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1章 稀代の商人

四十六、幻龍族(3)、転移者(4)

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「…よし、準備は整った。
レイの役目はあの龍の覚醒と監視、
そしてその龍は俺に魂ごと服従した状態で、敢えて完成させていなかったあの第二世界に支配という名の強化を与え、眷属を増やすと同時に俺自身の武力を揃える!
これで素材として最高峰の龍の資源が幾らでも入手出来る…
こうなれば、俺の地位は確たるものとなった!
武力は龍と俺が、
権力は王族であり神の代理者の立場が、
財産も商会の魔道具で得た資金がある。
これはいよいよ…本格的に仲間もどんどん増やしていかないとな…
よし、ガラハド…は俺の護衛だし…んー、手の空いてる奴は誰か居たっけか…あ、ドイル!あいつにしよう!
よし、あの転移者におにぎりを渡したらすぐに向かおうか!」

「すみませーん、店長さん」

「おう待ってたぞ。ほら、約束のおにぎりだ」

「わぁ!本当に用意できるんだ…!早速ここで食べても良いですか?」

「ああ、どうぞ。
それにしても、転移者とは…勇者候補にでもなったのか?嬢さんは」

「ですね、まぁ他にも何人か居ますから私がどれくらいまで出来るかは分からないですけど…
あ、そうだ。聖国を滅ぼそうとする魔王が居るらしいんですけど知りませんか?
その魔王を倒さないと、聖国が滅亡して、そうすると世界が滅んでしまうらしいんですけど…」

「(魔王、ねぇ…まさか神の代理をそう捉えるとは…権力に呑まれたか…)
その話が本当だとすれば…魔王というのは俺だろうな」

「…あはは、店長さん冗談が過ぎますよ!」

「冗談に聞こえたのであればお気楽なものだなぁ…」

そう言うと、彼女は冷や汗を垂らして苦笑いした。

「…えっと、まさかマジな方の?」

「おう、マジだ。
まぁ、話が違うってのはあるけどな。
そもそも俺が聖国を潰すのは、聖国が信仰している神に直接頼まれ…って、待て。
ちょっとだけ待っててくれ。お前…というより、勇者候補のお前たちはどうやってここに来た?」

「え?確か…神の力で召喚されたって言っていましたね。
あと、魔王が私達を戻せるから、魔王を倒さないといけないって…」

「…それはおかしい。
聖国を潰す気でいるあいつがそんな召喚を許可するはず無い。
それに、俺の能力だとお前たちを日本に帰すことはできない」

「…え、日本を知っているんですか!?」

「…え、今更か?言っとくが、この世界で家畜の餌として米が使われているのに主食として使うのは日本人くらいだぞ?」

「て、店長さんも日本人なんですか!?」

「まぁ、俺は転生の方だけどな。
さて…話は聞いたな、ユグドラシル。説明してくれ」

「えっ…ゆ、ユグドラシルって…聖国の主神様!?」

『…だよねぇ、そうなるね。
うん…でも、僕でも分からないことなんだ、今回のことは。
世界を隔絶している結界に穴はないから、無理矢理召喚したわけではない。
でも、僕はそれを許可した覚えはないんだ。
となると、教会と結界に干渉できる神によるものなはず…
なんだけど、そんな神は存在しないんだ』

「と言うと?」

『だってその神…遥か昔に力を封印された女神なんだ』
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