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ニーナとペガサス
しおりを挟む「とりあえず学院に帰ろう」
まだ完全には回復していないが、転移魔法陣までたどり着ければ後は魔法で送ってもらえる。
「あ、あのっ。ぼくも連れていってもらえますか?」
不安そうな子供。
こんな小さな子が『神々の島』にいるなんて。
畑番のおじさんみたいに島の住人か、施設職員の子供だろう。
「なんだ、迷子か。大体の場所は分かるから一緒に帰ろう」
「ありがとうございます!」
輝くような笑顔で元気よく返事をする。
「ぼく、クオンタムと言います。よろしくお願いします」
「俺はライゼル。アトラ聖獣学院の学生だ」
ピピユ、ピピユ、ピー
小鳥が鳴きながら飛んで来てクオンタムの肩に止まる。
他と少し色の違う青と白の小鳥には見覚えがあった。
「あれ? お前…」
「この子がここまで案内してくれたですよ。そしたらライゼルが倒れてて」
「そうか。今度は助けられたな。ありがとう」
「ピ!」
小鳥は元気よくひと声鳴く。が、すぐに逃げるように飛び去る。
上空に何かが現れたからだ。
人間より大きい聖獣が空を飛んでいる。
さっき見たゴールドドラゴンはあんなに大きくはなかった。
俺とクオンタムは近くの木の下に身を隠す。
『神々の島』には大陸にいるような魔獣は存在しないはず。けれども全ての聖獣が人間に従順かと言うと、そうでもない。
特に体の大きな聖獣は力が強いので、悪気がなくてもちょっとした事で事故につながりやすい。テイムするつもりでなければ、やり過ごすのが一番だ。
「ライゼルーッ」
(んんん?)
「ライゼル、どこにいるのー。返事をしてーっ!」
必死に俺を探している。あの声は……ニーナ?
「ニーナ! ここだ!」
「ライゼルッ!!!」
木の影から出て見上げると、聖獣の上にはニーナの姿。
呼びかけに気付いて俺を見つけたようだ。
翼を持つ馬、真っ白なペガサスにまたがったニーナが空から降りてくる。
「ライゼル! 良かった……生きてたのね」
泣いている。
カチュアからは「泣き虫ニーナ」と呼ばれているニーナだけど泣きすぎだ。
「だって……ヴォスラ火山のガケから落ちて、死んだって聞いて……ヒック」
「ええ!?」
いや、合ってるか。
チビ助が同化して助けてくれなければ、あのまま死んでいた。
「色々あって……。それよりこのペガサス、お前の?」
俺は話をそらした。
あのジークが人殺しなんて、自分でもまだ信じられない。
「うん。ついさっき契約したの」
「へえ~~~っ!」
思わずマジマジと観察する。
大きな翼を持つ純白の馬。伝説上にしか存在しない聖獣ペガサス。
俺には全く目をくれず、素知らぬ顔をしているがそれとなくニーナを守っている。
もしも俺がニーナに良からぬ事をしようものなら、この場で蹴り殺されてしまうだろう。
「スゲー! カッケー!! いいな、伝説種!」
それを聞いた途端にニーナの目がキッと釣り上がった。
「そりゃ伝説種はみんな狙ってるけど……。だからって、何であんな馬鹿な事をしたの? ライゼル!!」
「はあ?」
どう言う意味だ??
俺たちは転移魔法陣まで徒歩で移動した。
舗装されていない山道なので、雑草や石がゴロゴロしていて歩きにくい。
ニーナはペガサスで飛べば早いのだが、俺とクオンタム…クオが歩くので一緒に歩いた。
その道すがら、俺はずっとニーナから説教をくらっていた。
「聖獣と契約するのは、ただ野生動物を捕まえるのとは違うのよ?」
「?、…うん」
「誰だって勢い余ってやりすぎたり感情的になったりはあるけど、やったらマズイ事の判断くらいはつくでしょ!?」
「うん…」
「気持ち、分からなくはないけどさ。それでライゼルが死んじゃうなんて嫌だよ」
俺が大人しく返事をするので少しは反省してると思ったのか、激怒していたニーナも落ち着きを取り戻したようだ。
怒られてる俺の方は何が何だかサッパリなのだが、隣を歩くクオがたびたび転びそうになるので手を引いてやるのに忙しい。
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