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第6章
5 二度目の来訪
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いるんだろといいたげな強い視線に抗えず、僕は震える指で通話ボタンを押した。
「はい……? どうしたの?」
『ごめん、突然。貰いすぎたものがあって、差し入れしたいんだけど……いい?』
「差し入れ? あ、ど、どうぞ」
開錠ボタンを押すと、澄斗の映像が一瞬消える。
そして数分ののち……
「い、いらっしゃいませ……」
「お邪魔します。ごめんな、急に」
「う、ううん。……あ、どうぞ」
「これ、焼き菓子の詰め合わせ。ひとりじゃ食い切れねーし、よかったらもらってくんない?」
澄斗が差し出した紙袋は光沢のある深緑色に金色の縁取りがされたもので、見るからに高級だとわかる品物だった。
受け取って中を覗き込んでみると、中に収まった箱も紙袋と同じ色だ。金色の英字で店の名前らしきものが書かれている。
「うわ、なんかすんごい高そう」
「気にしないでよ、もらいもんだし」
「あ、ありがとう。……その、ちょっと上がっていく……?」
初めて澄斗を家にあげた日よりも緊張しつつ、僕はスリッパをそっと差し出してみた。
すると澄斗は「じゃあ、ちょっとだけ」といって部屋の中へ。
そういえば、部屋が散らかったままだと気づいたが——……時すでに遅し。
リビングには洗濯物の山がそのままだし、使ったばかりのキッチンは野菜くずやボウルや菜箸でとっ散らかっている。
「あーっ!! ちょ、ちょっとそこで待ってて!! 今、ちょうどこのあいだ教わった親子丼を作ってたとこで……」
「作ってくれたの? ……ん、そういえば、いい匂いがする」
澄斗がすんすんと鼻をひくつかせる。
そしてふといたずらっぽい笑顔を見せた澄斗は、両手を広げて通せんぼしている僕の頭上から首を伸ばし、廊下からリビングの中を覗き込んだ。
……身長差があるのだからこれくらいは余裕か。そもそも目の前に立ちはだかった意味がなかったらしい。
「別にそんな散らかってないじゃん。平日のうちのほうが酷いくらいだよ」
「そ、そんなわけないだろ! めちゃくちゃ綺麗だったじゃん!」
「毎週土曜にハウスキーパーさんがきてくれるんだ。それで、あの日は片付いてただけ」
「ハウスキーパー……さすが金持ち」
あの広さの家をあの整然さで管理するのは、確かに骨が折れるだろう。でもプロの手が入っているのなら頷ける綺麗さだった。
「ところで、見せて。親子丼、ひとりで作ったんだろ?」
「あ、あー……うん。でもちょっと恥ずかしいなぁ」
「いい匂いしてるから大丈夫っしょ。……あ、これかな?」
ひょいとキッチンに入った澄斗が、僕が今まさに丼に盛り付けたばかりの親子丼を見つけたらしい。
くんくん、すぅ~~~……と胸いっぱいに僕の作ったそれの匂いをかいだあと、澄斗はキラキラと眩い笑顔を見せてくれた。
「すごいじゃん! 完璧、すげー美味しそうだよ!」
「へ、へへ……そう?」
「なにより、教えたあとにすぐ実践してもらえるのが嬉しすぎなんだけど」
「そ、そういうもん? あっ、ちょっと作りすぎちゃったし、よかったら澄斗も食べない?」
「いいの!?」
僕なんかが作ったものを、あんなにも嬉しそうな顔で欲してくれてる——……嬉しくて嬉しくて、胸の奥を熱い手でぎゅうっと掴まれるようだった。
この一週間、見たくても見れなかった澄斗の笑顔を見ることができた喜びもあいまって、僕はやや涙目になりながらこくこくと小刻みに頷いた。
「待ってて、すぐもう一つ器を……。あ、リビング散らかってるけど、適当に座っててくれる?」
「オッケー」
ソファに腰を下ろした澄斗だが……なんと、おもむろに積み上げたままだった洗濯物に手を伸ばした。
僕のTシャツや肌着のランニングシャツ、パジャマ、そしてパンツなどが、澄斗の膝の上で畳まれようとしている……
「ちょっ!! ちょっと何やってんの!! いーってそんなことしなくても!!」
「待ってる間手持ち無沙汰だしさー。俺、けっこう畳むの上手いよ?」
「そういう問題じゃなくて!! ぱ、パンツとか、さすがに見られるのは恥ずかしいし……!!」
「パンツ……」
僕のTシャツを綺麗に畳んだ澄斗が、ふと衣類の山のほうへ目をやり——大人しくなった。
その視線の先には、使い古してクタクタになった僕の青いボクサーブリーフがある。
僕は思わず二つのどんぶりをドン! とカウンターに乗せ、僕は風のような速さで洗濯物の山をリビング脇にある和室に放り込み、ピシャリと襖を閉めた。
「き、汚いから!! 恥ずかしいんだってば!!」
「ごめんごめん。でも、全然汚くないじゃん」
「だーもーいいから!」
僕が必死で怒っているのが面白いのだろうか。澄斗は頬を赤らめて、くすぐったそうに肩をゆすって笑っている。
学校では見たことない無防備な笑いかたは……なんだろう、すごく可愛い。
そして、その笑顔を見られたことが嬉しくて、胸の奥がむずむずしている。
