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第一章 ソシャゲの課金を止めるには?
#09:緊急事態
しおりを挟む時刻は20時40分を過ぎている。20分後には配信開始だ。防音は決して万全とは言い難い部屋で、おせっせが始まってしまった隣部屋からの喘ぎはまずいことこの上ない。
配信に載ってしまったら、チャンネルごとBANだ。BANとは、強制的な配信終了を意味する。俺が利用するレックライブスでは、公序良俗に反する配信は許していない。違反者はチャンネル閉鎖。つまり死を意味する。
活動の場を失ってしまえば、俺の生活は成り立たなくなる。
「まじか。こんなときに」
俺は買って来た牛乳を冷蔵庫に仕舞い、ノートパソコンを鞄に入れてスマホを握りしめ、直ぐ部屋を出た。
急いで借りられそうな町の会議室をスマホで検索し探してみる。しかし配信まであと15分以内に辿り着いてできそうなところはヒットしなかった。
先ほどまでいた喫茶店も既に閉店。ファーストフード店は賑やか過ぎてアウトだ。公園での外配信は、相談中に誰かが凸してきて映り込んだらまずいだろう。
「やばい。どっか出来そうなところは」
ふらふらと歩いている内に、ある店の前まで辿り着く。見上げ、そこが近江先輩のシェアキッチンだと認識したとき、営業時間は朝11時~18時だと目に入った。まだ明かりが点いている。
木製の扉を開けて、カランとベルが鳴る。
「あー。すみません。お客さん。今日はもう閉店してしまいまして…」
カウンターを拭いてる先輩が振り返って、俺と目が合った。彼の目が見開いていて、驚いた表情をみせた。
「先輩。緊急事態なんです。協力してください」
声色を落として真面目に言えば、目を瞬いた先輩を横目に、俺は店の奥へと歩みを進めた。
「え。緊急って?」
「奥のカウンター席、借ります。すみません。ワケはあとでキチンと話すんで、今だけ、この席のスペースを貸してください!」
「あ…いや、まぁいいけど」
迷ってる暇はなかった。鞄から取り出したノートパソコンを開いて、直ぐに配信の準備をする。それからスマホを立て掛けられるよう、三脚も取り付けた。
「店のWi-Fiも借りても良いですか?」
「う、うん。いいよ。Wi-FiのIDとパスはこれ」
既に片づけていたらしい。棚から小さなアクリルプレートを取り出して、カウンター上を滑るように俺の手元までやってきた。
「ありがとうございます」
素早く打ち込んで、レックライブスの配信ページを開いた。正直Wi-Fiはそれほど強くはない。ゲーム実況をするような大きなアプリケーションは途中で動かなくなる可能性はあるが、俺は主に喋りが専門だ。いつものように2Dのキャラが自在に動くような仕様ではなく、今日は一枚の絵を配信画面上に掲載することにした。こうすれば弱いWi-Fi環境でも配信可能なのだ。
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