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17話 初のクエスト
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目的の農地へと向かいながら、ベリアルが話しかけてくる。
「豚トロ様、なぜあの場で魔族軍を倒したのが豚トロ様だと申し出なかったのでしょうか。情報収集を目的とするのであれば、より多くの名声を得た方が良いかと愚行致します」
「内容が内容だったからなぁ。他のならまだしも、あんなの申し出たら絶対めんどくさいじゃん」
「そうですか。……では、私がベリアルとして街で暴れて参りますので、それを豚トロ様が討伐するというのはいかがでしょうか。簡便に英雄となれましょう。実際に私はあなた様に敗れたわけですし」
「うーん、有名人にはなりたくないんだよなぁ。もっと穏便にしてたいっていうか、自由気ままに呑気な旅をしたいっていうか」
「そうですか。では、そのような方策を私の方で考えてみます」
「うん。ありがとー」
なんだろう……。
今までの感じからするに、あらぬ方向へと話を持っていかれそうな気もするが……。
まあいっか。
「それで豚トロ様、一つお願いがあるのですが」
「ん? なーに?」
「私にもどうぞあなた様らしい新たな名前をつけて頂けないでしょうかっ!!! クモの大福やハムスター亜種のような素晴らしい名前を是非いただきたいですっ!」
「いや、素晴らしいっていうか、だいぶネタなんだけど……。ベリアルも十分カッコいい名前だと思うよ」
「いえ!! このようなゴミ同然の名前ではなく、あなた様につけて頂いた名前がほしいのですっ!!」
「そ、そこまで自分の名前を卑下しなくとも……」
まあでも、悪魔皇帝ベリアルは現在ギルドから調査依頼が出ているほどだ。
名前を偽るのは悪い話でもない気がする。
「うーん、そしたら『リラぁッくま』とかどう? リラックマとあくまをかけてるんだけど」
「おお……! おおおお!! なんと素晴らしい名前でしょうか!! 是非その名前を名乗らせていただきますっ!!」
まるで人生最大の名誉でも受けたかのような表情だ。
「う、うん。そ、そこまでかな。まあいいや。じゃあ今日からあなたは『くまちゃん』ね。よろしくー」
「はいっ! 誠心誠意お仕えさせていただきます!」
そのまま目的地の農地へとやってくる。
「えっと? ベビーワームいないね」
「ええ。そのような気配はございませんね」
なんて思っているのも束の間、周囲から山賊風の奴らが現れて、私たちを取り囲んできた。
まあ存在に気付いてはいたのだが――
「あまりに雑魚過ぎて気にしてすらいませんでしたが、なんなのでしょうね、この輩は」
「うわぁ、やっぱそういうクエか。ベビーワームを囮にして初心者冒険者を誘い出して巻き上げるってやつ」
顔をしかめる私たちに対し、男どもが距離を詰めてくる。
「おいおい、初心者クエに二人で参加か? はやまったな」
「おっ! そっちの嬢ちゃんはずいぶんいい体してんじゃねぇか! こりゃ今晩は楽しめそうだなぁ!」
「「「だっはっはっはっは」」」
テンプレートみたいなモブだなぁ。
もはやすがすがしいくらいだ。
「おうおう、下手に抵抗しなきゃそっちの嬢ちゃんは命までは取らないぜ」
「男の方はさすがに死んでもらうがな」
「おらさっさと武器を……っててめぇら丸腰じゃねぇか?!」
男どもを無視してくまちゃんへと話しかけることにする。
「えっと、そしたらこのまま進めよっか。この手のクエはこいつらを成敗すればだいたい話が次に進むわ。私が――」
「この虫けらどもがぁ! 豚トロ様に何と言う愚劣な言葉遣いをっ! 【ヘルズノヴァ】!!!!」
「え、いや、ちょ、ま――」
刹那、周囲は火の海と化した。
山賊たちはおろか、麦畑が大火に焼かれていく。
「ちょおおおおやりすぎぃぃぃ!! 【ニブルヘイム】!!」
大急ぎで消火しようと思ったのだが――、
ドガァァァァァァン!