(な、なんなんだよ……可愛い顔しちゃってさ)
どきどき、どきどきと胸が騒がしい。
僕は澄斗に背を向けてひとつ深呼吸をした。
「はい……? どうしたの?」
『ごめん、突然。貰いすぎたものがあって、差し入れしたいんだけど……いい?』
「差し入れ? あ、ど、どうぞ」
開錠ボタンを押すと、澄斗の映像が一瞬消える。
そして数分ののち……
「い、いらっしゃいませ……」
「お邪魔します。ごめんな、急に」
「う、ううん。……あ、どうぞ」
「これ、焼き菓子の詰め合わせ。ひとりじゃ食い切れねーし、よかったらもらってくんない?」
澄斗が差し出した紙袋は光沢のある深緑色に金色の縁取りがされたもので、見るからに高級だとわかる品物だった。
受け取って中を覗き込んでみると、中に収まった箱も紙袋と同じ色だ。金色の英字で店の名前らしきものが書かれている。
「うわ、なんかすんごい高そう」
「気にしないでよ、もらいもんだし」
「あ、ありがとう。……その、ちょっと上がっていく……?」
初めて澄斗を家にあげた日よりも緊張しつつ、僕はスリッパをそっと差し出してみた。
すると澄斗は「じゃあ、ちょっとだけ」といって部屋の中へ。
そういえば、部屋が散らかったままだと気づいたが——……時すでに遅し。
リビングには洗濯物の山がそのままだし、使ったばかりのキッチンは野菜くずやボウルや菜箸でとっ散らかっている。
「あーっ!! ちょ、ちょっとそこで待ってて!! 今、ちょうどこのあいだ教わった親子丼を作ってたとこで……」
「作ってくれたの? ……ん、そういえば、いい匂いがする」
澄斗がすんすんと鼻をひくつかせる。
そしてふといたずらっぽい笑顔を見せた澄斗は、両手を広げて通せんぼしている僕の頭上から首を伸ばし、廊下からリビングの中を覗き込んだ。
……身長差があるのだからこれくらいは余裕か。そもそも目の前に立ちはだかった意味がなかったらしい。
「別にそんな散らかってないじゃん。平日のうちのほうが酷いくらいだよ」
「そ、そんなわけないだろ! めちゃくちゃ綺麗だったじゃん!」
「毎週土曜にハウスキーパーさんがきてくれるんだ。それで、あの日は片付いてただけ」
「ハウスキーパー……さすが金持ち」
あの広さの家をあの整然さで管理するのは、確かに骨が折れるだろう。でもプロの手が入っているのなら頷ける綺麗さだった。
「ところで、見せて。親子丼、ひとりで作ったんだろ?」
「あ、あー……うん。でもちょっと恥ずかしいなぁ」
「いい匂いしてるから大丈夫っしょ。……あ、これかな?」
ひょいとキッチンに入った澄斗が、僕が今まさに丼に盛り付けたばかりの親子丼を見つけたらしい。
くんくん、すぅ~~~……と胸いっぱいに僕の作ったそれの匂いをかいだあと、澄斗はキラキラと眩い笑顔を見せてくれた。
「すごいじゃん! 完璧、すげー美味しそうだよ!」
「へ、へへ……そう?」
「なにより、教えたあとにすぐ実践してもらえるのが嬉しすぎなんだけど」
「そ、そういうもん? あっ、ちょっと作りすぎちゃったし、よかったら澄斗も食べない?」
「いいの!?」
僕なんかが作ったものを、あんなにも嬉しそうな顔で欲してくれてる——……嬉しくて嬉しくて、胸の奥を熱い手でぎゅうっと掴まれるようだった。
この一週間、見たくても見れなかった澄斗の笑顔を見ることができた喜びもあいまって、僕はやや涙目になりながらこくこくと小刻みに頷いた。
「待ってて、すぐもう一つ器を……。あ、リビング散らかってるけど、適当に座っててくれる?」
「オッケー」
ソファに腰を下ろした澄斗だが……なんと、おもむろに積み上げたままだった洗濯物に手を伸ばした。
僕のTシャツや肌着のランニングシャツ、パジャマ、そしてパンツなどが、澄斗の膝の上で畳まれようとしている……
「ちょっ!! ちょっと何やってんの!! いーってそんなことしなくても!!」
「待ってる間手持ち無沙汰だしさー。俺、けっこう畳むの上手いよ?」
「そういう問題じゃなくて!! ぱ、パンツとか、さすがに見られるのは恥ずかしいし……!!」
「パンツ……」
僕のTシャツを綺麗に畳んだ澄斗が、ふと衣類の山のほうへ目をやり——大人しくなった。
その視線の先には、使い古してクタクタになった僕の青いボクサーブリーフがある。
僕は思わず二つのどんぶりをドン! とカウンターに乗せ、僕は風のような速さで洗濯物の山をリビング脇にある和室に放り込み、ピシャリと襖を閉めた。
「き、汚いから!! 恥ずかしいんだってば!!」
「ごめんごめん。でも、全然汚くないじゃん」
「だーもーいいから!」
僕が必死で怒っているのが面白いのだろうか。澄斗は頬を赤らめて、くすぐったそうに肩をゆすって笑っている。
学校では見たことない無防備な笑いかたは……なんだろう、すごく可愛い。
そして、その笑顔を見られたことが嬉しくて、胸の奥がむずむずしている。
(な、なんなんだよ……可愛い顔しちゃってさ)
どきどき、どきどきと胸が騒がしい。
僕は澄斗に背を向けてひとつ深呼吸をした。
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