4 / 40
見つけたもの
しおりを挟む週末。
アトラ聖獣学院の学生達にとって、週末は休息や遊びのための時間ではない。
金曜朝イチのH.R.の後は、みんなキャンプ道具持参で聖獣探索に出かける。
『神々の島』は、ほとんどが手付かずの大自然のまま。
所々に移動のための転移魔法陣はあるものの、基本は歩き。
そのため泊まりがけにならざるを得ない。
「人間に対して友好的な聖獣ばかりじゃないからな。最初の接触には充分に注意すること。無理せず慎重にな」
担任の先生が毎回くり返す注意事項。
わかってまーす!と返事をしつつ、学生達は、それぞれ別の場所を目指して散ってゆく。
聖獣は種類により生息する地域が異なる。
草原、森林、山岳地帯、川や湖、地下の洞窟などなど。
狙った聖獣に合わせた場所を探し回り、聖獣を発見して仲良くなり、自分で育てた農作物を手から直接食べてもらう事で主従契約を結ぶ。
そしてその聖獣と一緒に卒業試験に挑み、合格すれば晴れて聖獣士となる。
「なあ、お前、ナニ狙ってる?」
「秘密! お前は?」
「そりゃもうゴールドドラゴン一択よ!」
「ハハッワロス」
「私、フェニックスがいいなあ~」
「火口まで登るの大変だよ!?」
「ひと目でいいから羽毛のある風蛇が見たいぃぃぃ」
周りの雑談を聞きながら、転移魔法陣の順番を待つ。
やはり伝説種の人気が高い。
ただし姿を見るだけでも難しいため、途中でターゲットを変える者も多い。
「ねーねー、特別色の希少種ってよくない? 絶対ピンク色のを探す!」
「あはは。別な意味で見つけやすそう~」
「こないだ、ものすごく大きなアルマジロが歩いててさぁ」
「それ……絶対、希少種だ!!」
希少種は現実的な選択肢だ。丹念に探せば見つかることが多い。
さらにバリエーションが多いため、自分だけの色合いや特殊な形状にもこだわれる。
赤い大熊が欲しいばかりに自主留年してる先輩がいるほどだ。
「お前は馬だっけ?」
「うん。うちは騎士の家系だから聖獣騎士を目指してる」
「馬はすぐ見つかるけど、多すぎて選別が大変そうだな」
通常種の良いところは、数の多さだ。
同じ種類といっても少しづつ個性や性能が違うので、じっくり選んで親密度を上げれば希少種にも負けない力を発揮する。
特に馬と鳥系の聖獣士は確実に需要があるので手堅い。
熊や虎・狼などの猛獣系も人気がある。
「次!」
「ライゼル・ユークリッド」
名乗りながら行動予定表を係員に渡し、魔法陣に入る。
遭難した時のために、大まかな行動範囲を申告する決まりだ。
他の地区に飛ぶ魔法陣の列に並ぶ親友に手を振りながら、俺は転移魔法の虹色の光に包まれた。
到着先は島の中央、ヴォスラ火山の中腹。
魔法陣から出た学生達は、それぞれが目指す方向へとさらに分かれて行く。
火口を目指すのは、フェニックスやサラマンダーなど火に関係する聖獣を狙っている学生だろう。
近くにあるカルデラ湖には水棲の聖獣が多く住んでいる。
少し下れば大森林。密林と言った方がいいかも。
他にも、大草原や岩石地帯、海岸や植生の違う別の森林など、様々なポイントにアクセスできる転移魔法陣が設置されている。
俺は大森林の方へと歩き出す。
他人が居ない場所まで移動してから、進む方角を変えて回り込むように山を登り始める。
クラスメイトは仲間だけど、ライバルでもある。
目的地は出来るだけ知られたくない。
(だって……)
ポケットの中の物を握りしめて取り出し、手を開く。
直径2~3cmの…ウロコ。しかも金色だ!
コレを見つけたのは偶然だった。
巣から落ちた小鳥のヒナを助けてやろうと、ガケをロープで降りた時だ。
親鳥の心配そうな声を聞きながら、わずかな出っ張りを足掛かりにして、ガケの中腹にある岩棚に降りた。
そこは思ったよりも広い場所だった。
ガケの岩肌がえぐれて横穴のようになっている。
ヒナを拾い上げて、ふと奥に目をやると、そこにコレが落ちていた。
横穴はガケの上からは見えない。遥か下に木々が茂っているが、登ってくるには遠すぎる。森の中からは木の枝が邪魔で見えないに違いない。
完璧な隠れ家だ!
