神々の島の聖獣士〜勇者に聖獣を奪われて殺されかけた俺を助けてくれたのは小さな黒ウサギでした〜

浅間遊歩

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無様だな?

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 肩が抜けそうだ。ズキズキと痛む。
 顔を上げるとそこには…

「ジーク!?」

 小さなゴールドドラゴンの頭を鷲掴わしづかみしている。

「ようやく……ようやく捕まえた」

 ニヤリと笑うジークはまるで別人。
 ゆっくりと俺に目を移し、


 ゴウっ!


 ジークは腕を一振りして突風を放つ。

「うわっ」

 強い風でロープごと体が揺さぶられる。
 風魔法か!
 ここまで飛翔フライで飛んできたのだろう。
 もしかして姿を隠して後を付けていた?

「何でだよ! 何でこんなことを……」

無様ぶざまだな? ライゼル?」

 いつも通りの笑顔に、似合わない冷たい声。
 それともコレが本当のジーク?

「ゴールドドラゴンは、勇者となる俺にこそふさわしい」

 ドラゴンの吐く炎で俺がぶら下がっているロープを焼き切る。



「うわあああぁあぁぁぁ………っ……!」



 垂直に近い崖の岩肌で一度バウンドする。
 つかまる所はない。
 そのまま何十メートルも下の森へ…


 ドンッ!!!


 強い衝撃と激痛。
 どうやらガケ下の地面に衝突したらしい。

(うう……)

 息ができない。苦しい。動けない。
 頭痛もしてきた。死ぬ……のか?

 キュ…、キュ…

 ふと、聞いたことのある音がした。
 痛みを我慢しながら目を開ける。

「キュ?」

 目の前に黒い影。紫水晶アメジスト色の瞳に長い耳。

(お前は…)

 そう言おうと口を開けた途端、ゴボリ、と大量の血が出た。
 アバラが折れて肺に突き刺さっているのかも知れない。

「キュ? キュッ?」

 心配そうに黒ウサギがのぞき込む。

(チビ助……どうやってココまで来たんだ?)

 聞いてから、毎朝の光と共に消える姿を思い出す。
 転移魔法が使えるんだっけ。

(小さくてもやっぱり聖獣様なんだなぁ)

「キュ? キュウ~…」

(何言ってんのか分かんねえ…)

 思わず半眼になる。
 これから死ぬかも知れないってのに、チビ助の姿を見たら何だかホッとする。
 チビ助はライゼルの手元の匂いを嗅ぎ始めた。手にはゴールドドラゴンに差し出したニンジンを握ったままだ。それに気づいたらしい。

(お前って奴は……この食いしん坊め!)

 悪態をつきながらも涙が出てきた。
 たぶん、明日からはもう、畑の作物をチビ助から守ろうと大騒ぎすることはないのだ。
 アレは……楽しかった。
 俺が死んだら、コイツは理解してくれるんだろうか?
 ずっと畑で待ってたりしないだろうか?

(いいぜ。食いなよ。ほら。最後だもんな)

 ライゼルは黒ウサギが食べやすいようにニンジンを向けてやる。

「キュ! キュウゥ~~!」

 うれしそうだ。
 サクサクとニンジンをかじる音を聞きながら、俺は気を失ったらしい……


   ◇ ◇ ◇


 香りの良い草に囲まれてクオンタムは目を覚ました。

 一瞬、よく行く泉の周りの草むらで昼寝をしていたかと勘違いしたが、すぐに思い出す。
 神界を追放されたのだと。

「そうだ、ライゼルは!?」

 あの人間はどうしただろう。大丈夫だろうか?
 ゼナスはクオンタムを『神々の島』へ落とすと言っていた。
 とすればココは『神々の島』のはず。
 クオンタムは周囲を調べようと意識を向けたが、何も分からない。
 霊力は失われていた。
 これからは人間たちのように自分の目と耳で調べなければならないのだろうか?

 ピーユ、ピーユ、ピー…

 クオンタムの頭上で小鳥がさえずる。
 見上げると細い枝に止まった小鳥が頭を傾けて鳴いている。

 ピーユ、ピーユ、ピー…

 小鳥はクオンタムに何か訴えているようだ。
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