神々の島の聖獣士〜勇者に聖獣を奪われて殺されかけた俺を助けてくれたのは小さな黒ウサギでした〜

浅間遊歩

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見つけたもの

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 週末。
 
 アトラ聖獣学院の学生達にとって、週末は休息や遊びのための時間ではない。
 金曜朝イチのH.R.ホームルームの後は、みんなキャンプ道具持参で聖獣探索に出かける。
 『神々の島』は、ほとんどが手付かずの大自然のまま。
 所々に移動のための転移魔法陣はあるものの、基本は歩き。
 そのため泊まりがけにならざるを得ない。

「人間に対して友好的な聖獣ばかりじゃないからな。最初の接触には充分に注意すること。無理せず慎重にな」

 担任の先生が毎回くり返す注意事項。
 わかってまーす!と返事をしつつ、学生達は、それぞれ別の場所を目指して散ってゆく。

 聖獣は種類により生息する地域が異なる。
 草原、森林、山岳地帯、川や湖、地下の洞窟などなど。
 狙った聖獣に合わせた場所を探し回り、聖獣を発見して仲良くなり、自分で育てた農作物を手から直接食べてもらう事で主従契約を結ぶ。
 そしてその聖獣と一緒に卒業試験に挑み、合格すれば晴れて聖獣士となる。

「なあ、お前、ナニ狙ってる?」
「秘密! お前は?」
「そりゃもうゴールドドラゴン一択よ!」
「ハハッワロス」
「私、フェニックスがいいなあ~」
「火口まで登るの大変だよ!?」
「ひと目でいいから羽毛のある風蛇ケツァルコアトルが見たいぃぃぃ」

 周りの雑談を聞きながら、転移魔法陣の順番を待つ。
 やはり伝説種レジェンドの人気が高い。
 ただし姿を見るだけでも難しいため、途中でターゲットを変える者も多い。

「ねーねー、特別色の希少種レアってよくない? 絶対ピンク色のを探す!」
「あはは。別な意味で見つけやすそう~」
「こないだ、ものすごく大きなアルマジロが歩いててさぁ」
「それ……絶対、希少種レアだ!!」

 希少種レアは現実的な選択肢だ。丹念に探せば見つかることが多い。
 さらにバリエーションが多いため、自分だけの色合いや特殊な形状にもこだわれる。
 赤い大熊が欲しいばかりに自主留年してる先輩がいるほどだ。

「お前は馬だっけ?」
「うん。うちは騎士の家系だから聖獣騎士を目指してる」
「馬はすぐ見つかるけど、多すぎて選別が大変そうだな」

 通常種コモンの良いところは、数の多さだ。
 同じ種類といっても少しづつ個性や性能が違うので、じっくり選んで親密度を上げれば希少種レアにも負けない力を発揮する。
 特に馬と鳥系の聖獣士は確実に需要があるので手堅い。
 熊や虎・狼などの猛獣系も人気がある。

「次!」

「ライゼル・ユークリッド」
 
 名乗りながら行動予定表を係員に渡し、魔法陣に入る。
 遭難した時のために、大まかな行動範囲を申告する決まりだ。
 他の地区に飛ぶ魔法陣の列に並ぶ親友ダァンに手を振りながら、俺は転移魔法の虹色の光に包まれた。

 到着先は島の中央、ヴォスラ火山の中腹。
 魔法陣から出た学生達は、それぞれが目指す方向へとさらに分かれて行く。
 火口を目指すのは、フェニックスやサラマンダーなど火に関係する聖獣を狙っている学生だろう。
 近くにあるカルデラ湖には水棲の聖獣が多く住んでいる。
 少し下れば大森林。密林ジャングルと言った方がいいかも。
 他にも、大草原や岩石地帯、海岸や植生の違う別の森林など、様々なポイントにアクセスできる転移魔法陣が設置されている。

 俺は大森林の方へと歩き出す。
 他人が居ない場所まで移動してから、進む方角を変えて回り込むように山を登り始める。
 クラスメイトは仲間だけど、ライバルでもある。
 目的地は出来るだけ知られたくない。

(だって……)

 ポケットの中の物を握りしめて取り出し、手を開く。


 直径2~3cmの…ウロコ。しかも金色だ!


