神々の島の聖獣士〜勇者に聖獣を奪われて殺されかけた俺を助けてくれたのは小さな黒ウサギでした〜

浅間遊歩

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強くなりたい!

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 ニーナは伝説種レジェンド持ちだ。これからいくらでも一流の働き口から声がかかるだろう。王宮勤めもできるかも知れない。
 けれどもその分、トラブルに巻き込まれることも増えるだろう。
 カチュアはまだ聖獣と契約していないが、毎週通っている場所があるみたいだ。前向きで行動力のあるカチュアなら、きっと立派な聖獣を捕まえるに違いない。
 それでも自分が俺と同じ立場になったらと、思うところがあるのだろう。

 ウサギなら要らない、と契約を破棄して、二度と聖獣に関わらずに生きることもできる。でも、チビ助と同化して過ごしている間に、俺はコイツのことを実はすっごく気に入ってたんだと気がついた。
 コイツはコイツで自分の命をかけてまで俺を助けてくれた。もしも回復が間に合わなかった場合、あのまま一緒に死んでたかも知れない。
 だから、夢をあきらめても、せめてコイツとはずっと……

「ライゼルは…」

 不思議そうな顔をしたクオが口を開く。

「ウサギさんと一緒に訓練するんじゃないんですか?」

「ん?」

「訓練して強くなってから試験を受けるって先生が言ってましたよ?」

「まあ、訓練すれば少しは強くなるだろうけどさ…。チビ助はウサギだぜ? 訓練したって強くなんねぇだろ」

「なりますよ?」

「「「 ええっ!? 」」」

 当然という顔で答えるクオ。
 俺だけでなくニーナやカチュアも驚く。
 いやいや、あせるな。子供の言うことだ。間に受けるまでもない。
 がんばれば何でもできると信じてる年頃だよ。
 どう説明したら分かってもらえるかな?

「ええとさ、ものすごく鍛えて強くなったウサギがいたとして。それでも、ライオンが相手だったら一番弱いヤツにだって勝てねえだろ? やっぱり種族の違いが……」

「聖獣は自然界の動物とは違います。その姿は力の種類や方向性を示しているに過ぎません。契約した人間と一緒に訓練すれば、能力が強くなったり新しい技を覚えたり進化したり、しますよ?」

「強く………なるのか?」

「なります」

 即答だ。

 学生3人で顔を見合わせる。
 初めて聞く説だ。
 教科書にも載ってなかったし、先生から聞いたこともない。

「ねえねえ、それ…誰から聞いたの?」

 カチュアがクオに視線を合わせるように膝をかがめて聞く。

しんか……し……島では昔から言い伝えられてて」

「先人の知恵か!」

「そもそも聖獣は動物じゃないんです。力の塊が意識を持ったもの、みたいな感じで。最初にした姿が受け継がれてるだけなんですよ。動物と同じように繁殖して増えたりしますけど、心を許した相手のためなら変化を受け入れて…強くなれます」

 強く………なれる?

 クオの言葉が染み込むまで少しだけ時間がかかった。
 脳に。そして心に。

「チビ助! 聞いたか? 強く……、強くなれるぞ!!」

「キュ! キュッキュキュー!!」

 一度はあきらめた夢だけど、まだ可能性があるなら試したい!
 強く!
 強くなりたい!!


「そっか。クオはこの島の人だもんね。知らなかったわぁ~」

「きっと他の人も知らないわよね!」

「頑張ろうぜ、チビ助!」

「キュ!」

 真面目な顔で返事をするチビ助が可愛くて、つい笑ってしまう。
 通常種コモンのウサギが瀕死のケガを治せるほどの回復スキルを持ってるなんて、偶然にしては出来すぎてると思ったが、あれは死にかけてる俺を救うためにチビ助が必死に習得したスキルなのかも知れない。

「私達も負けないわ。ね?」

「ブフン」

 ニーナに首筋をなでられたペガサスが、鼻を押し付けるように甘えながら返事をする。
 俺達に対する態度と大違いだなコノヤロウ。

「ニーナとペガサスさんも訓練するんですね?」

「ヒヒーン!」

 見上げて話しかけるクオに、やる気満々のペガサスがコツコツとひづめを鳴らす。

「え! そんなに訓練したらニーナが疲れて病気になってしまいますよ!」

「…フヒン?」

「そうですよ。毎日ちょっとずつ訓練するですよ」

 ウンウンとうなずくクオ。

「……な、なあ、クオ。もしかして聖獣が何を言ってるか分かんの?」

「えへへ。何となく、ですけど」

「ホント!?」

 カチュアが真剣な表情でクオに詰め寄る。

「だったら助けてほしいの! お願い!!」

「何ですか? ぼくにできることだといいんですけど」

「一緒に来てもらえる?」

 俺達はみんなでカチュアの聖獣探索に付き合うことになった。
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