神々の島の聖獣士〜勇者に聖獣を奪われて殺されかけた俺を助けてくれたのは小さな黒ウサギでした〜

浅間遊歩

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俺のパートナー

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「今日はね、チビちゃんにイイモノを持ってきたんだよ」

 ニーナが抱えた包みを開くと、器に山盛りのイチゴが現れた。
 ツヤツヤと赤く、いい香りだ。

「うわあ! イチゴです。おいしそうです。ニーナが作ったんですか?」

 クオの目が輝いている。

「そうよ。私の畑で」

「そうか!」

 盲点だった。

「イチゴなら果樹と違って短い期間で実がなるもんな」

「私、イチゴが大好きなの。ものすごくおいしいイチゴを育てたら、きっと気が合う聖獣様が食べてくれるはず、と思って」
 
「そしたらなんと!、ペガサスが食べてくれたのよねー」

「ブフン」

 ニーナのイチゴは美味うまいからな、とでも言いたげにペガサスが鼻を鳴らす。
 が、それきり表情を変えず、こちらを見ようともしない。
 たぶん契約者であるニーナ以外はどうでもいいんだろう。
 そういう一途な聖獣は多い。
 逆に誰にでも愛嬌を振りまくチビ助みたいのは珍しい。

「ほーら、おいしそうでしょう?」

 ニーナがイチゴを一粒つまんで俺に……じゃなくてチビ助に見せる。

(キュ?、キュ!)

 早く食べて、と俺に催促するチビ助。

「いやー、チビ助のためにニーナが用意してくれたんだろ? 俺が食べたら悪いよー」

 二人の目配せに計画を察して調子を合わせる。

(キュ?)

「そーそ。ライゼルは放っといて、チビちゃんが先に食べなよ。この、赤くて一番おお~きなヤツ」

「いいなー、チビ助。ニーナが食べさせてくれるってさ」

 本来なら他人が契約した聖獣に直接エサをやるのはマナー違反とされているが、チビ助も乗り気だし、俺が許可を出せば構わない。
 この行動が予想通りの結果になれば感謝したいくらいだ。

「はい。チビちゃん、あ~ん…」

(キュウ~)

 案の定、食いしん坊のチビ助の目は甘そうなイチゴに釘付けだ!

「あ~ん……」

 俺の体に重なっていたチビ助の意識がイチゴに釣られてゆっくりと前へ………



「……キュ!?」



 ポン!、と音を立てて弾けるように、チビ助の体が分離した!


 口にイチゴをくわえたまま、キョトンとしている。

「よーっし、捕まえたぁ!」

 俺は両手でチビ助を抱きとめる。

「キュ!? キュッキュッ、キュキュキュ~~!」

 ようやく気がついてジタバタと暴れるものの、両手で大きなイチゴを押さえて食べ続けてるのがチビ助らしい。

「チビちゃん! もう会えないかと思った」

「そーよぅ! お久しぶり!」

「ライゼル……あの、ウサギさんを怒らないであげてください?」

 クオが心配そうに腕の中をのぞき込む。

「そうだな。だが、これだけは言っておきたい!」

「キュッ?」

「チビ助…」

 真剣な目でにらむと、涙目のチビ助が恐る恐る俺を見上げる。

「助けてくれて、ありがとうな! これからは聖獣士としてのパートナーだ。よろしく頼むぜ?」

「キュウウ~…」

 チビ助の目に、見る見る涙が湧き上がる。
 どうやら同化を解除したら俺に捨てられるんじゃないかとおびえていたらしい。

「キュウッ! キュッキュッキュウ!」

 チビ助は大喜びで俺の胸に抱きつく。
 うう……イチゴの汁まみれの口元を服にグリグリされてるけど、この状況では怒るに怒れない。

「考えたら、俺さ、聖獣と付き合うのも畑仕事も好きだし、聖獣の世話係みたいな仕事ならできるんじゃないかと思う。それをチビ助が手伝ってくれるなら完璧だろ?」

 小さい頃からの夢をあきらめるのはつらい。
 けれども、だからと言って今までやってきた事を何もかも捨てて自暴自棄になるのもつまらない。
 自分のできること、できれば好きなジャンルの片隅ででも仕事を見つけて生活していこうと考えたのだ。

「聖獣士として戦闘が必要な職にはつけないだろうけどさ。チビ助と一緒にのんびり暮らすのもいいかな?ってさ」

 ああ、まるでチビ助じゃなくて自分に言い聞かせてるみたいだ。
 ニーナもカチュアも俺の話を黙って聞いている。
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