魚のウロコではないと思う。それより厚くてゴツい。
岩トカゲは、もっと砂漠化した岩石地帯にいるはずだ。
それに何より、ナイフで切りつけても傷がつかない。
「もしかして……ゴールドドラゴン?」
心臓がバクバクと鳴る。
拾ったウロコを握りしめ、辺りを見回した。
住処ではなく、ちょっとした休憩場所かも知れない。
それでも、また立ち寄る可能性はある。
俺は持っていた野菜をそこに置いた。お供えだ。
聖獣が食べてくれれば、その作物に染み込んだ作り手の魔力の味を覚えてくれる。
それから毎週、人目を避けてあの場所に通っているのだ。
ガケの上の立ち木にロープをしっかりと結びつけ、ゆっくりとガケを下る。
ピーユ、ピーユ、ピー…
頭上では、あの時助けたヒナ鳥が立派に巣立ちをして鳴いている。
あせって足を踏み外さない様に少しづつ降りてゆく。
魔術の才能がある奴なら、これ位のガケは軽く飛んで来られるだろう。
俺は風魔法はそれほど得意ではないので、飛翔はまだ使えない。せいぜい紙飛行機を遠くまで飛ばせる程度だ。
その代わり土魔法は得意。畑を耕すのも魔法でやってる。そのおかげか、農作物が早く立派に成長する。
ようやく岩棚に降り立ち、ロープから手を離す。
今週も、お供えとして置いておいた野菜は無くなっている。
(食べてくれた…のかな?)
ホッとして次のお供えを置こうと、収穫したばかりのニンジンを取り出して気が付いた。
(奥に何か…いる!?)
目をこらすと、モヤが晴れる様に聖獣が姿を現した。
頭から尻尾まで1mほど。羽を広げれば幅はもう少しあるだろう。
小さな金の竜がそこに居た。
拾ったウロコと同じ、いやそれ以上に輝いている。
隠形のスキルか魔法で姿を隠していたようだ。
通りで見つからないわけだ。
俺は震える手でニンジンを差し出す。
もしも聖獣が手から食べてくれたら……契約成立だ。
ゴールドドラゴンは、じっとこちらを見ている。
駄目…かな?
会ったばかりだし、あせるのは良くないだろう。
「じゃあ、置いていくから。今回のも、すごく美味いぜ」
そう言ってニンジンを置こうとした時、ゴールドドラゴンが動いた。
そっと首を伸ばして俺が持つニンジンをかじろうと口を開ける…
「…………ッ!!!」
突然、背後に人の気配。
ゴウッ!
振り返ろうとした瞬間、壁に叩きつけられた。
「ぐはっ」
強い風に吹き飛ばされてゴロゴロと転がり、横穴の外に放り出される。
そのままガケの下へと真っ逆さま……
俺はとっさに手を伸ばして触れた物をつかむ。ロープだ。
ここまでガケを降りるのに使ったロープ。
ガクン、と自分の全体重が腕にかかる。
「うう…っ、ッ痛~~!」
何とか落ちずに済んだようだ。
けれども文字通り命綱一本でぶら下がっている。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました
AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」
公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。
死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった!
人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……?
「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」
こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。
一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。
転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜
まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、
専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活
現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。
しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。
彼は大陸一の富を誇る名門貴族――
ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。
カイルに与えられたのは
・世界一とも言える圧倒的な財力
・財力に比例して増大する規格外の魔力
そして何より彼を驚かせたのは――
彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。
献身的なエルフのメイド長リリア。
護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。
さらに個性豊かな巨乳メイドたち。
カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。
すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――
「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」
領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、
時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、
最強の御曹司カイルは
世界一幸せなハーレムを築いていく。
最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件
言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」
──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。
だが彼は思った。
「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」
そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら……
気づけば村が巨大都市になっていた。
農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。
「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」
一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前!
慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが……
「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」
もはや世界最強の領主となったレオンは、
「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、
今日ものんびり温泉につかるのだった。
ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
無能と追放された鑑定士の俺、実は未来まで見通す超チートスキル持ちでした。のんびりスローライフのはずが、気づけば伝説の英雄に!?
黒崎隼人
ファンタジー
Sランクパーティの鑑定士アルノは、地味なスキルを理由にリーダーの勇者から追放宣告を受ける。
古代迷宮の深層に置き去りにされ、絶望的な状況――しかし、それは彼にとって新たな人生の始まりだった。
これまでパーティのために抑制していたスキル【万物鑑定】。
その真の力は、あらゆるものの真価、未来、最適解までも見抜く神の眼だった。
隠された脱出路、道端の石に眠る価値、呪われたエルフの少女を救う方法。
彼は、追放をきっかけに手に入れた自由と力で、心優しい仲間たちと共に、誰もが笑って暮らせる理想郷『アルカディア』を創り上げていく。
一方、アルノを失った勇者パーティは、坂道を転がるように凋落していき……。
痛快な逆転成り上がりファンタジーが、ここに開幕する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる