5 / 40
無様だな?
しおりを挟む肩が抜けそうだ。ズキズキと痛む。
顔を上げるとそこには…
「ジーク!?」
小さなゴールドドラゴンの頭を鷲掴みしている。
「ようやく……ようやく捕まえた」
ニヤリと笑うジークはまるで別人。
ゆっくりと俺に目を移し、
ゴウっ!
ジークは腕を一振りして突風を放つ。
「うわっ」
強い風でロープごと体が揺さぶられる。
風魔法か!
ここまで飛翔で飛んできたのだろう。
もしかして姿を隠して後を付けていた?
「何でだよ! 何でこんなことを……」
「無様だな? ライゼル?」
いつも通りの笑顔に、似合わない冷たい声。
それともコレが本当のジーク?
「ゴールドドラゴンは、勇者となる俺にこそふさわしい」
ドラゴンの吐く炎で俺がぶら下がっているロープを焼き切る。
「うわあああぁあぁぁぁ………っ……!」
垂直に近い崖の岩肌で一度バウンドする。
つかまる所はない。
そのまま何十メートルも下の森へ…
ドンッ!!!
強い衝撃と激痛。
どうやらガケ下の地面に衝突したらしい。
(うう……)
息ができない。苦しい。動けない。
頭痛もしてきた。死ぬ……のか?
キュ…、キュ…
ふと、聞いたことのある音がした。
痛みを我慢しながら目を開ける。
「キュ?」
目の前に黒い影。紫水晶色の瞳に長い耳。
(お前は…)
そう言おうと口を開けた途端、ゴボリ、と大量の血が出た。
アバラが折れて肺に突き刺さっているのかも知れない。
「キュ? キュッ?」
心配そうに黒ウサギがのぞき込む。
(チビ助……どうやってココまで来たんだ?)
聞いてから、毎朝の光と共に消える姿を思い出す。
転移魔法が使えるんだっけ。
(小さくてもやっぱり聖獣様なんだなぁ)
「キュ? キュウ~…」
(何言ってんのか分かんねえ…)
思わず半眼になる。
これから死ぬかも知れないってのに、チビ助の姿を見たら何だかホッとする。
チビ助はライゼルの手元の匂いを嗅ぎ始めた。手にはゴールドドラゴンに差し出したニンジンを握ったままだ。それに気づいたらしい。
(お前って奴は……この食いしん坊め!)
悪態をつきながらも涙が出てきた。
たぶん、明日からはもう、畑の作物をチビ助から守ろうと大騒ぎすることはないのだ。
アレは……楽しかった。
俺が死んだら、コイツは理解してくれるんだろうか?
ずっと畑で待ってたりしないだろうか?
(いいぜ。食いなよ。ほら。最後だもんな)
ライゼルは黒ウサギが食べやすいようにニンジンを向けてやる。
「キュ! キュウゥ~~!」
うれしそうだ。
サクサクとニンジンをかじる音を聞きながら、俺は気を失ったらしい……
◇ ◇ ◇
香りの良い草に囲まれてクオンタムは目を覚ました。
一瞬、よく行く泉の周りの草むらで昼寝をしていたかと勘違いしたが、すぐに思い出す。
神界を追放されたのだと。
「そうだ、ライゼルは!?」
あの人間はどうしただろう。大丈夫だろうか?
ゼナスはクオンタムを『神々の島』へ落とすと言っていた。
とすればココは『神々の島』のはず。
クオンタムは周囲を調べようと意識を向けたが、何も分からない。
霊力は失われていた。
これからは人間たちのように自分の目と耳で調べなければならないのだろうか?
ピーユ、ピーユ、ピー…
クオンタムの頭上で小鳥がさえずる。
見上げると細い枝に止まった小鳥が頭を傾けて鳴いている。
ピーユ、ピーユ、ピー…
小鳥はクオンタムに何か訴えているようだ。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました
AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」
公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。
死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった!
人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……?
「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」
こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。
一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。
転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜
まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、
専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活
現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。
しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。
彼は大陸一の富を誇る名門貴族――
ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。
カイルに与えられたのは
・世界一とも言える圧倒的な財力
・財力に比例して増大する規格外の魔力
そして何より彼を驚かせたのは――
彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。
献身的なエルフのメイド長リリア。
護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。
さらに個性豊かな巨乳メイドたち。
カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。
すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――
「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」
領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、
時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、
最強の御曹司カイルは
世界一幸せなハーレムを築いていく。
最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件
言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」
──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。
だが彼は思った。
「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」
そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら……
気づけば村が巨大都市になっていた。
農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。
「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」
一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前!
慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが……
「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」
もはや世界最強の領主となったレオンは、
「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、
今日ものんびり温泉につかるのだった。
ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる