初恋のレシピは、きみと

餡玉(あんたま)

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番外編② 御子柴視点

お手並み拝見

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 そういうことがたびたびあって、親友の俺にもわからへん部分があんねやな——……と思ってたら、なるほど。

 澄斗のやつ、あれで郁也くんにアピってるつもりやってんな。まったくうまいこといってへんかったけど、むしろ嫌われてたけど。

「——ってことがあったやん。覚えてへん?」
「覚えてるよっ! てかやめろ。俺を客観的に見るな」
「そんなおまえが、今や立派に郁也くんをキュンキュンさせてんのかと思うと、なんやようわからんけど感激やで」
「? ふーん、なんかよくわかんねーけど、ありがと」

 澄斗が首を傾げながら笑い、俺の肩に肩をつんとぶつけてきた。

 狭い窓枠の中でくっつきあっている俺たちを眺める女子が増えてきた気がする。  

「悠巳、そろそろ教室もどらねぇ?」
「いや待て待て! まだお手並み拝見してへんやん。俺をキュン死させてみろ!」
「キュン死ぃ? いや……まじで何それ。よくわかんねーからまずは悠巳からやってみてよ」
「ええ? 俺から~? おまえ、鼻血噴いて死んでまうで~」
「そんなわけねーだろ」
「否定早すぎやろ……グサッとくるわ。まぁええ。こっち向いとけ」

 俺は身体の向きを変えて窓枠に片肘をつき、澄斗を見上げて…………ってまたこいつ背ぇ伸びてへん? なんで俺が顎あげて見上げなあかんねん気ぃ食わへんな。

 ……じゃなくて、俺の必殺技見せたろやないかい。

 澄斗をじっと見つめながら口角をキュッと上げて、あざと可愛いと評判の笑顔を浮かべる。
 
「空回ってる澄斗もめっちゃ可愛い。大好きやで♡」
 
 どうや、渾身の笑顔と激甘必殺低音ボイスでの愛の告白!

 キラキラしているであろう俺の顔を見つめていた澄斗は一瞬真顔になり、へぇー、ふーん、やるじゃんみたいな顔をした。(たぶん)

 ふふふ、せやろ。これで落ちんかった子はいーひんねん。
 
 背後で「ヒィィィ…………」という断末魔みたいな声がかすかに聞こえてきたけど、今は勝負の真っ最中や。

 俺は指先をちょいちょい曲げて、次はお前の番やでとジェスチャーした。
 
 すると澄斗は唇の片端を吊りあげてニヤリと笑い、そのあと——……ぱぁっとひまわりが咲くような笑顔を見せた。そして……

「うん、俺も!」

 そのひとことが放たれた瞬間、世界はまばゆい光に包まれ全てが静寂に包まれた——……

 その場にいた人間たちは皆、澄斗の放つ聖なる光に焼かれて灰燼と化し、騒がしかった昼下がりの校内は浄化された世界へと姿を変え——……

 ……というモノローグが俺の脳裡に浮かんで消える。

 背後では女子が数人ぶっ倒れて「ちょっ!! あんた大丈夫!!?」「誰か! 誰か保健の先生呼んで!!」などさっきより一段と騒がしくなり始めた。

 直撃を喰らった俺はまだ衝撃から立ち直れていない。フルフル震えつつ、窓枠に手をついて澄斗を見上げた。

「おまえ……よくもたった四文字で俺をここまで……」
「? さっきから何言ってんのかわかんねーけど、そろそろ教室戻ろうぜ」
「お、おう……せやな」
「それに、そういう台詞は遊びで俺に言うんじゃなくて、好きな子が出てくるまでとっとけって。無駄撃ちすんなよ」
「ウッ……せやな……」

 サラッとキザったらしいことを言う澄斗だが、イケメンなので無駄に絵になっている……

 笑顔の余韻をキラキラさせながら歩き出した澄斗を、俺は慌てて追いかけた。

 そうか、遊びとはいえ、澄斗の愛の言葉を聞けるのは郁也くんだけっちゅうことやな……

 なるほど、愛や。愛すぎる。
 俺は自分の軽率な行動をちょこっと恥じつつ、フラフラしながら澄斗の横を歩いた。
 
 俺の親友、これから恋愛上段者としてますます成長していきそうや。
 これからもラブラブなふたりを見守りつつ、盗める恋愛テクは盗ませてもらわなあかん!

 いつか来たるであろう俺の恋愛のために……!
 
 
 ——後日、俺が澄斗にガチ告白していたという噂が流れたが、澄斗が一笑に付したため秒でその噂は消えた。
 
 

 おしまい♡
 
 
  
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