配信の果て

ほわとじゅら

文字の大きさ
149 / 349
宇多野と二川とフギとポリス

報告

しおりを挟む


「会って来たぜ。昨日。社長と企画部に入った例のあの人」

 昨日の報告を宇多野に話すが、彼は箸で焼き魚を摘まむと口に運び言葉にならない声で、いや、喉で返事をした。

 俺には――んんん――しか聞こえなかったが、恐らく彼なりに『お疲れ』と言っているのだろう。

「反応が薄いな。いよいよ本丸に乗り込んでターゲットのご尊顔そんがんを直接見てきたんだぞ?」

「今、俺たちにできることは特にないからな。お前は一足先に社内の見学をしてきたってだけで、彼女に凸して過去のことを聞き出したわけじゃないだろ?」

「そうだけど。社長がさ、社内案内で会う人に俺のことを紹介してくれるんだけどさ、お前のマネージャー業務と『特殊業務』に就くって言うんだよ。色んな従業員に、一体何の特殊業務に就くんだって目で見られたよ」

 何のことはない。単純に、宇多野が設立したゲーム開発、兼、配信部屋のある個人事務所とサンライブが業務提携をするという話になるだけ。それなのに、特殊業務と揶揄やゆされていささか大袈裟に感じたのだ。

「まぁ従業員側から見れば、俺たちがサンライブに出入りするとき、ぎょっとさせちゃうからな。配信だけじゃなくて、実際に出勤して社内に顔を出しつつ現場で働くこともある。他の専属配信者たちは、出勤してサンライブの従業員たちと一緒に顔を突き合わせて仕事をするわけじゃないから」

「聞いたよ。社長に。配信者が会社に来ることは滅多めったにないらしいな。でも、社内見学を一通りしたあとで、小耳に挟んだんだけどさ」

 案内ツアーを終えたあと、社長室に戻って来た際、本間というマネージャーと共に、チーム長の前川ら二人の男が美駒を待っていた。俺もマネージャー業務に入る傍ら聞いておくべき事案だと思い、話を把握しておきたいからと彼らの報告を聞いた。

「へぇ。フギって奴が企画部で働きたい、ねぇ。ふーん」

 箸を止めて、宇多野の視線が宙を彷徨う。

「配信離れが現状で起きていて、今は一週間に一回の配信にしてるらしい。しかも配信時間は数時間だけ。専属デビューして4年。配信に身が入らない時期かもしれないけどさ。一般職に全然就いたことないってよ。普通に企画部とかいう花形に就くのも無理があるよな?」

 彼は一瞬だけ、うーんと唸る。

「意外と企画部での活躍も有りではあるかもな。配信業をやってることがアドバンテージになる」

「そうなのか?」

「リスナーの温度感は実際に彼らと話してみると感触が違う。俺が開発者だと告白してからは、よくゲームの感想や意見を貰うことが増えただろ?」

「ああ」

「やさいゲームは誰でも楽しめるゲームだったけど、次にリリースした冥界めいかいを走るバスのホラゲは万人受けはしない。リスナーから、あれこれ改善点も来たし、次回のホラゲに活かしたことだってある。生の声を聞いた結果『シアターの異変』は、ホラゲにしては売上が良かった」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

古屋さんバイト辞めるって

四宮 あか
ライト文芸
ライト文芸大賞で奨励賞いただきました~。 読んでくださりありがとうございました。 「古屋さんバイト辞めるって」  おしゃれで、明るくて、話しも面白くて、仕事もすぐに覚えた。これからバイトの中心人物にだんだんなっていくのかな? と思った古屋さんはバイトをやめるらしい。  学部は違うけれど同じ大学に通っているからって理由で、石井ミクは古屋さんにバイトを辞めないように説得してと店長に頼まれてしまった。  バイト先でちょろっとしか話したことがないのに、辞めないように説得を頼まれたことで困ってしまった私は……  こういう嫌なタイプが貴方の職場にもいることがあるのではないでしょうか? 表紙の画像はフリー素材サイトの https://activephotostyle.biz/さまからお借りしました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...