31 / 32
あやしい薬は適量で【セス視点】
7 子どもじみた不安
しおりを挟む
「セス?」
「うう、……うっ」
「えっ!? セス、どうしたの? 涙目じゃないか」
「な、なんでもない……うぅ」
「……。レナード、ネオ、ちょっと扉の外で待機していてくれないか」
騎士ふたりを部屋の外に出すと、ノクトは俺を抱いたまま軽々と立ち上がった。……信じられない。ノクトにそんな腕力があったなんて——と愕然とするが、今の俺の体重などほんの十数キロ程度か。
「セス? どうしたの?」
俺を抱いて窓から庭を眺めながら、ノクトが穏やかな口調で問いかけてきた。
ノクトの声は、こんなに低くて穏やかだっただろうか? 俺の声が高くなってしまったからそう感じるだけ?
ただでさえ年齢差があることを気にしていのに、もっと差が開いてしまった。もどかしさがさらに募って、俺はさらに不安になってしまった。
「……ノクト、おれ、ずっとこのままだったらどうしよう」
ぎゅっとノクトのシャツの胸元を掴み、俺は目の前にあるアイスブルーの綺麗な瞳を見つめた。
ノクトは俺の言葉を促すようにゆっくりと瞬きをする。
「せっかくノクトをまもれるようになったのに、ノクトとこいびとになれたのに、こんなからだになってしまって」
「セス……」
「もしいま、まじゅうがおそってきても、おれはただのあしでまといだし、ノクトをだきしめたりできないし……ううぅ」
そういう状況を想像するだけでぞっとして、俺の目からはとうとう大粒の涙がぽろぽろと溢れだす。
するとノクトは眉を下げて優しい表情になると、俺の濡れた頬をそっと拭ってくれた。
「うう、っ……そんなのいやだ……」
「ありがとう、セス。大丈夫だよ、今は僕がセスを守るから」
「でも、でも……うぇ……っ」
「それにね、ずっとこのままなんてことはないから」
「へ……っ?」
慰めかもしれないが、ノクトの言葉に希望を感じた俺は、泣きぬれた顔もそのままに勢いよく顔を上げる。
するとノクトはうっとりするほど柔らかな微笑みを浮かべ、俺の髪を優しく梳いた。
「セスが浴びた薬は少量だ。少量でこの効果ってとこは驚くしかないけど、大丈夫、少しずつ呪いの気配は薄れているよ」
「……ほんと?」
涙を堪えようとしても止まらなくて、声がつっかえつっかえしか出てこない。ノクトは嗚咽を漏らす俺をぎゅっと抱きしめ、とんとんと背中を柔らかく叩いた。
「ほんとだよ。だからね、今はただセスの可愛さを僕に存分に見せてくれたらそれでいいんだ」
「……かわいさ?」
「だって、だってさぁ……今のセスの姿ときたら、もう……ほんっと……」
ふるふるとノクトが震えている。
ああ、もしかすると今ノクトが俺にいったことは全て嘘で、ただ俺を慰めようとしているだけなのかもしれない。
本当は俺は元に戻れなくて、ノクトもそれを悲しんで泣いている?
居ても立っても居られない。ぐっと腕を突っ張ってノクトの表情を確認してみたら——……
「え」
「……ああああ可愛い。可愛いよセス……!! こんなにちっちゃくて、ぷくぷくのふわふわで、目なんてこんなに大きくてキラキラしてて……ああ、天使だ、天使すぎる……!!」
目を潤ませ頬を桃色に染めたノクトにすりすりすりすり頬擦りをされ、むぎゅぅと強く抱きしめられる。俺の髪を何度も梳きながら、ノクトは改めてのように俺を顔をじっと見つめた。
「ノクト?」
「たぶん、孤児院に保護されてきたときと同じくらいの年齢だと思うんだ。あのときのセスは可哀想なくらい痩せてやつれてかわいそうだったけど、今はこんなに可愛くて……!」
「うう」
「大丈夫、ちっちゃいのは今だけだからね。すぐにおっきくてかっこいいセスに戻れるから、大丈夫だよ」
「うん……」
ノクトは俺を抱いたままソファに戻った。そして俺を膝に乗せたまま、またニコッと優しい笑顔を浮かべる。
そういえば、さっきから一度も俺は床に下ろしてもらえていない。自分の足で歩けない年齢ではないはずだが、ノクトがずっと俺を離してくれないのだ。
「ノクト……レナードとネオもいるのに、ずっとだかれてるってのははずかしいよ」
「そんなことないよ。転んだりしたら大変だ!」
「ころばないよ」
「ほんとに? ……じゃあ、ちょっとだけだよ」
脇の下に手を入れられ、ひょいと身体が浮く。……なんだこの情けない格好は。恥ずかしすぎて死にそうだ。ノクトに年下扱いされることには少しずつ慣れてはきたが、文字通りの子ども扱いされると羞恥心が破裂しそうになる。
ようやく床にに下ろしてもらえたものの、格好が問題だ。軍服がブカブカすぎて、俺はクリスの幼い頃の服を借りている。
子ども服に身を包んだ俺を、ノクトはとろけるように甘い笑顔で眺めまわしてくるという恥ずかしすぎる状況に耐えかねて、俺はすっとノクトに背中を向けた。
「うう、……うっ」
「えっ!? セス、どうしたの? 涙目じゃないか」
「な、なんでもない……うぅ」
「……。レナード、ネオ、ちょっと扉の外で待機していてくれないか」
騎士ふたりを部屋の外に出すと、ノクトは俺を抱いたまま軽々と立ち上がった。……信じられない。ノクトにそんな腕力があったなんて——と愕然とするが、今の俺の体重などほんの十数キロ程度か。
「セス? どうしたの?」
俺を抱いて窓から庭を眺めながら、ノクトが穏やかな口調で問いかけてきた。
ノクトの声は、こんなに低くて穏やかだっただろうか? 俺の声が高くなってしまったからそう感じるだけ?
