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第2章
2 ともだち認定?
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「っ……別にいいだろ。今からやるんだから」
「ふーん、今日のとこけっこう難しかったよ。見せてあげよっか?」
「え……」
非常に魅力的な誘惑だ——正直、助かる。
朝のホームルームが始まるまであと五分もない。それまでにまるまる一ページ分の数Ⅱ問題を解く能力が僕にあるはずもないし、立て続けにやらかして目立ちたくはない……。
どうしよう。澄斗に頼るのは癪だが、正直すごくありがたい申し出だ。
ちら……とノートから顔を上げる。
僕の机に頬杖をついていた澄斗が少し驚いたように小さく見開き、そのあとにっこり満面の笑顔になった。
不意打ちで、しかも至近距離で花咲くイケメンの笑顔があまりに眩しく、僕は今朝太陽を見上げたときと同じ顔になってしまった。
「その顔は見せてほしいって顔だ。ちょっと待ってて」
「あっ! でも悪いから……!」
「いいじゃんいいじゃん。困った時はお互い様。代わりに俺が課題やり忘れてたときはよろしく」
「う、うん……そういうことなら」
目が合うなりしかめっ面になった僕に不愉快さを見せるでもなく、澄斗はニコニコしながら一旦席を離れてた。
……といっても、成績優秀な澄斗が僕に課題の手伝いを頼むことなんて絶対にありはしないだろう。
チャラついた見た目をして派手な陽キャ組とつるんでいるくせに、澄斗は成績優秀スポーツ万能。おまけにあの容姿だ。
天はいったいあいつに何物を与えれば気が済むのだろう。不公平にも程があるってもんだ。
つい、澄斗に向いた目つきが卑屈に染まってしまう。
だが戻ってきた澄斗は涼しい顔で開いたノートをさっと僕の机に置き、椅子に後ろ座りしてまたにっこり笑った。
「……あ、ありがとう。助かる」
「いえいえ、どういたしまして」
ノートには小粒な数字が整然と並んでいる。チャラチャラしてるくせに、澄斗はこんなにきれいな字を書くのか……と、ふと思った。
澄斗がひょいと背中を丸めて「ところでさ……」と囁いた。
さらに少し顔が近くなり、僕はなんとなくどぎまぎしながらシャーペンを走らせる。
「な、なんだよ」
「昨日の調理実習んときちらっと聞こえちゃったんだけど、郁也んちなにかあったの?」
「……えっ?」
「ほら、織田たちになにか言いかけてたじゃん。料理しなきゃいけない状況になったとかなんとか」
「あぁ……」
サラサラと走らせるシャーペンはそのままに、僕は澄斗に事情を説明するかどうか少し悩んだ。
家族のことだし、さほど大したことでもないし、そもそも澄斗には全く関係のない話だ。
それにこういう陽キャ軍団のひとりにネタを提供したら、あっという間に噂が広まってしまうに違いない。
噂になるならまだしも、事情を話したところで「なんだ、そんなことかよ」と嘲笑われてしまうかも……とあれこれ考えてしまうと、余計に口が重くなった。
「……大したことじゃないよ」
「郁也さぁ、最近ちょっと疲れてるだろ。たまに遅刻するし、課題もよく忘れるようになった」
「なっ」
なんでそんなことを知っているのか——……まるで僕を監視しているみたいだ。そこまでして僕をからかうネタが欲しいのかと呆れてしまう。
字は汚くなったが大急ぎで数式を写させてもらったからすぐに終わった。
パタンとノートを閉じ、丁重に澄斗のほうへ差し出した。
「だから、大したことじゃないんだって。ネタにもならないようなことだよ」
「ネタぁ? いや、俺はただ心配してるだけだよ」
「心配って……。なんで本条……くんがうちの心配するんだよ」
「そりゃ、友達のようすがなんか変だったら、誰だって心配するだろ?」
「と、とも……?」
(と、ともだち? 僕なんかのことを、澄斗は友達認定してるってこと……?)
