiv、ムーンライトノベルズにも掲載中

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。