神々の島の聖獣士〜勇者に聖獣を奪われて殺されかけた俺を助けてくれたのは小さな黒ウサギでした〜

浅間遊歩

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契約

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「鳥さん。ライゼルを知ってるの?」

 小さな聖獣からライゼルのイメージが送られてくる。

「うん、そう。その人間だよ」

 ピー

 ひと声鳴いて飛び立つ小鳥。急いで後を追う。
 小さい体でやぶをかき分けて進むのは大変だったが、やがて見たことのある場所に出る。
 遠見の珠で見た、ライゼルが突き落とされたガケだ。

「確か、この辺りに落ちたはず……あ!」

 クオンタムは、すっかり変わり果てた姿のライゼルを発見して絶句する。


   ◇ ◇ ◇


「うう~ん…」

「大丈夫、ですか?」

 子供の声。
 聞き覚えはない。
 もしかしてチビ助が人間に変身した!?
 突拍子もない考えにハッとしてライゼルは目を開ける。
 だが、膝をついてのぞき込んでいる子供の姿は…

(違う………な)

 ウサギのチビ助は黒い毛皮に紫色の眼をしていた。目の前の子供とは似ても似つかない。子供は銀髪で、金色に近い薄い黄緑色の目をしている。
 もしも聖獣が人間に変身できるとしても、この姿にはならないだろう。

「動け…ますか?」

「え?」

 そう言えば、いつの間にか痛みがだいぶ治まっている。
 死んでもおかしくない状態だったのに、どうやら息ができるし声も出る。

「あんたが助けてくれたのか? ありがとう!」

 ゆっくり体を起こしながら子供を観察する。
 10歳か…、あるいはそれより若いかも知れない。
 でも人は見かけによらない。もしかしたら瀕死の状態からでも回復するような治癒魔法の使い手かも。

「いえ、ぼくじゃないです。でも良かった、助かって。彼のおかげですね」

 子供はホッとしたように微笑む。

「彼?」

「はい。ぼくが来た時にはもう……」

 そう言ってライゼルの頭上を指差す。

「ん?」

 後ろに誰か立っているのかと思って振り向くが誰もいない。
 しかしその動作で、何か黒いモノが視界に入った。
 顔の向きを変えると、黒い毛皮のふさのようなモノが揺れて顔に当たる。

 ………頭の両脇からナニカが垂れ下がっている?

 そーっと両手で頭に触ってみる。

 毛皮のふさのようなモノは、俺の頭から生えている…


「………………ウサギの耳!?」


 チビ助の黒い垂れ耳のようなモノが生えている。いや、俺の耳がウサギの耳になってる!!!

 念の為に引っ張ってみるが、やはり俺の耳だ。
 両手で長い耳を押さえながらボーゼンとしていると、

(キュ! キュウ! キュウッキュウ!!)

 どこかでチビ助の声がした。

「チビ助? どこだ!?」

(キュウ? キュウッ、キュ!キュ!)

 はずむようなチビ助の声は聞こえるが姿が見えない。

「聖獣と同化してるんです」

 子供がこともなげに言う。

「同化?」

「契約した聖獣と融合して、体力・魔力・特殊能力などを共有している状態です。聖獣の回復能力でケガも治るんです。そうでなければ危ないところでした。強い信頼関係がないと使えない技ですよ!」

 うれしそうに力説する。
 それって高名な聖獣士とかが使うスゴイ技じゃね!?
 確かに、体に残る痛みがじわじわと減っていくように感じる。
 気を失っている間にここまで回復したのだろう。
 でも、

「契約……?」

 チビ助と? 覚えがない。

「聖獣に手から食べ物を与えたでしょう? それを食べてくれたら…」

「あ!」

 どうやら俺はチビ助をテイムしてしまったらしい。
 そんなつもりはなかったのだが、そのおかげで死なずに済んだようだ。

(キュウキュ。キュッキュ)

 チビ助がまた鳴いた。俺が生きていてうれしいと言っているようだ。

「こうすれば助かると分かってて、さっきニンジンを食べたがったのか?」

(キュウン!)

 自信満々に胸を張るチビ助あいつの姿が目に浮かぶ。
 今までは何を言ってるか全く分からなかったが、契約で縁ができたせいか同化しているせいか、何となく分かるようになった。

 でも、ウサギの聖獣士なんて聞いたことねーぞ?
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