黒崎くんと佐藤さん

金魚

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第一章

鎖に繋がれた犬として

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長い監禁生活と度重なる肉体への侵食は、黒崎の身体をボロボロに衰えさせていた。

特に下半身の奥深くに刻まれた二つの銀の環は、わずかに腰を動かすだけでも鋭い痛みを走らせ、彼はもはや、かつての自分のように颯爽と大地を踏みしめて立つことさえできなくなっていた。

​天童は黒崎の瞳から完全に光が消え逃走の意志が潰えたことを見抜くと、数週間ぶりに彼をベッドの拘束から解放した。


​「さあ、立ちなさい。……と言いたいところだが、今の君には荷が重いようだね」

​自由になったはずの黒崎の手足は、重力に従って力なくシーツに沈み込む。

逃げようという思考すら浮かばず、彼はただ、解放された手首に残る深い痣を見つめるだけだった。

​天童は動かない黒崎の前にしゃがみ込むと、新たな銀の道具を取り出した。
それは、これまでの装飾品とは一線を画す、無骨で頑丈な太いリングピアスであった。

​「逃げる意志がないとしても、飼い主としての証は必要だ」

​天童は黒崎の細くなった鎖骨の上の皮膚を強くつまみ上げる。

​「っ、あ……ぁ……」

​黒崎の口から漏れるのは、もはや悲鳴にもならない、掠れた吐息。

鋭利なニードルが、鎖骨の上の薄い肉を貫通する。
骨に響くような鈍い衝撃と、火傷のような激痛。

そこへ、犬の首輪のリードを繋ぐための「穴」として、太い銀の環が通された。

​「……はぁ、はぁ……っ、ご主人、様……っ」

​鎖骨に刻まれた銀の重み。

それは、彼が一人の人間ではなく、天童の飼い犬であるという動かぬ事実を一呼吸ごとに彼に突きつけた。

​天童はベッドから動かない黒崎の髪を掴み、無理やり膝立ちにさせた。
そして自身の剛直をその目の前へと突きつける。

​「後ろはまだ二個目の銀が馴染んでいない。
……私は君を『壊す』のではなく、芸術品として『完成』させたいんだ。

だから今日は、別の方法で私を愉しませなさい」

​天童の冷酷な命令が、黒崎の耳元で響く。

​「……舐めて奉仕するんだ。
私の愛しい人形(ドール)」

​「……はい……ご主人様……」

​黒崎は唇に嵌められた銀のリングを震わせながら、ゆっくりと口を開いた。

かつては誇り高く、誰にも屈しなかったはずの唇。

それが今は、自分を壊した男を悦ばせるための「道具」として機能し始める。

異物感と屈辱に喉を震わせ、涙を流しながらも黒崎は献身的にその熱を飲み込んでいった。

身体中に張り巡らされた銀の装飾が、天童の動きに合わせてチリ、チリと冷たく鳴り響く。

それは、天童を悦ばせるためだけの器であるということを刻みつけられる残酷な儀式だった。


​数日が経過し、黒崎の身体に刻まれた無数の銀は、赤みを帯びた傷跡から、冷たい「装飾」へとその姿を変えていた。

​天童が部屋に入ってきた際、黒崎はかつてのように暴れようとすることも憎悪の視線を向けることももうしない。

彼はただ、鎖骨に嵌められた重いリングに指をかけ、天童の足音に合わせて小さく身体を震わせるだけだった。

​「感心だ。
三個目の準備ができたことは、言葉にしなくても伝わっているようだね」

​天童がベッドの傍らに立つと、黒崎は教え込まれた通りの行動を取った。

​「……ご主人様、……どうぞ……」

​黒崎は力なく震える手で自ら腿を掴み、大きく左右へ引き開いた。

拘束具などもはや必要なかった。

天童の「不興を買えば、さらなる激痛が待っている」という恐怖が、何よりも強固な見えない鎖となって黒崎を縛り付けていたのだ。

​剥き出しにされたその場所にはすでに二つの銀のリングが、互いに触れ合うほどの間隔で並んでいる。

​「素晴らしい。
自分から私にここを差し出すようになるとは。

……教育の成果だね、黒崎」

​「……は、い……。私は、……ご主人様の……『モノ』ですから……」

​黒崎は空虚な瞳で、天童の悦びに満ちた顔を見上げる。

その声に感情はなく、ただ相手が求める正解をなぞるだけの、壊れた機械のような響きだった。

​天童は満足げに喉を鳴らし、潤滑剤もなしに三本目のニードルを構えた。
二つのリングのわずかな隙間に、鋭い先端が押し当てられる。

​「あ……っ、……ぁ、あ……ッ!!」

​鋭利な刃が、敏感な粘膜を再び貫通する。

身体をのけ反らせ、指先がシーツを掻き毟るほどの激痛。
しかし黒崎は決して足を閉じようとはしなかった。

無理に抵抗すれば天童がわざと銀を強く引き、裂けるような痛みを上乗せすることを知っていたからだ。

​カチリ、と三個目のリングが固定された。

三つの銀が狭い場所で密集し、黒崎が呼吸をするたびに「チリ……チリ……」と、不快な金属音を立てて互いを削り合う。

​「良い音だろう?黒崎」

「…は、い……ご主人、様……」

天童は涙で汚れた黒崎の頬を、この世で最も愛おしい宝物に触れるように撫でた。

「また私の印をつけてやるからいい子に待っているんだよ」

​天童の狂気を含んだ笑い声が部屋に響く中、黒崎はただ、三つの銀が刻む脈動するような痛みに身を任せ、暗い絶望の底へと沈んでいった。
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