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第114.5話 育みの女神と繁栄の女神
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目が覚めて、最初に感じたのはむせかえる程の雄の臭気。
あてがわれた部屋は臭いを漏らさないように閉め切っていて、それがまたひどさに拍車をかけている。注がれて注がれて詰め込まれて垂れ流し、衣服や寝具を穢して汚して、折角の白布が台無しになっていた。
でも、嫌な感じはしない。
下に敷いていたシーツを舌先でなぞり、しゃぶりつき、散々飲まされたあの味を口の中で思い出す。
苦くて臭くてねばっこくて、腹の奥で溜まり蠢く命の片割れ。たったの数日でもう思い出せない程に味わい尽し、今では一時でも感じられないと不安に駆られる。
私は、堕とされてしまった。
「酷い臭いだな、リエラ。また閉めきっていたのか?」
「ヴィラ様……?」
私と同じ、しなずち様の属神である褐色女神が部屋に入って来る。
ノックも声かけもなく、自分の部屋に入る様にドアを開けて閉め、わかるように音を立てて鍵をかけた。
窓も寝る前に閉めたままで、起き抜けの緩い頭でも身の危険を感じて大きな警鐘を鳴らしてくる。
目がヤバイ。
犯される。
「ゆ、湯浴みを先にさせて頂けませんでしょうか……?」
「勿体ない事を言うな。しなずちの匂いと残り香に塗れているからこそ良いのだろう。それに、私を前にして昨晩されたままの姿で前を隠さないなど、誘っていると取られてもしかたない」
「だ、だれかっ、助けて下さい! ヴィラ様が――――むぐっ!?」
ドロドロに濡れたシーツを口に押し込まれ、鼻腔を通る匂いにくらっと来る。
思考が安定せず、腹の奥と心の奥が欲と欲と欲を欲する。かつて夢見た優しい旦那様との朝の一時をスパッと捨てさせ、優しい口づけではなく情欲の迸りを貪欲に求める。
このシーツがしなずち様だったら、もっと良かったのに……。
「いけないなぁ? 神々が認める清純幼女が、ちょっと男を知ったくらいでそんなに顔を蕩けさせて…………おや? 先からあまぁい匂いがしてきたぞ? 育みの女神の育みの素はどんな味がするのかなぁ~?」
「んむぅぅぅっ! いむぁぁぁぁっ!」
「良い、良いぞ、リエラっ。アーウェルをダイキに取られて消沈していた私をここまで昂らせるなぞ、まさに最高の素材で逸材だっ。今日はしなずちの分体で張り型を作ってきたから、誰かが呼びに来るまで果て合うとしようっ。いや、呼ばれても果てて果てて果てさせてやるから啼いて鳴いて泣き喚けっ!」
常軌を逸した狂気の瞳が、煌々と輝いて私の心を弄ぶ。
しなずち様に犯され、貶められ、辱められた堕落の記憶はヴィラ様を受け入れている。
むしろ積極的に求めてすらいて、唾液と一緒に染み出たしなずち様を、噛んで吸って搾り取って飲み下した。
反して、私を信仰する人々への想いは抵抗を続けている。
私を捧げるべきはしなずち様であり、ヴィラ様ではない。こんな浮気のような情事は以ての外で、振り払って逃げ出してしなずち様に跨るべきだ、と。
「んぐっ、んぐぅぅっ…………っ!」
胸と脇腹を擦る刺激に、快楽由来の痙攣が全身を駆け巡る。
何てだらしない愚かな女神なのだろう?
詐欺や脅し、不当な契約から信仰者達を守る為と言いながら、結局は悦びの享受を満喫しているだけではないか。この場に力を授けた尖兵の一人でもいたならば、彼女達に何と言い訳をするつもりなのだ?
負けちゃった? 気持ち良い? 一緒にしよ?
最低に最低で最低過ぎる。子と夫を持つ母達を不貞に誘うなど…………そんな目で見ないで、アマンダ。ドーラ、違うの、私は……あっ、ダメ、何かくるきちゃうき、あ――――っ!
「ひっ、ぐっん―――っ!」
「もう我慢できないかっ? なら、わかっているだろう? 昨夜しなずちにして見せたように、私にお前の入口を晒して――――ん?」
チカチカ煌めく視界の中で、ヴィラ様の視線が私から外れる。
見つめる向こうはただの壁。厚い木板を数枚合わせ、頑丈さと遮音性を高めただけの代物だ。神界会議でしなずち様に染められたドレスをかけているくらいで、特に変わった所は一つもない。
…………ううん、違う。
壁の向こうから何かが迫って来る?
「ヴィラ様……?」
「チッ、良い所だったのに……」
言い終わるとすぐ、ヴィラ様は私を抱き寄せて障壁を張った。
音と振動が徐々に大きくなり、更に一際高まって壁を突き破ってきた。木片と木っ端が宙を舞い、数日前の私より貧相な褐色が凄い勢いで飛び出してくる。
ドガちゃんだ。
私には気付いていないのか余裕がないのか、反対の壁に体当たりして壊し過ぎていく。
次いで良く見知った触手の群れが追いかけて行き、どういう状況なのかが何となくわかった。
そっか。
ドガちゃんも、こっちに来るんだ。
そっかぁ。
「ヴィラ様……ソレ、貸してくれませんか?」
ドガちゃんは、こういうのまだだったよね?