 コレを見つけたのは偶然だった。
 巣から落ちた小鳥のヒナを助けてやろうと、ガケをロープで降りた時だ。
 親鳥の心配そうな声を聞きながら、わずかな出っ張りを足掛かりにして、ガケの中腹にある岩棚に降りた。
 そこは思ったよりも広い場所だった。
 ガケの岩肌がえぐれて横穴のようになっている。
 ヒナを拾い上げて、ふと奥に目をやると、そこにコレが落ちていた。

 横穴はガケの上からは見えない。遥か下に木々が茂っているが、登ってくるには遠すぎる。森の中からは木の枝が邪魔で見えないに違いない。
 完璧な隠れ家だ!

 魚のウロコではないと思う。それより厚くてゴツい。
 岩トカゲは、もっと砂漠化した岩石地帯にいるはずだ。
 それに何より、ナイフで切りつけても傷がつかない。

「もしかして……ゴールドドラゴン?」

 心臓がバクバクと鳴る。

 拾ったウロコを握りしめ、辺りを見回した。
 住処すみかではなく、ちょっとした休憩場所かも知れない。
 それでも、また立ち寄る可能性はある。
 俺は持っていた野菜をそこに置いた。お供えだ。
 聖獣が食べてくれれば、その作物に染み込んだ作り手の魔力の味を覚えてくれる。
 それから毎週、人目を避けてあの場所に通っているのだ。

 ガケの上の立ち木にロープをしっかりと結びつけ、ゆっくりとガケを下る。

 ピーユ、ピーユ、ピー…

 頭上では、あの時助けたヒナ鳥が立派に巣立ちをして鳴いている。
 あせって足を踏み外さない様に少しづつ降りてゆく。
 魔術の才能がある奴なら、これ位のガケは軽く飛んで来られるだろう。
 俺は風魔法はそれほど得意ではないので、飛翔フライはまだ使えない。せいぜい紙飛行機を遠くまで飛ばせる程度だ。
 その代わり土魔法は得意。畑を耕すのも魔法でやってる。そのおかげか、農作物が早く立派に成長する。

 ようやく岩棚に降り立ち、ロープから手を離す。
 今週も、お供えとして置いておいた野菜は無くなっている。

(食べてくれた…のかな?)

 ホッとして次のお供えを置こうと、収穫したばかりのニンジンを取り出して気が付いた。

(奥に何か…いる!?)

 目をこらすと、モヤが晴れる様に聖獣が姿を現した。
 頭から尻尾まで1mほど。羽を広げれば幅はもう少しあるだろう。
 小さな金の竜ゴールドドラゴンがそこに居た。
 拾ったウロコと同じ、いやそれ以上に輝いている。
 隠形おんぎょうのスキルか魔法で姿を隠していたようだ。
 通りで見つからないわけだ。
 俺は震える手でニンジンを差し出す。
 もしも聖獣が手から食べてくれたら……契約成立だ。

 ゴールドドラゴンは、じっとこちらを見ている。
 駄目…かな?
 会ったばかりだし、あせるのは良くないだろう。

「じゃあ、置いていくから。今回のも、すごく美味いぜ」

 そう言ってニンジンを置こうとした時、ゴールドドラゴンが動いた。
 そっと首を伸ばして俺が持つニンジンをかじろうと口を開ける…

「…………ッ!!!」

 突然、背後に人の気配。


 ゴウッ!


 振り返ろうとした瞬間、壁に叩きつけられた。

「ぐはっ」

 強い風に吹き飛ばされてゴロゴロと転がり、横穴の外に放り出される。
 そのままガケの下へと真っ逆さま……
 俺はとっさに手を伸ばして触れた物をつかむ。ロープだ。
 ここまでガケを降りるのに使ったロープ。
 ガクン、と自分の全体重が腕にかかる。

「うう…っ、ッ痛~~!」

 何とか落ちずに済んだようだ。
 けれども文字通り命綱一本でぶら下がっている。
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