大爆発がおき、広範囲を吹き飛ばしてしまう。
「あわわわわ……」
「なるほど、さすがは豚トロ様」
「え゛!? いや、なにが!」
「豚トロ様を侮辱されて、思わず手慣れた魔法を放ってしまいましたが、私の溶岩魔法『ヘルズノヴァ』ではすべてを焼き払うまでに10秒はかかることでしょう。それに対し、豚トロ様が直後に放ったのは絶対零度魔法ニブルヘイム。急激な熱変動に伴い、瞬間気化爆発が起こって大地ごと完全に破壊したというわけですね。私が十秒もかかるところをものの一秒で片付けてしまうとは見事な手際です」
「ちっがああああああう!!」
あぅぅぅぅ、咄嗟のこととは言えやってしまった。
一体この始末をどうつければよいであろうか。
あわあわしているところに、生き残った山賊がこちらに這いずりながらやってくる。
「く、そ、てめ、ぇら、なん、なんだ。俺ら、ポッピン教を、敵に回して、ただで、済むと、思うなよ」
そのまま彼は息絶えてしまった。
あーあ、死んじゃった。
……っていうか、ここでの死ってどう捉えればいいんだろう。
ゲームなら普通にリスポーンするだろうけど、彼らってそうじゃなくて本当に生きてるのかな……?
いやいや、でも壁に耳あり障子にメアリー内に私が配置したPMCは魔力結晶とか対価支払いで復活できた。
むぅぅ、判断が難しいな。
とそこで、一人だけ山賊が軽傷で済んでいるのが目に入る。
くまちゃんがそのまま息の根を止めてやらんという勢いだ。
「あ、ちょっ! 待って! ダメ!」
「? なぜでしょうか? 愚劣な人間など、さっさと殺してしまえばよいかと存じますが」
「いいからダメっ! 絶対ダメ! 手を出したら本気で怒る!」
「わかりました」
なんて話している間にその山賊は悲鳴にならない悲鳴を上げながら逃げていった。
「しかし、ポッピン教ですか。私も存じてはおりましたが、非常に狡猾で世界中に根を張る闇の組織です。先ほど倒したゴミクズはその末端の末端でしょうが」
「そうなんだ。ポッピン教ねぇ」
自分で言うのもなんだが、ずいぶん変わった名前だ。
「んまあとりあえず帰りましょう。はーあ、この状況をなんて説明したものかしらね……。ベビーワームはいないし……。とんだ災難に遭ったわ……」
「豚トロ様、なぜあの場で魔族軍を倒したのが豚トロ様だと申し出なかったのでしょうか。情報収集を目的とするのであれば、より多くの名声を得た方が良いかと愚行致します」
「内容が内容だったからなぁ。他のならまだしも、あんなの申し出たら絶対めんどくさいじゃん」
「そうですか。……では、私がベリアルとして街で暴れて参りますので、それを豚トロ様が討伐するというのはいかがでしょうか。簡便に英雄となれましょう。実際に私はあなた様に敗れたわけですし」
「うーん、有名人にはなりたくないんだよなぁ。もっと穏便にしてたいっていうか、自由気ままに呑気な旅をしたいっていうか」
「そうですか。では、そのような方策を私の方で考えてみます」
「うん。ありがとー」
なんだろう……。
今までの感じからするに、あらぬ方向へと話を持っていかれそうな気もするが……。
まあいっか。
「それで豚トロ様、一つお願いがあるのですが」
「ん? なーに?」
「私にもどうぞあなた様らしい新たな名前をつけて頂けないでしょうかっ!!! クモの大福やハムスター亜種のような素晴らしい名前を是非いただきたいですっ!」
「いや、素晴らしいっていうか、だいぶネタなんだけど……。ベリアルも十分カッコいい名前だと思うよ」
「いえ!! このようなゴミ同然の名前ではなく、あなた様につけて頂いた名前がほしいのですっ!!」
「そ、そこまで自分の名前を卑下しなくとも……」
まあでも、悪魔皇帝ベリアルは現在ギルドから調査依頼が出ているほどだ。
名前を偽るのは悪い話でもない気がする。
「うーん、そしたら『リラぁッくま』とかどう? リラックマとあくまをかけてるんだけど」
「おお……! おおおお!! なんと素晴らしい名前でしょうか!! 是非その名前を名乗らせていただきますっ!!」