二番目、頂戴。
あてがわれた部屋は臭いを漏らさないように閉め切っていて、それがまたひどさに拍車をかけている。注がれて注がれて詰め込まれて垂れ流し、衣服や寝具を穢して汚して、折角の白布が台無しになっていた。
でも、嫌な感じはしない。
下に敷いていたシーツを舌先でなぞり、しゃぶりつき、散々飲まされたあの味を口の中で思い出す。
苦くて臭くてねばっこくて、腹の奥で溜まり蠢く命の片割れ。たったの数日でもう思い出せない程に味わい尽し、今では一時でも感じられないと不安に駆られる。
私は、堕とされてしまった。
「酷い臭いだな、リエラ。また閉めきっていたのか?」
「ヴィラ様……?」
私と同じ、しなずち様の属神である褐色女神が部屋に入って来る。
ノックも声かけもなく、自分の部屋に入る様にドアを開けて閉め、わかるように音を立てて鍵をかけた。
窓も寝る前に閉めたままで、起き抜けの緩い頭でも身の危険を感じて大きな警鐘を鳴らしてくる。
目がヤバイ。
犯される。
「ゆ、湯浴みを先にさせて頂けませんでしょうか……?」
「勿体ない事を言うな。しなずちの匂いと残り香に塗れているからこそ良いのだろう。それに、私を前にして昨晩されたままの姿で前を隠さないなど、誘っていると取られてもしかたない」
「だ、だれかっ、助けて下さい! ヴィラ様が――――むぐっ!?」
ドロドロに濡れたシーツを口に押し込まれ、鼻腔を通る匂いにくらっと来る。
思考が安定せず、腹の奥と心の奥が欲と欲と欲を欲する。かつて夢見た優しい旦那様との朝の一時をスパッと捨てさせ、優しい口づけではなく情欲の迸りを貪欲に求める。
このシーツがしなずち様だったら、もっと良かったのに……。
「いけないなぁ? 神々が認める清純幼女が、ちょっと男を知ったくらいでそんなに顔を蕩けさせて…………おや? 先からあまぁい匂いがしてきたぞ? 育みの女神の育みの素はどんな味がするのかなぁ~?」
「んむぅぅぅっ! いむぁぁぁぁっ!」
「良い、良いぞ、リエラっ。アーウェルをダイキに取られて消沈していた私をここまで昂らせるなぞ、まさに最高の素材で逸材だっ。今日はしなずちの分体で張り型を作ってきたから、誰かが呼びに来るまで果て合うとしようっ。いや、呼ばれても果てて果てて果てさせてやるから啼いて鳴いて泣き喚けっ!」
常軌を逸した狂気の瞳が、煌々と輝いて私の心を弄ぶ。
しなずち様に犯され、貶められ、辱められた堕落の記憶はヴィラ様を受け入れている。
むしろ積極的に求めてすらいて、唾液と一緒に染み出たしなずち様を、噛んで吸って搾り取って飲み下した。
反して、私を信仰する人々への想いは抵抗を続けている。
私を捧げるべきはしなずち様であり、ヴィラ様ではない。こんな浮気のような情事は以ての外で、振り払って逃げ出してしなずち様に跨るべきだ、と。
「んぐっ、んぐぅぅっ…………っ!」
胸と脇腹を擦る刺激に、快楽由来の痙攣が全身を駆け巡る。
何てだらしない愚かな女神なのだろう?
詐欺や脅し、不当な契約から信仰者達を守る為と言いながら、結局は悦びの享受を満喫しているだけではないか。この場に力を授けた尖兵の一人でもいたならば、彼女達に何と言い訳をするつもりなのだ?
負けちゃった? 気持ち良い? 一緒にしよ?
最低に最低で最低過ぎる。子と夫を持つ母達を不貞に誘うなど…………そんな目で見ないで、アマンダ。ドーラ、違うの、私は……あっ、ダメ、何かくるきちゃうき、あ――――っ!
「ひっ、ぐっん―――っ!」
「もう我慢できないかっ? なら、わかっているだろう? 昨夜しなずちにして見せたように、私にお前の入口を晒して――――ん?」
チカチカ煌めく視界の中で、ヴィラ様の視線が私から外れる。
見つめる向こうはただの壁。厚い木板を数枚合わせ、頑丈さと遮音性を高めただけの代物だ。神界会議でしなずち様に染められたドレスをかけているくらいで、特に変わった所は一つもない。
…………ううん、違う。
壁の向こうから何かが迫って来る?
「ヴィラ様……?」
「チッ、良い所だったのに……」
言い終わるとすぐ、ヴィラ様は私を抱き寄せて障壁を張った。
音と振動が徐々に大きくなり、更に一際高まって壁を突き破ってきた。木片と木っ端が宙を舞い、数日前の私より貧相な褐色が凄い勢いで飛び出してくる。
ドガちゃんだ。
私には気付いていないのか余裕がないのか、反対の壁に体当たりして壊し過ぎていく。
次いで良く見知った触手の群れが追いかけて行き、どういう状況なのかが何となくわかった。
そっか。
ドガちゃんも、こっちに来るんだ。
そっかぁ。
「ヴィラ様……ソレ、貸してくれませんか?」
ドガちゃんは、こういうのまだだったよね?
二番目、頂戴。
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