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絶交継続中
しおりを挟むクロコダイルを連れて転移魔法陣まで戻ると、辺りは騒然となった。
伝説種ではないが、この巨体。おそらく希少種だろう。
さらに攻撃力が高いのも確実だ。
鋭い牙はもちろん、あの尻尾での一撃も、さぞかし破壊力があるだろう。
「誰のだ?」
「スゲーな」
「カチュア!?」
「おめでとう!」
「触ってもいい?」
次々とクラスメイトが近づいてくる。魔法陣に配置された職員も、聖獣を見ようとやって来た。
「今年も続々と大物が集まってんな」
「中にはウサギなんてのもあるけどなー。ハハハ………あ!」
カチュアの後方に居る俺に気づいた職員は気まずそうに黙り込む。
あーいいですよもう。
「いやあ、長い耳がなかったから気づかなかった。すまんすまん」
そこで謝るのってどうなの。追い討ちじゃないのか?
その時、2つ並んだ転移魔法陣の1つが光った。
出口の方だ。
転移魔法陣は単体で双方向移動が可能なのだが、ここでは混雑を避けるためにあえて片道通行に設定してある。
誰かが転移してくるのだろう。職員達があわてて仕事に戻る。
光が収まると同時に魔法陣の中央に人影が現れる。
「…あ!」
ダァンだ。
向こうも俺に気づいたらしい。
お互い、気まずくなって目をそらす。
カチュアが連れているクロコダイルをチラリと見たダァンは、何も言わずに行ってしまった。
「ダァンも川に住む聖獣を狙ってるのかしら」
「どうかな? この間は湿地の方にいたよ。反対側の草原に歩いてくのも見たし…」
「まだターゲットを選んでる段階なのかもね。ところで……」
「「 まだ仲直りしないの? 」」
ニーナとカチュアがサラウンドで責めてくる。
「別にいいだろ」
チビ助までが非難の目で見つめてくるので、居心地が悪い。
事情をよく知らないクオだけが心配そうな顔をしているが、それはそれで胸が痛い。
くそっ!、アイツが悪いんだ!
瀕死の状態でチビ助に助けられて学院に戻ったあの日、本当は何があったのかをダァンに話した。
親友だと思っていたから。
「殺されかけたって? ジークに?」
「ああ。ゴールドドラゴンだって、俺のニンジンを食べるところだったのに横から…」
「そんな……あのジークがウソをつくとは思えない」
「はあ? じゃあ、俺だったらウソをつきそうだって言うのか?」
「そんな事は言ってないだろ!?」
売り言葉に買い言葉。その場で絶交となり、その後は言葉すら交わしていない。
◇ ◇ ◇
今さっき見た巨大なクロコダイルを思い出して、ダァンはため息をつく。
カチュアとは前にもあの転移魔法陣の側で会ったことがある。
川へ行くと言ってたから、水を飲みに来る聖獣を狙っているのかと思ってた。
そうしたら、アレだ。
あの獰猛そうな巨大クロコダイル。自分だったら近づくのさえ躊躇する。
後ろをついて歩いてたから、テイムに成功したのだろう。
「ニーナはペガサス、カチュアはクロコダイル、ライゼルは……」
『 俺だったらウソをつきそうだって言うのか? 』
ライゼルの叫び声が耳に残る。
「………そうだよ」
重い足が止まる。
「そうだよ。だって、ゴールドドラゴンと会ったなんて聞いてない。何週間も前からお供えしてたって? 聞いてないぞ!?」
違う。
それはウソじゃない。ただ、言わなかっただけだ。
でも、
「親友だと思ってたのに……」
くやしい。
秘密を共有できる相手だと認めてもらえなかった。
それとも横から奪われると思ったのか。
考えてると身体中から力が抜けていくようだ。
だから頭を振って嫌な弱気を振り飛ばす。
「くそっ。俺だってすぐに聖獣と契約するさ」
わざと手足を元気よく振って歩き始める。
「そうさ。ライゼルがうらやましがる位のスッゲー奴! 見てろよ!!」
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