転生生活をまったり過ごしたいのに、自作キャラたちが私に世界征服を進めてくる件について

ihana

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28話 聖女

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 お互い一秒もしない間に行動を開始した。

「スキル【フロートソード】」

 少女の周囲に四本の魔法剣が出現し、自由軌道で私へと襲い来る。
 私はそれを武器も出さずに回避。

 似てる。
 やっぱり私の考えたビルドにかなり近い。
 もしかして私のつくったPMC?

 暗殺者×聖職者ビルドで私の創ったPMCの名は阿修羅マナという。
 圧倒的な対人戦闘力を誇り、闘技場ではプレイヤー相手でも上の中くらいまで余裕で勝つことができた。
 さすがにトッププレイヤーには並ばないが、ただのプログラムにすぎないPMCであれほど戦えるのはすごいとSNSでも話題になっていた。

 だがもしそうであるのなら、あのスキルを絶対に使って来るはず。
 今の戦闘スタイルは微妙にマナちゃんとは異なる。

「避けてばかりですか? それともまだ様子見ですか?」
「うーん、まだまだ私を本気にさせられるほどの相手じゃないかなって思って」
「では、その余裕の笑みを浮かべたまま死んでください」

 刹那――、

 地面から多数の光が走った。
 いくつかに撃ち抜かれて出血してしまう。

「おや。完全に仕留めるつもりでしたのに、これでも避けますか」

 マジか、トラップか。
 いつ仕掛けたんだろ。
 そんな素振りはなかった。

「いやぁ、やられたよ。てっきりフロートソードの遊撃とともにあなた本体が来ると思ってた。まさかトラップスキルとはね」
「いい加減あなたも自分の手札を出してはいかがですか? 手札を温存するあまり、やられてしまうなんて恰好がつきませんよ」
「うーん、私的にはあなたの戦い方が知りたいだけだしなぁ」
「……つまり、勝つことは容易だと?」
「まあそうだね」
「ふんっ、気に食わないですね。では、せいぜい良い勝負をしてみせて下さいな」

 再び宙に浮かぶ四本の魔法剣が私へと襲い来る。
 今度は本体も斬りかかって来る上に先ほどの罠も至る所に張られている。
 時間が経てば経つほどに私の体には生傷が増えていく。

「さあ、そろそろ終わりにしましょうか」
「いいよ」
「スキル【エクストラユニット】」

 さらに四本の浮遊魔法剣が追加。
 フロートソードを重ね掛けしても剣の本数は増えない。
 だが、エクストラユニットのスキルを使えば本数を増やすことができる。

 すごい!
 この子のビルド、よく考えられている!

「さあ! 終わりです」

 すべての攻撃が襲い来たため、私は情報収集をここまでとし、両方の手に刀を一本ずつ取り出す。
 これまでの動体視力に頼った回避から、称号の恩恵を受けた剣による受けへと切り替え、一気に少女へと距離を詰めていく。

「なっ!?」

 手数は相手の方が上であるはずなのに、少女を圧倒していく。
 フロートソードの自立行動パターンなんて全部知っている。
 相手が八本の浮遊剣と二本のナイフをその手に戦ってくるのであれば、こちらは一太刀で五本以上を相手にできればよいだけだ。
 素人ならばそんなことは不可能に近いが、私は無限に近い時間をこの手の相手に費やしてきている。

 ついには少女の防御を打ち崩し、まともなダメを与えることに成功。
 左腕からの大出血により少女はたじろいでいった。

「強い……」
「うん。私は強いよぉ~。ねね、もうやめてさ、私の仲間にならない? あなたのビルドすごく強いからさ、戦わないで仲間になろうよ」
「お断りします。わたくしが忠誠を誓うのはたったお一人だと心に決めておりますので」
「むぅ~、そっか。なら仕方ないね」

 うぅ~、勧誘失敗。
 この強さならできれば仲間に引き入れておきたかったなぁ。

 再び打ち合いを開始。
 負けるとわかっていてなぜ打ち合うのか。

 いや……、これまでの戦い方から、この子は無謀な戦いを挑むタイプには見えない。
 つまり、まだ奥の手を隠しているという事か。

 技量で圧倒しているため修道女が次々に生傷を負っていくが、構わず戦闘を継続するようだ。

「このままじゃ負けちゃうよ? どうせならキルするんじゃなくて仲間になって欲しいなぁ。ほらっ! ドラクエ方式でさ!」
「あなたはたしかに強い。手数に勝る圧倒的な技量とパワー。でも、私はっっ! 対人戦では絶対に負けられない! あの御方からそう望まれているからっ!! スキル【阿修羅】!!!!」
「おぁっ!?」

 四本の腕が背中から生え途端に動きが変わった。
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