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強くなれますか?
しおりを挟む「こりゃ驚いた! 本当に治ってる!」
俺は医務室に運ばれて全身くまなく診察された。
結果、ケガは生命に危険のないレベルまで治っていることが確認される。
落下直後の自覚症状と服に残る出血の跡から見て、瀕死状態まで行ったのは間違いないらしい。それが、普通に動けるまでに回復している。
違和感や頭痛ももう無い。
「回復力は一流の聖獣士並だ」
「ウサギの聖獣に対する認識を改めないとなりませんね」
興奮気味な医者と看護士に、俺は気になっていた事を聞いてみる。
「あのー。コレって、元通りになります…よね?」
そっと、長い耳に触れ、持ち上げる。
ふわふわの長い耳。
体温で暖かいと思いきや、意外に冷たい。
瞳の色が変わるだけならまだしも、一生ウサギの耳付きは恥ずかしい。
「普通なら聖獣士の自由意志で同化を解除できると聞いているが…」
「……やってみます」
(なあ、チビ助……)
(キュウッ、キュッキュッキュウ~!!)
イヤイヤと首を振って拒絶する雰囲気が伝わってくる。
同化を解除したら、俺が死んでしまうのではないかと怖がっているようだ。
担任の先生が真剣な表情で耳を見ながら提案する。
「しばらくはそのままにしたらどうだ? 授業もそのまんま受けていいぞ」
それが一番イヤだ!
からかわれるのは目に見えてる。
「無理矢理解除して、体調が悪化しても困るからな」
そう言われると確かに。
そもそもチビ助は死にかけた俺を助けてくれたのだ。命の恩人。いや恩ウサギ。
「だが、これでライゼルも卒業組だな」
「卒業?」
アトラ聖獣学院の学生は、一年の就学期間の間に大きく3つに分かれる。
聖獣との契約を済ませて一緒に卒業する者、目当ての聖獣と契約できずに留年する者、経済的その他の理由で留年をあきらめ退学する者、だ。
「ちょ、ちょっと待ってください、先生!」
コレも正規の【契約】に含まれるのか?
俺は思ってもみなかった状況にあわてる。
「確かに聖獣と契約できたみたいですけど、ウサギですよ!?」
「聖獣には違いない。この回復能力は、きっと何かの役に立つぞ!………たぶん」
………何で目をそらすんですかあぁぁぁ~~っ!!
「えっと、ケガが完全に治ったら別の聖獣を探して契約し直す訳には…」
「契約破棄か? あまり良くないな。聖獣達は種族を越えて、うっすらとした横のつながりがあるらしい。気に入らないと言うだけで非もなく契約解除をすると、聖獣全体からの信頼を失う。二度とどの聖獣にも相手にしてもらえなくなるぞ?」
「ええええ~~? そんなぁ……」
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でも、俺は聖獣士になって戦いたかった。
男なら誰だって一度は憧れるよな?
本人の武術や魔術の能力に加え、信頼関係で結ばれた聖獣の特殊能力、それらを活かして敵と戦いながら世界を渡り歩くのだ。
王宮の聖獣騎士は無理でも、せめて民間の防衛隊や冒険者ギルドに加入して、魔獣や悪人どもと戦う。
そんな将来を夢見てたのに……
「一匹目の聖獣を充分に使いこなしていると認められれば、二匹目が契約に応じることもあるらしい。破棄よりは、そっちを目指した方がいいんじゃないか?」
二匹以上の聖獣を従える聖獣士のウワサは聞いたことがある。
けど、そんなのはほんのひと握り。
伝説種を捕まえるのより、ずっとずっと難しそうだ。
「そう気を落とすな、ライゼル。卒業試験までは、まだだいぶある。それまでに聖獣と一緒に訓練すればいいじゃないか。そうすれば卒業試験で良い成績が残せるかもしれんぞ?」
「……ウサギでも強くなれますか?」
先生は答えなかった。
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