「ふーん、今日のとこけっこう難しかったよ。見せてあげよっか?」
「え……」
非常に魅力的な誘惑だ——正直、助かる。
朝のホームルームが始まるまであと五分もない。それまでにまるまる一ページ分の数Ⅱ問題を解く能力が僕にあるはずもないし、立て続けにやらかして目立ちたくはない……。
どうしよう。澄斗に頼るのは癪だが、正直すごくありがたい申し出だ。
ちら……とノートから顔を上げる。
僕の机に頬杖をついていた澄斗が少し驚いたように小さく見開き、そのあとにっこり満面の笑顔になった。
不意打ちで、しかも至近距離で花咲くイケメンの笑顔があまりに眩しく、僕は今朝太陽を見上げたときと同じ顔になってしまった。
「その顔は見せてほしいって顔だ。ちょっと待ってて」
「あっ! でも悪いから……!」
「いいじゃんいいじゃん。困った時はお互い様。代わりに俺が課題やり忘れてたときはよろしく」
「う、うん……そういうことなら」
目が合うなりしかめっ面になった僕に不愉快さを見せるでもなく、澄斗はニコニコしながら一旦席を離れてた。
……といっても、成績優秀な澄斗が僕に課題の手伝いを頼むことなんて絶対にありはしないだろう。
チャラついた見た目をして派手な陽キャ組とつるんでいるくせに、澄斗は成績優秀スポーツ万能。おまけにあの容姿だ。
天はいったいあいつに何物を与えれば気が済むのだろう。不公平にも程があるってもんだ。
つい、澄斗に向いた目つきが卑屈に染まってしまう。
だが戻ってきた澄斗は涼しい顔で開いたノートをさっと僕の机に置き、椅子に後ろ座りしてまたにっこり笑った。
「……あ、ありがとう。助かる」
「いえいえ、どういたしまして」
ノートには小粒な数字が整然と並んでいる。チャラチャラしてるくせに、澄斗はこんなにきれいな字を書くのか……と、ふと思った。
澄斗がひょいと背中を丸めて「ところでさ……」と囁いた。
さらに少し顔が近くなり、僕はなんとなくどぎまぎしながらシャーペンを走らせる。
「な、なんだよ」
「昨日の調理実習んときちらっと聞こえちゃったんだけど、郁也んちなにかあったの?」
「……えっ?」
「ほら、織田たちになにか言いかけてたじゃん。料理しなきゃいけない状況になったとかなんとか」
「あぁ……」
サラサラと走らせるシャーペンはそのままに、僕は澄斗に事情を説明するかどうか少し悩んだ。
家族のことだし、さほど大したことでもないし、そもそも澄斗には全く関係のない話だ。
それにこういう陽キャ軍団のひとりにネタを提供したら、あっという間に噂が広まってしまうに違いない。
噂になるならまだしも、事情を話したところで「なんだ、そんなことかよ」と嘲笑われてしまうかも……とあれこれ考えてしまうと、余計に口が重くなった。
「……大したことじゃないよ」
「郁也さぁ、最近ちょっと疲れてるだろ。たまに遅刻するし、課題もよく忘れるようになった」
「なっ」
なんでそんなことを知っているのか——……まるで僕を監視しているみたいだ。そこまでして僕をからかうネタが欲しいのかと呆れてしまう。
字は汚くなったが大急ぎで数式を写させてもらったからすぐに終わった。
パタンとノートを閉じ、丁重に澄斗のほうへ差し出した。
「だから、大したことじゃないんだって。ネタにもならないようなことだよ」
「ネタぁ? いや、俺はただ心配してるだけだよ」
「心配って……。なんで本条……くんがうちの心配するんだよ」
「そりゃ、友達のようすがなんか変だったら、誰だって心配するだろ?」
「と、とも……?」
(と、ともだち? 僕なんかのことを、澄斗は友達認定してるってこと……?)
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