転生生活をまったり過ごしたいのに、自作キャラたちが私に世界征服を進めてくる件について

ihana

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20話 Aランク冒険者

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 何もない空間からいきなりくまちゃんが現れたことに、フランソワとカイオンは驚愕の表情を浮かべる。

「なっ! てめっ、どこから湧き出やがった!」
「どこから? そんなことはどうでもいいことでしょう? 行方不明になっている領主の娘フランソワとAランク冒険者のカイオンですね。先ほどの話はしかと聞かせていただきました。弁明の余地はございませんよ」
「チィ! 聞かれたか! だが、こっちだって手札がないわけじゃねぇぞ! おい、お前ら!」

 そう呼びかけると、洞窟の外にいたであろう仲間たちがぞろぞろと入り込んできた。
 テイマー職の者がいるからか、手懐けられた魔物たちも肩を並べている。
 その中には、私が受注した討伐クエの対象であるモストタイガーやハウルベアーも含まれていた。

「聞かれちまった以上ただで帰すわけにはいかねぇな。俺はセザンヌ最高の冒険者カイオンだ。んまっ、俺一人でも何とかなるだろうが、俺の気配探知スキルを掻い潜れるような野郎だ。警戒しておくに越したことはない」
「何とかなる? 笑わせたものですね。地を這いずる虫ごときが自分を強いと思っていようとは」
「はんっ! すかしてんじゃねぇよ! お前ら! わからせてやれ!」

 その言葉と共に、テイムされている魔物たちが前へと躍り出た。
 おまけに前衛中衛後衛とちゃんと役割分担がなされており、連携攻撃を繰り広げている。

「どうだっ! テイマーを使った魔物軍団の攻撃! 普段知恵をもたねぇ魔物どもに連携されりゃ、さすがにただじゃいられねぇだろう! ポッピン教の聖女様より伝授頂いた必勝の策よ!」
「あなたたちではただでいられないのかもしれませんが、一緒にしないでいただきたいですね」

 魔物たちの攻撃を敢えて避けなかったくまちゃんからそんな言葉が漏れ出て、カイオンたちから余裕の色が失われていった。
 なぜなら、魔物の鋭い爪はくまちゃんの肌を一切傷つけることができていなかったからだ。

「なっ! なんで生きてやがる!?」
「世間を知らないとは怖いですね。あなた方のすぐそばに神にも等しい御方がいらっしゃるというのに」
「てめぇ! 自分のことを神だとでも言いてぇのか!?」
「いえいえ、そんな畏れ多い。私などはあの御方からすれば、あなた方同様、地を這いずる虫に過ぎませんよ」
「訳の分からんことを!」

 必死に強がってはいるが、彼らが浮足立っているのは言うまでもない。
 第一、モストタイガーやハウルベアーなんぞがくまちゃんに敵うわけがない。
 くまちゃんの実力はゲーム後半の裏ボスレベルだ。
 序盤の中ボス風情が徒党を組んだところで焼け石に水であろう。

「し、しかしカイオン様、我々はどうすれば」
「くぅっ、ならば切り札を使う! 我らにはポッピン教の聖女様よりお借りしたこれがある!」

 そう述べて取り出したのは召喚の角笛であった。
 しかもあの柄はっ――!?

 図太い角笛の音が響いて、巨大な召喚陣が出現。
 ややもしてそこから現れたのは神秘の光をまとうヒョウ型の魔物であった。

「フハハハハハ! 人の身では決して到達することのできない限界を超えた存在、魔獣ケットシーだっ! 絶望に溺れながら死ぬがいぃっ!」
「はぁ……。この程度が切り札ですか……。一瞬でも警戒してしまった自分が愚かでなりませんね。豚トロ様、この者どもは掃除してしまえばよろしいですよね?」
「ダメ」

 冷たい声を発することで隠蔽魔法が自動解除され、角笛を持った男の目の前に私は姿を現わす。
 彼はそれに驚いて尻餅をついていた。

「なっ!!? どこから現れやがった!?」
「ねぇ、その角笛、どこで手に入れたの?」
「くそっ、仲間だな!? やれぇ!!」

 召喚されたケットシーが私の肩口に噛みついて来るも、ステータス差が大きすぎて一切にダメージとなっていない。
 目障りだったので適当にはたくと、それだけでケットシーは壁にめり込んでHPが全損していた。

「うひぇえ!? て、て、っめ??! 素手、でっ??」
「もう一回聞くね。これ、どこで手に入れたの? この笛ね、白亜の角笛っていうの。課金ガチャの外れアイテムだけど、プレイヤーしか持っていないはずなんだ。だからさっ――」

 無詠唱分解魔法により岩石を塵に変えてみせる。

「心して答えてね」
「ひぃぅ……!? そ、そんなっ! こんなのおかしいっ! だってケットシーは限界突破した魔物なんだぞ! 人では決して到達できない場所にいる!」
「質問に答えないの?」
「スキル【バレットアタック】」

 避けずにすべて受けていく。
 どうせ1のダメージにもならないであろう。

「なっ! なんで効かない!?」
「終わり?」
「ま、待ってくれ! わかった! 答える! 答えるから、頼むから殺さないでくれっ!」

 そう述べる彼を無視してくまちゃんの方へと視線をやる。

「くまちゃん、話してくれるみたいだから後のことはお願いしていい?」
「はい、もちろんでございます」

 ニンマリとした笑みを浮かべながら、この後どんな絶望を与えてやろうかと楽しみにしているようだ。

「いーい? 絶対に殺しちゃダメだからね? 最後はちゃんと警備隊に引き渡して法的な処分を下すのよ? わかった?」
「はい、そのように致します」

「ま、待ってくれ! 俺だけでも――」
「【マスホールドクラスト】」

 くまちゃんの拘束魔法で彼らは全員拘束されるのだった。
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