ただでさえ年齢差があることを気にしていのに、もっと差が開いてしまった。もどかしさがさらに募って、俺はさらに不安になってしまった。
「……ノクト、おれ、ずっとこのままだったらどうしよう」
ぎゅっとノクトのシャツの胸元を掴み、俺は目の前にあるアイスブルーの綺麗な瞳を見つめた。
ノクトは俺の言葉を促すようにゆっくりと瞬きをする。
「せっかくノクトをまもれるようになったのに、ノクトとこいびとになれたのに、こんなからだになってしまって」
「セス……」
「もしいま、まじゅうがおそってきても、おれはただのあしでまといだし、ノクトをだきしめたりできないし……ううぅ」
そういう状況を想像するだけでぞっとして、俺の目からはとうとう大粒の涙がぽろぽろと溢れだす。
するとノクトは眉を下げて優しい表情になると、俺の濡れた頬をそっと拭ってくれた。
「うう、っ……そんなのいやだ……」
「ありがとう、セス。大丈夫だよ、今は僕がセスを守るから」
「でも、でも……うぇ……っ」
「それにね、ずっとこのままなんてことはないから」
「へ……っ?」
慰めかもしれないが、ノクトの言葉に希望を感じた俺は、泣きぬれた顔もそのままに勢いよく顔を上げる。
するとノクトはうっとりするほど柔らかな微笑みを浮かべ、俺の髪を優しく梳いた。
「セスが浴びた薬は少量だ。少量でこの効果ってとこは驚くしかないけど、大丈夫、少しずつ呪いの気配は薄れているよ」
「……ほんと?」
涙を堪えようとしても止まらなくて、声がつっかえつっかえしか出てこない。ノクトは嗚咽を漏らす俺をぎゅっと抱きしめ、とんとんと背中を柔らかく叩いた。
「ほんとだよ。だからね、今はただセスの可愛さを僕に存分に見せてくれたらそれでいいんだ」
「……かわいさ?」
「だって、だってさぁ……今のセスの姿ときたら、もう……ほんっと……」
ふるふるとノクトが震えている。
ああ、もしかすると今ノクトが俺にいったことは全て嘘で、ただ俺を慰めようとしているだけなのかもしれない。
本当は俺は元に戻れなくて、ノクトもそれを悲しんで泣いている?
居ても立っても居られない。ぐっと腕を突っ張ってノクトの表情を確認してみたら——……
「え」
「……ああああ可愛い。可愛いよセス……!! こんなにちっちゃくて、ぷくぷくのふわふわで、目なんてこんなに大きくてキラキラしてて……ああ、天使だ、天使すぎる……!!」
目を潤ませ頬を桃色に染めたノクトにすりすりすりすり頬擦りをされ、むぎゅぅと強く抱きしめられる。俺の髪を何度も梳きながら、ノクトは改めてのように俺を顔をじっと見つめた。
「ノクト?」
「たぶん、孤児院に保護されてきたときと同じくらいの年齢だと思うんだ。あのときのセスは可哀想なくらい痩せてやつれてかわいそうだったけど、今はこんなに可愛くて……!」
「うう」
「大丈夫、ちっちゃいのは今だけだからね。すぐにおっきくてかっこいいセスに戻れるから、大丈夫だよ」
「うん……」
ノクトは俺を抱いたままソファに戻った。そして俺を膝に乗せたまま、またニコッと優しい笑顔を浮かべる。
そういえば、さっきから一度も俺は床に下ろしてもらえていない。自分の足で歩けない年齢ではないはずだが、ノクトがずっと俺を離してくれないのだ。
「ノクト……レナードとネオもいるのに、ずっとだかれてるってのははずかしいよ」
「そんなことないよ。転んだりしたら大変だ!」
「ころばないよ」
「ほんとに? ……じゃあ、ちょっとだけだよ」
脇の下に手を入れられ、ひょいと身体が浮く。……なんだこの情けない格好は。恥ずかしすぎて死にそうだ。ノクトに年下扱いされることには少しずつ慣れてはきたが、文字通りの子ども扱いされると羞恥心が破裂しそうになる。
ようやく床にに下ろしてもらえたものの、格好が問題だ。軍服がブカブカすぎて、俺はクリスの幼い頃の服を借りている。
子ども服に身を包んだ俺を、ノクトはとろけるように甘い笑顔で眺めまわしてくるという恥ずかしすぎる状況に耐えかねて、俺はすっとノクトに背中を向けた。
44
あなたにおすすめの小説
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー
AI比較企画作品
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
騎士×妖精
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている
飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話
アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。
無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。
ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。
朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。
連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。
※6/20追記。
少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。
今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。
1話目はちょっと暗めですが………。
宜しかったらお付き合い下さいませ。
多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。
ストックが切れるまで、毎日更新予定です。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
婚約破棄を提案したら優しかった婚約者に手篭めにされました
多崎リクト
BL
ケイは物心着く前からユキと婚約していたが、優しくて綺麗で人気者のユキと平凡な自分では釣り合わないのではないかとずっと考えていた。
ついに婚約破棄を申し出たところ、ユキに手篭めにされてしまう。
ケイはまだ、ユキがどれだけ自分に執着しているのか知らなかった。
攻め
ユキ(23)
会社員。綺麗で性格も良くて完璧だと崇められていた人。ファンクラブも存在するらしい。
受け
ケイ(18)
高校生。平凡でユキと自分は釣り合わないとずっと気にしていた。ユキのことが大好き。
pixiv、ムーンライトノベルズにも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。