配信の果て

ほわとじゅら

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宇多野と二川とフギとポリス

フギとの対面

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「そういや小学生でも楽しめるホラゲを作って欲しいみたいな親御さんからの要望が結構あったんだよな」

「それそれ。配信をやってるときに、リスナーの声は凄く来るからゲーム開発の素人の俺だって、いろいろと企画も立てやすくなったし、皆んなに喜んでもらえるゲームは何なのかを掴みやすくはなったと思う。だから配信者がたとえ社会人経験がなくても、リスナーのやってほしい要望とか希望は配信者自身が感覚として持ってる筈だ。こうすれば受けるみたいな考えがさ」

「確かに」

「だからワンチャン、フギの活躍は有り得ないわけではない」

 そうはいっても、俺たちが稼働するのは早くても来月からだ。フギという配信者の働き方に口を挟める立場じゃない。

「美駒社長は、マネージャーたちから話を聞いたあと、フギに直接話を聞いて説得してみると言ってたよ」

「言ってたというのは、企画部で働けるようにレクチャーするってことか?」

「いや、違うよ。バカなことを言ってないで配信に向き合えって方だと思うよ。俺は会社を出て帰ったから、どう説得したのかは知らんけど。ていうか、普通にダメだろ。専属契約で結んでいるんだから」

 不満そうな表情を浮かべると眉間に皺を寄せて宇多野は憤りをみせた。

「何でダメなんだ。配信休止中に養生ようじょうする時間を社内業務に勤めることが、そんなにいけないことなのか?」

「おいおい。俺に疑問をぶつけないでくれ」

 彼はガタリと椅子から立ち上がると、棚の上で充電中のスマホに手を伸ばした。

「宇多野?」

「聞いてみる」

「は? 美駒社長に?」

「ああ」

「何て?」

 彼は携帯を片手に、右手で自身の顎にそっと触れる。

「普通に使えなくもない。うん。フギは使える」

 俺への返答ではない。

 何やら良からぬ案が彼の脳に働いたようだ。スマホを耳に押し当てながら、配信部屋へと姿が消える。

 しばらくすると通話を終えた宇多野が防音室から出てきた。美駒社長にフギのことを、どう聞いたのか訊ねようとしたら「外出するから二川も一緒に来てくれ」と言われた。

 まだ寒い2月。事務所の最寄り駅である板橋から新宿駅に向かい乗換えで東京都の八王子よりも更に西へ向かう。

 一体どこへいくのかと再度訊ねてみても「来れば分かる」と話すだけで説明は端折られた。

 車内に大勢乗り込んでいた人も少なくなり座席がガラガラに空いてきたところで、やっと駅に辿り着く。

 俺自身、初めて来る駅だが、宇多野はスマホを片手に、ずんずんと先を歩いて改札口を抜けていく。

 彼のあとを追うように辿り着いた先は、カフェだった。店内に入ると赤い革張りの椅子と、背の高めな木製の囲いが出来たテーブル席が並ぶ。更に奥へと進む宇多野は、一つのボックス席で止まった。

「やぁ。待たせたね」

「いえ。あなたが安毛さんですか?」

 横から顔を出すと、線の薄そうな細身の男が座っていた。

「ああ。俺が安毛。彼は二川。俺のマネージャーとして就く予定なんだ。本格稼働は再来月の4月になる。よろしくね。フギ君」

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