まるで人生最大の名誉でも受けたかのような表情だ。
「う、うん。そ、そこまでかな。まあいいや。じゃあ今日からあなたは『くまちゃん』ね。よろしくー」
「はいっ! 誠心誠意お仕えさせていただきます!」
そのまま目的地の農地へとやってくる。
「えっと? ベビーワームいないね」
「ええ。そのような気配はございませんね」
なんて思っているのも束の間、周囲から山賊風の奴らが現れて、私たちを取り囲んできた。
まあ存在に気付いてはいたのだが――
「あまりに雑魚過ぎて気にしてすらいませんでしたが、なんなのでしょうね、この輩は」
「うわぁ、やっぱそういうクエか。ベビーワームを囮にして初心者冒険者を誘い出して巻き上げるってやつ」
顔をしかめる私たちに対し、男どもが距離を詰めてくる。
「おいおい、初心者クエに二人で参加か? はやまったな」
「おっ! そっちの嬢ちゃんはずいぶんいい体してんじゃねぇか! こりゃ今晩は楽しめそうだなぁ!」
「「「だっはっはっはっは」」」
テンプレートみたいなモブだなぁ。
もはやすがすがしいくらいだ。
「おうおう、下手に抵抗しなきゃそっちの嬢ちゃんは命までは取らないぜ」
「男の方はさすがに死んでもらうがな」
「おらさっさと武器を……っててめぇら丸腰じゃねぇか?!」
男どもを無視してくまちゃんへと話しかけることにする。
「えっと、そしたらこのまま進めよっか。この手のクエはこいつらを成敗すればだいたい話が次に進むわ。私が――」
「この虫けらどもがぁ! 豚トロ様に何と言う愚劣な言葉遣いをっ! 【ヘルズノヴァ】!!!!」
「え、いや、ちょ、ま――」
刹那、周囲は火の海と化した。
山賊たちはおろか、麦畑が大火に焼かれていく。
「ちょおおおおやりすぎぃぃぃ!! 【ニブルヘイム】!!」
大急ぎで消火しようと思ったのだが――、
ドガァァァァァァン!
大爆発がおき、広範囲を吹き飛ばしてしまう。
「あわわわわ……」
「なるほど、さすがは豚トロ様」
「え゛!? いや、なにが!」
「豚トロ様を侮辱されて、思わず手慣れた魔法を放ってしまいましたが、私の溶岩魔法『ヘルズノヴァ』ではすべてを焼き払うまでに10秒はかかることでしょう。それに対し、豚トロ様が直後に放ったのは絶対零度魔法ニブルヘイム。急激な熱変動に伴い、瞬間気化爆発が起こって大地ごと完全に破壊したというわけですね。私が十秒もかかるところをものの一秒で片付けてしまうとは見事な手際です」
「ちっがああああああう!!」
あぅぅぅぅ、咄嗟のこととは言えやってしまった。
一体この始末をどうつければよいであろうか。
あわあわしているところに、生き残った山賊がこちらに這いずりながらやってくる。
「く、そ、てめ、ぇら、なん、なんだ。俺ら、ポッピン教を、敵に回して、ただで、済むと、思うなよ」
そのまま彼は息絶えてしまった。
あーあ、死んじゃった。
……っていうか、ここでの死ってどう捉えればいいんだろう。
ゲームなら普通にリスポーンするだろうけど、彼らってそうじゃなくて本当に生きてるのかな……?
いやいや、でも壁に耳あり障子にメアリー内に私が配置したPMCは魔力結晶とか対価支払いで復活できた。
むぅぅ、判断が難しいな。
とそこで、一人だけ山賊が軽傷で済んでいるのが目に入る。
くまちゃんがそのまま息の根を止めてやらんという勢いだ。
「あ、ちょっ! 待って! ダメ!」
「? なぜでしょうか? 愚劣な人間など、さっさと殺してしまえばよいかと存じますが」
「いいからダメっ! 絶対ダメ! 手を出したら本気で怒る!」
「わかりました」
なんて話している間にその山賊は悲鳴にならない悲鳴を上げながら逃げていった。
「しかし、ポッピン教ですか。私も存じてはおりましたが、非常に狡猾で世界中に根を張る闇の組織です。先ほど倒したゴミクズはその末端の末端でしょうが」
「そうなんだ。ポッピン教ねぇ」
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