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番外編③ 郁也視点
夏と花火と予備知識
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今日は町の花火大会と夏祭りだ。
これまでは家でテレビを見ながら花火の音だけを聴いていたけれど、今年は澄斗と一緒に見る約束をしている。
なんでも、澄斗の家の屋上から花火を見ることができるらしい。
(澄斗んちでふたりきりで花火かぁ……なんか緊張するなぁ)
楽しみで楽しみで仕方がなかったけど、ふたりきりとなるとまだ少し緊張する。
だって、花火を見ながらあの色っぽい笑顔で迫ってこられたらどうするんだ?
軽いキスには慣れてきたし、もっと澄斗とくっついてみたいという気持ちは日を追うごとに大きくなってきている。
でも、いざそういう空気になると思うと緊張してしまうのだ。
(予備知識は得てきた。うん、得てきたけど……得てしまったがゆえに余計緊張してるのかも……?)
ここ最近、僕の読書傾向は偏っている。
これまで恋愛のいろはも知らなかった自分をちょっぴり鍛えねばと思い、僕は恋愛小説や恋愛漫画に手を出しはじめたのだ。
夏休み直前、読書家の田辺あかりさんと席が近かったこともあって、勇気を振り絞って「おすすめの恋愛小説ってあるかな」と尋ねてみた。
ちなみに彼女は小学生時代からの同級生で、調理実習のときに多大なる迷惑をかけた相手である。
自分から女子に声をかけるなんて生まれて初めてかもしれない。
声をかけられた田辺さんのほうもかなり怪訝そうな顔をしていたけどすぐに身体ごと僕のほうへ向き直り、「そうだなぁ」とあれこれ候補を教えてくれた。
しかも、次の日にはすぐおすすめの本を貸してくれたのだ。
なんと、大きめの紙袋にどっさりと。たぶん五十冊はあるだろう。
想像以上に大量だったので僕が呆気にとられていると、田辺さんはふぅ~と汗を拭って「うち、小説と漫画だけで二千冊はあるからさ~。とりあえず、手近なやつごっそり持ってきたし読んでみて! 返却は夏休み明けでいいよ」といった。
えっちらおっちら持って帰ってテーブルの広げてみた本の中には——……なんと、BLと呼ばれる類いのものも何冊か混じっていた。
大半は男女の恋愛(なかにはえぐめの年の差のものもあった)を描いたものだったけど、一割ほどはBLだった。小説と漫画もどっちもある。
読むべきか迷った。
迷ったけど、ここに、今後僕らがそうなってゆく未来が描かれているに違いない。
それならば読んでおくべきだと思ったけれど、ぴたりと伸ばしかけた手が止まる。
表紙の雰囲気は実にさまざまで、どれから読むべきか迷ったのだ。
美形同士が悩ましげに絡み合っているもの。爽やかで可愛らしい絵柄で描かれた男子高校生ふたりが笑顔で手を繋いでいるもの。ケモ耳を生やしたムキムキの男性が同じくムキムキの男性をバックハグしているもの……などなど。
迷いに迷って、僕はまず爽やか系のBL漫画を手に取った。
そして、いつしか全てを読み終えていた……
そう。僕は、これまで知らなかったことをたくさん知ってしまった。一気に知りすぎてしまったせいで、余計に緊張してしまっているというわけなのだ。
「いやいや、あれは全部フィクションだ。澄斗も僕もまだ高一だし、付き合い始めてまだひと月も経ってないし……まさかあんなことが起こるわけが……」
ぶつぶつ独り言を呟きながら坂を登っていたら、あっという間に澄斗の家についていた。
もうすぐあの笑顔が僕を迎えてくれる、楽しい時間が待っている。
ドキドキしながらインターホンを押すと、すぐに澄斗が出迎えてくれた。
これまでは家でテレビを見ながら花火の音だけを聴いていたけれど、今年は澄斗と一緒に見る約束をしている。
なんでも、澄斗の家の屋上から花火を見ることができるらしい。
(澄斗んちでふたりきりで花火かぁ……なんか緊張するなぁ)
楽しみで楽しみで仕方がなかったけど、ふたりきりとなるとまだ少し緊張する。
だって、花火を見ながらあの色っぽい笑顔で迫ってこられたらどうするんだ?
軽いキスには慣れてきたし、もっと澄斗とくっついてみたいという気持ちは日を追うごとに大きくなってきている。
でも、いざそういう空気になると思うと緊張してしまうのだ。
(予備知識は得てきた。うん、得てきたけど……得てしまったがゆえに余計緊張してるのかも……?)
ここ最近、僕の読書傾向は偏っている。
これまで恋愛のいろはも知らなかった自分をちょっぴり鍛えねばと思い、僕は恋愛小説や恋愛漫画に手を出しはじめたのだ。
夏休み直前、読書家の田辺あかりさんと席が近かったこともあって、勇気を振り絞って「おすすめの恋愛小説ってあるかな」と尋ねてみた。
ちなみに彼女は小学生時代からの同級生で、調理実習のときに多大なる迷惑をかけた相手である。
自分から女子に声をかけるなんて生まれて初めてかもしれない。
声をかけられた田辺さんのほうもかなり怪訝そうな顔をしていたけどすぐに身体ごと僕のほうへ向き直り、「そうだなぁ」とあれこれ候補を教えてくれた。
しかも、次の日にはすぐおすすめの本を貸してくれたのだ。
なんと、大きめの紙袋にどっさりと。たぶん五十冊はあるだろう。
想像以上に大量だったので僕が呆気にとられていると、田辺さんはふぅ~と汗を拭って「うち、小説と漫画だけで二千冊はあるからさ~。とりあえず、手近なやつごっそり持ってきたし読んでみて! 返却は夏休み明けでいいよ」といった。
えっちらおっちら持って帰ってテーブルの広げてみた本の中には——……なんと、BLと呼ばれる類いのものも何冊か混じっていた。
大半は男女の恋愛(なかにはえぐめの年の差のものもあった)を描いたものだったけど、一割ほどはBLだった。小説と漫画もどっちもある。
読むべきか迷った。
迷ったけど、ここに、今後僕らがそうなってゆく未来が描かれているに違いない。
それならば読んでおくべきだと思ったけれど、ぴたりと伸ばしかけた手が止まる。
表紙の雰囲気は実にさまざまで、どれから読むべきか迷ったのだ。
美形同士が悩ましげに絡み合っているもの。爽やかで可愛らしい絵柄で描かれた男子高校生ふたりが笑顔で手を繋いでいるもの。ケモ耳を生やしたムキムキの男性が同じくムキムキの男性をバックハグしているもの……などなど。
迷いに迷って、僕はまず爽やか系のBL漫画を手に取った。
そして、いつしか全てを読み終えていた……
そう。僕は、これまで知らなかったことをたくさん知ってしまった。一気に知りすぎてしまったせいで、余計に緊張してしまっているというわけなのだ。
「いやいや、あれは全部フィクションだ。澄斗も僕もまだ高一だし、付き合い始めてまだひと月も経ってないし……まさかあんなことが起こるわけが……」
ぶつぶつ独り言を呟きながら坂を登っていたら、あっという間に澄斗の家についていた。
もうすぐあの笑顔が僕を迎えてくれる、楽しい時間が待っている。
ドキドキしながらインターホンを押すと、すぐに澄斗が出迎えてくれた。
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