転生生活をまったり過ごしたいのに、自作キャラたちが私に世界征服を進めてくる件について

ihana

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38話 失敗続き

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 巨大な地震の発生に対し、私は瞬時に対応していく。

「【エリアフロート】!!」

 範囲浮遊魔法を発動させ、全員を揺れから逃していった。

「大きい! エリアボスだわ!」
「エリアボス……? 豚トロ様が言っておったクエストに関連したものかの?」
「多分関係ないと思うけど、どうなんだろ?? こういう地震がいきなり起こるときは大抵巨大なエリアボスが近くで湧いてるの。地震っていうよりエリアボスが歩行したり活動したりすることで起こる地揺れね」

 大質量の物体は歩くだけで地震を巻き起こす。

「エリアボスってなんだ!? 俺らはそんなの知らねぇぞ!」
「山のように大きなボスよ。通常レイドを組んで挑むの。けど、私はソロ攻略したこともあるから大丈夫よ!」
「れ、れいど? そろこうりゃく??」
「外見を確認したいわ! もう少し上空に行くわよ!」

 飛行魔法に慣れずにもがく男二人を連れて、上空から辺りを見渡す。
 だが――、

「……何もおらんの」
「あれ!? いやっ! えっと、こういうときは必ず周囲に……」
「何にもいないように見えるな」
「何もいねぇぞ」

 ライルやリンディスからも指摘されて、冷や汗が増していく。
 自信満々にエリアボスのことを解説してしまった手前、血眼になって探してしまうも、周囲にそれらしき影は見当たらない。

「ってか普通に地震じゃね? ここ最近多いし」
「レレムの山は活火山だしな。地震はよく起きてるな」

 なんて具合に、三人の視線が私の方へと突き刺さって来る。

「あー……」

 揺れが収まってしまい、辺りはさっきまでの静かな山の麓へと戻っていった。
 揺れの原因がエリアボスであれば、ボスを倒さない限り揺れが収まることはない。
 つまり――。

「ま、まあ! こういうこともあろうて! 豚トロさ……じゃなくてトロポーク様や、どうか気を落とさんでくんなまし」
「あっ! そ、そうだな! 誰にでも間違いはあるもんだ! ほら、リディ、お前もフォローしとけ! 可哀想だろ!」
「えぇ!? お、俺もかよ。……ま、まあ、ただの地震だ。別によかったじゃないか、それで」
「……。そ、そう、だ、ね……。よ、よかったー。普通の地震だったー。レレムの街に被害が出てないといいなー」

 うぅ、心臓が痛い……。
 今回は失敗ばっかりでカッコ悪いなぁ。
 魔力結晶も見つからないし、クエも思ってたのと全然違うし、エリアボスもいないし……。
 大福ちゃんや他のPMCたちに愛想をつかされなければいいが……。

「なあ、空を飛ぶ経験自体はすごくありがたいんだが、そろそろ降ろしてくれないか?」
「あっ、そ、そうよね。ごめん、降ろすね」

 再び温泉が湧いた地点に降りたっていく。

「……、じゃ、じゃあ、俺らは資財を運んだり、いろいろやることがあるから、一旦街に戻るな。そ、そう気を落とすなよ。別に大した問題じゃないと思うぜ」
「そ、そうだよね。はは。えーっと、そしたら大福ちゃん、彼らを護衛してあげてくれる?」
「え? いらねぇよ。俺らこう見えて腕利き冒険者だぜ?」
「そうじゃ。わらわは常にトロポーク様の傍に付き添いたい」
「ちょ、ちょっとだけ、一人になりたいの」

 そう述べると三者は納得の表情を浮かべる。

 レレムに来てからというものメンタルを抉られ続けている。
 さすがにちょっと一人で落ち込みたい。

「……そうかの」
「大福ちゃん、いーい?」
「むぅ。本当はトロポーク様の御傍に仕えておりたいところじゃが、御命令とあらばむろんじゃ」
「えっと、決して人に危害を加えたりしちゃダメよ。レレムの街で被災している人や建物があったら修復や修繕を手伝うこと。それと、魔物や何か人間に害意を為すものがあればそれをすべて防ぐのよ。わかった? 絶対よ?」

 彼女はどちらかと言わなくとも人族に対して否定的な見方をしている。
 ここはちゃんと言っておくべきだ。

「わかったのじゃ。このトロポーク様から頂いた大福の名にかけて、必ずや守って見せようぞ」

 そう述べて、三人はレレムの街へと戻っていった。


 一人になった私は思わず空を見上げてしまう。
 なぜこうもうまくいかないのか。
 思えば、くまちゃんとセザンヌの街でクエをやっているときもそうであった。

 私は過去の知識を頼りにクエを進めようとしているが、ここは異世界なのだ。
 ならば、クエストは決められたルート通りには進まない。
 ここを生きる人たちにはみな各々に意志があって、様々な思惑が絡み合っている。
 つまり、私の知識なんて点で役に立たないというわけで。

 魔力結晶も手に入らないし、これからどうしようかなぁ……、なんてトボトボ歩いていた矢先、私はエクスペディションオンラインでは見たこともない洞窟の入口を発見するのだった。
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